各国・地域情報

タイ

<次の記事へ

作成年月日:2019年11月

海外情報プラス

タイ国情報 2019年10月

1.働くためのビザ取得後の出入国管理局の立ち入り検査ついて

2.タイの物流の効率化、ハードとソフト

3.タイのデジタルの進展と公開講座のテーマについて

4.(質疑応答1)採用後の職種変更は可能か

5.(質疑応答2)休日出勤の時間外勤務について

6.(質疑応答3)最低陳儀の動きは、その後どのようになっていますか?



1.働くためのビザ取得後の出入国管理局の立ち入り検査ついて

タイで労働をするために入国するにはビジネスビザが必要で、このビザを取得するために日本のタイ王国大使館や大阪の領事館に出向く必要があります。この点はタイで会社を持つ多くの企業の社員はよく承知のことでしょう。詳細は、タイ王国大使館や領事館の広報でも容易に情報が入手できます。(http://www.thaiconsulate.jp/visa-top/)

 

今回は、ビジネスビザを取得後にも、抜き打ちで出入国管理局の係官が、勤務先を訪問し、実際に申告した内容と現場調査で間違いがないか、確認する立ち入り検査があることを紹介します。

 

この抜き打ちの現場調査はあまり知られていません。弊社が立ち入り検査を受けた事例です。

 

それは10月の中旬で、すでにビザの更新も無事終わって、来年まで問題が無いと、安心していた日に、突然、管理局の係官から日本人責任者の携帯電話に「明日、午後に会社を訪問するので、事務所にいるか、どうか」の確認の問い合わせでした。

 

突然のことで、タイ人スタッフに電話を代わってもらい、実情を伺うと、日程などの変更はできず、代表者やスタッフが業務上外出中ならそれはそれでよい、日時は変更できない、という態度であった。

 

当方も、ビザが無いとタイでの仕事に支障があることは十分承知で、タイ人スタッフに明日の出入国管理局の来訪を伝えたのである。担当ごとに、従来と同じ業務をすること、明日に備えて質問に答えられる書類だけは準備することにした。

 

当日は、予定の時間に来訪。ビザ更新時の書類をすべて確認された。スタッフにも名前と業務内容を質問され、申請書類と相違が無いか、確認をされた。

 

最後に、スタッフの写真撮影があった。係官からも現地調査を行なったという書面に、代表者がサインをして終了した。特別に金銭を要求されることもなく、通常の体制をそのままお見せして終わったのである。

 

ちなみに、今まで10数年間、業務を継続する中で、官公庁の立ち入り検査を受けたのは、労働省から就労ビザの申請後にあったことと、税務署も数年前に立ち入り検査があった。当時、係官は準備する時間も与えてくれなかった。労働省および税務署は予告なしの立ち入りで、あいにく代表者が出張をしており、係官の滞在中に戻ることができず、タイ人スタッフだけで対応をした。今回も、無駄な取り繕いをせず、ありのままで検査を受けることにしたのである。



(写真は、イミグレーション(出入国管理局)の受付カウンター)

 

2.タイの物流の高率化、ハードとソフト

今月は、運輸省の運輸計画局OTP、バンコク港公社を訪問する機会があり、タイの物流効率化への取り組みの方針と、港湾設備の改修計画について概要を紹介する。 タイランド4.0に合わせて、物流も20年計画を5か年ごとに区切っての計画がある。

 

2017年から2021年の計画では、タイ全体の物流コストを10年前の17.1%から現状の13.9%をさらに12%まで引き下げたいという。まず、計画の目標としては3点。タイの国際競争力を強化するために、1) 物流面で世界水準の物流機能を持つこと、2) 国際的な物流業者を育成すること、3) 高い水準の人材を育成することである。

 

タイの物流効率化は電子化、機械化、ロボットの導入など、高騰する人件費の削減が大きな背景にあると推察される。 主な対策は、1) サプライチェーンへの対策、2) 物流インフラへの投資、3) 物流を支える機能の高度化、である。サプライチェーンについてeコマースなどへの変換なども想定をしている。陸上運輸の比重が大きいタイの物流業界では、道路の整備が重要であるが、従来の幹線の整備だけではなく、幹線から接続する主要な都市とその周辺への接続を重視している。陸上交通から鉄道へのシフトは難しい。タイ国鉄(SRT)もバンコク周辺は、複線化、また幹線の高速化を図る投資を行っているが、時間がかかる。

 

2019年に就任した運輸大臣は、トラックや公共交通機関にGPSの設置を義務付ける、という構想を発表した。現在、陸運局に登録されている乗用車は次の通り。7人乗りまでの車、9,868,532台(31.4%、うち個人所有は6,748,316台) 7人乗り以上は422,143台(1.3%)、二輪車は21,130,663台(67.2%)で、合計31,421,338台(100%)である。実証実験によるとGPSを設置した車は、スピード違反の減少、運転手の労働時間が減少したといわれる。それだけで交通事故の減少や、運輸の効率化が図れるのか、という反対意見もあるが、少なくとも公共の交通機関はGPS設置が義務付けられる可能性はある。

 

バンコク(クロントイ)港の改修計画も、今は内部の計画をタイ政府の承認を得る前の段階で、非公式を承知で説明を受けた。チャオプラヤ川河口には、タイ港湾公社(PAT)の持つ港以外にも民間の港湾施設がある。

 

しかし、コンテナおよびバラ積の施設を持つ港ではPATが最大で、民間の港湾施設は脅威ではない。現在の取扱数量200万TEUを300万TEUまで拡大したい、という。それには、港湾機器の投資が欠かせない。タイの主要港で、バンコク港は消費地に近く、寄港したいという需要は高いものがあるが、設備と人材の確保はまだまだ課題があると見える。


  
(写真は、運輸省運輸計画局OTP)


3.タイのデジタル化の進展と公開講座のテーマについて

タイのデジタル化がどの程度進んでいるか、数値で紹介しましょう。

まず、世界でインターネットに接する人口が2014年の30億人が2018年には43億人に拡大している。世界の総人口43億9千万人で人口増加率は9%しかないが、ネットに接続できる人口は2018年から2019年に56.1%も増加した。タイでは毎日、毎時間どれだけのデータが行き来しているのか、10/28のバンコクポストで紹介をしている。

 

簡単に紹介すると上位5位までデータの流通(毎秒GB)多いのは次の通り。1) e-mail、188百万、2) textデータ、18百万、3) Youtubeビデオ、4.5百万、4) Goodle検索、4.49百万、5) 米国人4.41百万となる。これに次いで多いのがTinder,1.4百万などがある。言い換えると、ネット社会で経済が動いていると言えます。

 

具体例を挙げて補足します。

1) タイの主要道路には監視カメラが設置されており、E-Policeとでもいえるように交通安全や治安に監視カメラは欠かせません。各カメラが集約されて、渋滞情報だけではなく、交通事故や違反の摘発にも活用できる時代です。

2) ビジネス社会でも同様です。商務省が物流効率で優秀な企業を表彰する制度でELMA賞があります。Excellent Logistics Award (ELMA)賞を設けてタイの物流業界が能力向上、競争力強化のため能力向上、経営力向上を図ることを推奨しています。

 

ELMAは物流業界の各分野からの応募者から経営の標準を設けて、国内はもとより国際的な競争力も加味して様々な観点から評価をされた企業が表彰される。2019年のELMA受賞者は次の3社です。

@倉庫サービス部門 JPK Cold Storage社

A国際貨物取扱業者(フォワーダー)部門 LEO Global Logistics PLC(上場会社)

Bカスタムブローカー部門 Thai Somdejサービス会社

 

上記の3社を総括すると、物流業界にはIT,IOT,AIの採用によって各社の従業員の効率的な勤務に貢献し、経営効率も向上をしている。まさしくデジタル時代になった次第です。

今年度のOVTA公開講座は、このデジタル時代にできた2つの法律(個人情報保護法とサイバーセキュリテイ法)を取り上げて、専門の弁護士から企業の取り組み方を解説いただきますが、現実の社会がデジタルで動いている部分もあることが背景です。

 

  

 (写真は、10/28のバンコクポスト紙)

 

4.(質疑応答1)採用後の職種変更は可能か

(質問)

S社は、外注先を通じてタイ語-日本語の通訳の派遣受け入れをした。

S社は、通訳者に対して、業務と関係するという名目で、タイ語の指示書を日本語に翻訳するように命じた。通訳者から外注先に対して、「通訳という業務以外の翻訳業務であり、指定された日時以外に当初の契約内容とは異なる労働を要請されている。

指定された時間以外に、翻訳作業もするのであれば、当初通訳としての勤務する日時以外に時間を要するので、追加の手当てが支払われるべきではないか」、と相談があった。これは、労働法上、職種の変更に当たるのか、同じ通訳者としての給与の範囲で、翻訳作業をさせても良いのか? あるいは、指定された翻訳業務とは別に、新しく業務を命じられたため、その作業に応じた手当を支給すべきではないか、との相談があった。さて、どう対応すればよいのでしょうか?

 

(回答)

まず、職種の変更については、労働者の同意があれば可能です。

次に、指定された日時の通訳業務以外に、新しく指示された業務を遂行するので、それに要した時間の手当ては請求する権利はあります。そこで、当初の通訳としての賃金、手当てと同額または類似の業務をする場合の手当てを参考に支給されるように、外注先を通じて依頼先のS社に相談しては如何でしょうか。

 
5.(質疑応答2)休日出勤の時間外勤務について

(質問)

S社では、年末の業務が多忙につき、日曜にも勤務をさせることになった。また、平日と同様に定時である8.00-17.00(12.00-13.00は休憩)に加えて、17.00-17.30の休憩の後、17.30-19.30まで残業を指示した。この場合、日曜出勤の賃金や、日曜日の残業代は、どのように支払えばよいのでしょうか?

 

(回答)

労働者保護法では次のように定められています。労働者保護法29条では、1週間に1日の休日を与えることが基本です。もし、定められた休日の代休をあたえることができない場合は、休日労働手当を支払うべきとあります。

今回の場合は、年末で業務多忙につき、代休が与えられない場合と、想定すると、日曜日の勤務は休日労働手当を支払うべきです。労働者保護法62条では、労働日の時間当たり賃金の1倍以上の賃金を支払え、とあります。

また、上記の日曜日に残業をさせる場合は、労働者保護法の61条にある、時間外手当として、賃金の1.5倍の賃金を支払うことが求められます。時間単価で計算すると、3倍の賃金を支払うことになります。

代替案として、日曜勤務の代休を12月に取れない場合、1月早々の年初に代休を与えることが可能であれば、通常勤務と同じ、賃金の支払いで良いわけです。いずれにしても、日常の労使関係が良好で、会社の事情など労働者が理解をしておれば、勤務時間の変更などは事前に協議をできると思われます。

 

6.(質疑応答3)最低賃金の動きは、その後どのようになっていますか?

(質問)

2019年3月にあった総選挙でも、主な政党は最低賃金の引き上げに言及し、政権政党でも1日400バーツ(約1,200円)を標榜していました。その後、新しい政権が動き出して、最低賃金はどのような動きをしているのか、お教えください。

 

(回答)

総選挙直後にも、最低賃金を決める中央賃金委員会(委員長;労働省事務次官)の開催があるのか、懸念をしていました。

最近の報道によると、チャトウモンコン労働大臣は2020年2月以降に何らかの発表がある、と説明をしています。賃金を引き上げるプレス面とマイナス面など経済の状況をよく見定めて決める必要がある。

77県の賃金委員会に問い合わせたところ46県の委員会は引き上げる必要はない、という回答があった旨、説明をされている。

一方、プラユット首相の国連での演説では2036年にはタイは経済成長も成し遂げて豊かな国にすると言われています。

このためには技術革新とともに国民の生活レベルの引き上げも含むと推測されます。現状、年末までの引き上げは無いとしても、2020年の2月以降に何らかの動きがあると、見ておくべきでしょう。

 

以 上


<次の記事へ