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タイ

作成年月日:2019年1月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年12月

1.東南アジア各国の賃金事情と能力、タイの今後は

2.現地企業の年末ボーナス事情(その2)

3.従業員の健康管理、タイで日系企業が新しい健康管理サービスの展開

4.タイの大学と日系企業の求人活動

5.(質疑応答)労働者保護法の改正で、休暇の扱いは変わるのか



1.東南アジア各国の賃金事情と能力、タイの今後は

バンコクポスト主催で12/14にアセアンのSEZ(経済特区、工業団地)のセミナーがArmy clubであった。 Mr.Uttama(ウッタマ)タイ工業大臣の基調講演に続き、CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、 ベトナム)の順で各国から工業団地、経済特区(SEZ)の講演が続いた。まず、最初のカンボジアはプノンペンSEZの上松裕士CEO、ラオスはサバナ・セノSEZのMr.Teee Chee Seng(GM)、ミャンマーはマンダレー ミョウタ工業開発会社のKyaw Zay Ya(チョー・ザイ・ヤ)執行役員、最後はベトナムのAMATA VNのCEOであるMs.Somhatai Panichewa(ソムハタイ)である。

注目したのは、カンボジアの最低賃金(170ドル/月)とベトナムを比較するとベトナムは県により異なるが120-170ドル/月である。しかも、2019年には180ドル台になる。カンボジアの最低賃金の引き上げ率は相当高い。タイのバンコクの1日当たりの最低賃金325THB/日をドル表示すると1日9.92ドルは(中央銀行為替レート1ドル=32.74THB)、25日稼働として248ドル/月となる。

ベトナムのAMATAのCEOが強調したのは、ベトナム人の能力の高さである。OECD35か国の高校生の能力を比較した調査がある。

http://www.bbc.com/news/business-32608772

高校生の科学の評価は、ベトナム525、タイ421、英国509、日本538、シンガポール553、数学の理解力では、ベトナム495、タイ415、英国492、日本532、シンガポール556である。賃金の比較は当然、能力とも比較しなければならないが、賃金コストとの比較で、個人の能力を生かせる人事、労務、教育制度を見ていくと東南アジアでベトナムが注目される理由が理解できる。

タイ国20年の戦略計画はあるが、達成するのはタイ人である。長期に海外投資を考えるのであれば、労働人口という数値だけではなく、能力面でタイの教育制度も併せて研究する必要がある。

 

(写真は、当日講演をされたタイ国のウタマ工業大臣ほか各国のSEZ運営責任者)

 

2.現地企業の年末ボーナス事情(その2)

タイでは、毎年11月から12月に年末ボーナスの交渉がある。先月に続き、民間企業のボーナス支給についても紹介する。(出典はTHAI LABOR CHRONICLEの2018年11月号)

1) タイの大手企業

ソンブーン (自動車部品) 5.5か月+28,000THB

ATC Industrial Automation 5.4か月+20,000THB

 

2) 日系大手企業

トヨタ通商 10.1か月

三菱電機  8.5か月+10,000THB

オートアライアンス・タイランド 8か月+40,000THB

三菱自動車 7か月+30,000THB

JTEKT   6か月+21,000THB

三菱エレベータ 6か月+25,000THB

マツダ・パワートレイン 6か月+20,000THB

ヨロズ 5.2か月+43,500THB

ダイキョウ・ニシカワ 5か月+40,000THB

光洋ジョイント 5か月+28,000THB

住友ゴム 4.6か月+20,000THB

コベルコ建機 4.2か月+30,000THB

 

3)現地企業の経営管理

11月末まで未解決の企業もある。業績不振で、低い水準のボーナス交渉をしている企業や、労使が対立して、労働裁判所に調停を申し入れた企業もある。今年は、自動車の国内販売、輸出が数年前と比較して好調に推移したこともあり、自動車業界のボーナス支給は高い水準であった。


 

(写真は、好調な業績をしめした日系企業J社)

3.従業員の健康管理、タイで日系企業が新しい健康管理サービスの展開

12/13に日本とタイが共同してITや健康事業などを日泰で協力してタイに移転する実証実験の紹介があったので紹介する。健康管理面で日系のF社が、日本で行っているサービスをタイに持ち込む実証実験が参考になった。

F社では、日本国内で行っている指先採血の分析により企業の健康管理に貢献するという目的でタイの勤労者の健康管理サービスの可能性について以下の段階で実証実験を行ってきた。

 

第1段階 タイ人の候補者を選定して、日本での研修

第2段階 タイ国内の検査機関の選定と日本で行っている機器の導入と、スタッフの研修

機器のタイでの利用については、日本とは異なる気象条件でも実施できるか、という実験を行った。採血してから5日以内に、検査室に届くのか、検査の有効性は確保できるのか?

第3段階 各種規制を通過、第3者による、検査手法がタイでも行えるという評価、研修

第4段階 臨床検査室が国際基準に合致しているか、の研修

第1段階は、無事終了したが、第2段階になって、機器の輸入と、日本人スタッフのタイでの実務に際して各種ルール、規制があるとわかった。

 

そのため、急遽、日本人の実務を、単純に指導とのみに絞り、タイ人が前面に出て対応するように業務マニュアルを変更した。特に、ISOなどの検証はクリアをしたが、タイの保健省が規制するルールにどう対応するかが、課題であった。また、タイ人の医師による検査手法の妥当性の検証など、今回の実証実験が経済産業省やタイの工業省の支援によって行ってきたため、相当強力な応援を受けることができた。海外に、日本の医療システムの移転を行うための実例として参考になった報告であった。

 

(写真は、12/18当日のセミナーの様子)

 

4.タイの大学と日系企業の求人活動

12/25に日本のW大学関係者とともにバンコク日本人商工会議所(JCC)を尋ね、タイの大学と日系企業の求人活動について意見交換を行う機会があった。

JCCの幹部から「2019年6月8−9日にバンコクの都心にあるセントラルプラザにて開催する予定である。これまで、延べ約8万4千人のタイ人求職者が、延べ 420社の在タイ日系企業と面談してきた。今後ますます優秀な人材の確保が求められる中、多くの優 秀な人材との出会いの場であるJCCの就職フェアに期待されている」と説明があった。

タイのある大学では、日本語の習得も義務付けられており、進出日系の中小企業としては日本国内では採用が難しい工学系でしかも日本語が分かる学生が採用できることから、タイでの採用ではなく日本での採用をしている事例もある。

これは、タイ国内の大卒の初任給相場と比べて日本の初任給の水準が高いことと、新卒に限れば日本の大学卒業生とタイの大学卒業生では、能力的にも大きな差異がないこと。また、日本での研修・実習後、タイの子会社の幹部として登用できる可能性があると、説明された。

 

W大学関係者は、日本の大学生の課題として、一人っ子が多く、企業に入った場合も老壮青の年代格差に戸惑う学生が多いこと、大学に入学さえすれば、おのずと就職できると安易に考える学生が多く、留学生や、海外の大学との交流によって、勉学の目的、意欲向上に資するプログラムを検討中であると説明をされた。タイの大学と日本の大学との交流が深まることが、優秀な学生を送り出すきっかけになればと期待するものである。

(写真は、JCC)


5.(質疑応答)労働者保護法の改正で、休暇の扱いは変わるのか

(質問)2018年9月の国家立法会議で予備承認された労働者保護法の内容は、新設合併の労働者の取り扱い、解雇補償金の上限の引き上げ、休暇に関する変更、事業所の移転に伴う対応に関する取り扱いなど修正されたと聞きました。解雇補償金については、以前説明があったように勤続20年以上の労働者が解雇される場合400日分の解雇手当の支給が義務つけられたことは報告されたので、今回は休暇に関する変更点を説明をお願いします。特に、日本では働き方改革で、管理者の時間管理も重要視されていますが、タイとの比較で、どのような時間管理、休暇管理が必要でしょうか?

 

(回答)まず、日本の国内事情を整理しましょう。

日本政府は「第4次男女共同参画基本計画」のなかで、「2020年までに、年次有給休暇の取得率を70%にする」とし、ワーク・ライフ・バランスを図るという目標を掲げています。日本の企業における従業員の年次有給休暇取得率は低く、2016年に行われた28ヶ国を対象とした年休取得率に関する調査で、日本は最下位、ここ10年ほどは50%を切る水準で推移しています。

 

そこで、厚生労働省は2019年4月から労働安全衛生法関連省令を改正し、一般の従業員にだけ求められている労働時間の把握を管理職にも拡大する方針としています。一般の従業員と労働内容が実質的に変わらない管理職の過重労働を抑制する狙いです。先の健康管理とも関係しますが、海外担当の管理者が過労死で亡くなった事例もあります。働きすぎを、もっと休暇を有効に活用するように変わるのか、どうかですね。日本人の休暇に関する考え方を前提に海外の休暇取得を考えると、現地の対応が困る場合がありますので、現地事情をよく理解することでしょう。長期休暇が当たり前の欧米の社会と異なりアジアはまだまだ休暇取得よりも残業などして、賃金を稼ぎたいという労働者もいることは事実です。

 

さて、タイの労働者保護法は1998年の施行後、何回も改正、修正が行われています。

タイでは出勤管理は業種業態で様々な対応策が取れます。また、どの職位でも家庭を大事にするタイ人は休暇取得を有効に活用しているように感じます。

労働者保護法の23条では、1日の労働時間8時間、一週間の労働時間48時間を規定して、業務の特徴や形態により1日の労働時間の開始と終了時間を規定しなくてもよいのです。

次に、2018年9月に労働者保護法の修正が予備承認された休暇に関する変更点は2点です。

1) 個人の用事休暇:1年に3日以内は個人の事由により休暇を取得することができる。

2) 出産休暇:現行法では90日までの出産休暇が認められているが、これを98日まで延長。出産前の休暇も可能となった。

 

1)の個人の要件で休暇がとれることは、今まで3日以内の病気休暇が医師の診断書を不要としていたこともあり、それを使っての休暇もあった可能性がありますが、より具体化された内容です。ただし、ラインの業務の場合とスタッフ業務では対応の仕方が異なります。

 

用事休暇へ対応をするため、ライン業務では、ワーカーの職務を単能工から複数の職務ができるように訓練、育成する必要があるでしょう。スタッフについても、チームとして情報の共有化が必要です。ある会社では、タイ人が長期に休暇を取りたいソンクラン(タイの正月)前後に休日を集約するために、王室に関する休日の変更は不可能ですが、その他の国民の祝日を変更してソンクランに長期休日としてまとめている事例もあります。

 

2)の出産休暇については、職場に該当する女性の人数や年代なども考慮して、上記の対応とともに、複数で長期化する場合は代替要員の準備も必要でしょう。

 

つまり、日本人経営者、管理者はタイ人の生活スタイルを理解するとともに、日常的に部下の能力向上のための訓練やコミュニケーションを深めておく必要があるでしょう。

(写真は、国民の休日出勤を調整して、ソンクランに年間の休暇を集約している会社)

 

以 上