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タイ

作成年月日:2018年9月

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タイ国情報 2018年8月

1.人材不足の真の原因を確かめたのか?

2.日系企業の賃金について(8/9JCC賃金説明会から)

3.物流業界の人材不足と自動化、機械化について

4.タイでの冠婚葬祭について

5. タイ人が経営参加しているタイ企業から何を学ぶか

6.(質疑応答)外国人を採用する場合の考え方



1.人材不足の真の原因を確かめたのか?

「人手不足が続き、現場が疲弊している…」、「専門性の高い業務に卓越した人材がみつからない…」など、タイに進出して年数が浅い日系企業から、相談を受けることがある。では、それは真実なのかどうか。真の原因が何か、探して見つける必要がある。例えば、これらの原因のひとつとして挙げられるのは、単純な人手不足ではなく「働きがいや成長を感じられず、仕事に自発的に取り組むことのできない人材」が増えているのではないのか、です。

次に、タイ進出の年数が浅い企業が、専門性のある経験者を自分たちのネットワークで探すのは難しいものがある。そのような場合に、助言するのは3つの方法です。

1)自社のホームページに、必要な人材を募集すること。

2)タイにある日系の人材紹介会社は60社近くあり、それぞれ専門分野があります。その中から、必要な登録人材があるかどうか、確認して、あればその紹介会社を利用することです。

3)従業員から必要な素質も持つ人材を見つけて育成する、方法です。

 

3)について補足する。多国籍の欧米企業では、職種ごとのマニュアルがあって、空きポストがあると、まず社内で情報を公開して、希望者が応募できる仕組みがある。

ただし、大きな企業という前提であるが、タイ人の中でも入社した時点からもこつこつ勉強をして、折があれば他社に転職する社員もある。その社員にも、必要な素質があれば、社内で空きポストに応募できる仕組みがあっても良いのではないか、という点である。

タイに進出した日系企業で、そのような社内での人材流動を考える企業は少ないが、従来のやり方にこだわらないで、必要な人材をさがしてみてはどうだろうか。

 

 

(写真は、アセアンの拠点強化を模索するD社)

 

2.日系企業の賃金について(8/9JCC賃金説明会から)

バンコク日本人商工会議所JCCの各種説明会で大人数を集めるテーマの一つは賃金である。

8/9にバンコク市内ランドマークで行われた賃金説明会では、4月に実施されたJCCの賃金調査で1,764社中、568社の回答を得た調査でもある。 賃金の結果については、JCCのwebsite;www.jcc.or.thおよび出版物があるため、ポイントのみ紹介すると以下の通り。

 

1)回答企業の従業員規模、568社の内容は、正規従業員が製造業201人以上の企業が63%、非製造業の50人以下の企業が67.5%である。従業員数では、製造業で増加した企業が多く、非製造業では変わらない、と回答した企業が多い。

 

2)外国人労働者の増加、製造業では、外国人従業員の雇用が増加している。CLMV(カンボジア、ラオス、ベトナム,ミャンマー)国籍の外国人を1名以上雇用している企業は製造業では7.5%で前年並みであったが、従業員の数は17.0から27.0と増加傾向である。また、従業員規模の大きい企業ほどCLMVからの従業員雇用に積極的である。非製造業でもCLMVの雇用は3.7%から4.7%になっている。現地採用は製造業は46.7で前年並み、非製造業は42.5%と微増している。

 

3)賃上げは4.0-5.0%:過去4年間(2015-2018)の初任給の変化では、製造業、非製造業とも高校(MS6)卒業から大学院(M)修了まで大きな変化はないが、増加傾向にはある。中でも、高卒、職業高校卒(TC3)のワーカーの伸び率は高い。

 

4)実在者賃金:製造業のサンプル数が多い正規従業員101-500人の企業では、部長クラスの賃金(中央値)は次の通り。技術系10万バーツ、事務系10万バーツ、営業系10万6,250バーツとなっている。非製造業でもサンプル数の多い正規従業員が20人以下の企業で、部長クラスを比べると、技術系6万8,650バーツ、事務系7万1,700バーツ、営業系8万2,000バーツであった。

 

5)当日の会場での質問があった。「資料では、日系企業とタイの地場企業の比較されたものがあるが、タイの大手企業や欧米企業と比べて、日系企業の賃金水準は高いのか? タイの大手企業と比べると、従来は日系企業の水準が高い時代もあったが、今ではタイの大手が相当な初任給を提示しており、日系企業が優秀な人材を囲い込むのが難しいのではないか?」 回答「今の質問では、日系企業の水準がタイ大手や欧米企業の給与水準と比べて低くはないか、との質問であるが、手元に正確な資料がないため、正確には回答ができない。従って、日系企業の給与水準が低く、優秀な人材が集まらない、ということは言い切れない」

 

6)今回の調査では@2019年に施行予定の国民年金基金(National Pension Fund、NPF)の加入義務化の認知度や、A制度開始に伴う負担、影響の度合い、B日本人駐在員の抱える社会保険料の2重負担についても調査をされた。

 

詳細は省略するが上記の3点については、次の通り。

 

@ 知っている企業:293社(53.3%)、知らなかった企業:257社(46.7%)、合計550社。

A 負担の影響、負担額は低額が予想され影響は少ない:154社(68%)、負担が一定額以上になると見込まれ影響は大きい:71社(31.6%)合計225社。このほかに未回答も多い。

B NPFができても影響が生じない:244社(52.7%)、現在は影響がないが、NPFが義務化されると影響がある:219社(47.3%)、現在の影響があり、NPFによりさらに影響が生じる:0社、合計463社。


 

(8/9のJCC労務委員会の説明)

3.日系企業とのコミュニケーションの壁を(タイ企業からの課題)

8/29-8/31に開催されたタイ商業省など主催のThalogistics(物流業界の展示会)で、業界の省力化、機械化に対するトレンドを日系とタイの地場企業に取材した。

I社のO物流システム課長に最近の動向をお聞きした。「タイ企業から自動化のニーズは高まってきた。特に、冷凍物流面では典型的である。背景として、従来水産加工業の底辺を支えてきたミャンマーからの労働者が、母国の産業発展とともにタイに永住せず、母国に帰るという動きがある。その予防的な意味合いもあって、手作業を削減させたいという動きがある。」

D社のU部長の話も伺った。「弊社はタイ進出が速かったこともあり、顧客の80%がタイの地場企業で、残りが日系企業の支店や工場である。タイでは、自動車部品業界の物流倉庫の自動化、保管効率向上に役立ってきた。」とい実情を聞いた。

また、タイの物流機器メーカーにもロボット化など推進する様子を伺った。

タイ上場企業ではE社が、工場や倉庫の改善を一貫して対応できるとして、物流のシステム全般を売り込んでいた。課長に尋ねると「最近はタイ企業からの引き合いが増えている。商品の受け入れ、棚置き、ピッキング、包装などのすべての場面での効率化が対応できる。システム設計からロボットの導入まで一貫して受注できるのがわが社の特徴である。受注金額としては、ロボット10台を含み100万バーツ単位での相談案件がある。」

同じくタイ企業のM社が自動倉庫の実績を示す展示をされていた。同社のKエンジニアリング・営業課長に尋ねると「2004年のタイ国際航空をはじめ、タイポスト、缶詰工場、食品工場などの事例を示すとともに、日系としては日用品メーカーのL社の物流倉庫の事例があると、具体的な説明がなされた」。港湾、空港、物流企業も出展しており、各社の特徴をアピールされていた。

会場の正面の特設展示では、スマート農業(ファーミング)、農業の革新や、農産物の新しい流通革新を目指している展示があった。タイ政府が掲げる産業振興の長期戦略としてのタイランド4.0では通信規格を現在の4.0から5.0まで引き上げたい。何が変わるかの代表が農業。Smart Farmingでドローンの活用、生産者が、バイヤーの意向に沿って生産管理ができる時代になる、を謳っている。

大きな背景としては、タイの少子高齢化の影響で、大卒の減少など、タイランド4.0時代のエンジニア不足、CLMVなど周辺国からの移民労働者が、周辺国での就労機会の増加、生活水準の向上により、永住しないなどの長期を見据えた対策として機械化、省力化を進めている。

 

(写真は、8/29から開催のThailog(物流展)の様子)

 

4.タイでの冠婚葬祭について

タイの生活が長いと、いろいろな場面でタイ人の冠婚葬祭の場に出会う。中でも、誕生や、成人という場は、家族だけで行われるが、葬祭の場は、その方と縁がある方々の最後のお別れの場でもある。タイ人の多くが仏教徒であり、我々が葬祭の場として伺うのは寺院が多い。

日本との大きな違いは無いが、通夜が数日も続くことが多い。前国王が2007年10月に崩御されて、火葬の儀まで1年近くかかったように、タイの高位の方の死去から葬送の儀式まで数か月もかかる場合もある。この点が、日本とは大きく異なる。

次に、通夜の施主は、喪主が担当するのではなく、家族、親せきはもちろん、勤務する会社、学校など故人が関係した諸団体が通夜の担当をする。僧侶への捧げもの、参拝者への軽食など、施主に代わって担当するので、社会的な地位が高い人はその関係団体だけの通夜が続くのである。

結婚式は、招待された方が参列するが、通夜、葬儀は知人、友人など誰が参加してもよい。もちろん、新聞で告知される方もあるが、多くは喪主または関係する諸団体から連絡がある。

バンコク市内では、有名な寺院がその告別式の場となることが多い。

たまたま、8月にタイ人の友人の母親が80歳を過ぎて逝去されたので、約1週間ほどの通夜の最終日にお参りをした。

故人の経歴を聞くと、国立マヒドン大学、付属病院の有名な歯科医で、葬送に際しても王室から火葬の火が届けられたほどの方であった。

服装は、黒または白の制服かスーツ。喪主が公務員であったので、公務員の制服で喪章をつけて参拝者に挨拶をされていた。僧侶も、奇数の7人、9人またはそれ以上と多く同席をされていた。読経の後、我々が焼香となると、待合室から、火葬場の前に焼香の壇が設けられて、順次参拝、焼香を終えて、喪主とのあいさつの後、帰宅したのである。通夜の際に、関係団体から花輪を送る場合もあり、参拝だけでもよい。故人との関係次第である。


   

(写真はタイ企業の代表者の親族の葬儀の様子)


5.タイ人が経営参加しているタイ企業から何を学ぶか

8/9のJCC賃金説明会の後半に、タイ企業で働くタイ人がいかに積極的に経営に参加しているか、チュラロンコン大学のクリテイニー・ポンタナラート助教授から講演があった。日系企業が多く参画する会合で、なぜタイ企業が成長しているのか、なぜ日系企業にはそのような仕組みができないのか、考えさせる内容であった。

 

事例となった企業は2社。

 

(1)1社は、BBQ Plazaである。大型ショッピングセンターにはほとんど出店をし業界NO.1の焼き肉チェーンである。現在の経営者、2代目のチャタヤー・スパンポンさんが引き継いだ時に、驚くほどの変化を行った。まず、社名をバーベキュープラザからフードパッションに変更。焼き肉を売るのではなく、食を通じた幸せを売る仕事だと全員に伝えたかった。また、自らはCEO(Chief Executive Officer)を変えて、Chief Engagement Officer(CEO)とした。社員に配慮し、社員にビジネスに参加させると、常に自分に言い聞かせている。CEOは社員を幸せにするために、新しい社員のための歓迎パーテイ、一つ釜の飯を食べる会、を開催するなど多くの社員イベントを開催。

同時に、職場の環境改善にも取り組み、レストランの各支店には「パックサバーイ」と呼ばれる小さな休憩室を設置。工場では、運動ができる庭を用意。本社ではマッサージ師に来てもらい会社でマッサージが受けられるようにした。社員の子女を対象に、奨学金や社員の職業訓練学校の進学奨学金も用意をした。お金をかけなくても、真剣に誠意をもって社員と接すれば、社員は気持ちを開いてくれる。同社は、景気が不安定な中でも、ここ5-6年の間に128%拡大し、継続的に成長をしたのである。純粋なタイ企業としては初めてThailand Best Employer Awardを受賞した。

 

(2)もう1社は、「すいか」というアパレルブランドの会社である。現在、同社の従業員は1,000人を超えて、さらに成長を続けている。その秘訣は、何か?

タイムカード(就業時間は決めない)で、目標の生産量はチームごとのミーテイングで決める。退社時の身体検査もない。社員を信頼して、会社のものを外に持ち出すことはない。興味深いのは、従業員の採用方針。採用基準は「その人がお母さんを愛しているかどうか」だけ。社長のアマラーさんは母親思いの人は悪いことをしないし、責任感があるとみている。タイでは、母親に月給の一部を送るという慣習があり、母親思いの人は働き者であるという。

一般的な縫製工場は、普通の作業場に扇風機があるだけで、エアコンがあればましといった程度。しかし、アマラー社長は、職場を社員の家にしたいと考えた。会社の最もきれいな場所を従業員の作業場にした。壁はガラス張りにして、従業員は作業の合間に、戸外の木々や花、川を眺めることができる。

従業員が1日中働くと疲れていることを会社が理解して、1日3食用意するだけではなく、家で待つ家族のために持ち帰りできるおかずまで用意をしている。日系企業には5Sがあるが、同社には2Tがある。Thong Kham(お金)とThi Din(土地)である。従業員に資金計画を立てるように指導をして、生活の安定と、定年後の貯蓄のために2つのTを買うように勧めている。アマラー社長は「幸せな心は良い仕事に結びつく」をビジネスの基本にしている。そのため、従業員の食事、住居、職場を整えて、従業員が気持ちよく働けるようにしている。同社の退職率はとても低く、従業員からこの会社は働きやすいという評判で、就職を希望する社員が多い。

 

上記の2社の事例を見ると、タイ企業では企業を家族として運営することが重要と思われる。そう考えると、タイ進出日系企業の人事管理は難しく考えない方が良いのではないか、とも思える。

 

実は、講師が取材された企業で学ぶべき日系企業もあると紹介された。筆者は2011年にタイの洪水で工場全体が冠水して、工場をアユタヤから洪水の危険が無い東部に移転しないか、洪水の翌年に当時の社長にお尋ねしたことがある。その時、社長は「洪水の時に、我が家の洪水にも関わらず、工場に寝泊まりして会社を守ってくれた社員がいる。この社員がいる限り、この地を離れることはできない」と言われたのである。この日系企業はロジャナ・アユタヤ工業団地にある。助教授が同社を訪問された際に、日本人がまったくいない状態でタイ人だけでマネジメントしている姿をみて、日系企業にも学ぶべきだと言われた企業でもある。何が、違うのか?賃金、労働条件だけ良ければという経営と、人間として従業員と付き合っている経営との差ではないのだろうか?

 

 

(写真は、8/9に開催されたタイ人が経営参加する企業の事例)


6.(質疑応答) 外国人を採用する場合の考え方

(質問)当社は、今まで日本人が1名いるだけで、あとはタイ人従業員で運営をしてきました。このほど、パキスタン人を営業課長として採用することになり、外国人が2人目になる予定です。この場合の手続きなど、お教えください。ちなみに、弊社は商社としてタイ政府投資委員会の投資奨励企業ではありません。

 

(回答)タイで、外国人が働く場合はビザ取得とともに労働許可の取得が求められます。

まず、最初の採用する企業の業種、資本金と従業員の要件があります。

製造業では外資100%が認められていますが、外国人事業法が改正されると言われているものの、商社、卸売り業では過半数がタイ人の資本が必要です。資本金については外国人1人当たり200万バーツの資本金が必要だと言われます。また、外国人1人に対してタイ人の雇用が4人求められます。御社は、従来の日本人に加えてパキスタン人を採用するわけですから、8人のタイ人がいることになります。

タイに入国する前に、出身国または周辺国のタイ大使館で、就労するためのビザ(一般的にビジネスビザと言います)を取得して、タイに入国してください。イミグレーションで3か月の滞在許可が与えられます。

次は、労働許可です。会社から推薦状をもらって、もよりの労働事務所に赴いてください。健康診断書など、必要な書類は労働事務所の窓口でタイ語または英語の説明がありますので、それに伴う書類は準備してください。

申請すれば、数時間で許可証が出る場合があります。ただし、ビザの滞在許可期間だけで、ビザを延長する際に、労働許可所も再度、申請が必要です。

このように説明すれば、簡単に取れると思われますが、民政から軍事政権になって手続きが厳しくなった、という方があります。それは、会社として税金が直近の3か月納税していること、社会保険料も正しく納入しているという証明が、それぞれ税務署、社会保険事務所から入手して、申請書類に添付する必要があります。

ただし、賃金説明会の説明でもあったように、CLMVの労働者に関しては、上記の条件ではなく、建設業や水産業など労働集約産業でタイ人の雇用が難しい場合は、別途、労働事務所に相談をされては如何でしょうか。

 

(写真は、タイ政府労働省)

 

以 上