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タイ

作成年月日:2019年3月

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タイ国情報 2019年2月

1.タイの政治、経済、外交は総選挙でどう変わるのか

2.タイの大気汚染問題と電気自動社EV化の推進

3.環境リサイクル、ごみ再利用の考え方

4.日系企業がタイやベトナムの新卒者を新入社員として受け入れる動き

5.企業の危機管理と個人の相続問題について

6.(質疑応答)タイの最低賃金引き上げの動きについて



1.タイの政治、経済、外交は総選挙でどう変わるのか

2月の1ケ月間に起こった総選挙関連のニュースを紹介して、3月24日の投票日にどのような事態が想定されるか、検討したい。

今回の民政への移管の前に、現政権は新しい憲法の制定と、選挙法を修正し一つの政党が圧勝できない仕組みに変えた。

 

上院議員は、当初の5年間は今の政権の指名制で250名が決まる。下院議員も小選挙区350議席、比例代表150議席、合計500議席であるが、比例代表は全国が一区ではなく、地区ごとに投票比率によって按分する。この結果、下院で過半数を握っても上院で否決される恐れもある。上下総数の750議員の半分375議席を下院総選挙でとるのは難しい。その結果、軍事政権よりの政党が150議席とれば、上院250議席を合わせて合計で400議席となる。

従い、軍事政権から完全な民政化を狙うのは1政党だけでは無理で、連立しても375議席とれるかどうか、になる。

 

選挙前のNational Institute of Development Administration(NIDA)大学による世論調査によるとタクシン系列のプアタイ党(タイ貢献党)は32.7%、軍事政権容認のパランパチャラット党(国民の力党、略称 PPRP)は24.2%、民主党は14.9%、新しい未来党が11%であった。プアタイ党の兄弟党としてタイ・ラクサー・パーテイ(国家維持党)が2月8日に国王の姉にあたるウボンラット王女を首相候補に擁立した。国内はもとより欧米や日系のマスコミでも大きく報道されたように、タイ社会に衝撃を与えたたニュースであった。現首相のプラユット首相を首相候補とした国民の力党(PPRP)の影も薄くなった。しかし、当日の夜、ワチラコン国王が高位の王族は、政治活動とは距離を置くべきであると勅令を出され、官報にも公示されたことから国家維持党は王女擁立を断念した。むしろ、政党活動に王族を誘ったことから憲法や選挙法の違反がないか、最悪、政党の解党まで懸念をされた。3/7憲法裁判所で、解党が決定。幹部の10年間選挙活動の禁止、10年間新規政党設立の禁止、当判決がでた。

 

今回の選挙が従来と異なる大きな点は、初めての投票者(新有権者)が有権者総数5,000万人のほぼ1/7にあたる700万人あまり(有権者の13-14%)がどの政党に投票するかにより、大きく政治の流れが変わると予想される。

 

例えば、党首が一番若い新未来党は特にネットを活用して若い有権者に支持が高い。ただし、デジタル犯罪防止法や、選挙法との関係で、党首の経歴詐称など警察から呼び出しを受けているニュースもある。特にタイ貢献党と新未来党は軍事予算の削減と、それによって若い世代のニュービジネスを支援すべきだという発言が、若い世代には受けている。一方、軍の総司令官は国境付近の警備、装備品の旧式化など耐えず更新しないと周辺国の軍事危機に対応できない、との発言もでている。なお、各政党の党首による討論会もあって、有権者は従来の街頭での集会以外には直接、候補者、政党の綱領が身近で見える時代になった。そのため、街頭宣伝カーもそれなりに街中を走っているが、むしろ投票日の呼びかけなどをしているケースもある。告示以降の総選挙と、新内閣の発足までの政治スケジュールは以下の通りである。

 

1/23 勅令(3/24に総選挙をすると発表)

2/4-2/8 立候補者届け受付、首相候補名簿提出

3/4-3/16 不在者投票、在外投票

3/17 期日前投票

3/24 本投票日

4/8 チャクリ王朝記念日(休日)

5/4  国王の戴冠式(休日)

5/9-5/23 選挙結果発表(本投票日から60日以内)

7月上旬 新内閣、発足

 

5/4(日)に新国王の戴冠式も控えて、今後のタイの政治、経済がどちらに向かうのか、注意する課題である。

 

(写真は、2/7バンコクポスト紙主催の党首討論会、左から現政権よりの国民の力党、タイ貢献党、民主党とならび右端は新未来党の党首)

 

2.タイの大気汚染問題と電気自動車EV化の推進

2018年の歳末から2月の中旬までバンコクでは大気汚染、特にPM2.5の濃度がタイの保健省が定める50ppmを超えるため、様々な対策が取られた。一番PM2.5の濃度が高い時には学校の休校もあったほどである。

 

原因は、ラヨン工業地帯からの工場排煙、バンコクの主要幹線道路に鉄道を敷設するための工事、バスやトラックの排煙など様々な原因が指摘されて、各官庁から集まって対策を協議した、最高責任者はバンコク都知事。工業省は、排ガスの基準が高いと予想される1,600社に一斉に立ち入り検査を行い、違法が見つかった600社の工場許可の一時棚上げをしてきた。さらに、バスも数年前から軽油からバイオデイデーゼルへの切り替えが推奨されてきたが、この段階でB20などバイオデイゼルを20%含む軽油が推奨され、石油税についても一部緩和策が出されたほどである。

 

また、工業省も欧州の排ガス基準であるEuro4.0から5.0への切り替えを自動車メーカーや部品メーカーに要請するなどの動きをした。

 

また、タイ投資委員会BOIでも電気自動車の導入推進を進めて、2018年から2019年にかけてさらに推進するとしている。BOIでは最終的に電気自動車の標準化を目指して、バッテリーの標準化やその構造についても標準化を目指している。我々からすれば、一時しのぎではなく、電気自動車の導入促進など、長期的な対策を打ち出すべきだと考えます。特に、日系ベンチャーとしてFOMMがタイでの電気自動車生産を始めていますので、活躍を期待したいところです。

 

ところが、バンコクの大気汚染問題は、季節が乾期から暑気に入って、東風から南風に切り替わり、タイ湾からの風がバンコク、タイ平野を北上することでバンコク周辺のpm2.5の数値は低下。バンコク都知事は自分が大気汚染対策の責任者に任命されてから幸運の風が吹いてきた、というほどです。一方、北部のチェンマイなどのPM2.5の濃度が下がらない悩みが続いています。


 

(写真は、バッテリー電気自動車の前に立つFOMMの代表、右から2番目)

3.環境リサイクル、ごみ再利用の考え方

タイでは、代替エネルギー発電の優遇策として、太陽光発電、風力など自然エネルギーとともに、農場や産業用の廃棄物を使って発電をする仕組みに高いインセンテイブを与えています。

 

例えば、地場ではサイアムセメントグループ、日系では同和金属グループが代表的ですが、それだけではないホテルなどの宴会で食べ終わった食材を食料とプラステイックなどの再利用が可能な材料を区分けして、一つのホテルからごみを外部に出さない、すべて地産地消をする仕組みが研究されています。

 

上記のBOIのインセンテイブ、また特に東部経済回廊EEC域内でSmart Cityが検討される中で、このような考えを推進するという動きが加速されるように、BOIの税制免除恩典に加えて、EECの恩典も付加されるという仕組みがあります。

 

さて、現在のタイでは、環境問題に関係する主な法律として、次の7つがあります。 国家環境保全法、1992年工場法、公衆衛生法、タイ国水域航行法、有害物質法、エネルギー保全法、工業団地法の7つが主な法律です。

 

現政権は2019年1月に工場法を改定して、工場登録をすべき工場の規模を引き上げました。

 

(従来)

第1種工場:従業員20名以下かつ20馬力以下・・・認可・手数料不要

第2種工場:従業員50名以下かつ50馬力以下・・・認可不要、手数料のみ

第3種工場:従業員50名以上かつ50馬力以上・・・許可(5年更新)・更新手数料

 

ところが、工場の規定を50名以上に限定し、50名以下は許可も不要にする方針が元ウッタマ工業大臣から出されたため、環境団体から環境汚染などの拡大を懸念する意見もでています。

元工業大臣は、更新許可を出す工業省の役人に対する汚職など、絶えず苦情が入ってきたということから、規制緩和により汚職の種を絶やす、という狙いだと説明されました。環境リサイクル、ごみ再利用の規制を強化すれば、リサイクルが進むのか、ごみの地産地消が進むのか、行政の姿勢によって、環境問題が大きく変わる事例でしょう。

 


  

(写真は、BOIセミナー(左)、EECセミナー(右)でそれぞれの事務局長が強調されたSmart City)

 

4.日系企業がタイやベトナムの新卒者を新入社員として受け入れる動き

日系企業のタイでの新卒者の募集方法はいくつかある。

1. リクルート会社を利用

2. 自社のwebsiteによる公募

3. 各種就職フェアに参加して、直接、学生と面談する。

 

今回は、就職フェアの2つの事例を紹介したい。

1)2018年6月にバンコク日本人商工会議所JCCが就職フェアを開催した。 その際の結果を伺うと、次の通り。

 

JOB FAIR 2018年6月8日ブース訪問学生数10,839名、6月9日同9,662 名、 合計20,501 名。 その内の結果は次の通り。

1. 採用確定 48名

2. 採用見込み 468名

3. 引き続きコンタクト4,464名

合計4,980名(来場者の24%は日系企業に関心を持ち、日系企業も採用に前向き)

 

この結果をJCCの責任者に聞くと、一部の日系企業はタイの法人ではなく、直接日本本社の採用としている。当然、日本の初任給に合わせた採用条件となる。

 

2)2019年1月9日泰日工科大学(TNI)の卒業生と民間企業の面接会がに開催された。

出展企業数120社(うち、日本企業のバンコク事務所もあり)

ブース訪問学生数1,000名、ただし、内定かどうかの数値は大学は把握していない。

また、10社程度希望があれば、全学部対象ではないが学部ごとに面接の機会も提供してくれる。日本では3月1日からすでに就職活動の解禁がされたように、日本の中堅、中小企業では大学生の採用が難しくなっており、しかも内定した学生が必ずしも4月の入社式に参加するとわからない時代になった。

 

そのため、留学生だけではなく海外の大学でも日本語と工学系の教育をするTNIの学生の需要が高い、と報告を受けているが、採用する企業も明確な方針、キャリアパスや企業内での育成方法に対する説明ができることが重要である。 (以下は、前回のJCCの就職ファアの様子である。

 

リンクは、前回のJCCの就職ファアの様子である。


5.日系企業の危機管理と個人の相続問題について

2月8日に在タイ日本大使館領事部の案内で在外安全対策セミナーを受講することができた。内容は、1. 講義として地域情勢と治安リスク,予防対策,移動間の対策,自宅の安全対策,テロ対策,誘拐対策,組織としての危機管理,メディア対応の原則を学ぶとともに、2. 演習と、3. 質疑応答であった。講師は、セキュリテイサービス専門家集団のコントロール・リスク・グループの講師が2名。

https://www.controlrisks.com/

 

副読本として、外務省発行の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアルが配布されていた。

講演内容の紹介をするのではないが、バングラデシュの襲撃された事件の記憶も新しいと思うが、初期体制で亡くなった方と、生き残った方の差がある。

有事の危機対応としては、逃げるとすぐ考えるが、犯人からすれば背中を見せた人間は射撃しやすい。その場合は、まず伏せる、そして逃げる、隠れるである。

さて、今回は事件ではないが、在タイ日系企業に数年間、勤務されていたシニアの日本人が、日本に出張中に亡くなったご家族の相続問題を紹介する。

 

1) 日本の家族は、タイの住居には内縁の妻と同棲していると、承知していた。本人は、日本に各月に出張していたが、時に女性同伴で出張しており、家族と親族から2名がいることも見られていた。日本の家族が知らない、と思っていたのは本人だけ。

2) ご本人が亡くなる前に、日本の配偶者がすでに逝去しており、残されたのは既に結婚をし、子供がある娘のみ。

3) 日本で亡くなったため、日本での葬儀告別式も済ませた。

4) 49日の法事もすみ、国内の相続も終え、一周忌が近づいてきたので、タイに残された遺産の処分をどうするか、日本の弁護士に相談をしたうえで、タイに来られた。

5) 遺産は、預金などの動産と、アパート、家屋などの不動産があって、預金については、本人が所有していた銀行の通帳と、カードが残されていた。

6) 銀行口座開設時の住居がバンコク市内からチョンブリに移っていたため、どうも不動産がチョンブリ県にあるらしい。

7) 問題は、動産である銀行の預金が引き出せるかどうか、であった。 結論は、銀行カードと暗証番号があれば、引き出せた。正式には、日本大使館での証明など必要であるが、届を出す前に、銀行の支店で、試みにした場合に、預金が引き出せた次第。 不動産については、すでに内縁関係者の名前のものは取り戻すのは無理と理解して、次の段階にはもし故人名義の不動産があるかどうか、確認をする予定である。

8) タイの弁護士事務所の説明で考慮すべき点がある。

@動産の現金化、日本への持ち帰りでも、過去に正当な事情でタイ国内で預金された事実が証明できるかどうか。

A不動産の名義を個人から遺族に名義変更はできない。いったん、市場で売却して買い戻すことも可能であるが、売却した段階で現金化して日本に持ち帰るのが妥当。 この手続きは、日本の弁護士では無理で、タイの弁護士に手続きをしてもらう必要がある。

 

危機管理と相続は関係が薄いかもしれないが、病気や交通事故はタイでも日本でも起こりうることである。その場合、万一、タイに資産があるのであれば、本人だけではなく家族または親しい弁護士に報告しておき、憂いが無いようにすべきであろう。

 

(写真は、2/8の危機管理セミナーの様子)

6.(質疑応答)タイの最低賃金引き上げの動きについて

(質問) 報道されている各種ニュースによるとタイの最低賃金が近く引き上げになるのでしょうか?わかる範囲で、お教えください。

 

(回答)2月15日の報道では、労働省のチャリン・チャカパーク労働事務次官(中央賃金委員会会長)は4月1日付で最低賃金が改訂される見通しだと説明をしています。

既に、労働者側からは全国一律の360バーツへの引き上げを要求していますが、チャリン労働事務次官は生活費の違いなど県ごとに異なると説明をされています。その他の要素としては、賃金水準、生活費、物価上昇率、商品サービスの生産コスト、供給能力、企業業績、GDPなどの様々な要素を調査している段階であると、説明されました。

2018年4月に改訂された現行の最低賃金はプーケットとチョンブリ県で330バーツ、バンコクを含む首都圏で325バーツです。それ以外では、都市化の進むコンケン、ウボン・ラチャタニなど地方の14県が320バーツ、その次22県が310バーツで、最も低い南部国境件3県など7県が308バーツとなっています。

たまたま、現在は下院の総選挙の最中で、大衆庶民党は最低賃金360バーツ、大卒の初任給を16,500バーツに引き上げることを、政党のマニュフェストにも謳っています。

タイの最低賃金は2011年以降上昇を続けています。選挙の結果で、最低賃金が変わるとは思えませんが、現政権では、2017年1月と2018年4月の2回実施されています。そのため、総選挙に影響を与えるとすれば、直前に引き上げが発表することで政権側のプラスになるかどうか、も考慮されるかもしれません。

 

(写真は、庶民大衆党が最低賃金、大卒初任給の引き上げを選挙のマニュフェストに掲げている)

 

以 上