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作成年月日:2019年9月

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タイ国情報 2019年8月

1.デジタル時代の新しい法律と企業の対応

2.日系企業の2019年上期の景気とタイ政府の景気刺激策の効果

3.日系企業の賃金事情(JCC賃金調査の概要)

4.タイ国の医療事情

5.タイ国で働くためのビザと労働許可(ビザ更新の事例から)



1.デジタル時代の新しい法律と企業の対応

タイはデジタル化が遅れていると懸念されているが、実は意外と進んでいる。8月28日から30日まで開催された商務省など主催の物流展TILOG-LOGISTIX 2019の中で、物流面で経営が優秀な企業(ELMA)が3社表彰を受けた。背景を見ると各社とも顧客へのサービス向上、社員の作業の効率化でITを駆使している。例えば、Thai Somdej Service 社、社長 Mr.Visarn Chansateである。同社はカスタムブローカー業界では1970年から49年も事業を継続する業界の先達者の1社である。同社も2018年にもELMA賞を受賞しているが、再度、挑戦した。同社では新しくTrack & Traceというアプリケーション・ソフトを開発して、即時に作業の過程が見える仕組みをとった。このアプリで従業員はより効率的、スピーデイに働け、カスタムクリアランスと配送が効率的に進むという効果を生み出している。
さて、新しい法律とは「個人情報保護法」である。2020年5月28日に発効する。目的は、個人情報の所有者の権利と保護を目的としている。
企業としては、次の5点にとる組む必要がある。@データ保護責任者の任命、A必要な個人情報の見極めと管理方法の見直し、B個人情報を収集、利用する場合の同意の取得、C個人情報所有者の権利の理解、D個人情報漏洩時の対応策の準備、である。罰金は1件につき500万バーツ以下。
これ以外にも2019年5月に施行されたサイバーセキュリテイ法にも次の課題がある。@重要情報の取り扱い及び使用者の管理、A1年に1回以上の専門家による監査、など。監査内容はISO27000に準拠して、リスク・IT事故管理、対策が求められている。



(写真は、商業省から優秀な物流業者として表彰されたThai Somdej Service 社)

 

2.日系企業の2019年上期の景気とタイ政府の景気刺激策の効果

8月6日にバンコク日本人商工会議所(JCC)が発表した標記結果は、概要以下の通りです。 JCC 会員企業を対象に年2回、景況や財務状況(売上、損益、設備投資)、時々の関心事項などについて実施。1971 年以来 49 年続いている調査で、タイで事業を展開する日系企業の動向を包括的に把握することのできる唯一の調査です。

 

・調査期間(調査票発送日:2019年5月13日 提出期限:2019年6月7日)

・回答企業数:560社(発送数:JCC 会員企業1,760社 回収率:31.8%)

・業況感DIは、2018年下期が18、2019年上期が▲8、2019年下期(見通し)が6となった。

 

2019 年上期はバーツ高や中国経済の減速、米中貿易摩擦による悪影響といった主に海外要因 によ り、DI がマイナスに落ち込んだ。2019 年下期にかけては、引き続き米中貿易摩擦による悪影響 が残ることから、DI はプラスになるものの、小幅な増加にとどまる見通しとなった。

 

一方、タイ政府もこのような景気低迷感から、景気刺激策を発表した。

タイ政府は8月20日に景気回復を狙いとして3,160億バーツの予算を投入すると決めた。 内容は3つの施策からなる。1つは低所得者の生計を支援すること。2つは干ばつ対策。3つ目は景気減速への対応からなる。

 

第1は、福祉カードを持つ低所得者に現在の支給額から月500バーツを増額。福祉カードを持つものの中で高齢者にはさらに500バーツを追加する。子供のいる家計には月300バーツを上乗せする。同時に、農民など借金に苦しむ者には農業協同組合貯蓄銀行(BAAC)から村単位で借りている資金の支払いの延期を求めるというもの。これにより、村落基金から借りている農民の返済が猶予される。

 

第2は、干ばつで苦しむ小規模の農民を支援するもの。干ばつ地と認定された地域の農民でBAACから借り入れている農民の借入金利を引き下げる。干ばつ地域のBAAC利用者はさらに利用範囲を拡大できる。BAACの借り入れをする農民で、干ばつ地域の利用者は特別借り入れ制度を設ける。2019-2020年の作物を生産する農民には1ライ当たり500バーツの生産コストの補助金を支給するという。

 

第3は、経済回復策である。観光振興としては、1,000万人を対象として、自分が住む県から出て国内旅行をする場合1人当たり1,000バーツの補助金が支給(政府の予算として190-200億バーツ負担)。また、旅行中の買い物の15%、最大3万バーツまでは割引をする。民間企業向けには投資に係る総額の1.5倍まで税額控除を認める。SMEに対しては、SME振興基金として100億円を積み増しする。タイ信用保証協会にさらに補償額を増額。政府系銀行(クルンタイ銀行とタイ貯蓄銀行)の信用保証額として1,000億バーツを上乗せ。住宅購入者には、タイ貯蓄銀行と政府住宅銀行は520億バーツの住宅購入の貸し付けの枠を拡大する。

 

また、8月27日にJCC自動車部会を開催し、上期の自動車販売状況、下期の見通しについての説明もあった。

 

タイ政府の景気刺激先が効果を発するには時間がかかると思われる。同時に、タイの経済団体(タイ工業連盟、タイ商工会議所、タイ銀行協会)はタイバーツが周辺国に比べて突出して対ドル、対中国通貨に対してバーツ高であることから、中央銀行に市中金利の引き下げをさらにすべきだという、声もでている。


 
(写真は、8月27日の自動車部会の様子)


3.日系企業の賃金事情(JCC賃金調査の概要)

8月30日にバンコク日本人商工会議所(JCC)は労務委員会主催の賃金説明会を開いた。

本調査は開始以来、在タイ日系企業における賃金・労務事情に関する貴重なデータとして、会員企業に幅広く活用されています。本年度は、3年の諸手当・福利 厚生に関する設問も加あった。昨年度から今年度の在タイ日系企業の賃金・賞与の動向等が把握でき、給与改定の際にもご参考になる。本年度は、会員企業649社(回収率36.9%)から協力があった。

内訳は、製造業328社、非製造業321社である。製造業は201-500人規模が多く、非製造業は1-20人が多い。JCC全体の1772社の従業員総数は約90万人強と推計。タイの労働者3,800万人(100%)の内、農業(32%)や屋台、タクシー運転手など(23%)インフォーマルワーカー2,100万人(55%)と民間雇用1,500万人。公務員350万人からすれば、民間雇用の相当数が日系企業に勤務していることになる。タイでの女性の活躍を国際比較すると幹部、管理職の割合が高いフィリピン(48.9)からすればアメリカ(43.8%)、シンガポール(35.2%)の順でタイは32.4%であり、マレーシア(20.4%)日本(12.9%)韓国(9.7%)と比べると高い。

製造業で、外国人雇用をする割合は、CLMVの国政の外国人を使用する製造業は2.7%(中央値37人)、非製造業では4.8%(同1人)ある。CLMV以外の国籍の外国人を使用する割合は、製造業で11.6%(同1人)、非製造業で14.4%(同3人)となっている。現地採用をする外国人は製造業では48.6%、非製造業では42.9%で、タイでは外国人雇用を抜きには企業が回らないと推察できる。障がい者雇用に関しては、製造業の全体で、対象となる企業の割合は82.6%であるが、障がい者を雇用する比率は43.1%、納付金を支払っているのが44.0%、原義供与をするのが12.9%である。非製造業では、従業員規模100人以上が対象となるため、全体の30.3%で、納付金を納める企業が64.3%、障がい者を雇用する企業が28.6%、便宜供与は7.1%であった。ちなみに、日本では障がい者雇用の比率は法定雇用率を達成した割合は45.9%で実雇用数を見ると2.05%である。

さて、賃金と賞与についてみておく。初任給は18年より19年度は少し上昇した。高卒ワーカーで基本給9,900バーツ、月給は11,300バーツ。マスター卒の技術者は基本給19,200バーツ、月給で22,000バーツとなっている。

初任給が毎年上昇しているのは。新人の争奪戦があると推察できる。

タイ政府の賃金統計を見ると、2018年の地域別平均賃金は、バンコク20,478バーツ、中央部13,679バーツ、北部11,363バーツ、東北部11,783バーツ、南部11,003バーツで、地域による格差が大きい。

JCCの企業では2019年の賃上げ率は、業種に依り異なる。製造業の輸送用機械で4.9%、非製造業の金融/商社がそれぞれ5.0%であった。賞与については、2018年の支給月数を聞くと、製造業で3.6ケ月。非製造業で2.5ケ月あった。これも業種別の格差が大きく、製造業の輸送用機械は5.4ケ月、非製造業の商社が3.0ケ月あった。

上記の説明のように、今年度は福利厚生関係の調査結果もあり、概要は会員企業は無料でネットで入手できるが、一般にはバンコクの主要な日本語の書籍を扱い店舗にて買い求めることができる(1冊1,000バーツ)。

 

  

(写真は、タイの中小企業の町工場の様子)

 

4.タイ国の医療事情

タイでは、医療用の大麻の使用を許可すべきであるとしたプームチャイタイ党の党首が副首相兼保健相の大臣になった。ネットの情報では、大麻には鎮痛作用、沈静作用、催眠作用、食欲増進作用、抗癌作用、眼圧の緩和、嘔吐の抑制などがあり、アメリカ合衆国では慢性痛患者の8.9%が自己治療で大麻を使用している。中国、インドでは古来から利用されていたが、20世紀には規制が厳しくなり、その後2016年より進められていた世界保健機関による審査は、大麻、大麻チンキ(抽出物)、THCやその化学的異性体について医療利用の科学的証拠を発見しており、国際法の規制見直しのため2019年に国連を通した投票が予定されている。このような世界の流れを読んで、タイの医療業界にも導入するという動きである。

 

医療業界では別の動きもある。病院で購入する医薬品の価格が市販されている同種の医薬品の数倍もするといわれている。そこで、商業省は価格監視システムにも病院の医薬品を入れて、監視すべきであると決定し、民間病院などに価格を商業省に報告するように命じた。しかし、一部の病院化からは、まだ報告がない。一般患者からすれば、治療費、薬代などオープンであれば、他の病院との比較などもできる。規制緩和の一方で報告と求めるという施策が商業省、保健省にはある。

 

さて、筆者は、毎年のWP更新時に最寄りの民間の病院にいきWP用の健康診断をした。簡単な身体測定、血圧、血液検査、および医師による問診がある。従来はBOI企業では、各社が健康診断をしている、という前提でWPの更新時に健康診断書の提示を省略していたが、2019年からはBOI企業でも、必要な書類として、提出が義務つけられた。民間病院からすれば、それを機会に健康診断を推奨するのであるが、たまたま健康診断コーナーに行くと、企業単位で受診をしているのである。民間病院間でも、健康診断は収益源とみられるのは、至れり尽くせりのサービスがある。受付からまるでホテルの受付のようで、各コーナーにはソファーを置き、水、お茶、ジュースが配置。自由に飲める。一通りのコースが終わると、朝食を取ってない受診者は食事券が渡され、終了後の精算が済めば、軽食を取って帰宅。受診の結果は、後日、会社宛の送られるという。

 

次に、1で述べているように、個人情報保護法が施行される来年からは、企業側としては、この診察結果を、会社が受けるということについても事前に本人の承諾を得て、病院にもその旨の通知をして、会社がすべての結果を受け取ることになる。筆者は、数時間の検査結果が出るまで、受付で待機して、結果をもらって帰宅したのである。

 

当社のタイ人従業員は、チュラロンコン大学病院に、定期的な検査を受けている。早朝6時過ぎに自宅を出て病院には7時過ぎに到着。順番待ちをして、いくつかの検査を済ませて、昼前に職場に戻っている。民間病院は各種検査料、受診料は高いが、時間的には短時間で完了。公立病院は、受診料は安いが、数の多い患者を診るため、長時間を要する。

 

歯科診療に詳しい、日系の歯科器材を製造販売するM社のK社長にタイの歯科治療は世界的な水準と比較してどうか、を尋ねた。一概には言えないが、日本とはそん色がない、とのことである。一部の民間歯科クリニックは、治療と言うよりも美容整形的な要素があり、先進国並み、とのことである。

 

救急医療は日本のように消防署が救急車を配置するのではなく、各病院が要請を受けて、各病院から救急車を配備させている。一般車両者も、救急の場合は、車幅を左右に寄せて、中央を救急車が走るケースもある。いずれも、利用者の負担が原則である。

  

(写真は、8/5のBangkok Post Forumで大麻治療の採用を説明するMr.Anitin副首相兼保健相)


5.タイ国で働くためのビザと労働許可(ビザ更新の事例から)

外国人が企業に勤務する場合に必要な書類として、ビザと労働許可(work permit;WP)が必要である。

 

新規にビザを取得するには、日本では東京のタイ大使館または大阪のタイ国領事館で申請して勤務のためのビザ申請となる。入国して、タイの会社に勤務を始める際に、そのビザのスタンプがついたパスポートと、会社が関係書類を持参してタイの労働省、または地方の労働事務所に行けば、労働許可証(Work Permit、WP)が取得できる。

 

タイ投資委員会(BOI)企業であれば、バンコクにあるワンストップサービスで、ビザ、WPの申請や更新も可能となる。毎年、このページでビザ更新の説明をしてきたが、今年は前年と比べて、手続き的には大きな違いは無い。

 

バンコクの会社の場合は、チェーンワタナニある官庁街にある大きなビルに移民局がある。警察の所管で、事前に用意した書類を審査して、結果を待つ。その日には許可が出ないが、指定された日に来るようにと指示が出る。その日に行けば、1年の延長許可書が出る。

 

ところが、ビザ更新で移民局や地方の労働事務所に行った外国人が、更新時にTM30(届け出書類)の手続きがされていないとして、罰金を支払、更新を拒否される事例がでた。報道では4月25日以降に厳格な運用が開始されたらしい。

 

7月31日のOVTA本部と今まで公開講座を共催した地方の工業団地との懇談会でコラート日本人会から出された意見や、8月21日のアマタ・チョンブリの日系企業会でも同様の問題提起があった。

 

内容としては、次の通り。

 

TM30はアパートや貸家のオーナーに義務付けられた規則で、外国人が入居している家屋のオーナーが、外国人入居者が入居して24時間以内に、また外国人が同じ県から他県、外国に旅行をした場合に、オーナーが関係官庁に届け出をする義務がある。また、同じ家屋に戻った場合も、同様の届けを移民局、または最寄りの警察に届ける、というもの。違反すれば、オーナーは800バーツから2,000バーツの罰金が科せられる。

 

ホテルに宿泊の場合は、宿泊者がパスポートの提示を求められて、ホテルが関係官庁に外国人宿泊者の届け出をしているのは理解しているが、アパート、貸家の場合も同様の届けが必要としている事例は大半の外国人は知らない。

 

バンコク日本人商工会議所JCCにも同様の問題が報告されてきた。対応を検討された結果、JCCのビザ・ワークパーミット委員会では、次のような姿勢で対応されている。 「法律そのものには一定の合理性があり国の出入国法令ということを考えると、あまり頭ごなしで反対するべき内容ではない」、という。「あくまで現行法令のもと、入国管理局と話し合いを行いスムーズな方法を見つけ出す」、という基本姿勢である。

 

これは単に日本人商工会議所だけの問題ではなく、外国人商工会議所連合会(JFCCT)でも議論されて、移民局に再考を促す文書も提出されている。(2019.8.21バンコク・ポスト紙)

 

同会頭のMr.Stanley Kangは「Simple and smart License project」でも主張するようにタイ経済への関心やタイでビジネスを容易にするにはTM30は撤廃すべきである、と主張をされている。今後の動きに注目したい。

 

  

(写真は、移民局の入り口)

 

以 上


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