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作成年月日:2018年10月

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タイ国情報 2018年10月

1.タイランド4.0時代の人事労務管理―9/19の公開講座から

2.企業発展段階とタイおよびアセアンの日本人駐在員の動向

3.日本の介護施設業界の人材不足と海外から求人をするには

4.タイでのリスクに応じた保険のかけ方

5.(質疑応答)タイでのビザ更新、労働許可証の更新について



1. タイランド4.0時代の人事労務管理―9/19の公開講座から

開催の趣旨:タイ政府はタイランド4.0を目標に、さらなる発展のため、S-カーブ産業(タイの成長をリードする10産業)を推進しています。また、インフラ整備が進み、産業集積がある東部臨海地区3県を、東部経済回廊(EEC)として国内開発のモデル地区に指定しました。EECのインフラ整備に並行してタイ政府投資委員会BOIは、業種、技術に基づく恩典に加えて、EEC地域に対する投資にも税制上の恩典があります。また、競争力強化のため法人税免除、研究開発、人材育成、技術革新に助成金の交付措置も講じています。

一方、タイも少子高齢化社会への突入とともに、大学進学者の減少と、エンジニア人材の不足も懸念されるところです。

そこで、9/19に開催した今回の公開講座では、(1)EECの展開とタイ政府の投資政策および(2)タイランド4.0時代に成功する労務管理として特にエンジアの採用から退職までに関係する労働法について学びました。

添付(英文:PDF)は、(1)EECの展開とタイ政府の投資政策(別添1)と(2)タイランド4.0時代に成功する労務管理(別添2)のプレゼン資料です。

 

  

 

2つのプレゼンに続いて、参加者からの質問を受けて、日系企業代表、タイの地場企業の代表およびタイ人弁護士の講師に回答をいただきました。

 

以下は、主な質問とその回答です。

モデレーター:「第1は、能力の低い役職者を解雇するには、どうしたら良いか? ですが、質問2の評価が妥当かどうか、とも関係しますので、日系企業とタイ企業のそれぞれからお答えをお願いします。まず、日系企業の立場からN社長、また、次のタイ企業としてCさんはどのようにされていますか?」

 

N社長:「社員の評価は、各部門の責任者から評価を上げていただきます。ただし、部門ごとの評価の仕方には、どこを重視すべきか、責任者には注意をしています。例えば、営業など数値がはっきりする部門と、メンテナンスなど、24時間体制で対応する部門では、評価の仕方が変わります。弊社では、自主退職が多く、解雇する事例は少ないです。」

 

Mr.C:「わが社では、各部門に予算を割り当てて、管理者がその中で評価するように指導をしています。もちろん全員同じ評価にならないように、管理者がどのように評価しているかも、幹部は見ていると指示をしております。また、部門ごとに評価のポイントを変えています。製造部門のように全員が出勤しないと業務に支障が出る部門と、出勤率ではなく能力の発揮する開発部門は当然、評価基準が変わります。評価次第で、本人もその部門では昇給昇格が無い、とわかれば、おのずと退職してゆきます」

 

モデレーター:「実務的には、2社からお聞きしましたが、労働法としては如何ですか? 弁護士の立場からお聞かせください。」

 

弁護士:「評価については、客観性があれば良いと思います。また、各項目ごとに記録をして、後日、裁判に訴えられても対応できるように備えが必要でしょう。解雇に関しては、先ほどの講演にもあるように労働法の規定に沿って対応することですね。」

 

 

(写真は、9/19開催のOVTA公開講座の様子)

 

モデレーター:「次は.能力の高い人の採用方法、エクセレント人材の給与はどう決めるか、です。日タイの比較をしていただきましょう。まずはタイ企業ではどうされていますか?」

 

Mr.C:「先ほどの講演にもあるように、人材募集は自社のwebsiteで募集する場合、インターネットで募集する場合、リクルート会社を行きかう場合があります。能力の高い人材を求めるには、リクルート会社に相談して、彼らの意見も聞いて給与を提示しています。」

 

N社長:「わが社では、エクセレント人材は募集してもなかなか集まらないのが現状です。それは単に給与だけではなく、立地やわが社の魅力など、総合的な判断がされるからでしょう。そこで、能力の高い人材を探すには、日本側の本社に相談して、日本から派遣いただくことが多いですね。」

 

モデレーター:「次の質問は、 タイ人の労務管理上でのタブーはありますでしょうか、です。例えば、日本では許されることでもタイでは許されない労務管理上の禁止事項があれば、お教えください。例えば、タイ人は自尊心が高いので、人前ではほめても、しかる場合は個人的に1対1で叱るなど、ありませんか?」

 

N社長:「この点は、先輩からも引き継がれており、わが社でも叱る場合、注意をする場合は別の場所で1対1でするようにしています。」

 

Mr.C:「タブーという概念もあいまいですが、日系企業の抑えておくべきポイントについては2、3申し上げたいことがあります。 第1は、日系企業の理念、考えの基準を入社時にしっかりと説明をしておくことですね。文書で明示されていれば、一番ですが、どうも日系企業の判断が不明確な場合が多く、タイ人はそれにどう対処すべきか、悩む場合が多い。 第2は、通訳の使い方です。経営者の考えをしっかりと自覚したうえで、通訳してくれないと、従業員側の考えを正しく伝えてこない、また経営者の意思が従業員にしっかりと伝えていない場合が多い。通訳は、採用する場合に会社側の理念や考えをしっかりと理解したうえで、働いてもらうことが重要でしょう。」

 

モデレーター:「この点は、法律的には如何でしょうか?弁護士さんは如何ですか?」

 

弁護士:「最初の講演でも説明をしたように、会社の就業規則は、しっかりと記載しておくことでしょうね。解雇の場合でも、どのような場合には解雇するのか、明確に記載してあり、そのルールが破られた場合は、解雇もあると明確にしておくべきでしょう。労働裁判に持ち込まれる事例は、その規定があいまいで、どのようにも解釈がされることから、労働者側から訴えられるケースがあります。」

 

その他の論点もあったが、今回は紙面の関係でこれで報告を終えます。(次月に残りを紹介)

 

 

(写真は、9/19開催のOVTA公開講座の様子)

 

2.企業発展段階とタイおよびアセアンの日本人駐在員の動向について

現在、海外に永住、長期滞在する日本人は135万人を超えています(外務省「海外在留邦人数調査統計」参考)。また、過去の推移をみると日本人駐在員が増える国と、現状維持、または減少する国もあります。今月はタイの引っ越し事情を専門業者に取材できたので紹介します。

 

(質問1)タイに引っ越しをする友人たちの多くがバンコクのスクムビット地区に多くいます。どうして、日本人の駐在員がスクムビット地区に集まっているのですか?

(回答1)確かに、タイに引っ越しをする日本人が住むのはスクムビット地区が多いですね。かつてバンコクのシーロムに多くの日本人が在住していた理由の一つが、繁華街に近く、日本人学校もシーロムに地いところにあったからです。年配の日本人に聞くと、シーロムにあった学校に通ったという方もあります。1970年代後半から1980年代の初頭にかけてタイ進出の日系企業が増え、同時に日本人学校に通う生徒も急増して、ワイヤレス道路にあった旧校舎では賄えず、現在の日本人学校がラマ9世通りに移ったのが1982年です。以後、生徒数は急増し、2018年4月現在で2,631人、教職員229人。生徒の送り迎えは通学用のバス会社との提携で、スクムビット地区を巡回することから、スクムビット地区が日本人の居住が増えました。2009年4月にチョンブリ県シラチャ市に日本人学校が開校されてから、家族帯同の駐在員はシラチャにも増えてきました。

 

(質問2)海外引越の内容はシンガポールとバンコク、またカンボジアやミャンマーとは変わっているのでしょうか?

(回答2)CLC MOVERSのGMの話をそのまま紹介します。 「例えば、個人でシンガポールを拠点に独立する人は増えています。業界としてはIT関連や株や為替のトレーダーが多い、と説明された。その背景は、日本と比較してインターネットのスピードと送金が自由に行えるなど経済の自由さが大きいことがある。一方、バンコクも暮らしぶりはシンガポールと同様に自由であるが、ビジネス面では銀行の送金の規制、情報のスピードなどタイ政府が規制を緩和したとはいえ、まだシンガポールほどではない。また、シンガポールからミャンマー、カンボジアへの駐在員の移動はあるが、バンコクからミャンマーやカンボジアへの駐在員の移動は少ない。なぜなら、ミャンマーやカンボジアでは製造業の立ち上げ準備はあっても、本格操業をされる日系企業が少ない。シンガポールから駐在員は営業や顧客開拓の業務が主体です。もし、タイからミャンマーやカンボジアに駐在員の移動が多くなる時代は、周辺国で製造業の操業が本格化したと言えるのではないか」とのことです。

 

(質問3)バンコクへ移住する人は増えていくのでしょうか?

(回答3)同じく同社のGMの言葉を紹介しよう。 「バンコクは、アジア進出の製造業の地域統括機能が整備されてきたため、まだまだ日本人の駐在が増える余地があります。背景には、円高による日系企業の海外進出の増加で、中国やベトナムも多かったが、タイもその次であった。なぜなら、日系企業の製造業の集積ではタイが飛びぬけており、技術面での優位性があるからです。日系企業の海外展開ではインドやアフリカに駐在員を派遣する事例は今の段階では少ないのです」との回答をいただいた。 タイに駐在する日本人が10万人ともいわれるが、企業の発展段階、各国の産業の集積と発展段階に応じて流動性があるとみられます。


 

(9/26にCLC MoversのGMに取材した様子)

3.日本の介護施設業界の人材不足と海外から求人をするには

日本から、上記に関して照会を受けました。その内容を説明するとともに、海外での人材募集に関して説明します。

(質問)日本政府は外国人技能実習生制度を設け、2017年11月から介護福祉士についてもその対象に加えることになりました。本制度は外国人技能実習生への技能・ノウハウの移転を主目的としているが、他方では我が国の介護福祉士不足の深刻化への対応策としての期待も持たれています。  かかる状況下、S病院は外国人技能実習生を受け入れるべく、各県の病院、社会福祉団体に加盟してもらい監理組合を設立、東南アジア、南洋諸島より外国人技能実習生(介護福祉士候補生)の受け入れ・活用を図る考えがあります。今回の求人により採用する人材は、監理組合の設立業務を担い、設立後は監理組合の役職員となる人材で、各県内の社会医療法人の組合への勧誘、外国人技能実習生の募集、外地での日本語学校の設立等々の業務を担当することとなる。そのような人材をどのように探し出せばよいのか?また、海外から求人をするにはどのように考えればよいのでしょうか?

(回答者A) このテーマは色々難しい課題を抱えていますね! ある面では、新しい家制度という意見もありますね。 封鎖的で、権威主義体制が残る日本の医療市場は、一般的なビジネス社会で生きて来た人に対応出来るのか疑問ですね。日本の医療ビジネスを知る者の意見ですが。

(回答者B)日本で東南アジアの研修生を受け入れて、日本語を教育して看護師を育成する動きはあります。フィリピンなど英語圏では、日本語の勉強をするよりも、英語で働ける欧米に勤務する希望者が多いのが実用です。 一方、日本語を学んで日本で勤務したいという研修生が多い国もあるのが事実です。外国人技能実習制度の変更もあって、長期滞在が認められるようになるとなお一層、日本語研修の重要性が高まります。同時に、同じ日本人でも介護施設での事故が示すように、言葉だけでの問題ではありません。タイ人のように年配者を敬い、仏教国の人にやさしく接する文化をもっている研修生なら、言葉が通じなくても高齢の介護が必要な方への接し方が、おのずと変わると思います。

従い、受け入れ側の経営理念、方針を研修生にもしっかりと指導することが重要でしょう。研修の中で出てくる言葉と内容を理解するには、単に日本語学習だけではなく、日本での生活習慣が身につかないと難しいと思われます。

それだけに日本国内の医療事情を理解し、同時に海外各国の文化、風習、宗教などの違いを超えて、介護に必要な知識と実習を身に着けることができる指導者、コーデイネータを見出すには相当、苦労がかかると懸念されます。例えば、ベトナムやカンボジア、タイでは現地の医療施設と提携して日本人の歯科医の医療行為がされている事例もあります。このような日本人医師と一緒に勤務してた経験者があるような管理者が探せると良いのではありませんか。

 

(写真は、タイの歯科医院)

 

4.タイでのリスクに応じた保険のかけ方―2011年の大洪水の余波はまだ

9/19に信用金庫中央会バンコク事務所主催で標記のセミナーがあった。

講師の取材によると、中小企業の多くが、リスク対応の基本として、火災保険などの対象物の評価が実情と比べて低く、評価しているとの、問題点を指摘された。

そのため、実際に被災した場合に、評価額が低いがゆえに、再建ができず企業の撤退につながるケースもあると説明された。

セミナー会場で出された質問と、講師の回答を紹介する。

 

(質問)講師が説明されているように時価評価で保険加入は当然でもあるが、2011年にタイで大洪水によって被災した企業が、加入した保険会社とは保険支払額がおおむね合意しかかったが、再保険会社の査定で、大きく評価が下がった事例があります。今回の説明では固定資産については大きな差が無いようですが、売上債権などソフトの債権は、誰が見ても合意できる評価があるのでしょうか?

(回答)たしかに2011年の洪水では、再保険会社の評価が当初の保険会社との評価と違ったという事例もありました。そのような場合は、弊社にお任せください。再保険会社と裁判で争うことも可能です。

 

(質問)2011年の洪水で大きな負債を受けた日本の保険会社が洪水保険を受けない、受けても一部しか加入できないと言われていました。それはその後、変化してきたのでしょうか?

(回答)たしかに日本の保険会社は一部しか受けない会社がありましたが、タイの保険会社、欧米の保険会社は受託しているようです。よく保険会社の仕組みを研究して加入することも重要ですね。

(写真は、2011年のアユタヤ、洪水になったハイテク工業団地)


5.(質疑応答)タイでの外国人のビザ更新、労働許可の更新について

(質問)当社では、日本人1名が外国人として労働許可を持っていますが、もう一人外国人専門家を採用する計画があります。資本金は300万バーツで、タイ人の従業員は4名です。業種はエンジニアリングで、タイ投資委員会BOIの許可を得ずにタイに進出しています。次のビザ申請と、労働許可取得前に準備することはありますか?

 

(回答)タイ投資委員会BOIの許可を得て進出すると、税制面の恩典とは別に、土地取得や労働許可が別枠になることもあります。確かに、申請手続きとBOI特有の許可など煩わしい反面、移民局と労働省の許可がワンストップでできる便利さはありますね。今回のエンジニアリング業としては、タイランド4.0を進めるうえで、海外の技術移転を促進する意味があると思われます。特定の分野、特定の専門技術者であれば、BOIと相談の上、Smart VISA制度適用の可能性があるか、どうかの確認は必要です。

(参考) https://www.boi.go.th/index.php?page=detail_smart_visa

 

ここでは、一般論を説明します。

資本金200万バーツおよびタイ人従業員を4人雇用して、1名の外国人のビザと労働許可が取得できます。今回、2人目を取るためには、資本金を400万バーツにして、従業員を8名にする必要があります。

最初は、ビザ申請です。それまでに上記の基準を満たせますか?

必要な書類はイミグレーションのウェブサイトでも説明をしているように、会社の決算数値、過去3か月の税金の納入が確実にしていることなど、書類を整える必要があります。

申請書には、タイ人にどのような技術移転ができるか、説明を求める欄もあります。

最初の許可が3か月で、3か月の滞在後、延長申請をします。

労働許可に関しては、ほぼ同じ書類が必要ですが、こちらは書類内容に不備がない場合、1年の労働許可をくれる場合もあります。

最初から外部の専門業者に任されて申請する方もありますが、社員とともに順序を踏んで書類を整えると、タイの制度の仕組みがよくわかります。

例えば、コピーをした書類には、前ページに代表者のサインが必要など、日本のハンコが如何に便利かがわかるでしょう。サイン文化一つをもって、海外でしか経験できない体験となると思われます。また、入国前のビザ取得については、日本のタイ大使館や領事館で相談をされることをお勧めします。

なお、10/5のバンコクポスト紙で、移民局の幹部が閑職に移動された記事が1面に紹介されていました。その背景は、ビザ申請を代行する業者と移民局の幹部が癒着をしていた、という疑いがあったからです。タイの軍事政権になって、従来の癒着構造を正そうと、努力している一環だと思われます。あらゆることに正々堂々と手続きをして、本業でのご活躍を祈ります。

 

(写真は、タイ移民局の受付の様子)

 

以 上


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