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ベトナム

作成年月日:2009年10月15日

職業能力開発の政策とその実施状況

3.1 職業能力開発の背景

 2009年4月1日付国勢調査によるとベトナムの人口は8,650万人である。労働人口はそのうち53%と高く、今後数年間も引き続きその水準は維持されるであろう。ベトナムの豊富な若い労働力は国際的経済統合の競争において強みではあるが、逆に雇用創出という点においてはベトナム政府にとって大変なプレッシャーとなっている。また、熟練労働者の比率は労働力全体の30%強と低く、国家経済のため職業訓練の需要が非常に大きい。ベトナム政府は職業訓練に関連するいくつもの政策を採用してきた。2006年末に国会で職業訓練法を採決、その後現在に至るまで労働傷病兵社会福祉省(Ministry of Labor, War Invalids and Social Affairs:MOLISA)は新たな政策や、最近政府へ提出されたばかりの「2020年までの職業訓練改革及び、発展のための国家プロジェクト(National Project on Renovation and development of vocational training by the year of 2020)」、「2020年までの職業訓練改革のための国家戦略(National Strategy for Vocational Training Renovation by the year of 2020)」(現在、第6草案)、「2020年までの農民に対する職業訓練発展のための国家プロジェクト(National Project on Development of Vocational training for farmers by 2020)」等の職業訓練に関わる戦略を策定してきた。これらの政策が打ち出されたことにより近い将来職業訓練の力強い発展の実現が可能となるであろう。

【社会経済情勢】

  1. 国際情勢と世界の教育動向
     グローバル化と国際的経済統合を背景に、連携には常に過激な競争が伴い、その状況下では人的資源の質こそが競争における大きな強みとなる。また、グローバル化と国際的経済統合は先進国から発展途上国への資本の流れや国家間での労働移動を創り出す。結果として資源は国際化し、新しい国際分業となる。ベトナムをはじめとする発展途上国は国際労働市場で参加するチャンスが与えられる一方で、国内市場でも激しい競争を強いられる。したがって、人的資源の質こそが個々の国の競争力という点において中核的な課題かつ、決定的な要因となる。
     国際的経済統合により、先進国から発展途上国への研修事業の進出がさらに加速する。これは途上国にとっては挑戦というだけでなく、早い段階で世界の知識経済に統合する先進教育や研修を受ける絶好の機会ともいえる。新たな知識経済と特にIT部門をはじめとする日々目覚しい発展を遂げる世界の科学技術は経済間の隔たりをなくし、つながりを作った。ITは途上国も科学技術の成果に関する情報を取得し、先進国との発展格差をなくすチャンスをもたらした。
     需要主導型研修は効果的で発展途上国に順調に広がった。国際労働機関(ILO)はグローバルワークプログラムで各国に「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の創出という労働市場の要求に応えて柔軟性のある職業訓練を進めるよう推奨した。世界的な科学技術革新の急成長は最新技術の使用とともに、多くの新しい職業や仕事を創出するであろう。職業訓練は最新技術の資格を有する技術スタッフ団を研修するためにも定期的に内容を見直し、より高度に、もしくはさらに新しい研修カリキュラムへ改善していかなければならない。

  2. 国内情勢
     戦略的方向付けによると、ベトナムは経済と労働力構成に着実な改善を行い、基本的に2020年までに先進工業国となることを目指している。近代工業は高度な技術を有する労働者が必要で農業部門も近代化しなくてはならない※1。結果、職業訓練は職業や地方、地域別による技術レベルの構造の観点から発展、改善するべきである。
     ベトナムはWTOの正式加盟国となり、多大な協力が得られたと同時に競争も激しくなった。経済的競争力の改善につなげるためにも、労働力へ外面的スキル(専門技術)と内面的スキル(創造性、変化に対する適応力、コミュニケーション能力)を含む高度な職業能力開発が必要である。一般的に今もなお発展途上で貧しい農業国であり※2、まだ人的資源の質と競争力が低いベトナムにとってこれは大きな挑戦である。世界銀行の評価によるとベトナムの人的資源の質は10点満点中3.79点で、アジア12カ国中11位である。ベトナムの低い競争力の主な原因の1つがここにある。2006年には125の国や経済の中でベトナムは77位にランク付けされた※3。したがって、教育と特に高いレベルでの職業訓練の改善を強く推し進める必要がある。
     2008年のベトナムの人口はASEANでは第3位、世界では第13位の8,570万人である。ベトナムの若年人口及び、若い労働力はベトナムにとって強みであると同時に、職業訓練、雇用創出、そして貧困削減の分野においては試練となっている。2002年までの産業発展戦略のためには、さまざまな技術レベルにおける人的資源の必要性も含めて職業訓練戦略を適切に発展させる必要がある。
    ※1
    世界銀行によれば、先進工業国となるには国内総生産のうち、農業の割合が10%未満でなくてはならない。
    ※2
    国連人材開発報告書(2008年)、世界銀行報告書(2009年)によれば、ベトナムがインドネシアに追い着くのに51年、タイと歩調を合わせるのに95年、シンガポールの1人当たり所得に並ぶのに158年かかるであろうとされている。
    ※3
    2006年の世界経済フォーラムによると、2005年ベトナムは120カ国中79位にランク付けされた。

  3. チャンスと課題
     現在の国際・国内情勢は、ベトナムの職業訓練にとって以下のような絶好のチャンスと重大な課題と両方を生み出している。
    1. チャンス
      • 政党、中央・地方政府、産業、企業と社会は職業訓練に注目し、投資を行っている。
      • ベトナムはここ何年か高度経済成長を維持、雇用を創出し、多くの熟練労働者を呼び込んだ。
      • ベトナムの職業訓練にとってさらなる国際的経済統合は、近隣諸国や世界の職業訓練経験と実績をより早く得ることのできる絶好のチャンスとなる。
    2. 課題
      • 国際的経済統合に伴う労働市場の開放は、海外だけでなくベトナム国内の労働市場においてもベトナム人技術者と他国の技術者との間に激しい競争をもたらす。企業によっては海外から高度技術者を呼び寄せるという現象が起きており、ベトナム人技術者が外国人技術者に太刀打ちできないという危険が浮上している。
      • 職業訓練(特に高度な技術を有する労働者に対して)の規模拡大と質向上のため、インフラや設備整備、職業訓練講師や管理者の質向上が必要とされるが、投資額は限られている。
      • ベトナム経済は社会主義型市場経済への移行段階にあるため、新しい状況に沿った構造改革と職業訓練改革を必要とする。
     国際・国内情勢においてベトナムにその強みを維持し、近代化に向けた職業訓練の再生と発展のチャンスをつかみ、工業化と近代化のために上質の人材育成と供給を行う必要がある。そうすることにより労働力輸出、国際的経済統合や雇用創出が促進し、労働者の生活水準が向上する。職業訓練の改善と発展は差し迫った、なおかつ長期的要件である。

  4. 2020年までの労働力の研修計画
     人口家族計画省総務部の2010~2050年人口計画によるとベトナムの人口は2020年には約9,900万人、そのうち、労働年齢に達するのは5,750万人(労働傷病兵社会福祉省、国際労働機関による2010~2050年労働力計画)になるとされている。計画投資省による2020年までの人材開発計画に関する基本的指標では、産業構造はそれぞれ農林水産業30%、工業、建築業32%、そしてサービス業38%になるといわれ、年間約100万人もの農業従事者が工業やサービス部門へ転職するとされている。
     工業化、近代化そして国際的経済統合の過程で情報科学、オートメーションや輸出向け生産など知識集約型産業やハイテク産業の経済産業は今後も力強い発展を実現し、高い技術を持った労働者が集まるであろう。主要な経済産業、グループ、大企業では2020年までにおおよそ年間6~7万人もの優秀な人材を必要とすると思われる。その人材の8割以上を職業訓練中等レベル以上の労働者が占め、経済活動が海外に拡大した際には、その要求はさらに増すといわれる。海外へ派遣された労働者は全員が職業訓練を保証され、そのうち半数は中等レベル以上の研修を受けることができる。
     労働力人口全体の約55%は研修を受けた労働者で、産業ごとの熟練工の割合は農林水産業が35%、工業部門が63%、サービス業が50%である。職業訓練レベル別の割合は、初等レベルが72%、中等レベルが14.4%、専門学校・実践的技術者レベルが13.6%である。

3.2 職業能力開発を進めるための国の政策

  1. 職業訓練法
     2006年11月29日、第11回国会第10議会において職業訓練法を承認し、2007年6月1日より施行された。この職業訓練法は全6章92条から成り、職業訓練機関の組織と運営に関する規定、及び職業訓練に関わる組織や個人の権利と義務が規定されている。

  2. 2020年までの職業訓練改革国家計画(政府へ提出予定)
    1. 2020年までに職業訓練改革及と発展に関するガイドライン
      • 労働市場と社会の需要に応えるため、供給主導型から需要主導型の取り組みへと大きく転換。
      • 職業訓練の標準化と近代化を行い質の飛躍的向上を狙い、国の工業化、近代化そして国際的経済統合を担っていく高度技術を有する労働者を育成。
      • 国家標準の職業訓練高校や職業訓練大学でカリキュラム、指導員、管理スタッフ、インフラ、設備等の質に対し職種ごとに総合的投資を行う。ただし国際又は、地域標準達成のため、研修が必要な主要産業の職種、ハイテク業界の職種、技術職等を優先。
      • 職業訓練促進のためすべての社会的資源を動員し、国が重要な役割を担う。
      • 職業訓練促進と質の高い技術労働者の育成は政府と政党の方針である。それらは着実で持続可能、かつ効果的な社会経済開発の決定要因であり、社会的公正や国民へ学習及び、生涯学習の機会を確立する。

    2. 2020年に向けた職業訓練改革と発展の目的
      1. 総合目標
         生産、ビジネス、サービス部門で知識、職業遂行能力、職業倫理、良識を有する技術労働者育成のために職業訓練の質の大幅な躍進を目指し、国内労働市場の要求にかなう勤務形態を整える。国際、全国、そして各地域標準レベルの職業訓練を実施し、職業訓練の規模を拡大し2020年までに全労働力の55%に対し研修を行う。研修すべき職業と研修レベルの構造を確立し、職業訓練施設と企業を結びつける。
      2. 個別目標
        1. 2009~2020年
          • 581万5,000人に対する職業訓練中等学校、職業訓練大学、技術者レベルでの研修を含め2,458万人に対し職業訓練を実施し、ASEANの先進諸国や世界で適用される職業能力開発水準に従った研修を11万5,000人に対して行う。
          • 4万人に対して職業教育と職業能力開発の研修を行い、職業訓練指導員を育成する。
        2. 2020年まで
          • 私立学校40校を含む職業訓練大学230校と私立学校70校を含む職業訓練高校310校を設立する。そのうち公立10校を含む職業訓練大学15校で国際標準職業のコースを職業別に3~5コース、公立20校を含む職業訓練大学25校で地域標準職業のコースを職業別に3~5コース、公立120校を含む職業訓練大学140校で全国標準職業のコースを職業別に2~3コース設置する。そうすることにより86種類の全国標準職業、30種類の地域標準職業、20種類の国際標準職業の研修が可能な職業訓練システムの確立を狙う。職業訓練センター、もしくは職業訓練高校が各地域に1カ所以上は設立されるものとする。
          • 職業訓練指導員が学科と実技、両方を組み合わせたすべての研修を提供するものとする。指導員の40%を大学院卒業生とし、職業訓練大学、高校いずれも指導員対生徒の割合は1:15とする。全管理スタッフは職業訓練管理に携わらなければならない。
          • 職業訓練大学レベル、高等レベルの全職業に対して訓練カリキュラムを用意する。先進国の研修プログラムを30種類の地域標準職業、20種類の国際標準職業に対して取り入れ、一般の職業向けに130種類、実践的技術者レベル向けに40種類の研修プログラムと講義要綱を用意する。
          • 職業訓練大学及び、職業訓練高校で実施される全職業訓練のために職業訓練設備基本リストを作成する。
          • 職業訓練大学及び、専門高校の90%、職業訓練センターの70%、そして職業訓練大学及び、専門高校で行われる研修プログラムの70%を職業訓練認定制度で管理する。
          • 400種の職業に対して国家職業技術基準を制定し、その基準に従って評価を行う。600万人もの労働者がこの職業技術によって評価を受ける。

  3. 2011~2020年までの職業訓練戦略
    1. 総合目標
       合理的で柔軟性があり、効果的な最新職業訓練制度を実現させる。それは誰にも平等で利用しやすく、継続性のある制度でなくてはならない。特に農村部における労働者の生活水準を改善するためにも人々の競争力強化に貢献し、さらに2020年までに1日も早くベトナムが先進工業国となるよう、国の社会経済開発に役立つ内容でなくてはならない。

    2. 個別目標
      【目標1:労働市場と社会の開発需要に応じた適切な職業訓練制度の確立。先進工業国のニーズを満たす知識集約型経済への取り組み】
       先進工業国の労働力の質に適合し、労働力構成を活用するための職業訓練プログラムやコースを作るためには、雇用者や職業訓練生のニーズが最も重要な基礎となる。
      【目標2:最新の認定職業訓練制度の効果的な運営】
       論理的に配分した資金に基づき職業訓練は標準化、近代化、統一化を目指して発展させる。職種によっては地域レベル、国際レベルの研修の提供を行い、質、職業技能開発の向上、創造性、健康や労働者の勤務形態の現状を打破する突破口を作る。研修終了後、研修生は競争の厳しい労働市場でも通用する職業技能の習得が約束される。
      【目標3:すべての人の生涯学習の必要性を満たし、利用しやすく、平等で柔軟性の高い職業訓練】
       急速に成長するテクノロジーを背景に需要主導型の職業訓練を保証するため、研修は社会的パートナーが関わる柔軟な制度にしなくてはならない。同時にその制度はすべての人や社会団体、特に社会や労働市場における弱者の要求を満たし、国内雇用と労働力輸出の要求も満たす必要がある。
      【目標4:職業訓練制度の継続的な発展】
       国際市場の厳しい競争の中で経済の変動し続ける開発ニーズに関連し、優れた職業訓練制度をまとめ、発展させるための資源を集める最も適切なメカニズムを確立する。

3.3 政府及び関係団体の制度、組織、機能

  1. 職業訓練施設のネットワークの設置
    • 職業訓練施設のネットワークは社会経済開発戦略と国家、産業、地域、準地域、地方それぞれの基本計画を基準に、研修を行う職種や研修レベルによって計画される。
      職業訓練施設のネットワークは次のとおり進められる。
      • 産業や経済区域、労働力輸出のための質の高い労働力への需要を満たす地域標準及び、国際標準レベルの労働者を育成するため、職業訓練大学と職業訓練高校は国家基準を満たす職業訓練が可能となるよう高度化する。職業訓練大学と職業訓練高校では、訓練指導員に職業技能資格証明書を交付する通常の研修、又は補習研修が課題となっている。各省ではその地域の労働市場の需要に応じ、最低2つの職業に対する国家標準レベルの職業訓練が可能になる見込みである。
      • 南西部、中央高地部や北西部では、貧困削減が困難で各地域間での社会経済開発の格差縮小が難しい省等を優先して職業訓練大学と職業訓練高校を発展させる。
      • 労働者、特に農村部や少数民族を対象にした職業の一般化、転職、雇用創出、増収や生活水準の向上促進のために職業訓練センターを設立する。この課題は2020年までの地方労働者のための職業訓練基本計画で取り組まれている。
    • 公立職業訓練大学、高校でいくつかの主要な職業に対し国際標準レベル、全国標準レベル、そして各地域標準レベルの職業訓練が実施できるよう、国家予算を集中的に投入する。

     研修を行う職業選定の指標や過程について大学や高校は開放性、透明性を保ち、民主的に行わなくてはならない。国内外の組織や個人に対して私立の職業訓練学校設立を奨励している。

  2. 職業訓練指導員の育成
     職業訓練大学と職業訓練高校で全国レベルの研修指導ができる指導員を育成する。公認職業訓練指導員の国家基準を専門家レベル、教育レベル、職業能力開発レベル別に明示し指導員の標準化を実施する。職業訓練専門教育学校での全学科の職業教育職の標準化、公立、私立を問わず国際標準レベル、全国標準レベル、そして各地域標準レベルの職業訓練を行う職業訓練学校での職業能力開発を統一する。大卒者が職業訓練大学、又は職業訓練高校レベルの職業訓練指導員となるための技術教育と職業能力開発をまとめる、指導員に対して毎年研修方法や最新技術についての情報提供を行い実際に国内外の生産現場、ビジネス及びサービス施設での実地研修を行う、等の方針に従い早急に公認職業訓練指導員を増員する。
     職業訓練大学と職業訓練高校で、さらに国際レベル、地域レベルの研修指導ができる指導員を育成する。先進国の職業訓練指導員の基準を適用、国家資格を持つ教師、優秀な大卒生や大学院卒生、さらには生産、ビジネス、サービス業の経験豊富な専門家を講師に採用し、指導員へ先進国の研修プログラムに従った技術教育学や職業能力開発を実施する。指導員へは英語教育を施し、毎年研修方法や最新技術についての情報提供を行い、実際に先進国各地の生産現場、ビジネス及びサービス施設での実地研修を行う。また、職業訓練初等レベル及び、3カ月以下の研修指導ができる指導員を育成する。この課題は2020年までの地方労働者のための職業訓練基本計画に明記されている。

  3. 職業訓練管理スタッフの育成
     職業訓練施設の管理者と全職務の管理スタッフに対する研修プログラムを先進国のプログラムを応用して改善する。また、3地域における技術教育大学3校で職業管理研修センターを設立し、国内外の職業訓練管理官に対し定期的な研修や補習研修を実施する。

  4. 職業訓練プログラム、カリキュラム、講義要綱、研修方法の開発
     職業訓練大学と専門職業訓練学校用カリキュラムの枠組みの開発を促進し、2010年には独自のカリキュラムや講義要綱を設ける。各学校にカリキュラム開発の自立性を強化するため選択科目を40%まで増やす。教師には各学校で組まれた研修カリキュラムを基本に研修内容を決める権利を与える。政府は2015年まで職業訓練の枠組みの管理に携わらない。
     研修の構成を学科、実技と別々に行わずに学科、実用技術、勤務態度の要素を組み合わせて改善する。職業訓練プログラムは企業の参加による世界の先進的方法(DACUM職業分析)に沿った職業能力開発基準、又は遂行能力を基準に発展させる。参加企業での実習期間は現在より長くなる。実習や実技、学習過程での積極性、独立性、共同作業、実技と自己学習期間の長期化に重点を置いた研修や学習方法に改善する。職業訓練とオンライン学習でITの活用の強化を行う。また、指導員に対しては職業訓練指導カリキュラムと講義要綱作成の研修を行う。
     職業訓練中等レベルから短大や大学へ、大学から職業訓練短大へ、職業訓練大学から専門技術大学へと各研修レベル間で編入可能な制度を作る。研修によっては海外の同様の研修と振り替えることもできるようにする。評判が良い職業訓練の講義要綱を作成し、全国の職業訓練学校で導入するよう推奨する。熟練技術者に対し特定の職業訓練大学で地域、国家、そして国際資格となるパイロット研修プログラムを作成する。
     職業訓練大学で行う地域及び、国際レベルの研修とは、以下のとおりである。
    • ベトナムに適した先進国の職業訓練プログラムを取り入れる。
    • カリキュラムやその枠組み、職業能力開発基準、講義要網、指導方法を同時に導入する。常に最新の研修プログラムを進められるよう、講師に対しその研修や補習研修を実施する。

  5. 職業訓練設備やインフラの標準化と近代化
    1. 設備とインフラの標準化
      • 職業訓練大学や高校の建物の基準を明確にし、単位制の研修プログラムに適した研修指導、研修、労働環境、労働者の安全等の条件を実現する。
      • 職業やレベル別に必要な研修設備、基本的な設備から実技に必要な模擬装置等の最新装置や設備の標準リストを作成する。
    2. 管理スタッフの幹部への研修実施
    3. 生産現場や企業内で必要な標準、現代技術を研修するための設備やインフラに投資を行う。
    4. 研修生が実技研修を行うための実習場を校内に作る。

3.4 予算と財源

  1. 計画、予算配分、利用方法の革新
    • 労働傷病兵社会福祉省が財務省(Ministry of Finance:MOF)、計画投資省(Ministry of Planning and Investment:MPI)、地方の労働傷病兵社会団体とともに地方の財政計画部門の協力の下、各省や部門、地方の職業訓練に関する年間予算の配分、監視、支出に関与する。
    • 職業訓練への投資に関しては国家予算が中心となる。教育及び、研修に関する歳出のうち、職業訓練開発に対する年間予算の成長率は2020年には12%に達する。
    • 現在の職業訓練施設が国から与えられた予算を管理するというメカニズムは、職業訓練施設が研修サービス契約を締結し、その契約に基づき研修目的や対象者に対しての研修サービスを提供するというスタイルに徐々に移行する。特殊な職業や兵役除隊者、貧困層や少数民族、また、公立、民間を問わず認定職業訓練施設に対して、優先的に投資が行われる。
    • 各職業グループの研修レベル別に設定されている料金を基準に計算された研修費用によって、支出計画や配分がなされる。
    • 各省における職業訓練開発基本計画や職業訓練生への支援政策を実施するために、必要な予算を地方各自で十分に確保可能にする。

  2. 国家予算の利用方法
    • 質の高い職業訓練大学や高校設立のための集中投資
    • 学校を革新的基礎として、少数民族地域をはじめとした問題を抱える省の公立職業訓練短大、高校への優先的投資の促進
    • 労働市場での需要が多いにもかかわらず社会化が困難な職業の研修を実施する研修施設への投資
    • 人気のある職業のカリキュラムとその枠組み、講義要綱の作成
    • 地域及び国際資格の職業の研修において、認可研修プログラム、カリキュラム、講義要綱や海外の教材使用
    • 職業訓練指導員、管理スタッフ、検査官幹部に対する研修や補習研修の実施
    • 職業訓練設備の標準リスト作成
    • ハイテクや最先端分野の職業、危険や有害な職業、研修生が集まりにくい職業に対して研修を義務化
    • 学費免除、又は控除対象の研修生受け入れ施設に対する補償
    • 学費を負担できない地方研修生への援助
    • 職業訓練認定制度の運営
    • 公立職業訓練認定センターの促進支援
    • 職業能力開発試験の基準策定と問題作成
    • 労働者の職業能力開発評価の経費支援と国立職業能力開発評価センターの建設支援

  3. 職業訓練の社会化のための投資促進を目指すメカニズムの発展
     職業訓練開発において企業や伝統工芸村の参加を最大限に高めるために、政府は優先的貸付や税務政策、研修費用の支援に関する政策等を含む刺激政策を公布する。企業や伝統工芸村は企業内研修や職業訓練施設への投資に参加し、研修生に対し実際の生産現場での職業訓練やさらなる高等研修を提供する。政府は研修を終えた労働者を採用する企業に、職業訓練費用の負担を促す政策も準備する。また、研修費用支援を目的とした増収のため、職業訓練施設における生産、ビジネス、サービス、団体、合弁事業を拡大する。
     職業訓練に対する海外投資を増加するためにも、政府は教育や職業訓練における外国投資や海外取引先との連携に関わる政令をより明確で、便利な手続きや投資条件の内容に改正、補完を行う。インフラ、設備、技術支援を主に、職業訓練に投資する外債の計画を優先する。さらに研修カリキュラムや講義要綱を作成し、管理スタッフや講師へも補習研修を実施する。職業訓練の研修内容を充実させることで、それに見合った研修費用の徴収を可能にさせるのである。

  4. 財政監視の促進
     職業訓練に費やされる地方予算の有効性の評価指標と手順の調査と開発を進める。また、職業訓練における卒業、トレーニング、財政能力の基準を示すと同時に、政府規則に従い上部団体への会計報告の機構を導入し、予算の法的で公然と、正しく、透明性をもって使われることを保証する。各施設がそれぞれの内部支出規則に従った予算や収益の支出を行っているか社会的な監視メカニズムを導入し監視する。

  5. 職業訓練の予算額
     困難が山積しているもののベトナム政府は教育や研修に多大な予算を費やしている。2001年に教育・研修に投じられた割合は国家予算全体の15.5%を占め、2008年には20%にまで増加した。ただし、教育・研修に関わる予算全体のうち、職業訓練に投じられた割合は2001年で5%、2008年には7.5%に増加したものの依然として低い。

    表3‐1 職業訓練に費やす国家予算(2001~2008年)   (単位:10億ドン※4
    項目 2001 2002 2003 2004
    GDP 481,295 535,762 613,443 715,307
    国家予算支出額総計 127,675 143,764 181,183 209,024
    教育・研修関連支出額 19,747 22,541 28,835 34,872
    教育・研修部門支出割合
    (対国家予算支出)
    15.5% 15.7% 15.9% 16.7%
    職業訓練関連支出 968 1,240 1,644 2,162
    職業訓練関連支出割合
    (対教育・研修関連)
    4.9% 5.5% 5.7% 6.2%
    経常費 569 661 796 915
    国家目標プログラム関連支出 104.7 139.6 168 265
    基本建設関連支出 294 439 679 982
    項目 2005 2006 2007 2008
    GDP 839,211 973,791 1,129,598 1,338,000
    国家予算支出額総計 239,470 297,232 356,678 398,980
    教育・研修関連支出額 42,943 54,798 71,336 79,796
    教育・研修部門支出割合
    (対国家予算支出)
    17.9% 18.4% 20.0% 20.0%
    職業訓練関連支出 2,791 3,671 4,993 5,985
    職業訓練関連支出割合
    (対教育・研修関連)
    6.5% 6.7% 7.0% 7.5%
    経常費 1,335 1,735 2,200 2,944
    国家目標プログラム関連支出 425 630 1,050 1,100
    基本建設関連支出 1,031 1,306 1,743 1,941
    ※4
    1,000ドン=5.0872円(2009年10月15日現在)
    ※出典:
    General Department of Vocational Training, 2009.

3.5 外国・国際機関からの援助

 グローバル化に伴い競争力強化や職業訓練の需要に応えるため、ベトナムは他国やアジア太平洋経済協力(Asia Pacific Economic Cooperation:APEC)、国際労働機関(International Labour Organization:ILO)、東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations:ASEAN)等をはじめとする国際機関の支援が必要である。

  1. 国際協力活動の姿勢
    • APEC、ILO、ASEAN、世界技能コンテスト、ASEAN技能コンテストをはじめとして国際機関が主催している職業訓練活動に積極的に参加をしている。そうすることにより学習意欲を高め、他国と職業訓練に関する情報を交換している。
    • 近隣諸国や世界でも卒業証書や修業証書が国内と同等の評価を得るよう、合意を得る。世界の先進研修施設との研修協力を強化し、ベトナム職業訓練分野への外国投資を誘致する。また、海外からの指導員招聘や、他国の職業訓練指導員との情報交換を促進する。
    • 職業訓練局に先進国のカリキュラムと研修サービスを選択して提供し、国際労働市場で高い需要がある職業については英語で研修を行うことを推奨する。
    • 投資家や世界で評判の高い職業訓練施設がベトナムで学校を開校し易いメカニズムと条件を作り、その他の国際職業訓練施設との合同事業を促進する。
    • 職業訓練の調査を促進し、ベトナムの状況に適した先端技術の採用について検討する。

  2. 外国や国際機関による職業訓練支援プロジェクトや活動
     職業教育・技術教育(Vocational Education and Technical Education:VTET)プロジェクトによる国内資金の投入以外にベトナム政府は外国や国際機関からのODA融資を受けている。アジア開発銀行(Asian Development Bank:ADB)や北欧開発基金(Nordic Development Fund:NDF)、フランス開発庁(Agence Française de Développement:AFD)、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)やドイツ、韓国、オーストラリア等をはじめとした外国政府の資金援助による大きなプロジェクトが進行しており、VTETの開発進捗に大きな貢献をしている。

    1. ADBプロジェクト(1998~2008年)
       ADBは1998年12月に職業訓練と技術教育プロジェクトに対し5,400万米ドル※5の融資を承認した。このプロジェクトはAFD、JICA、NDFが共同出資者となっており、1)市場指向の改善、2)主要となる学校、15校(Key Schools:KSs)を設立、3)政策改革の導入の3つから構成される。プロジェクトの第一段階は2008年末に終了し、農村部の貧困層が目標対象となる第二段階の予算は150万米ドルとなっている。
      ※5
      1米ドル=90.6536円(2009年10月15日現在)

    2. ADB、AFDによるKSs建設工事プロジェクト(2002~2007年)
       ADBとAFDの融資総額1,030万米ドルによりKSs建設計画は2002年に始まり2007年に完了した。
      研修設備:研修設備の調達準備は2002年1月に始まった。全12回の一括取引によるこの計画は、7回(計1,240万米ドル)をADBが、5回(計700万米ドル)をNFDが融資した。KSsへの搬入はKSs自身によって行われ2007年1月に終了した。

    3. スイス政府(SWITCONTAC)による職業訓練センター収容能力増強プロジェクト
       北部、南部、中央ベトナムの3地域の職業訓練センター30カ所を対象に設備、研修カリキュラム作成に対しての投資を目的とし、全4段階、700万米ドルの融資から成る。このプロジェクトは2008年に終了した。

    4. KSs11校の整備を目的としたドイツ政府資金援助(Bank of Reconstruction of Germany:KWB経由)プロジェクト(2007~2010年)
       KSs11校に対し最新設備の投入や指導員への能力向上が行われる。資金援助の総額は1,100万ユーロ※6である。
      ※6
      1ユーロ=135.3645円(2009年10月15日現在)

    5. 韓国政府の資金援助による主要職業訓練校5校の能力強化プロジェクト(2007~2010年)
       このプロジェクトでは指導のための設備、研修カリキュラムの構築、研修指導員の能力強化に対し総額6,400万米ドルの資金援助が投入される。プロジェクト期間は2007~2010年である。

    6. ドイツ政府による職業訓練の技術支援プロジェクト(2008~2010年)
       総額150万ユーロの資金援助を投じて1)職業訓練の協議、2)研修材料の開発、3)研修カリキュラムの構築、4)研修の評価制度の4点に焦点を合わせて取り組む。

    7. EUによる労働者の職業技能評価プロジェクト
       このプロジェクトはILOによる技術支援とともに1)評価者の研修、2)ガイドラインや基準等、評価資料の作成、3)一部の職業に対し、異なった分野の職業技能レベルを用いた試験的評価の実施を目標にしている。総予算は1,000万ユーロである。

    8. 日本政府による職業訓練開発プロジェクト(ADB経由)(2008~2010年)
       メコンデルタ地域の5つの省に対して1)職業訓練学校の能力開発、2)職業訓練と雇用創出のリンクを目的に返済不要な資金援助総額150万米ドルが投じられる。

3.6 職業能力開発の政策評価

  1. 社会経済開発のための実技技術研修の設立
     2005年の教育法、及び職業訓練法により職業訓練制度は生産、ビジネス、サービス分野に直接関連した技術労働を提供するよう3段階の研修レベル別に開発した。それに応じて、研修する職業リストやカリキュラムの枠組みを作成するための規則、職業訓練大学や高校の設立手順、職業訓練の質の監視、その他の関連政策やメカニズムについて、的確で時宜を得た職業訓練の指針となる法律を公布してきた。それらの法律や政策により、効果的な職業訓練実施のための包括的で一貫性のある法的な道筋が作られ、2001~2010年の教育戦略における目標の健全性をもたらした。
     2010年を目標とした職業訓練大学や高校の開発基本計画と2020年に向けての方針が実行されている。職業訓練大学、職業訓練高校、職業訓練センターのネットワークは所有者や研修方法という点では多様化している。2001年と比べると職業訓練施設数は3.3倍にもなった。2009年7月には職業訓練大学が102校、職業訓練高校が265校、職業訓練センターは700カ所以上あり、何百もの大学、短期大学、専門高校、企業が職業訓練に参加している。これらの施設は各経済領域の開発状態に対応して配置されている。職業訓練施設において国家基準の職業の研修に対し、先進国レベルの研修導入を促進する基本計画のため、現在調査や補完作業が行われている。

  2. 研修レベルと研修組織の調整による規模拡大
     企業や労働市場の需要に応える職業リスト(高校レベルで研修が可能な職業385種と大学レベルで研修が可能な職業301種が明記されている)の作成をはじめとして、さまざまな政策や法令により職業訓練は供給主導型から需要主導型へと移行してきた。企業の需要や地域の社会経済への適用に基づいた研修希望の試験的な活用が実施されるため、職業訓練施設は企業の需要に沿った研修を計画しなくてはならない。これは国家が認可するというスタイルから国家が研修を発注するという方法に移行する準備段階となる。経済と労働の改革に貢献するため、全体の政策やメカニズムと同時に農民やたばこ、紅茶、ゴムを含む集約農業地域での労働者に対する試験的な職業訓練も実施している。適時な政策やメカニズムの導入により技術レベル、産業や貿易、地域の点において職業訓練は徐々に労働力の需要構造に対応するよう改革されてきている。

  3. 品質と効率の改善
     教育戦力遂行の間、規模拡大のほかに職業訓練の品質と効率の改善にも注目が向けられ進展があった。投資が均等に分散されるのではなく、職業訓練ネットワーク計画に基づき主要な職業訓練施設へ集中して行われた。同時に困難な状況にある地域の職業訓練施設を中心に投資が行われたため職業訓練の品質を確保する状況が改善した。
     職業能力を重視するイギリスの指導員向けの研修プログラムを試験的に導入し、研修レベル、教育上、(現在弱点でもある)職業能力等の指標から見て研修指導員の質も向上、標準化してきた。職業訓練大学に職業訓練教育学科を設立し、指導員向けの研修教育専門学や職業能力の研修を行う。現在はまだ教育技術学校は5校のみで、職業訓練指導員の需要を満たしてはいない。2008年の職業訓練学校及びセンターの指導員数は2万195人で1998年の2.88倍である。
     職業訓練大学及び高校でのカリキュラムの枠組みが公布され、職業訓練プログラムは企業参加による改良された方法が展開された。現在、職業訓練大学及び、高校レベルのカリキュラムの枠組みは108組公布されている。国家目標プログラムやODA基金のプロジェクトにより職業訓練学校100校及び、職業訓練センター290カ所が投資を受け、過去10年間で多くの職業訓練施設のインフラや設備強化がなされてきた。主要な職業については実用的な最新生産設備も備えている。
     研修条件への投資のお陰で職業訓練センターの卒業生の質と職業技術は向上した。企業の評価によると研修修了生の80~85%は適切な研修レベルで、30%は良い、又はより優秀な技術レベルでの仕事に就いている(2006年職業訓練総務部門の調査)。溶接工、水兵、ホテル・レストランサービス業、調理師、又、郵便や電気通信、石油やガス、航空の分野でのベトナム人労働者の職業技術は国際標準レベルにまで達した。ベトナムはASEAN主催の5つの技能コンテストに出場し、そのうち2つで優勝、1つで準優勝を獲得した。さらに2つの世界大会に出場し2007年には優秀職業賞を1つ受賞、2009年には同等の賞を5つ受賞し大会出場国46カ国中30位にランクされた。以前は外国人労働者が占めていた高度な技術を必要とする職業も、研修を受けた労働者が担うようになった。
     政府の需要主導型職業訓練の指針を実施するにあたり、多くの地方政府や省庁、産業が指導を行い、ある程度の成果が得られた。職業訓練施設も研修内容を需要主導型の研修内容へ変え、企業のニーズに合わせ、国内の雇用を創出し、労働力輸出の準備を行った。約70%の労働者は研修終了直後に就職、もしくは自営業を始めている。職種によっては研修修了生が90%を占めるものもある。まだ始まったばかりではあるが、農民(特に集約農業地域での労働者)に対する職業訓練は明白な成果が得られた。職業訓練のおかげで農民は新しい知識を習得し職業能力を向上、労働生産性の引き上げにつながり農村部の貧困削減に貢献した。集約農業地域によっては労働者の職業訓練終了後の労働生産性が1.5~2倍にも増加した。職業訓練は国内の雇用創出に貢献しただけでなく、労働力輸出のための人材の質向上にもなった。海外労働局の管理委員会によれば海外に派遣されている全労働者のうち、職業技術を持つ労働者の割合は25%である。それにより労働者の所得増加となり、労働者やその家族の生活の安定にもつながった。

  4. 課題
    • 3段階のレベル別の実技研修システムが新しく確立された。職業訓練施設、特に高水準な研修能力を持った施設の研修規模は依然として小さく、最先端産業や基幹産業、労働力輸出における高い技術を持った労働者への需要を満たすものではない。
    • ベトナムにおける研修を受けた労働者の割合は近隣諸国と比較してもまだ低い。ADBの評価では、タイとシンガポールの研修を受けた労働者の比率は約60%にも達する。これは国際経済統合の中での競争面で弱点となり、国内労働者の雇用が進まない一方で海外からの労働輸入促進の危険を強いる。準備統計資料によれば現在ベトナムで働く外国人労働者は8万人である。
    • 職種やレベルに分けた研修構造は不適切なものとなっており、労働市場や産業が実際に必要とする労働の構造と一致していない。
    • 一般にベトナムの労働力は規律、勤務形態、健康、創造的能力、コミュニケーション能力に欠ける。


  5. 原因
    • 各政府レベルや部門において職業訓練開発の投資に適切な注意を払っていなかった。
    • 多くの職業訓練施設は職業訓練の点で企業との相互関係を確立しておらず、需要主導型研修の実施に積極的ではない。
    • 労働者に対し高度な技術の研修を実施するための主要な高等技術を要する職業の確立、最先端の工業地帯や主要な経済圏の労働需要に応える努力、地域ごとの専門職業の確立、そして労働力輸出のための高度な技術を持つ労働者の育成に対する同期投資が実施されなかった。
    • 指導員数や有能な指導員が足りず、職業訓練施設のインフラや設備は古く、粗末である。
    • 職業訓練の情報、宣伝や職業指導の活動に弱く、研修生や若者が学習の進路選択を行うために必要な情報提供がなされていない。
    • 社会的資源の十分な動員がなされていない。教育・研修に関する国家予算のうち、職業訓練のための支出が依然として低い。2001年の教育・研修に関する国家予算のうち、職業訓練のための支出は4.9%、2008年は増加し7.5%であった。
    • 省や区レベルの職業訓練に関わる行政組織は与えられた職務と役割を果たせていない。職業訓練管理スタッフの能力は乏しく専門家とはいえず、職務要件を満たせていない。

3.7 職業能力開発の実施概況

  1. 講座種類、講座別コース数、研修生の数、施設の数等
     正式な研修や定期研修、企業や商業村での研修について、また、農民、復員軍人、少数民族、身体障害者や貧困層への研修等、職業訓練の規模拡大のための多くの政策が公布された。結果として職業訓練の登録者が急速に増加し2001年と比較すると2倍にもなり、2008年に研修を受けた労働者の割合は全体の26%になった。さらにこの割合は2009年には28%、2010年には30%にまで達する見込みで、教育戦略の目標に掲げた26%を2年も早く達成することになる。2001~2008年の職業訓練登録者数は1年間で平均6.5%増加し810万人が研修を受けた。そのうち長期研修を受けた労働者は年間15%増加の145万人、短期研修を受けた労働者は年間6%増加の665万人であった。

    表3‐2 職業訓練登録者数と規模(2001~2008年)
      2001 2002 2003 2004 2005
    新規登録者数 887,300 1,005,000 1,074,100 1,153,000 1,207,000
     私立 170,858 174,630 227,953 291,171 362,271
    長期 126,100 146,500 176,400 202,700 230,000
      私立 2,522 2,930 3,528 6,081 7,620
    短期 761,200 858,500 897,700 950,300 977,000
      私立 168,330 171,700 224,425 285,090 354,651
    職業訓練規模 995,800 1,131,100 1,220,600 1,329,400 1,409,700
     私立 174,500 175,789 230,883 294,568 368,930
    長期 234,600 272,600 322,900 379,100 432,700
      私立 3,560 4,089 6,458 9,478 14,279
    短期 761,200 858,500 897,700 950,300 977,000
      私立 168,330 171,700 224,425 285,090 354,651
      2006 2007 2008 2001-2008 合計
    新規登録者数 1,340,000 1,436,500 1,538,000 9,640,900
     私立 445,000 514,443 - 2,186,326
     長期 260,000 *305,500 258000 1,705,200
      私立 13,000 16,803 - 52,484
     短期 1,080,000 1,131,000 1,280,000 7,935,700
      私立 432,000 497,640 - 2,133,836
    職業訓練規模 1,570,000 1,696,500 - 9,353,100
     私立 456,500 528,743 - 2,229,913
     長期 490,000 565,500 - 2,697,400
      私立 24,500 31,103 - 93,467
     短期 1,080,000 1,131,000 - 6,655,700
      私立 432,000 497,640 - 2,133,836
    ※注
    長期…研修期間1年以上、短期…研修期間1年未満
    ※出典:
    General Department of Vocational Training, 2009.


  2. 職業訓練機関のネットワーク
     革新基本計画に従って職業訓練機関のネットワークを確立、所有形態や研修方法の多様化によって全国をカバーした。過去8年間で職業訓練学校は2倍、職業訓練センターは5倍以上も増加した。

    表3‐3 職業訓練施設(2009年6月30日現在)
      地域 全合計 職業訓練大学 職業訓練高校 職業訓練学校 職業訓練 センター その他 職業訓練組織
    小計 公立 小計 公立 小計 公立 小計 公立 小計 公立 小計 公立
      合計 2,155 1,301 75 64 204 153 40 19 684 433 1,152 629
    1 北東部 232 175 8 8 20 8 2 1 98 64 104 85
    2 北西部 38 32 1 1 5 4 2 2 14 12 16 13
    3 紅河デルタ 610 383 34 29 81 53 25 8 157 101 313 198
    4 北部沿海部 238 169 7 6 23 23 6 5 82 58 120 77
    5 南部沿海部 213 146 6 5 20 17 3 2 63 49 121 73
    6 中央高原 60 37 2 2 4 4 2 1 25 14 27 16
    7 南東部 420 165 12 9 33 27 0 0 133 45 242 85
    8 メコンデルタ 344 194 5 4 18 18 0 0 112 90 209 82
    ※出典:
    General Department of Vocational Training, 2009.


  3. 指導員
     2001~2008年にかけて約1万2,000人の指導員が職業資格や技術の強化や、最新技術や高度な方法論の知識習得のためのトレーニングを受けた。職業訓練の指導員は質が向上した上に人数も増え、すべての職業訓練学校やセンターにおける指導員数は2007~2008年の学年度には1997~1998年の学年度と比べ2.4倍の2万195人となった。さらに、そのほかにも職業訓練に関わる組織に従事している指導員が何千人もいる。約95%の職業訓練指導員は指導員としての専門基準を満たしており、短期大学又は大学卒以上の比率は現在60%である。ところが、実際の需要に十分に対応するには職業訓練指導員の質、人数共に不足している。特に地方の民間職業訓練センターでは不足している。

    表3‐4 指導員の資格別、人数と構造(2008年)
    訓練場所 指導員数 資格
    博士 修士 大学
    人数 % 人数 % 人数 %
    職業訓練
    校及び
    訓練セン
    ター
      20,195 83 0.41 927 4.59 9,707 48.07
    短大 4,678 23 0.49 363 7.76 2,856 61.05
    高校 9,583 55 0.57 388 4.05 4,748 49.55
    センター 5,934 5 0.08 176 2.97 2,103 35.44
    その他 15,767 105 0.67 2,667 16.92 6,767 42.92
    合計 35962 188 0.52 3,594 9.99 16,474 45.81
    訓練場所 資格
    短期大学 技術者 その他
    人数 % 人数 % 人数 %
    職業訓練校及び
    訓練センター
      3,663 18.14 3,339 16.53 2,476 12.26
    短大 633 13.53 506 10.82 297 6.35
    高校 1,820 18.99 1,319 13.76 1,253 13.08
    センター 1,210 20.39 1,514 25.51 926 15.60
    その他 2,264 14.36 2,005 12.72 1,959 12.42
    合計 5,927 16.48 5,344 14.86 4,435 12.33
    ※出典:
    General Department of Vocational Training, 2009.


  4. 管理組織
     省庁、地方、産業、職業訓練施設の管理スタッフ数も増員したが管理能力はまだ低い。管理スタッフを対象とした短期補習研修プログラムは存在するものの内容は限定されており、イギリスの管理スタッフ向け研修プログラムが試験的に実施されている。

    表3‐5 管理スタッフの資格(2000~2008年)
    職業訓練管理スタッフ 2000 2005 2008
     合  計 148 173 233
     資  格      
     博  士 0 0 0
     修  士 1 5 9
     大  学 106 136 199
     短期大学 27 20 15
     その他 13 13 10
    出典:
    General Department of Vocational Training, 2009.


  5. 研修プログラム、カリキュラム
     多くの研修プログラムは実際の生産現場の要求に見合うよう改善された。2009年までに108もの短大及び高等レベルの職業訓練カリキュラムの枠組みが作成された。研修プログラムやカリキュラム内容は改訂、更新されたものの、実際の市場の要求を十分満たしていない点が課題となっている。

  6. インフラと設備
     過去10年間で職業訓練学校100校と職業訓練センター290カ所を含めた多くの職業訓練施設のインフラと設備は、国家目標プログラムやODA資金のプロジェクトにより強化された。いくつかの主要職業の研修においては実際の生産設備に関連する最新設備を備える。ただし、省によっては新設された職業訓練学校、及びセンターにおける研修や学習の設備が粗末である。職業訓練施設全体の20~25%のみが適切なレベルの設備投資を受けることができ、その他の施設には基礎実習用の設備が設置されているだけである。

3.8 公共職業能力開発実施機関

3.8.1 目的、組織、施設など

 2008年末には全国で計1,268校もの公立職業訓練施設が設立された。そのうち職業訓練短大が70校、職業訓練高校が171校、職業訓練センターが434カ所、そのほかにも職業訓練を提供している施設が590カ所ある。
 ほとんどの公立職業訓練学校は規模が小さく、入学定員数が限られている。実際の収容数は収容定員数より17%多い。

  • 収容定員数が年間1,500人以上の公立職業訓練学校は全体の6%のみである。
  • 収容定員数が年間300人未満の公立職業訓練学校は全体の約15%である。
  • 公立職業訓練学校の約50%までは年間収容定員数が300~500人である。

【設備と施設】
 近年、多くの公立職業訓練学校は国際・国内プロジェクトにより設備が装備された。しかし一般的には実技練習や実習のための設備や施設は不足しており、その質も良くない。現在の職業訓練学校に設置されている施設や設備のうち、今日の生産プロセスや技術に適していると見なされているのは全体の35%にとどまる。反対に9%以上は今日の開発に追いつけていない旧式のものばかりである。

3.9 民間企業が行う職業訓練への支援体制

 職業訓練の資源の多様性に関する指針は最初の成果となった。多くの組織や企業、個人が職業訓練機関の設立に投資を行った。結果、非国営部門の投資は2008年には40%も増加した。民間の職業訓練機関は2008年には34.1%を占め、そのうちの24.5%は職業訓練学校やセンターである。社会政治的機関の会員への職業訓練コース受講の奨励と促進に関する関与は強い。
 ここ数年間で、国は民間職業訓練機関に対し、研修カリキュラムや必要不可欠な設備、指導員の面での支援を行った。結果、民間職業訓練機関の職業訓練能力が大幅に改善した。
 企業も実習生の受入、研修設備の提供、研修生に対しての奨学金の提供等の点より職業訓練の支援を実施している。さらに企業は職業訓練学校と協力し、取引や職業のリスト作成、研修カリキュラムの企画、経験豊富な専門家を派遣し研修生に対し実技指導等を行っている。しかし全般的には民間企業を含む企業と職業訓練機関の間の協力は少ない。企業は職業訓練に対する企業としての責任を十分に理解しておらず、また逆にこの問題に関して企業に対する法的規制もない。
 以上のように、教育開発戦略の職業訓練に関する主要な内容や目標を革新、達成し、この時期の社会経済的発展による技術労働力の緊急的な需要に応えた。しかし国内外の情勢を受け、職業訓練は次期には厳しい問題に直面するであろう。国際的経済統合の流れの中で産業化や近代化に貢献するには、2011~2020年の間に職業訓練システム全体の質の進展を遂げるためにすべての資源を集中させ、特に高い競争力や有利性を持つ職業や伝統的な職業を中心に、合理的な研修構造を確立しなくてはならない。農業部門や農村部での職業訓練に重点的に取り組み、農業部門での労働改革の促進や労働の質向上に貢献するべきである。


参考文献

  1. General Department of Vocational Training. Annual report, 2007, 2008 and 2009.
  2. General Department of Vocational Training. Information on the market of
    vocationally trained labor 2005, 2006, 2008 and 2009.
  3. General Statistical Office. Statistical yearbook, 2007.
  4. Ministry of Labor, Invalids and Social Affairs. Labor market information bulletin, 2009.
  5. Ministry of Labor, Invalids and Social Affairs. Manual of labor market information statistics in Vietnam. Hanoi: Labor - Social Publishing House, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007, 2008 and 2009.
  6. Ministry of Labor, Invalids and Social Affairs. National targeted program on employment in period 2006-2010. Hanoi, 2008
  7. Ministry of Labor, Invalids and Social Affairs. Sixth draft national strategy on vocational training development by 2020. September 2009.
  8. Labor Code of Socialist Republic of Vietnam 2002.
  9. Law on Vocational Training 2006.

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