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タイ

作成年月日:2019年8月

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タイ国情報 2019年7月

1.連立政権の発足から今後の行方

2.日本の人材不足と海外からの技能実習生受入れについて

3.タイ人スタッフの採用と育成について(事例)

4.日系企業の海外展開を担う人材、現場と管理部門の違い

5.タイの休日は仏教関連と王室関連が多い

6.(質疑応答)政権与党の政策と最低賃金



1.連立政権の発足から今後の行方

1)7月16日に国王の認証を受けた新しい内閣の閣僚は次の通り。(タイ経済7/11およびタイ政府広報局から参照)


(写真は、7/31長島編集長を囲む参加者)

 

【新内閣(全36人)】
首相  プラユット・チャンオーチャー大将
副首相 プラウィット・ウォンスワン大将 #
     ソムキット・チャトゥシーピタック #
     ウィサヌ・クルアガーム #
     ジュリン・ラックサナウィシット(民主)
     アヌティン・チャーンウィラクン(矜持)
総理府 テーワン・リプタパンロップ(開発)
外務  ドーン・プラマットウィナイ #
内務  アヌポン・パオチンダー大将 #
  副大臣 ニポン・ブンヤマニー(民主)
      ソンサック・トンシー(矜持)
国防  プラユット・チャンオーチャー大将 +
  副大臣 チャイチャーン・チャーンモンコン大将
法務  ソムサック・テープスティン(民国)
財務  ウタマ・サワナヨン(民国):
  副大臣 サンティ・プロムパット(民国)
工業  スリヤ・ジュンルンルアンキット(民国) :
商業  ジュリン・ラックサナウィシット( 民主)+
  副大臣 ウィラサック・ワンスパキットコーソン(矜持)
農業  チャルームチャイ・シーオーン(民主)
  副大臣 タマナット・プロムパオ(民国)
      マナンヤー・タイセート(矜持)
      プラパット・ポータストン(タイ国)
運輸  サックサヤーム・チッドチョーブ(矜持)
  副大臣 アーティラット・ラタナセート(民国)
      ターウォン・センニアム(民主)
エネルギー ソンティラット・ソンティヂラウォン(民国):
保健  アヌティン・チャーンウィラクン(矜持)+
  副大臣 サティット・ピトゥデーチャー(民主)
教育  ナタポン・ティープスワン(民国)
  副大臣 カラヤー・ソーポンパニット(民主)
      カノックワン・ウィラワン(矜持)
デジタル プティポン・プナカン(民国)
天然資源 ウォラウット・シラパアーチャー(タイ国)
高等教育 スウィット・メースィンシー(民国):
労働  チャトゥモンコン・ソナクン(連合)
社会開発 チューティ・クライリク(民主)
観光  ピパット・ラチャキットプラカン(矜持)
文化  イティポン・クンプルーム(民国)

+は兼任、#は留任、:は配置換え
政党名/ 民国=パラン・プラチャーラット党(PPRP)、民主=プラチャーティパット党、
矜持=プームチャイタイ党、連合=ルアムパラン・プラチャーチャートタイ党、
タイ国=チャートタイパタナー党、開発=チャートパタナー党](以上)

 

2)7/31に在タイ40年を超え「クルンテープジャーナル」を発行する長島正幸編集長から「タイの連立政権の課題と展望」についてお話を伺う機会があった。


要約すると、以下の3点。

@ クーデターの背景:2014年5月22日のクーデターが起こるまでのインラック政権末期の政治混乱が治まらなかった。そのまま行けば、バンコク都内は騒乱の恐れすらあった。その中で、プラユット将軍がクーデターを実行して、軍事政権ができた。これによって、バンコクをはじめ国内の治安は平静を保つことができた。

A 3月の総選挙は既に軍事政権よりの政権が誕生することは予測されていた。軍事政権下で作成された憲法により上院250名は軍事政権が任命された。構成は軍人、警察および官僚のOBなどが任命されて、上院は軍事政権支持は予め決まっていた。たとえ、下院で少数派でも、上院と組めば首相の席は握れる。今回の組閣は、少数政党も入れた連立で、下院では僅差で軍事政権側が多数派となった。

B タイでは、民主政党、軍部が繰り返し政権を握るが、下院で圧倒的な多数を握っても、軍部や官僚の指示が得られない、政権は不安定である。プラユット将軍は軍部の支持を得けている限り、長期政権になる可能性もある。


  
   (写真は、7/31長島編集長を囲む参加者)

 

2.日本の人材不足と海外からの技能実習生受入れについて

7月中旬に、日本出張の機会があった。少子高齢化が進展する中で、介護施設の需要は膨らむが、介護職の人手不足が続き、現場が大変である、という意見を伺った。

そこで、外国人介護職を受け入れている実情を伺うと、S老人福祉施設では、数年前から技能実習生としてベトナムやフィリピンから研修生を受け入れている。Y医療法人が経営する老人介護施設では、単独では海外の研修生に日本語をを受け入れることが難しいため、協同組合を設立してフィリピン人とベトナム人の育成をしてきた。ちょうど日本滞在中に、フィリピンからの第1陣が到着したと伺った。タイ人の研修生を受け入れることについては、次の課題。

E老人福祉施設では、今までは家庭に入った女性をパートで受け入れてきたが、朝8時から午後3時までの勤務が多く、夕方の食事の介護や深夜勤務が特定のスタッフになることから、1人でも休むと、大変な状態になる、と伺った。

そのため、タイ人の介護実習生の可能性について相談を受けたが、今までは製造業などへの技能実習生の受け入れが主体であったが、介護職に関して関心のあるタイ人を見出して、研修ができるのかどうか、など研究課題となった。

今までも人材不足への対応に関して、助言するのは3つの方法です。

1.自社のホームページに、必要な人材を募集すること。

2.タイにある技能実習生を送り出す機関は多数あり、それぞれ専門分野があります。その中から、介護職を希望する技能実習生があるかどうか、確認して、あればその紹介会社を利用することです。

3.一からタイ人に日本語を教えて、介護職に育てる方法もありますが、最初から目的意識を持つ人材を見つけるのは、簡単ではありません。

3.について補足すると、タイ労働省と日本の技能実習生を受け入れ団体であるIMM Japanという組織もありますが、こちらはベトナム、インドネシア、バングラデシュ、スリランカ、ネパールなどの発展途上国の技能実習生は介護職としても派遣ができるが、タイ労働省は、製造業など特定の職種では認めているが、介護職の技能実習生は政府として認めていない、のが実情。
  
(写真は、タイ人が技能実習生として派遣前に日本語を学ぶ学校)

3.タイ人スタッフの採用と育成について(事例)

日本製を主体にファスナー、ネジを日本から輸入販売するH社は7年前にタイのチョンブリ県に会社を設立した。設立して7年を経過して、次の成長への足固めをしている。7/12に同社を訪問する機会があったので、代表者の意見を伺った。

社長によると、進出を決めるまで海外進出の可能性を探り、各種展示会にも出店してきたが、日本の長年の顧客であるD 社からの強い要請もあって決断をした。

かつて、 D社のU部長の話も伺ったこともある。「タイ進出が速かったこともあり、顧客の80%がタイの地場企業で、残りが日系企業である。タイでは、自動車部品業界の物流倉庫の自動化、保管効率向上に役立ってきた。」との話もあるとH社のY社長に説明をした。

H社は、特に大卒でなければと希望していなかったが、チョンブリ県のある大学を優秀な成績で卒業したスタッフもいる。現場で働くスタッフは、設立当初から定着しており、入出荷、商品管理など現場作業は任せることもできるようになった。毎年、泊まり込みで年間計画を立てる会議を開くとともに、日常的に社員とはタイ語で会話をし、食事も月1回の誕生日会だけではなく、一緒に会食をすることもある。

次の課題は、入出荷のIT化である。現在は、クライアントからの注文はFAXかメイルで受けているが、転記作業などミスもあり、業務改善の一環で、さらにITを活用したい、という。そのため、システムを組める要員をタイで採用したい、として各方面に声をかけている。

売り上げ目標を立てるため、年間で大きな展示会の出展をしているが、広告媒体として写真だけではなく、画像も必要だとして、社員の働きぶりなども映像で記録し、YOUTUBE でもアップしているので、展示会当日は会場でも上映をしている。

次の夢は、ファスナー、ネジ以外でも日系企業の困りごとである商品を取り扱うべく、準備中である。前回の展示会でもメーカーの関係者にタイ市場の様子を見てもらうため、来訪をしていただき、確かな実感を持っていただくことで、次の展開を進めたい、とのことである。 (写真は、H社の商品管理の現状を説明されるY社長)


  

(写真は、H社の商品管理の現状を説明されるY社長)

 

4.日系企業の海外展開を担う人材、現場と管理部門の違い

タイ法人のK社のG社長から、現場の金型メンテナンスを指導できる人材が無いか、相談を受けた。

同社では、十数年前に日本で上場をしたい、というほどの意欲のある会社である。

現地法人の社長は製造現場に明るく、製造や営業面では実績をあげているが、経営管理、特に財務管理についてはどうか、と伺うと、本社から財務管理の人材が出向で派遣されている。

今回、照会があった金型人材とともに財務経理も現地で採用されないか、と問うと、本社直結の方が何かと都合がよい、という。

たまたま、金型メンテナンスができる人材候補がいて紹介をしたところ、書類審査で不可となった。本人に尋ねると、以前の勤務先でK社と取引があったが、品質問題でクレームを起こして、K社との取引が切れた。その当時の営業が今のG社長であったという。江戸の仇を長崎で打つ、ではないが、人生の中で、やむなく取引を停止せざるを得ない先とも、円滑に取引を終了させないと、会社としては問題が無くても勤務していた個人が支障を受ける、という実例である。

ちなみに、同社の金型メンテに向いた候補者に照会をしたところ、同社の金型以外なら応募したいという。金型部門のスタッフが定着できていない、という内部管理に問題があるようだ。


5.タイの休日は仏教関連と王室関連が多い

タイの休日は、仏教関連の祭日と王室関連の休日が多い。

例えば、2017年10月に前のプミポン国王の崩御されたことと、今年5月4-6日に行われたワチラコン国王の戴冠式、その直前に発表された新しい王妃の誕生で、タイでは王室関係の休日が増加している。

まず、王妃の誕生日が6月下旬にあって、1日休日が増えた。また、国王の誕生日は7月28日で日曜日と重なったため、翌日は振替休日である。

8月12日は前の王妃の誕生日でもあるが、これは同時に母の日として休日は変わらない。

10月13日はプミポン国王が崩御された日として記念日でもある。

日本もタイも世代交代に伴う休日の増加で、国民は歓迎しているが、日系企業としては目に見えない賃上げだという、意見もある。海外で暮らすものは、その地の政治、経済の動きを注目する必要があるのは、このような点でもある。例えば、工場の生産管理、事務所のスタッフの労務管理も、タイの休みが仏教関係、王室関係が多い関係で、目を離せないというのはこのような面でも影響があるからである。

  

(写真は、政府機関の正面に掲げられた王妃の誕生日前の様子)

 

6.(質疑応答)政権与党の政策と最低賃金

(質問)

7/16に発足したプラユット政権は、主に3つの政党からなる内閣で、それぞれ選挙の際に掲げた政策(マニュフェスト)は異なります。

そこで、各政党の政策と、特に最低賃金の動きについてどう見てゆけば良いのか、お教えください。

 

(回答)

まず主要政党の、政策(マニュフェスト)を見ておきましょう。

1)パラン・プラチャーラット党(PPRP)

@ 最低賃金を400バーツに引き上げ

A  大卒の初任給、現在15,000バーツを20,000バーツに

B  福祉カードの所持者に、10か月の補助金(家賃400バーツ)

C  普通米の12,000バーツ/トン、ホンマリを18,000バーツ/トン

 

2)民主=プラチャーティパット党  

@ 0−8歳児に、月額1,000バーツの補助金  

A 農民への所得補償

 

3)矜持=プームチャイタイ党  

@ 大麻使用の自由化

A Grab Serviceの合法化

 

そこで、最低賃金が400バーツに上がるかどうか、ですが、新しい労働大臣に就任したチャトゥモンコン・ソナクン大臣は、@生産性に応じた賃金、A地域事情を勘案した最低賃金を決めるべきだと、発言されています。

賃金委員会の会長は、労働事務次官ですが、大臣の意向と、各地の賃金委員会から上がってきた案件を精査して決まると思われます。

 

一方、タイ工業連盟(FTA)では、今でもタイはアセアン各国と比べて最低賃金が高いため、新規投資家はタイ以外に投資先を選定する恐れもある、最低賃金の引き上げは必要だとしても、中小企業の経営が成り立たない賃金水準にはすべきではない、と大幅な引き上げには反対の姿勢を示しています。 これから、国会の論議や賃金委員会の動きなど報道されますので注視しておくべきでしょう。

 

  

(写真は、政府機関の正面に掲げられた王妃の誕生日前の様子)

 

以 上