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タイ

作成年月日:2019年2月

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タイ国情報 2019年1月

1.総選挙に向けたタイの動き

2.デジタル社会の進展とタイ人の勤務事情の変化(予測)

3.熟練工の最低賃金、2019年1月から改定

4.タイの労務管理は、どのようなスタイルが好まれるのか?

5.(質疑応答)



1.総選挙に向けたタイの動き

1月末に、選挙管理委員会は、当初予定していた2019年2月の総選挙を3月24日に延期した。しかし、1月中旬では政治集会は解禁になっていた。以前、この欄でも紹介したように、大きな政党は4つ。タクシン首相を生み出したプアタイ党、軍が主体に設立したバラン・プラチャラート党(PPRP)、タイで一番長い歴史を持つ民主党、党首が一番若い新未来党、それ以外となる。政治集会が解禁になって、各政党の資金集めで、大きな政党パーテイがホテルなどで開催されている。

 

総選挙と、新内閣の発足までの政治スケジュールは以下の通りである。

2/4-2/8立候補者届け受付、首相候補名簿提出

3/4-3/16 不在者投票、在外投票

3/17 期日前投票

3/24 本投票日

5/9-5/23 選挙結果発表(本投票日から60日以内)

7月上旬 新内閣、発足

 

5/4(日)に新国王の戴冠式も控えて、今後のタイの政治、経済がどちらに向かうのか、注意する課題である。

 

(写真左は、政権よりのPPRP党の選挙ポスター、中央はプアタイ党、右は新未来党の選挙ポスター)

 

2.デジタル社会の進展とタイ人の勤務事情の変化(予測)

昨年12/24のバンコクポスト紙は、タイでデジタル社会が展開すれば就業構造が大きく変わることを紹介している。

まず、就業者の14%を占める大卒の70%がデジタル化で影響を受ける、と推計。全体の28%を占める高卒から専門学校、短大卒の820万人が職を失う恐れがあるとみられる。また、就業者の58%を占める中卒以下は月収が11,000バーツ平均であるが、50%近くが職を失う恐れがあり、また再教育の機会がない、と警告をしている。アセアン全体でみれば、インドネシア、ベトナムに次いで職を失う恐れが高い、という。

 

この問題提起に対して、すでに影響が出ている業界もあるという。例えば、メデイアでは、企業から提供されるニュースを編集する作業は自動的にPCが行い、最終のチェックが編集者によってされている。また、銀行業界も同様である。すでにいくつかの銀行では、支店の統合があり、小口の送金も携帯での送金が解禁になったことから窓口で、送金する必要はない。

 

さらに、カシコン銀行では、職員の職種変更に必要な教育も行っている。サイアム商業銀行では、2019年は100-120支店を閉鎖するという。また、窓口での小口送金が20%も減少をしている。

 

情報の提供元はタイ発展調査機関(TDRI)である。


 

(写真は、2018.12.24のバンコクポスト紙)

3.熟練工の最低賃金、2019年1月から改定

タイでは、1972年の内務省令により1973年から地域別の最低賃金の設定がされてきた。また、2008年の労働者保護法の改定により、地域別の最低賃金と別に、労働省が認定した職種ごとに最低賃金がある。12/26日付けの官報でタイ労働省は、熟練工の最低賃金を2019年1月から以下のように改定すると発表した。

 

しかし、自動車整備業界を見ると、次の課題がある。車両板金塗装(BP)を行う会社は大小合わせタイ全体で約6,500社登録されている。バンコクで見れば約1,560社。ディーラーに併設されているBPもあるが、ほとんどが道端にある小さなパパママBPか登録だけの稼働していないBPといわれる。

 

日系の自動車整備会社C社があるラマ3世通り沿いにも、パパママBPが多い。一方で、実際に保険会社に認められているBPはといえば全体の10%ほどである。これまでタイのBPは安かろう悪かろうで顧客が集まってきたが所得の増加とともに市場も変化してきている。ただ安いだけのBPは減り続けている。また、現在のBPの業界側から見た課題としては、3Kの業界であるため若い人手がいない、また、技術も未熟であり30年以上前の日本のBPスタイルから抜け出せていない。(資料;川崎大輔の流通大国から、2016年9月6日)

 

従い、労働省としても技能検定によりタイ人の技能の向上に役立つように考えているが、実際に企業のオーナーが労働省の制度を活用しているかどうか、また、以下の最低賃金が適応される熟練工がどれだけ認定されているのかは、別の問題と見た方がよいであろう。

 

2019年1月から適応される熟練工の最低賃金
(バーツ/日)

 

職種

レベル1

レベル2

レベル3

1

自動車塗装工

440

515

585

2

自動車板金工

465

560

650

3

自動車修理工

400

490

580

4

縫製工

325

400

550

5

宝石工

440

650

825

6

木材切断工

370

425

480

7

金属たたき成形工

355

410

465

8

室内調度品塗装工

385

495

 

9

自動車メンテナンス工

375

440

 

10

デーゼルエンジン修理工

400

490

585

11

小型車エンジン工

400

490

585

12

陸運管理者

460

550

 

13

10トン以下フォークリフト操縦者

400

475

 

14

倉庫管理者

385

465

 

15

倉庫従業員

375

455

 

16

木製家具原料準備工

350

380

 

17

木製家具部品製造工

395

455

 

18

木製家具組立工

365

415

 

19

木製家具塗装工

375

415

 


 

(写真は、トラックの架装、整備会社)

 

4.タイの労務管理は、どのようなスタイルが好まれるのか?

1/4にタイのA法律事務所の幹部と日系企業で起こる従業員の犯罪と、その防止策について意見交換を行う機会があった。

 

日系企業では、家族経営のスタイルが好まれるとして、従業員の自主性を重んずるため、就業規則の順守、社内ルールの順守が甘い事例がある。

 

例えば、タイ人の経営者との会議では、タイ人従業員が緊張して経営者の説話を聞こうとするが、日本人経営者の説話だと、腕を組んで話を聞いたり、少し日本人経営者を軽んずる事例もある。そのような企業で、会社の資金や物品が盗難にあると、企業の幹部から「これは、従業員の管理が甘かった、という事例である。本人も反省しているようで、初回でもあり、穏便に対応したい」と相談される。それだから、タイ人はこの企業の管理が甘いことが分かるので、2回目、3回目を起こすこともある。初回の事案で、きちんとして対応をすることが必要で、それでこそこの企業は、管理がきちんとしており、盗難などすれば、解雇、刑事告発されるとわかれば、その他の従業員が悪に手を染めないのである。勿論、家族経営的な、福利厚生や報奨制度も必要であるが、同時に企業管理上の、ルールの順守もしっかり守らせるべきだ、との意見であった。

 

他方、日本でも困った社員の管理に困る人事、労務の責任者の悩みを解消するという、セミナーもでてきた。案内には、「職場で経営者・人事労務担当者を悩ます“困った社員”の対応が重要な課題となっています。問題のある社員を放置したままでいると職場の雰囲気が悪くなり、他の社員の士気が低下したり、退職者が続出したりすることになりかねません。会社のために誠実に一生懸命働いてくれている社員たちを守るためにも、早急な対応が必要です。しかし、“困った社員”といっても多種多様であり、問題の小さいものから大きなものまであります。対処法も個別具体的に検討しなければなりません。」(日経ビジネスセミナー、2月に東京、名古屋、大阪で開催)

 

これでわかるように、日本だから、タイだからではなく人間の性善説、性悪説については2000年前の中国の老子や、論語でも議論されてきました。性善説を前提にした日本的な経営管理が海外では通用しない場合もあることを、理解すべきでしょう。

 

(写真は、タイ人従業員の説明を聞くS社経営幹部)


5.(質疑応答)

(質問) 労働者保護法の改正案については、2018年の11月号と12月号で、言及されましたが、その他の条項で、注意することはありませんか?

 

(回答)労働者保護法は、先月の2018年12月13日の立法議会を通過して、1か月後から施行されると聞いています。タイでは労働者側の権利が拡大する方向です。

例えば、今までの、1) 解雇手当が勤続20年を超える場合は400日分の支給が必要、2) 休暇の増加(産休が8日伸びて98日に、用事休暇として3日)や、3) 勤務場所の変化に対応できない場合は特別手当の支給をもって解雇できるなどの保護規定が付け加わっています。

 

これ以外にも、細かな点では、1) 休業中の労働者には基本給の75%を支給しなければなりません。たとえ、それが天災等の事由で休業を余儀なくされた場合でも同じです。2) また、従業員に支払うべき賃金が、雇用者の事情で遅延した場合は、1年あたり15%の金利を上乗せをして支払うべきだ、という規定もできました。3) 男女差閥の撤廃 男女が同じ仕事時間、内容、労働価値の仕事をする場合は、男女は同じ賃金を支払うべきである、と規定されています。

 

労務管理上で、労働者保護法の改正に伴い、就業規則の改定など、早急に準備すべきでしょう。もし、規定の改定が遅れ、賃金の支払いなど遅れるなど従業員に不利益な場合は、雇用者側では法が規定する金利を上乗せして支払うなど、相当厳しい内容になっていることを理解しておくべきでしょう。

 

(写真は、2018年9月に開催したOVTAのセミナーの様子)

 

以 上