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ベトナム

作成年月:2019年8月

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2019年7月度 ベトナム報告書

作成者:浅野 英治

(1)ベトナム地方都市への投資

これまでの日系企業の投資は、ホーチミン市やハノイ市の周辺部への投資が中心であり、地方都市への投資はほとんど見られなかった。しかし、近年の米中貿易摩擦の中で、ベトナムへ進出する企業、とりわけ、韓国、台湾、中国、香港の企業から投資が急増した結果、大都市部周辺部の工業団地の空きの減少や賃料が高騰している。

 

こうした中、注目されているのが、中部の地方都市であり、ハノイ市から南に200q程のゲアン省や、ダナン市から南に100q程のクアンガイ省などが注目を集めている。これらの地域は最低賃金区分が第3地域などであり、大都市周辺部と比べても25%程度人件費が安くなっていることから、縫製業を中心に進出する企業が増加している。また、大都市部周辺部に第1工場を持つ企業が、分工場としてこれらの地方都市に進出する動きもみられるようになってきており、クアンガイ省のVSIPクアンガイ工業団地にはレンズ製造のHOYAの工場が建設中であり、縫製業のマツオカコーポレーションはハノイ市周辺部などに工場を持っていたが、ゲアン省での工場建設を決めている。

地域別の最低賃金(単位:万ドン)

 

2019年

2020年

第1地域

418

442

第2地域

371

392

第3地域

325

343

第4地域

292

307

ベトナムの地方都市が注目される理由には、カンボジアの人件費の上昇も一つの理由である。2015年ごろまでは、ベトナムに次ぐ進出先としてカンボジアが注目され、カンボジアの首都プノンペンのプノンペンSEZや、ベトナム国境側のSEZに進出する企業が増加した。しかし、カンボジアの最低賃金が急速に上昇したことやカンボジアでは祝日が多く、実際の労働戦生産性を考えると、ベトナムの地方都市の方が魅力的な投資先となった。ベトナムにすでに進出している場合、ベトナムでのオペレーションの経験が生かせること、既存のベトナム人材が活用できることなどから、ベトナムの地方都市が新たな進出先として注目されるようになってきた。

 

しかし、ベトナムの地方都市では生活インフラの整備は遅れており、子供と一緒での駐在環境は整っていない。サービスアパートを含めて住環境は改善してきているものの、日本食は少なく、また、日本人学校は存在していないことから、ハノイやホーチミンなどの大都市に家族を残し、週末のみ大都市に戻るという駐在員も見られる。

 

(2)ベトナムのインフラ開発

ベトナムは南北に細長い日本のような国土であり、北部のハノイと南部のホーチミンを結ぶ高速道路や高速鉄道(2019年内に国会審議)が計画されている。

 

また、ホーチミン市のタンソンニャット空港の混雑は、年々激しくなっており、東隣のドンナイ省に新たなロンタン新空港(2025年開港予定も現状未建設)の建設、ハノイノイバイ空港の新滑走路・ターミナルの建設などが予定されている。

 

しかし、大都市圏の高速道路を除いて整備は極めて遅れている。対外債務が大きく、海外からの新規のODA資金が入らなくなっていることやベトナム国内での税収不足から政府予算での新規建設が難しくなっていることが背景にある。

 

ベトナム政府は、民間資金を利用したPPP(BOTやBT)での建設を促す方針であるが、BOTにより建設を行い通行料などで回収を行うとしても、物価水準が低く通行料収入が多くないことや、値上げした場合の住民からの反対運動などもあり、BOTでの新規建設が進んでいない。他方、BTの場合、料金回収ではなく土地が無償でもらえることとなるため、不動産業者などがこぞってBT事業に参入した。建設するインフラの近くで不動産開発も行うことができることから、不動産業者にとっては大きなメリットがあったものの、無償で譲渡される優良な土地が減少してきていることなどから、BT事業そのものが行われなくなってきている。

 

こうした事情から民間資金を利用したPPP事業も進んでおらず、高速道路や高速鉄道、大規模な新空港建設などのインフラ開発が全般的に遅れる傾向にある。 ベトナムの地方への投資が今後増えることが予想されているが、インフラ整備の遅れが、投資を妨げる要因にもなりかねないのが現状である。

 

 

以 上


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