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作成年月日:2018年6月

海外情報プラス

タイ国情報 2018年5月

1. ペット業界の人材育成について

2. (事例) 中小製造業の海外展開と幹部の育成について

3. 在阪中小企業の海外市場開拓について

4. タイの国際食品展でのビジネス提携について

5. (労働法改正の動き) 外国人就労規制、40年ぶりに見直しか



1.ペット業界の人材育成について

5月末にバンコクでPET・EXPO(ペット動物に関する総合展)が開催された。その機会に、日本の関係者が来訪されて、タイでの業界の実情や人材育成、業界の労働環境に関し実情を伺うことができた。

 

(1) 日本のペット業界の労働環境と人材育成

1)中小企業、中小の商店、サービス業が多く、チェーン展開するのはある流通大手の系列店。

2)人材育成に関しては、ペット専門の理容や整体など専門学校もあるが、どちらかというと他の職種に向かない人材が入学して、就職後に業界にそのまま入っている。その意味で、オーナーが、今まで経験して、業界に必要な知識を若手に伝授しようとすると、今の新入社員は、すぐにやめてします。そのため、中国やベトナムから留学生としてきている人材をアルバイトやパートとして勤務してもらう方が、お客への対応もよい。

3)労働環境は、客商売ということから土日出勤で、平日も不規則な勤務体制が多い。人材が定着しないという悩みがある。

 

(2) タイの大手ペット動物病院の労働環境と人材育成

大手T動物病院はバンコクをはじめ12か所の分院もあり、2年前に本格的なペット病院を建てた。診察治療から、ペットの美容、えさ、衣装もあり、ペット病院やトレーナーもいる。ペットに関するワンストップショッピングというところである。労働条件の事例として、ペットの美容師は、初任給が2万バーツで、大卒の初任給よりも高い。しかも、成果報酬もある。従い、土曜,日曜日には120組以上の予約があり、それを10名程度のスタッフで担当する。朝8時から夜遅くなっても、施設の上部階はスタッフの宿舎になっている。また、スタッフは転職しない理由の一つはT動物病院というペット業界では最大手の病院に勤務しているという自負心がある。

いまは、技術的な面、新しいサービスなど日本を含む欧米から導入して、最先端の病院だと言える。一方、日本からの来訪者の動物病院やペットサロンでは、業界に先駆けて開発してきた専門サービスもあるが、総合的なサービスを施す施設にはなっていない。

日本のペット業界の人事育成の重要性は今回の参加者には理解されているが、労働条件の改善や業界のステータスの引き上げ対策は悩ましい。対応策としては、業界の資格を付与する学校を作っている学校もあるが、業界団体が多種にわたっており、一致して人材育成をするにはまだまだ時間がかかるとの説明があった。

 

 

(写真は、タイのある動物病院にて)

 

2.(事例) 中小製造業の海外展開と幹部の育成について

今回は細かな針、ピンを作る技術をもとに、電子部品分野、医療分野、航空機部品分野に進出するD社と、自社ブランドで新しい電気製品を海外で展開するS社の幹部育成の一端を紹介する。

D社は、1990年代から、中国かタイに進出する予備調査を行っていた。しかし、1997年の経済危機のため、1998年に進出する予定が2年ほど遅れて、2000年にすでに進出されていた日系企業の建物の半分を借りて進出した。中核となる技術があったものの、顧客は少なくタイに出てからの顧客開拓である。その後の必死の努力のおかげで、電気部品だけではなく、医療分野や航空機部品にも進出をしている。現地の責任者であるGMは2000年にタイに進出してからの現地採用であるが、タイ人とのコミュニケーションの柱となり、現地化には貢献をされている。日本で短期研修の機会はあったが、もっぱら日本から来る社長、会長の経営陣や技術者からの指導を身につけたもの。

一方、S社の営業展開は、展示会を有効に活用している。タイをはじめ、台湾、メキシコにも子会社を設立しているが、ユニークなのは幹部の採用。タイでは、一度会社勤めをして、自営業を経験した女性が、働きながら学んだ日本語を生かせる職場として進出して人材募集をしているS社に入社した。社長ポストは日本の社長が兼務しているが、実務上はこの女性が責任者。台湾の現地法人も女性である。先日は、日本の営業会議にタイの責任者が参加。日本の支店長会議でも有益な発言をして、国内の支店長クラスにも刺激を与えるほどとなっている。

今年に入り、メキシコに現地の代理店と共同して法人化をしたが、社員は現地代理店のメンテナンス部隊が兼務。直接、S 社が受注してメンテナンスをする場合、日本から技術者を派遣するよりは、代理店のエンジニアが対応する方が早いし、経費も掛からない。

もちろんS社の代理店にもメリットがある方法を考えている。S社の社長は、海外展開を自社のスタッフで賄おうとせず、現地の人材を生かすことが重要だという。

中小企業の海外展開では課題の一つが現地のマネジメントができる人材を社内で見つけられないという企業が多いが、S社のように、現地で探すという方式を考えれば、そのような制約はないわけである。

 

 

(写真は、D社の工場)

3.在阪中小企業の海外市場開拓について

5/16-5/19にタイ政府投資委員会BOI主催のサブコンタイランドに在阪の企業が12社ほど出展された。世話役となった公益財団法人大阪経済振興機構(略称、マイドーム大阪)が、展示会前にタイ政府投資委員会の応援を得てあるホテルの会議室を借りてタイ企業と商談会を開催された。

 

予め、各社の概要を説明するとともに、売りたいもの、買いたいものを提示して見合い相手を見つけるのであるが、業種、業界が異なるため、なかなか良い相手には見るからない。

 

そこで、今回は、BOIの紹介で、タイ企業とも商談会をすることができた。

 

今回、出展した企業は、初めての出展と、数回目の出展者があった。

 

1)100年近い歴史があるT社の海外展開は、同業他社に比べて遅かった。特定の商品が国内市場を占拠したいたこともあり、海外展開にはリスクがあるとして、国内製造に固守したためでもある。しかし、たまたま、ある特定の商品は海外に製造委託をしている。同業他社との市場競争では、同社は値引きをしないという姿勢を守ってきたため、卸、小売り業者からは支持されていたが、消費市場は変わって、通販や大型量販で買われる時代である。ブランドだけに固守しては市場占拠率が下がり、現経営陣の交代時期に、同社がどうなるか、現場の社員はかたずをのんでいる状態。今回タイに出張してきた日本人は1人であるが、輸出担当者として、海外市場にも目を配ってきた。そこで、同社の強みを生かす商材を、なんとか海外での手掛かりを得たいと考えた次第。

 

2)大阪に拠点を持つ中小企業から、数年前に関東にも拠点をもつS社は、次の市場として海外を目指して、今年で3年目である。同社の製品を売るという選択に対して、今回は新しく、同社の製造技術も海外で売れないか、という課題をもってきた。
T社の場合も、自社の製造ノウハウが同業他社にもまねをされると懸念をしていたが、実はそうではない。特許になった製品だけではなく、同社のモノづくりの精神をどのように海外の企業に移転できるのか、今回の展示会で、多くのタイ人から学ぶことができたのである。

 

3)海外の展示会に出展するなど、他流試合をすることで、企業の体質が変わる。海外の一線で、生の声を聴くことが、次の歩みにつながると、考えているのである。
今回の海外展示会の出展を主宰された、マイドーム大阪としては、引き続き、海外展開を支援する、と説明をされている。

 

各地の行政が、今後の日本市場を考えた時に、単純に参加者を募集するだけではなく、プラスアルファが必要である。それは、日本とは異なる市場で、従来の日本で売れた同じ商品やサービスを売るのは難しい。むしろ、各社が持つ、強みは何か、引き出す助言が必要であろう。


 

(写真は、サブコンタイランド2018に出展の在阪企業)

 

4.タイの国際食品展でのビジネス提携について

海外でのモノづくりを経験されてきた企業には言うまでもないが、ビジネスの提携をするには、相手の歴史、文化を背景にした考え方をしておかないと、小さなことで誤解を生じる。

今回紹介するのは、5/29から6/3まで開催された国際食品展THAIFEX 2018に出展された地方の加工食品メーカーO社の事例である。

日本の消費者に好まれる食品が、今では米国をはじめアジアでも普及している。しかし、同社の食品を海外に搬入して、現地で食するには、原料の調達から輸送問題など様々な課題がある。そこで、タイでは、すでに日本向けの食品加工をされている企業もあることから、その中でO社の技術導入、ブランド導入で、成果が上がるかどうか、である。

会期中の限られた中での商談では、意向しか伺えなかったが、米国のNYやアジアではシンガポールでの反響を見て、次のステップを考えたい、とのことである。

その場合、O企業で、海外との交渉をできる人材がどれだけいるのか、どう育てるのか、である。O企業では、今まで海外営業を担当してきた社長の弟であるO専務がこの件を担当して、海外に拠点を作りたいとの意向である。

一方、候補としてのタイ企業B社も日系企業から製造委託を経験していることから、今後の対応を考えている。

すでに他の食品分野でも、日本とタイとのビジネス提携で成果を上げている事例もあり、それらを参考にしながら研究したい、とのことであった。


 

(写真は、国際食品展に出展の日系企業ゾーン)


5.(労働法改正の動き) 外国人就労規制、40年ぶりに改正の動きか

(質問)

日本では、働き方改革法案で、今までの労働時間と賃金の関係が、年収がある一定規模以上の専門職、ハイスキル人材の対応が見直される動きがあります。

一方、タイも外国人の就労を規制する職種について見直す動きがあるようですね。現在検討されている外国人就労規制の改正の動きを説明してください。

 

(回答)

タイで起業することを考えるには、3つの規制があると言われます。3つの規制とは、外国人事業法、外国人職業規制法および移民法です。先月は、労働許可の関係で、短期就労規制について説明をしました。

 

新聞報道によると、5月31日にアドウン・センシンケーオ労働大臣は標記の規制を見直すと報道されています。改正されると、タイでの外国人の就労体制はどうなるのか、また、日本から派遣する人材、周辺国からの移民人材の活用など、どのように考えればよいのか、考えてみましょう。現在、タイの政府が検討しているのは、次のような内容です。

 

労働大臣は5月31日に、土木技師、会計士、建築士などの専門職を外国人に開放する動きについてチャリン労働次官、アヌラック雇用局長と協議したことを認めました。近く、外国人就労管理政策委員会に諮るとのことです。委員会は、政府関係者をはじめ、タイ商業会議所、タイ工業連盟など民間からも委員が派遣されており、委員会が承認すれば、6月30日までに官報に公示して、7月1日から実施したいといわれています。

 

アヌラック雇用局長の説明によると、「タイ人の教育水準の向上から、タイ人が就労を嫌がる未熟練の単純作業や建設現場作業については、許可取得を条件に全面的に開放する。一方、農作業、会計、寝具製造、刃物製造、製靴、帽子製造、土木工学技師、建築士、服飾、陶器製造などについては、雇用主がいて、自営をしないという条件で、許可をする方針」です。

 

政府は、専門職についてアセアンの自由化の動きと整合させるために、就労できないとした法律の規制は取り除きたいという。

 

実務的には、外国人であってもエンジニアリング評議会の定める資格試験をパスして資格を取得しなければならないなど、規制を解除しても問題がない、と説明をしています。

 

しかし、外国人の就労禁止職種から土木工学エンジニアを外すという内容に、タイ国エンジニア評議会は反対意見を表明しています。公共の安全を確保する専門職は外国人には開放すべきではない、という動きです。専門家が不足する場合は、特別法を制定して、限定的に外国人の就労を許可できるとしています。

 

この背景には、タイと中国が共同で開発する高速鉄道プロジェクトに、中国人エンジニアの就労が認められないことから、暫定憲法44条の国家平和秩序維持団(NCPO)の団長命令で就労を許可した事例があります。

 

タイで事業を運営されている方だけではなく、独立開業をされる方、またタイで今後就職を考える方には、規制解除の動きに注意が必要ですね。

 

(写真は、バンコク都と東北部ナコンラチャシマ県を結ぶ高速鉄道、高速道路の建設の現場)

 

以 上


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