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タイ

作成年月日:2018年8月

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タイ国情報 2018年8月

1.現地化―アセアンの拠点強化には人材育成も

2.AI/IoTをタイの日系企業が活用するには

3.日系企業とのコミュニケーションの壁を(タイ企業からの課題)

4.東部経済回廊EEC開発と域内の日系企業の課題と対応

5.(質疑応答)日本の食品や化粧品を販売する会社を設立するには



1.現地化―アセアンの拠点強化には人材育成も

タイ進出の日系企業の製品の展開にはいくつかのStepがある。

1) 市場開拓、輸出先としての市場開拓(現地で受け入れられる商品に絞り込む)

2) 現地生産(基本設計は日本)

3) 生産の難易度の低いものから現地設計と生産(日本の支援)

4) 順次、難易度の高いものへの現地設計と生産(市場の高度化に応じての対応)

5) 現地から海外展明へ

 

今回訪問したF社は、1988年に会社設立をして無停電電源装置(UPS)などの生産を行ってきた。欧米メーカーとの市場での競争が激化する中で、日本の本社では現地で消費されるものは現地で生産する、という現地化をより一層進展させる方針を打ち出した。

現実的には、設計図面は日本から供給するとしても現地で各部材の調達が可能かどうか、検討を始めた段階である。タイ政府投資委員会(BOI)などの協力も得て、順次現地のサプライヤーを探しているが、生産と調達の経験を持った人材を現地で育てるのは、これからという段階である。次に人材育成の課題は、この調達部門の人材をどのように育てるか、部材ごとの現地化を進める中で、現地化は日系企業の共通の課題でもあるが、人材育成とは切り離せない課題と思われる。もちろん将来的には設計図面を現地で起こすことができる人材も育成をしたい。そのためには、上記の必要な人材をどう育成するか、日系企業共通の課題でもある。

 

 

(写真は、アセアンの拠点強化に工場を拡張するF社)

 

2.AI/IoTをタイの日系企業が活用するには

7/6にJBTH社主催の特別セミナーが開催されて「IoT/AIがビジネス活用の実際とセキュリテイ」の講演を日経BP社のフェローで桔梗原富夫様から伺うことができた。

内容は、1)進展する第4次産業革命、2)身近になったIoT、3)IoTがビジネスモデルを変える、4)AIはブームから本物に、5)セキュリテイには重要な経営課題、など学ぶことができた。

その後も、ソフト開発会社のセミナーや展示ブースでの意見交換もありタイの日系企業の取り組み方なども一端を伺えた。

一言でいうと、大手日系企業はかなりIoTの導入も進む一方、タイにある日系の中小企業では単独で導入するにはシステムのわかる人材がいないことから、トップの思うスピードについてゆけるかどうか、不明である。

むしろ、タイの大手企業の導入されるスピードが速く、タイの日系企業がイノベーションに結び付くには時間がかかると思われる。これからの技術革新には、横並び意識(護送船団)ではなく、いち早く取り組んだ企業が成果をあげる。情報確認はTOP自らの責任で、情報を集めるべきだと思われる。スタッフ任せでは、導入の決断が遅れるのである。

海外での新規事業進出、導入にはトップのリーダーシップが欠かせない課題でしょう。

 

(写真は、7/6に開催されたAI/IoTセミナーの様子)

3.日系企業とのコミュニケーションの壁を(タイ企業からの課題)

7月中旬に訪問したタイ企業のM社は、グループ全体で日系企業とも合弁を結ぶなど日本との関係が深い企業グループである。そのうちの1社は代表取締役CEOが戦後、日本で勉強をしたこともあり、日本語を自由に話せる。2代目の社長COOは、タイの一流大学を卒業し、米国のボストンにあるMITのマスターコースを終了したが、顧客の多くが日系企業だということからタイに戻り、地元で日本語を学んでいる。

先日もM社を訪問すると、営業のP氏とは、タイ語と英語、CEOとは日本語で、COOは挨拶が日本語で交わしたものの、内容は英語での意思疎通であった。

CEOから2代目の指導をしてやってほしいとの意見も受けたが、タイの一流大学、米国もボストンのMITのマスターを終了したCOOに指導することはないと、答えた。

しかし、CEOからはタイ人が日本語を自由に話せるといっても、日系企業の窓口は簡単には開かない。やはり、日本人の営業か紹介者があって、そのあとなら我々が出て行っても、商談に結び付くが、日系企業の窓口は堅い、との意見も伺った。

たしかにタイではビジネスはオープンで、日系、地場、欧米系とどこでもビジネスにつながるが、それぞれの文化を理解した上でのスタートになるため、簡単に取引が開始できるとは限らないことも事実である。

日系企業との付き合いが長いタイ企業から上記の意見もいただくのであるから、日系企業がタイ企業の窓口を開けるには、それなりの覚悟が必要だと理解できる。

例えば、タイ進出の日系企業が日系企業だけの取引で行く場合と、地場企業や欧米企業の難しい窓口を開けて取引をする場合では、どちらが企業の持続性、成長性が高いのであろうか?

タイの自動車業界は80%が日系で占められているといっても2次・3次のサプライヤーの半分近くはタイ企業である。そこに食い込まないで、タイでのビジネスの成長が難しいのではないか?今後のタイ人の採用計画では、日本語ができるだけを優位に考えるのではなく、本人の資質とやる気をどこまで見極めて採用するか、この点が重要だと感じた次第である。

 

(写真は、日系企業との取引が長い地場企業の製品)

 

4.東部経済回廊EEC開発と域内の日系企業の課題と対応

企業が成長するために必要なのは新しいビジネスを創出し、新しい顧客を創出する 事である。そのためには新規事業立ち上げ、既存事業の見直しを成功に導くためのポイントや実践的アプローチを知っている人材は不可欠である。

日系物流大手のN社は、2017年10月にタイを含む周辺国の事業開発拠点をタイのバンコクに設置した。また、タイ政府の長期戦略である東部経済回廊EEC拡大に対応した投資を続けている。N社のトップは「アセアンは2015年12月31日のアセアン経済共同体(AEC)がスタートして人・モノ・カネが自由に動き、経済の活性化が期待される。特に、サプライチェーンの発達により、域内物流の円滑化が期待されている。弊社としては成長をけん引するアセアンの中核であるタイを最重要国と位置付けて成長する消費市場を物流面で支援をする」として新しい物流拠点である倉庫を建設された。

一方、園芸用の道具を生産するS社は「EECの開発やデジタル化やロボット化を推進するタイランド4.0による産業の高度化はタイ経済には貢献するが、タイ人の雇用面では、従来型の労働集約型産業も重要ではないか」と指摘する。

そもそもロボットの操作方法を教えるのは人間であって、ロボットがロボットを育てるのではない。人間の動作、思考をシンプル化して、ロボットに教え込む人材が無いままでは、ロボット化は進まないのである。ロボットメーカーもその点のPR・教育に力を入れるべきであろう。

同時に、タイ人の教育制度、人材供給面ではすでにタイの労働市場は失業率1%程度で、3Kと言われる分野では外国人の労働が避けられない。現在、タイと周辺国の労働省との規定で、正規の就労ビザをもって勤務する周辺国の労働者はすでに160万人程度とみられる。

今後の域内の産業高度化は避けられないとしても、人材供給面ではタイは日本と同様に少子高齢化の影響もあり、周辺国の労働者が欠かせない状況ではある。


 

(写真は日系大手の物流会社N社が新しく開設した倉庫)


5.(質疑応答)日本の食品や化粧品を販売する会社を設立するには

(質問)日本の産地食品や地名ブランドがついた化粧品を販売する会社を設立する計画をしています。食品や化粧品など人間が食するもの、肌につけるものは各国で規制があることは知っていますが、タイではどのように考えれば良いのでしょうか?

 

(回答)食品や化粧品の輸入にはタイの保健省食品医薬局(Food ?and ?Drug ?Administration:FDA)の規制があります。まず、日本のメーカーまたは輸入業者がその許可を取るための準備が必要です。その許可を取る前に食品や化粧品が市場に受け入れられるかどうか、を見極めたいという場合はテストマーケテイングとしてタイで開催される関連業界の展示会などでテストマーケテイングをされることをお勧めします。参考は「世界の見本市・展示会情報(J-messe)」などで調べることをお勧めしめます。

 

1)ご存知の通り、タイで外国人が会社を設立するには3つの規制があります。 まず、外国人事業法では規制緩和の動きがあります。商務省は、外国人事業法(FBA)のリスト3から5種類のサービス事業を削除する方針を明らかにしました。規制を解除して自由競争を可能にすることで、タイにおける貿易と投資を加速させる目的です。この措置により、外国人が商務省から認可を受けずに、これらのサービス事業に自由に投資できるようになります。施行時期が未定ですので、この動きに注目されては如何でしょうか?規制が解除される5種類の事業は、会計、子会社に対する司法サービス、物件の賃貸、子会社への貸与、及びコンサルティング・サービス。従い、直接輸入販売するのはタイ企業(タイ人の出資が過半数50%以上の会社)であっても販売など指導するコンサルティング・サービス会社を外資主導で設立することも可能です。

 

 

種類

条件

具体例

リスト1

特別の理由により外国人による営業が禁止されている分野

絶対禁止(外国人は許可を得ることはできない)

・新聞事業
・稲作、畑作及び園芸
・土地取引

リスト2

国家安全保障、芸術・文化、伝統、工芸品、天然資源・環境に影響を与える事業分野

内閣の承認に基づき、商務大臣が許可

・武器の製造・販売
・タイ芸術・工芸品アンティークの取引
・サトウキビによる製糖

リスト3

タイ人が外国人と対等に競争する準備ができていない事業分野

外国人事業委員会の承認に基づき、商務省の商業登記局局長が許可

・小規模な建設業
・小規模な小売業・卸業
・サービス業

2)次の規制は、外国人の職業規制法です。すでに、2018年7月1日から施行されていますが、食品や化粧品の販売に関する事業との関係では、会計職の規制緩和が1点、参考になります。

 

新しい会社の経営者、管理者の中で、従来はタイ人しか職務を担当できなかった会計の責任者が外国人も可能となるようですから、資金管理など、日本と連携しながらスムースな管理運営ができると思われます。

 

3)その次は、外国人の入国(滞在ビザ)については、設立する会社の資本金や、採用する従業員数で規制もありますので、予め、日本国内にあるタイ大使館などで新会社設立のために長期滞在するためのビザ取得に関して相談されることをお勧めします。 タイで設立する新法人が、投資委員会BOIの恩典付与を申請する予定であれば、事前の市場調査段階からビザ取得で便宜を図っていただける可能性もあります。

 

4)BOIの許可と並行して、FDAの許可を進めてゆくこと重要です。BOI自体の地域総括会社、物流統括会社などいくつかの恩典を取得することとその許可が取れたかどうか、BOIの認可と同時に質問を受けることもある。

 

5)日タイ経済連携協定JTEPAとして、現地生産品の販売会社設立は恩典があります。2007年11月に発効した日タイ経済連携協定(Japan-Thailand Economic Partnership Agreement (JTEPA))によっても一部の外資規制が緩和されている。例えば、タイで生産された商品について、一定の条件を満たすことで、製造業者・グループ企業が卸売・小売する場合は75%までの範囲、製造業者・グループ企業がメンテナンスや修理を行うアフターサービスを提供する場合は60%までの範囲で日本企業が出資することが可能となった。つまり、JTEPAが規定する条件を満たすことで、日本企業は、外国人事業法の許可を受けなくても、一定の卸売・小売業やメンテナンスや修理を提供するアフターサービス業を行うことが可能となる。 (参考)西村あさひ法律事務所 弁護士 東貴裕氏

http://judiciary.asahi.com/outlook/2013092300001.html

 

(写真は、タイ投資の各種情報を提供するタイ国投資委員会(BOI)本部)

 

以 上