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タイ

作成年月日:2019年10月

海外情報プラス

タイ国情報 2019年9月

1.タイで働くためのビザおよび住居変更に伴う届けについて

2.タイの介護、医療業界について

3.タイの外国事業法と製造業、エンジニアリング事業について

4.中小企業が次なる海外展開を備えるには

5. OVTA公開講座、準備と今年のテーマについて

6.(質疑応答)最低賃金改定の行方



1.タイで働くためのビザおよび住居変更に伴う届けについて

先月の居住地通知表TM30の続報を紹介する。

外国人が企業に勤務する場合に必要な書類として、ビザと労働許可(work permit;WP)が必要である。BOI企業はBOIのワンストップサービスセンターで、ビザと就労許可が同時に更新できる。

一般企業の場合は最寄りの移民局か、バンコク都内の場合はチェーンワタナニある出入国管理局(イミグレーション)で手続きをする。

今年になって、古い法律が生き返った問題が各地で報告をされてきた。具体的には、TM30の問題である。

TM30はアパートや貸家のオーナーに義務付けられた規則で、外国人が入居している家屋のオーナーは外国人入居者が入居して24時間以内に、また、外国人が同じ県から他県、外国に旅行をした場合に、オーナーが関係官庁に届け出をする義務がある。また、同じ家屋に戻った場合も、同様の届けを出入国管理局または最寄りの警察に届ける、というもの。違反すれば、オーナーは800バーツから2,000バーツの罰金が科せられる、とまで説明をした。

これに対して、外国人商工会議所連合会(JFCCT)をはじめ各国のビジネスマンからもタイが観光立国、外資誘致に熱心であるというのであれば、古いルールを見直してはどうか、という要求が各地で出されてきた。その後の、動きを紹介する。

9月17日にコープサック首相府政策副秘書官が、外国人の入国カード(TM6)と居住地通知表(TM30)の廃止を「エリートマガジン」発刊5周年記念式典で言及した。ルールそのものを廃止はしないが、紙の文書は廃止、QRコードまたはモバイルアプリで報告できるようになる。出入国管理局に出頭せずに、自分の住まい、事務所から簡単に報告できるシステムを導入する、という。TM6は2017年からタイ人には廃止となっていたが、外国人にはいまだ適用されていた。詳細は2-3か月後になるが、当面の罰金の徴収などは止めるというもの。

なお、筆者のビジネスビザの手続きについては、必要な書類は前年と変わらないが、出入国管理局での作業効率が高まったのか、当日の朝7時30分に局の入り口で順番表をもらうと、昼前には、有効期間内であれば、再入国ができるリエントリービザまで取得できた。簡単なことであるが、出入国管理局のトップの人事交代も影響があるのかもしれない。



(写真は、イミグレーション(移民局)に掲示されている告示)

 

2.タイの介護、医療業界について

政府は、商務省が価格・料金を管理する商品・サービスに、医療関連の薬品、医療機器、医療サービスを加えることを2019年1月に閣議が了解。これにより、今後、これらの医療関連の商品・サービスは価格・料金の変更にあたり、同省所管の中央価格委員会の許可を得なければならない。

医療関連の商品・サービスの価格・料金は、原価だけで決められない要因があることから、事前に検討する機関として、商務省、保健省、国民の代表、官民の病院代表が委員となる小委員会を開設することになった。

その後の報告を兼ねて紹介すると、医薬品の市中価格の最大10倍近い価格で提供する病院から、1.5倍程度で提供する病院など、大きく3グループに分かれる。

また、タイが高齢化社会に向かう中で異業種から病院経営に参画する企業もある。1月の報道ではWind Energy Holding社首脳が、この程、高齢者向けの病院およびヘルス・サービスを展開する方針を明らかにした。新会社は、KPN Healthcare Plc. Co. Ltd.とされている。新会社は、バンコク都内カセット・ナワミン通りに病院を設置する予定だ。新病院は、ベッド数が、350床という高級病院になるとされる。病院建設には、40億〜50億バーツが投入されるとしている。最近の日本の厚生労働省の発表では424の公立病院の効率の悪い病院を公表し、整理統合を促進しようとしている。

タイでも同様で、民間の参入がある一方で、古い病院は廃院するか、介護施設など、事業内容を変更しようとするものもある。

 

言い換えると、医薬品などを市中価格からよほど離れた価格で販売する病院には治療内容、薬剤の公表を迫るが、実際の経営そのものは指図をしない、というのが現状である。とはいっても、民間の病院経営では、チェーン化、グループ化が進み、単独では生き残るのは難しいのがタイの医療ビジネスである。

そのような現状を理解して、日本をはじめ海外から参入するチャンスとして9月中旬にメデイカルフェアがあった。

日本からも多くの出展があったが、タイの現状をどれだけ理解されているのか、個別に訪問して尋ねると、まだまだ日本のように厚い保護政策で守られてきた日本の医療業界の延長でマーケテイングを考えている企業もあった。

この点は、どの業界でも参入するには事前の市場調査が必要であろう。


  
(写真は、9月11-13日にBITECで開催されたメデイカルフェアの様子)


3.タイの外国事業法と製造業、エンジニアリング業について

タイで日系企業を含む外国企業が会社を設立する場合に、留意すべき法律が3つある。まずは、出入国管理法(ビザなど)と外国人労働法(労働許可証など)および外国人事業法である。世界のビジネスのルールを決めるWTOにタイが加入する以前からあった法律であるが、外国人が過半を出資する外国人企業によるタイでの事業経営を禁止する業種が定まっている。

規制される業種は大きく3つに分かれ、リスト1は、特別な事情により外国人が事業経営をできないビジネス。リスト2は、国家安全保障上の事情、芸術文化、伝統文化に関する事業、天然資源と環境に影響を与える事業で、外国企業は内閣の承認を受けた場合にのみ、これらの事業が実施できる。リスト3は、タイ人が外国人と競争する準備がまだ整っていない事業で、外国企業は外国人事業委員会(商業省に設置)の許可を得ればできる事業である。

9月26日の記者会見でプンポーン商業省事業開発局副局長は、外国人事業法の規制業種から4業種を削除する、方針を説明した。

リスト3にある規制業種の中で、@通信サービス、Aトレジャリー・センター、B航空機メンテナンス、Cソフトウエア開発の4業種である。ただし、@については、独自のネットワークを持たない、バーチャルネットワーク・オペレーターのみ、Aについては、高付加価値ソフトウエア開発のみ規制業種から外すという。

この背景には、プレユット政権が決定した、生産拠点移転の投資誘致策の「タイランド・プラス」に盛り込まれている。4業種の外国企業への開放は、海外からの投資を呼び込むには役立つと期待されている。

さて、タイの製造業でタイ政府投資委員会BOIの恩典で、100%外資で設立したT会社がある。ところが、BOIの恩典を維持するためには、いくつかの条件を満たす必要があるが、T社は条件を満たせず、年内にBOIの恩典が外れる。そのため、100%外資で設立したが、50%余りをタイのパートナーを探す必要がある。エンジニアリングのS社は、BOI恩典を取得した際に、100%外資での設立も可能であったが、タイでの市場拡大をするにはタイのパートナーが必要であると考えて、日系企業の比率は高いが、タイ企業にも主要株式を取得してもらい、役員にもタイ人が入る。

今の時点では、BOIの恩典が外れる恐れはないが、万一、その場合でも、タイの企業に主導権を譲渡できるという。外資100%で、意思決定が速いのか、JVであるがために、意思決定が遅いのかは、どうも日系企業に課題があるようである。このあたりの意思決定のスピードを速める方法はあるのであろうか?

 

  

 (写真は、タイと日本のJVで設立されたエンジニアリング会社)

 

4.中小企業が次なる海外展開に備えるには

最近、「日系企業のタイ進出の速度は落ちてきたのであろうか?」との質問を受けることが多い。9/30にも中小企業専門の金融機関のSバンコク事務所長と意見交換をした。所長は、タイだけではなくアセアン一円を所管するため、特に最近はベトナム出張が多いという。このベトナムと比較すると、日系企業、中でも中小企業のベトナムへの関心は高い。

では、タイ政府投資委員会のタイへの投資がどうなのか、数値を拾ってみた。2019年1-6月のBOIが発表した投資額は、前年同期比2.1倍の1,400億バーツ(約5,100億円)で日本が同期比2.1倍の424億バーツ、中国が5.1倍の242億バーツである。

これは米中経済紛争で、リスク分散を図る意味で、中国から生産移管をタイに持ってきたリコーのような大型投資も含む。ベトナムの数値がつかめていないが、上記のS所長の説明では、ベトナムへの日系企業の投資も多い。

たまたま、日本能率協会(JMA)が10/2-3に開催したメンテナンス展でも、半数近い出展者を中国企業が占めた、と公表されている。このように、タイのビジネスでも、中国企業との付き合いを日系企業がどれだけ意識するのか、が課題になった。

類似の展示会で、中国企業はタイ語、英語に加えて日本語を話せるスタッフを用意していることがあるが、日系企業で中国語を話せるスタッフを用意されている事例は少ない。

今後の中小企業が海外で展開する場合、人口の多い中国市場、インド市場をどう攻めるかを考える際に、アセアンでも中国企業が進出する中で、従来のタイ語、ベトナム語、インドネシア語などローカルの言語とともに、中国語(場合によれば、北京語、福健語など)も話せる要員を準備する時代になった、のではないか。

 

  

(写真は、日系だけではなく中国企業も多数出展しているメンテナンス展示会)


5.OVTA公開講座、準備と今年のテーマについて

今年のOVTA公開講座は、304工業団地と共催で11/22に開催する予定になった。内容はデジタル時代の経営と人事戦略である。

最初に2019年5月に公布された2つのIT関連の法律と企業経営の課題について学ぶ。具体的には、個人情報保護法(Personal Data Protection Act;PDPA)とサイバーセキュリテイ法である。タイランド4.0時代に、農業、建設業、製造業、運輸業、サービス業など各産業でIT技術、AI ,IOTの活用が叫ばれている。その中で、情報管理は関係する部門だけではなく採用から退職まで、個人情報や顧客情報に接することが安易に考えられていたが、個人情報は保護される財産であるという意識が低い中で、どう高めるのかを考える機会でもある。インターネット時代に政府機関といえども、サイバー攻撃にさらされるが、それにより企業や個人の情報が数十万、数百万件というレベルで漏洩した事件もある。

同時に、採用から退職までの労働法で、今まで経験された事例を中心に学ぶことになった。今回は、IT時代、デジタル時代の中で、秘密保護法や著作権法など、今まで知的所有権の保護、著作権の保護などが重要になった。人やモノに付属している無形の財産を企業として一定のルールで維持、管理をするルール作りと、その中での違反を出さない労務管理などの見直しが必要な場合もある。企業が考える技術革新を求めながら、採用や教育時に企業のルール作りが遅れている分野があるのではないか、マニュアルも絶えず時代とともに見直す必要がある。

例えば、仕事中の離籍時にも、自分が使用するPCの画面が他のスタッフに見えないように管理することも重要だと教育することも課題となる。

今回は、タイの産業構造が大きく変わる中で、経営者としてどう人材を採用し、育成し、もしルール違反があれば、どのような手順で退職してもらうのか、など考える機会となる見込みである。 (写真は、304工業団地の入り口)

 

  

(写真は、304工業団地の入り口)

5.(質疑応答)最低賃金改定の行方

(質問)

2019年3月にあった総選挙でも、主な政党は最低賃金の引き上げに言及し、政権政党でも1日400バーツ(約1,200円)を標榜していました。その後、新しい政権が動き出して、最低賃金はどのような動きをしているのか、お教えください。


(回答)

総選挙直後にも、最低賃金を決める中央賃金委員会(委員長;労働省事務次官)の開催があるのか、懸念をしていました。最近の報道によると、チャトウモンコン労働大臣は2020年2月以降に何らかの発表がある、と説明をしています。

賃金を引き上げるプラス面とマイナス面など経済の状況をよく見定めて決める必要がある。77県の賃金委員会に問い合わせたところ46県の委員会は引き上げる必要はないという回答があった旨、説明をされている。

一方、プラユット首相の国連での演説では2036年にはタイは経済成長も成し遂げて豊かな国にすると言われています。このためには技術革新とともに国民の生活レベルの引き上げも含むと推測されます。

現状、年末までの引き上げは無いとしても、2020年の2月以降に何らかの動きがあると、見ておくべきでしょう。


  

(写真は、労働省の建物)

 

以 上