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タイ

作成年月日:2018年7月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年6月

1.人材育成、労働問題とOVTAの公開講座のテーマについて

2.タイ人が日本の親会社で働くには

3.東部経済回廊(EEC)構想と人材開発に向けた工業団地の事例

4.事業閉鎖に伴う従業員の解雇をどうするか

5.(質疑応答)外国人職業規制法や外国人事業法の改正の動向



1.人材育成、労働問題とOVTAの公開講座のテーマについて

6月12日のバンコク日本人商工会議所(JCC)の工業団地連絡協議会で、OVTAの公開講座について共催者を求めていることを各工業団地に呼びかけた。この機会に、工業団地が抱えるであろう人材育成・労働問題に関しての課題を紹介する。

 

1) 現在の主な工業団地では、単純労働者の募集は、タイ人だけではなく、周辺国の労働者を採用することで対処しているが、現政権が外国人の就労条件を課してきた。その内容は全労働者の20%以内しか外国人の就労を認めず、それ以上の場合はペネルテイを課すという。

2) タイ政府の産業振興政策でタイランド4.0を掲げている。1.0産業は農業、水産業、2.0産業は軽工業、3.0産業は重化学工業で、4.0産業とは知的レベルの高い、付加価値の高い産業だと定義付けている。その産業振興策に対応するには、大学や研究開発機関との連携が欠かせない。すでに、一部の工業団地は、有名国立大学と提携して、学部の一部を工業団地内に誘致することで、高度人材育成を図ろうとしてきたのも事実である。さらに、それを一歩進めようとする動きもある。

3) 従来型の労使紛争や間違った労働法の理解から、労務問題を引きおこす事例は少なくなったが、逆に、労働団体が企業の従業員を扇動して、労務問題を引き起こした事例はある。

4) 上記のタイで起こるであろう問題を研修会で講師を招いて学ぶだけではなく、工業団地とそこで働く従業員がどのような研修を受けているのか、職業訓練学校の実態を知ることは、タイに来てタイ人労働者との無益な摩擦を起こさない、逆にタイ人を活用するヒントにならないか、などが考えられる。

5) まだ、テーマや特定の共催者が決まっていないが、上記の課題を踏まえて、公開講座が開催できるように準備中である。

 

 

(写真は、タイの職業訓練学校での授業風景)

 

2.タイ人が日本の親会社で働くには

日本で働く外国人が100万人を超える時代になって、タイ人が日本の企業で働く事例を紹介する。

 

1) 日本で留学して日系企業に就職する事例

2) タイ企業に就職したが、親会社の日本に派遣されて日本で働く場合

3) 外国人技能研修制度の一環として、日本の農業、建設業、労働集約型製造業で働く場合、の3点が考えられる。

 

1)については、2000年まではごくまれな事例だと言えよう。例えば、京都大学で学んだ学生が日本の大手化学会社に採用され、その企業がタイに進出した機会に、タイに転勤して、最終は現地の責任者として職責を果たしている事例もある。今も、日本の大学から大学院に学んで、日系企業に勤めたいという希望者も多い。企業からすれば、タイ語、英語、および中国語、日本語など複数の言語が話せる留学生を採用すれば、今後のビジネス上のプラスとなるだけではなく、海外進出の現地の要員にもなってくれる人材となる。

 

2)については、今までは工場立ち上げなどで、タイでは経験できない技能を習得させる目的で、長くても1-2年、短い場合は数か月でタイの子会社から日本の親会社に派遣される事例が多かった。今でもこの場合の研修費が経済産業省などの自補助金が使われることもある。

ただし、一部の企業では、優秀なタイ人を日本に派遣して、グローバル人材として活用している企業もある。タイ工場の現状を理解したうえで、欧米向けの営業を日本で行っているタイ人が働く会社もある。

 

3)の外国人技能研修制度の一環としては、日本政府が従来の研修期間3年を延長して、就労できる制度に改定する動きから、グローバルな視点で、各工場を往来する人材育成も考える時代になった、と思われる。

その場合、日本と諸外国で、労働についての考え方が同じではない、その文化的、宗教的な背景を理解して就労させているのかどうか、タイで日系企業が経験したと同じように文化の違いを理解した労務管理、人材育成が求められる。新たに日本で労働法制が変わった事例として、働き方改革が労働時間管理など今後100万人を超える外国人労働者にどのような影響を与えるのか、今の時点では見えないところである。


 

(写真は、多くの外国人が働いている日本の工場)

3.東部経済回廊(EEC)構想と人材開発に向けた工業団地の事例

タイの軍事政権は2018年2月に新しい憲法を制定した。政治面で軍部の影響を暫く継続させるとともにで、タイの長期計画として20か年の経済戦略を憲法に書き加えた。タイランド4.0を目標に、中進国の罠から脱却を図るため、S-カーブ産業(タイの成長をリードする産業)を推進するとした。また、これまでもインフラ整備が進み、産業集積がある東部臨海地区のチョンブリ、ラヨン、チャチエンサオの3県を、東部経済回廊(EEC)として国内開発のモデル地区に指定した。政府が昨年から提唱してきたEECの法案化への道は2018年5月14日にようやく法案が通過して、公報された。

EEC委員会事務局とともにタイ政府投資委員会BOIが重視しているのは、4つの視点がある。Technology(技術)、Production Enhancement(生産向上)、People(人材開発)、Development of Target Area(目標にそった開発)である。これに沿って、各種恩典が付与される。

この流れをいち早く取り入れた工業団地がアマタ工業団地である。日本の横浜市、スエーデンのストックホルム、韓国のインチョンなど先進のスマートシテイと提携して、最先端の産業を誘致するとともに、そこに進出する企業の人材育成に貢献する大学を誘致している。アマタ・コーポレーションは、CEOのビクロム会長が国立台湾大学(NTU)を卒業した経緯もあって、団地内に設立したアマタ大学がNTUと提携した工学の修士課程を設けることになった。これは、EECエリアへの海外の大学誘致の特例措置を活用したもので、6月19日の閣議でも認可をうけている。政府報道官は、オートメーション、自動運転、スマートシテイ分野の工学研究が中心になると説明をした。修士課程は、NTUが台湾の本校で実施しているのと同じカリキュラムである。講義は英語と中国語。政府は世界ランキング100位以内の大学を誘致する方針で、NTUは世界大学ランキングの72位である。

この大学の卒業生が、タイの経済界をリードする人材に育つにはまだまだ時間がかかるが、アマタ・コーポ―レーションは事業の大きな柱に人材育成を掲げているのである。

 

(写真は、6/18 ASEAN Smart CityNetwork構想を説明するプラジン副首相)

 

4.事業閉鎖に伴う従業員の解雇をどうするか

新しい産業を興す動きとともに、古い産業は静かに去ってゆくのである。

今月は事業閉鎖に伴い工場の売却や、ゲストハウスの経営権譲渡に伴う従業員解雇の実情を直接オーナーからお聞きする機会があったので、紹介する。

 

1) 事業閉鎖と、工場の売却、従業員の解雇

I社は、タイの鉄工所として最盛期は120名あまりの従業員を抱え、顧客もタイの中堅企業から工場設備の注文を受けてきた。2014年には2,500万バーツの売り上げを達成していたが、経営陣の内紛もあり、事業は縮小。2015年に1,000万バーツを割り、2016年には従業員を解雇して事業を閉鎖した。優秀な社員はすぐに他社に移ったが、未熟練労働者は、就労期間に応じた解雇手当を支払っただけで終わった。まだ、工場の設備と工場建屋は残っており、今までの負債を消去するため、売却先を探している状況である。曲がり角となったのは、経営方針の違いから、共同経営者の一人が抜けたことから、事業の衰退がはじまったと言える。

 

2) ゲストハウス部門の事業譲渡と従業員の解雇

同社も、3年前から採算の悪いゲストハウス部門を売却したいと準備をしてきたが、具体化したのは2017年の年末から。従来の利用者、オーナーの知り合いなどのつてを頼って、新規の投資家を募ったが、たまたま従来の利用者で施設もよく知っている方が、知人と合計3名で、新しいオーナーに就任することになった。現在、ゲストハウス部門は新規予約を断り、改装準備になった。また、ゲストハウス部門に従事してきた従業員は、解雇することになった。まだ、残務整理中で、解雇手当も支払っていなかったので、労働法の規定に沿って支払う必要があると助言をした。

もし、オーナーである日本人が解雇手当を支払わないまま、未払いの借り入れなどあると、債務者が警察に届けることで、日本人がタイから出国するために空港に行くと、債務を完了しないままでは出国を止められる恐れもある。今までも、急な事業閉鎖で、出国の際に止められた事例もある、と説明をした。


 

(写真は、閉鎖したゲストハウスの正面)


5.(質疑応答)外国人職業規制法や外国人事業法の改正の動向

(質問)7月1日から40年ぶりに外国人の就労禁止職種が改訂されると聞いたが、内容はどのようなことか? また、外国人事業法の規制業種が変わる動きもあると、聞いたが内容を説明してほしい。

 

(回答)外国人職業規制法の改定と外国人事業法の緩和の動き(サービス業5種の外資規制解除へ)

 

1)ご指摘の通り、労働省が中心となり外国人就労管理政策員会(委員長 アドウン・センシンケーオ労働大臣)が6月21日に会合を開き、40年ぶりの改定を承認した。内容は、外国人の職業規制法は39の職種を禁止していたが、12の職種は禁止リストから外し、一方でタイ式マッサージを新たに禁止職種に加えるため、禁止リストは12減、1増で28職種になります。
具体的には、肉体労働は全面解禁となり、タイ人が嫌がる3K職種には、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどの周辺国の労働者が増える可能性が高いと見えます。条件付き解禁は、農林水産業、建設現場作業、寝具生産、刃物生産、製靴、制帽、縫製、陶磁器生産の8職種は、タイ人の就労機会に影響を及ぼさない限りにおいて就労が許可されます。 会計職、土木工学技師、建築士の3職種は、アセアン統合の合意に基づき、解禁されます。しかし、いずれも法律に基づく免許やアセアンの専門職相互認証制度に基づく認証が必要です。 7月1日から施行され、1か月の猶予期間後は、違反が見つかれば摘発される恐れがあります。

 

2)次に、外国人事業法の緩和については次の通り。商務省は、外国人事業法(FBA)のリスト3から5種類のサービス事業を削除する方針を明らかにしました。規制を解除して自由競争を可能にすることで、タイにおける貿易と投資を加速させる目的です。この措置により、外国人が商務省から認可を受けずに、これらのサービス事業に自由に投資できるようになります。 規制が解除される5種類の事業は、会計、子会社に対する司法サービス、物件の賃貸、子会社への貸与、及びコンサルティング・サービス。「タイランド4.0」時代に向けた政府の取り組みによって変わりつつある経済状況を反映させ、外国人事業小委員会が7月にFBAの付属書類である事業リストの検討・見直しを行う予定です。同省によると、リスト3の変更に関する決定は、承認のため内閣に送付され、9月頃に施行される見込みだといわれています。
また、同省では、小包配達サービスもリスト3から削除することを検討していました。しかし、タイの業者の一部はまだ市場競争に対応できないと考えているという意見が関連機関から出されたため、今回は見送られることとなったようです。FBAでは、外国人の参加が禁止または制限される事業活動について、3つのリストが定められています。また、同法により企業への外国人の出資比率が49%以下に制限されています。

 

(写真は、外国人職業規制法の緩和で外国人労働者が増えると予想される建設現場)

 

以 上