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タイ

作成年月日:2018年12月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年11月

1.東南アジアの政治、経済

2.現地企業の年末ボーナス事情

3.欧州系の自動車1次サプライヤーとの付き合い方

4.北海道からの農産物の輸入と現地進出日系百貨店の開業当初の様子

5.(事例)日本人出向者の健康管理と解雇について



1. 東南アジアの政治、経済は

バンコクポスト主催で11/21に国際フォーラムがバンコクで開催された。幸いにも、タイの現政権、元首相だけではなく、マレーシアとカンボジアの次代を担う若い政治家の生の声を聞くことができた。例えば、30年間もカンボジアの政権の中枢を握るフンセン首相の息子、フン・マニー国会議長も講師の一人であった。彼はカンボジアの若い世代、IT世代に期待するには教育が重要だと言われた。2018年の総選挙でマレーシアのマハテイール首相が93歳で首相に帰り咲いたことは驚きがあったが、閣僚構成でスポーツ・青年省のラーマン大臣が25歳であることにも驚いた。多分、アジア各国の閣僚では一番若い閣僚であろう。ラーマン大臣はフォーブス誌が選ぶ世界の上位100社のうち会長やCEOが45歳以下の企業が多い、ことを指摘。

翻ってアジアではどうか?40歳以下の取締役がいる企業はほとんどないのではないか、とも指摘された。今後20年を考えると、若い世代の活躍が重要である。2019年にタイ国は、アセアン首脳会議の議長国になる。また、2014年5月のクーデター後に政権についた軍事政権からようやく民政に移管するかどうか、重要な時期になった。

海外で事業を展開する場合、各国の経済とともに政治の動きがどうなのか、それによって経済にどのような影響があるのか、注目しておく必要がある。日本国内の政治も重要ではあるが、現地の政治、経済情報をどのように集めるか、が欠かせない。

 

 

(写真は、当日基調講演をされたタイ国のウタマ工業大臣、あたらしいPPP党の党首も兼ねている)

 

2.現地企業の年末ボーナス事情

タイでは、毎年11月から12月に年末ボーナスの交渉がある。特に政府系の大手企業では、ボーナスに支給額が多く、周囲からも注目を集めるのである。

(出典はTHAI LABOR CHRONICLEの2018年10月号)

 

1)タイの大手企業 AOT(空港公団) 7.75か月 PTT(元タイ石油公団)7.5か月 GHB(タイ貯蓄銀行)7か月 The Expressway Authority(高速道路公団)5か月 Aeronautical Company 4か月 Lottery Organaization(宝くじ機構)3.75か月 PEA(地方電力公社)2か月

2)日系地場企業(大半は、労使交渉が平和裏に終わった) Toyota Motor Thailand 7.5か月+20,000バーツ Honda 7.0+25,000バーツ Yamasei 4.7か月+40,000バーツ Makita 2.5-3.5か月 Thai Asakawa 3.9か月+17,000バーツ 東洋デンソー 5.5か月+6,000バーツ(争議の後、調停で決着)

3)現地企業の経営管理

 

タイに進出する日系企業の歴史が古い企業は、労働組合が組織されているが、大半は労働組がない。それだけに、労働者からの要求がストレートに経営者に届かないことが多い。そのような場合は、人事担当者が、業界の他社の動きや、従業員の年齢構成など検討して経営者に進言し、決定される場合がある。上記のタイの大手企業でもAOTは空港の利用者が多かったため、収益を大幅に上げたことから経営陣は従業員に還元をしたのである。

自動車業界の大手企業でも従来からの積み上げのボーナスの支給月数もあって、それに企業業績を加味した数値で妥結している。 このように月例の賃金だけを比較するのではなく、ボーナスも含めて従業員の給与水準を見ないと現地企業の労務管理、人事管理の内容が見えてこないのである。

もちろん、タイだけではなく周辺国にも工場を持つ企業も多くあって、各国の事情に応じて賃金政策を考えることが重要である。


 

(写真は、全国に展開するPTTのガスステーション)

3.欧州系の自動車1次サプライヤーとの付き合い方

11/22にタイ・ヨーロッパ・ビジネス・アソシエション(TEBA)主催、自動車インスティチュート(TAI自動車研究所)協賛で、欧州系自動車1次サプライヤーとの付き合いを学ぶセミナーがあった。

講師は、運輸省の陸運局から自動車部品の認定について、TAIからは燃料軽自動車から、電気自動車のタイでの普及についての解説をされていた。

その後は、主催のDHLシンガポールからImi、欧米系でタイに拠点を持つ部品会社QADやSchaefler、Bosch(国内に2工場あり)、Michelin(国内に工場)などの企業紹介と、調達方針について個別にプレゼンを聞く機会があった。日系の自動車部品業界との付き合いしかない企業にとっては、又とない機会であったが、残念ながら、日系企業の参加が少なく、地場系の自動車部品会社の参加が多かった。

本セミナーの結論としては「課題は社内にあり」である。言い換えると、自社の体質を国際的な企業と付き合うレベルまで引き挙げているのか? ISOや各種認証は勿論であるが、BOSCHの調達責任者が常に問いかける次の課題に対応できるのか、である。

「品質は、他社には負けない内容か?価格はどこの会社の製品とも競争できるのか? 定時納入の仕組みJITによるデリバリーとクレームへの対応が誰よりも早いのか」である。

日系企業でもQ(品質)、C(価格)、D(納期)が重要であるが、ある意味で取引先の見直しはよほどでもない限り行われないが、欧米系では、いつでも提案は受け入れる。しかし、上記の検証には時間をかけて判定をしているのである。

 

(写真は、当日のセミナーの様子)

 

4.北海道からの農産物の輸入と現地進出日系百貨店の開業当初の様子

バンコク都心では、久しぶりの日系百貨店T社のオープンが11月9日にあった。

注目点としては、日本直送の農産物、特に北海道の道産子プラザを開設するなど、北海道とバンコクを結ぶ拠点にしたいという思いが実現した。

具体的には、北海道のジャガイモ、カボチャなど農産物、鮭、ホタテ貝など海産物、それらを使った菓子、食品加工物などが販売するとともに、レストラン街でも道産の肉や海産物、農産物を使った料理が食せるとして、開店初日から1か月間はバンコクをはじめ各地からの買い物客でにぎわっている。

筆者も、開店前の工事の様子を外部から視察していたが、開店直後にも買い物を兼ねて視察していた。

各コーナーでは、日本から開業直後の応援スタッフも多く、現地従業員の指導を兼ねて、複数名の日本人が各店に滞在していた。

従業員の教育という面では、事前に日本やシンガポールにある系列店で教育を受けた社員もあり、また、スーパーバイザーがいて、開店直後の賑わいの中でも従業員を指導するというレストランもあった。店頭で、商品の質問をしてもまだ適切な回答ができていないスタッフもいて、開店を急いだという様子が垣間見れた。

当方の懸念としては、日本人の指導者が抜けても、料理の味が落ちないのかどうか? 日本語でのぎこちない挨拶も、定着するのか、である。商品知識は言うまでもないが、早く日本流のサービスを身に着けていただきたいとタイでの日本流の定着に期待したい。また、関係者の多くの期待を受けての日系百貨店の開業でもあり、また北海道がタイでは知名度が高いため、ぜひとも順調な発展をしていただきたい、ものである。なお、家人は、12月初旬の週末訪問しても賑わっていたとのことである。

(写真は、バンコクで日系百貨店開業当初の店頭の賑わい)


5.(事例)日本人出向者の健康管理と解雇について

現在、海外にて働く日本人は100万人を超えるようになった。2018年10月に発表された「海外在留邦人数統計」によると、2017年10月1日現在で、135万人(前年比1%増加)が働く時代である。男女は別にみると、男性64万人、女性70万人。地域別には、北米37%、アジア29%、西欧16%で、この3地域で80%を超える。タイは7.2万人と、米国42.6万人、中国12.4万人、豪州9.7万人に次いで4番目に邦人が多い国である。

さて、今回の事例は、日系製造業S社の日本本社に8年勤務して社員にタイ子会社への出向した社員の事例である。2017年4月に赴任した営業マンが1年余り、定期的な営業報告を毎月20回以上、社長をはじめ関係部署にメイルをしていたが、2018年10月からピタリと、本社や現地工場に連絡を取らなくなったことが事の始まりである。

経営者が急遽、翌週には日本から来訪して、タイ工場からの応援も得て本人のアパートを訪ねるなど、苦労して面談したところ、どうも行動が不自然であり、まともな面談にならなかった。当日の面談した本人の映像を、タイの病院の医師にも見せて対応を相談したが、何とか医師に診断してもらうことが第一だとして、様子を見ることにした。

再度、3週間後に来訪して本人と面談しようとしたが、経営者との面談を避けようとしていた。そこで、対応に苦慮されタイ人スタッフの知人が、9月19日のOVTAセミナーで受講者であったことから受講者を経由して弁護士と経営者との面談をアレンジすることになった。

ここでの質問は、タイに出向者をいったん、出向を取りやめて日本への帰国を進める事例を出せば、タイの労働法の対象外になるのかどうか? タイの労働法の規定がないと、日本での労働法の規定によって、本人と会社との関係でやるべきことをするという、考えがあった。

タイの弁護士の助言では、単に帰国命令を出したからといってタイでの社会保険や所得税がタイの会社から支払われている限り、本社の辞令一つで、日本の社員だけと言えない。本人が弁護士など、有識者に相談すれば、タイの子会社は労働法の違反として訴えられる恐れがある。そこで、労働法上の解雇については、1年以上勤務している社員は、最終勤務の給与の1か月分と、即日解雇となれば、予告に代えての1か月分、合計2か月分の給与相当額を解雇補償金として支払い、できれば、受け取る際に、領収書とともに以後は会社宛に請求しない旨の、署名をもらうことが重要だと助言を受けた。しかし、本人の言動や行動から、直接受け取らない場合、給与振り込みをする銀行への送金と、メイル、郵便、EMSなど手渡しの手段で、解雇した旨を通知することができる、との助言も受けた。

残る問題は、本人の滞在ビザの関係である。すでに会社から解雇したとして労働事務所やイミグレーションには通告して、弁護士との面談の3日後、11月28日にはビザが切れる。以後は不法滞在になり、会社側が動かなくてもイミグレーションに通知すれば、警察が不法滞在で、対応してくれる、とまで弁護士から指摘を受けた。

そのような助言を受けた翌日、経営者がタイの工場から責任者も同行して本人と面談したところ、前回の面談とは異なり、素直に医師との受診を受け入れた。結果は、医師から暫く入院治療するように、診断を受けて、会社として本人を入院させることになった。

上記のビザが切れる問題は、帰国直前に入院した、という理由でイミグレーションに滞在延長をすることになった。

今回の問題を整理すると、労務管理上の課題が見えてくる。

1)海外赴任の指名をする場合、本人の適応性がどこまであるか、見抜くことができたのか?

2)赴任前に、現地生活に適応するための言葉の研修や生活習慣をどこまで理解させたのか?

3)赴任後も、本人のタイ社会への適応を応援する仕組みがあったのか? 今回の営業マンは工場勤務者とは別にバンコクにアパートを借りて、工場長や現地の社員とは1か月に数回しか顔を合わせないため、定期的な健康状態の観察ができていなかった。また、経営者も今回の事態が発生するまで、1年に数回しか来訪できず、しかも本人との面談の時間も少ないため、経営者が本人の健康状態の確認と上司と部下といった人間的な交流ができていたのかどうか?

4)日本国内の営業活動の延長線ではなく、生活環境が全く変わることへの不安や心配に、周囲から助言や励ましがあったのかなど、今後とも日本から海外に出向させる駐在員の健康面、特に精神面の悩みは表に出ることは遅い。また事例が少ないため、事態が発生しても本社やタイの子会社で対応できない場合もある。

 

今回の事例を通して、駐在員の健康管理も、本社や子会社の責任者、人事担当者の課題と言えよう。

(写真は、バンコクで労働法に詳しいタイ人弁護士と相談している様子)

 

以 上