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作成年月日:2018年3月

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タイ国情報 2018年2月

1.タイ人の仕事観、ビジネス観

2.2018年の景気動向について(JCC景気討論会)

3.シリントン職業訓練学校に見るタイの少年犯罪と社会復帰

4.自動化が進む設備産業でも必要な人材が・・・

5.(参考)就業規則違反に伴う外国人の解雇手続きについて



1.タイ人の仕事観、ビジネス観

2月になって、いろいろな場面で、タイ人の仕事観、ビジネス観に関するセミナーや意見交換をする機会があった。なかでも2/16に開催されたバンコク信金会での講師(ガンタトーン・ワンナワス講師)の知見が参考になると思われるので紹介する。

 

構成は次の通り。1)日タイの歴史と今後を振り返る、2)タイ国を知る、3)タイ人を知る、4)タイ人と働くこと、タイ人が日本人を知ることについて考える、5)お互いの違いを体感する、という内容。

 

重要なキーワードを4点紹介したい。

 

1点目はハイコンテクスト。日本人とタイ人はいずれも空気を読んで、日々生活をている。ネガテイブなフィードバックを好まず、さりげなく伝えることを良しとする(共通点)

2点目は、タスクベースと関係ベース。タスクベースの日本人は、一緒に仕事をすることで相手がしてくれた行動に対して信頼関係を積み重ねる。一方、関係ベースのタイ人は、一緒に食事をしたり、人間として付き合える相手であるかどうか? で信頼関係が決まる(相違点)

3点目は家族の呼称。この会社が家族なら、あなたは誰ですか? タイの歴代リーダーが使った手法を見習って、上司や同僚、部下を家族としてとらえてみる(階級社会)

4点目は、コミュニケーションの量。タイ人の信頼関係は関係ベースであり、仕事以外の会話が重要であり、質より量を意識して会話をする(関係ベース)

 

これらのキーワードをもとに、タイで仕事をすると、人間関係、コミュニケーションが良くなる、との説明であった。

 

 

(写真は、バンコク信金会の一部。「タイは階級社会が485年間続いていた形骸がある」)

 

2.2018年の景気動向について(JCC景気討論会)

2/2にバンコク日本人商工会議所(JCC)の景気討論会があった。

そこで、紹介された今年のタイ経済の展望、見通しを紹介する。説明は、アユタヤ銀行の鱸副頭取(JCC副会頭)

内容は、1.景気動向に関して、消費動向、貿易動向、観光産業動向、民間・公共投資の観点で分析。2.相場見通しは、為替と金利の動向。3.今後の景気を占うポイントとして、世界経済、農業、民間の設備投資に関しての解説があった。

最後の、景気を占うポイントのみ紹介すると、次の通り。

タイのGDPの7割を占める輸出は世界経済大きく左右される。2018年は中国経済の減速、米国の金融政策、欧州の政治動向に注目すべき。

農業所得に関しては、渇水の影響もあって近年不調であったが2017年は大幅に回復した。2018年は天然ゴムの市況の影響などもあり、農業セクターの上昇余地は少ない。民間投資については、タイ企業が海外投資、特に域内の投資が拡大して対内投資を上回る勢いがある。一方で、対内投資が頭打ちになる恐れがある、との説明があった。

その後、日系企業の景気動向と、自動車、電機、農水産物、小売業界などから各業界についての見通しがあった。

注目したのは、小売業界。中でもE-コマースの伸びが大きい点である。

 

 

(写真は、2/2景気討論会の様子)

3.シリントン職業訓練学校(Nakorn Pathom県)にみるタイの少年犯罪と社会復帰

シリントン職業訓練学校(Sirindhorn Juvenile Vocational Training Center for Boys)は、1994年に日本政府の援助(4.79億バーツ、約20億円のODA)でできた少年院である。しかし、対外的には犯罪を犯した少年を矯正させて、職業教育を施したうえで社会復帰をさせるという意味でシリントン王女の名前を冠につけた職業訓練学校となっている。

 

2/12に、公益財団法人アジア刑政財団(ACPF)と、タイのThailand Institute of Justice(TIJ)など司法関係者が主催となり、同職業訓練学校と国連薬物犯罪対策事務所(バンコク事務所)を視察する機会があって、参加したものである。TIJには元法務省の事務次官が理事長であり、労働省の元事務次官であったMr. Nakornも理事に就任されている。

 

ちなみに、タイの拘置所は全国77県に8か所あって、少年院は全国で18か所、11エリアがある。平均滞在年数は1-2年。少年院には、各裁判所からの判決を受けて入所し、最初の30日間で本人の今までの経緯を教師、看護婦、ソーシャルワーカーなどが調べたうえで、必要な教育計画を個人別に立てる。犯罪の主な内容は、@違法な薬の販売、A傷害事件、B性犯罪、C窃盗など財産関連の犯罪である。犯罪件数はピーク時35,000人あったが、現在、少年院に送られるのは約20,000人。少子高齢化、晩婚化で少年の犯罪件数は減少している。かつては受刑者で少年院は満杯といった状態であったが、今は減少した。そこで、法務省は2017年から少年院の再編成を行い、このシリントン職業訓練学校は高専レベル、大学レベルまでの職業訓練を行なっている。ここの受け入れ条件として義務教育を終えて、高度な訓練がふさわしい少年を受け入れている。他の少年院では、学校教育が満足に受けられずに犯罪に走る少年が多いため、中学や高校レベルの教育を主に行っている。この職業訓練学校は定員216名であったが、2018年現在、91名の収容者である。

 

では、犯罪に至る背景としては、99%の生徒が、貧しいため、問題行動が多いため学校にいけないのが大きな理由である。防止するため、犯罪が起きやすい酒場、夜の危険な場所にはモニタリングをし、また学校と少年院が協力し生徒の様子を観察して、指導も行っている。各少年院は、少年が持つ能力を高めることに重視しているのである。また、学校の教師の指導力も高めることも必要だという。再犯率が2割を超えているが、最大の課題は、犯罪に手を染めない、初犯をなくすのが重要である。犯罪の大きな原因は、@興味本位からという心理面と、A悲しみなど、人間関係の破綻などが大きな原因だとみている。今まで、少年院を卒業し社会復帰を行った150名を調べた結果も伺った。義務教育を終えて、次のような資格を取得できるため、各企業に刑期を終える前にインターンとして派遣される。主な資格は、電気工事、家具製作、エアコン整備、溶接、二輪整備、電気設備技師など。有資格者と生活態度が良いことから求人が多い。1企業から3名の求人募集があっても2名しか供給できないという。

 

さて、指導者であるが、各職業訓練にふさわしい外部講師と、一般教育を施す教師がある。この学校の特色としては、1番になろうクラブ、がある。どの分野でも1番になることを奨励し、少年たちに自信を持たせることを重視しているのである。

 

労働省管轄の職業訓練施設をチョンブリ県、ナコンラチャシマ県で見てきたが、いずれも短期の研修が多く、このように宿初施設もあって、長期に職業訓練する施設での生徒の熱心さに感じ入った。今までのインターン生は合計180名あって、インターンシップ先のオーナーに熱心さが認められて、卒業(刑期を終える)前に、就職が決まるという点に敬服した。これには所長をはじめ、指導者や職員の熱心さと、生徒自身が犯罪から復帰しよう、そのためには何らかの資格を取るという、目標が明確にある、という点であろうか。最後に、日本のODAで建設された施設で、少年たちが更生し、社会復帰している様子を伺えたのは参考になった。

 

(写真は、同学校の校長の説明と右は国連薬物犯罪対策バンコク事務所)

 

4.自動化が進む設備産業でも必要な人材が・・・

2/27に紙パルプ業界のT社のC役員に会う機会があった。内容は、設備拡大基調で、日本製、中国製、台湾製、欧米製の機械をどのように選別して導入しているのか、伺うことであった。 T社では、かつて台湾製の紙すき機を導入していたが、設備が古くなった段階で、日本製の中古を導入し使ってきた。現在、日本製、台湾製を研究するため、メーカーを訪問して設備を研究する段階だという。

 

コストパーフォマンスの良い機械を購入したい。日本製が性能の良いのがわかるが、価格が高い。

 

余計な設備を省いてほしいと要求すると、メーカーの標準機械の装備品を省くと、設計変更になって、標準価格よりも上がる。本来の余計な設備を省くのであるから、安くなると思ったら高くなることは納得できない。そこで、次に目をつけるのは台湾製である。中国製は、タイの企業では導入する会社が少ない。一部は欧米製の機械を導入しているが、それは廉価版を紹介してくれるからである。日本製も、躯体部分は日本で生産しても、電気系統はアジアで生産して、全体で安くできる、廉価版を導入しないとアジアの進出は難しくなるのではないか、との意見もあった。

 

さて、問題は、人材の育成である。同社は、なぜ付帯設備、余分なサービスが要らないか、というと、自前でメンテナンスできる人材が育ってきたからである。日本の場合は、企業のすそ野がひろいため、何か事があると電気設備、機械設備業者が駆けつけてくれるが、タイの地方にいると、何か事があってもそのようなサービスをしてくれる企業はない。やむなく、自前で育てるのである。

 

では、大学卒業生を採用するのかというと、そのような人材はバンコク周辺しか就職してくれない。タイの大学生の希望する企業は次のような大手企業で、また、労働条件が良い企業になる。

 

タイの大学生が就職を希望する企業の100社からTOP5を見ると次の会社名が上がる。 1位 CPグループ、2位 トヨタ自動車、3位 サイアムセメントグループ、 4位 PTT(エネルギー・資源)、5位 タイ航空である。

 

では、就職したい企業を選ぶ理由であるが、次の通り。 1.給与・ボーナスが良い、2.有名だから、3.大企業だから、4.安定しているから、5.福利厚生が充実しているから、6.成長しそうだから、7.イメージが良いから、8.社風が気に入っている、9.自分の能力が生かせる、10.製品・サービスが好きだから、11.国際的な仕事がしたい、12.家族・知人が働いているから、13.トップに顎かれて、14.家族・知人に勧められて、などがあがる。

 

そこで、「タイは失業率が1%程度だから、求人が難しいのではないか」という点を伺うと、タイ全土に人材がいるという。それは、常用労働者の範疇に入らないが、全国各地の大きな道路に枝分かれする細い路地内を走るバイクタクシーの運転手が、工場に勤務してくれると、何万人も労働者が集まるという。彼らは、10年前も現在も収入はあまり変わらない、らしい。月1.5-2万バーツを稼げばよい方である。しかし、T社では、例えば、18歳で入ると、5年後は大卒と同じ給与を出す。また、10年間勤務すれば、それなりの昇給もあって、2倍近くにはなる。これに引き換え、バイクタクシーの場合は、10年間、収入の増加は考えられない。彼らに工場勤務の方が、将来性もあって良いという、指導をする方がいないのか? と日本人に逆提案を受けたほどである。

 

タイの失業率の計算は、農業やバイクタクシーなど自営業とみられる職業は常用労働者に換算しない。そのため、工場労働者をやめても、労働省の職業紹介所などに登録しない限り、失業者と換算されないのである。

 

最後に、C役員は、自動化が進んでも人間が必要なことはどの工場も同じである。高度な人材も必要だが、技能を持った職人も必要だという。我々が、必要な分野ごとに必要な人材を見極めることが重要であろう。

(写真は、T工場)

5.(参考)就業規則違反に伴う外国人の解雇手続きについて

(質問)

弊社の外国人セールスマンH(採用して6か月目)が、企業秘密を協力工場に漏らしたことから、仕事上で支障が出ている。即日、就業規則違反として解雇したが、解雇手当など法的に必要な金銭面の支払いと事務手続きは何か、ご教授願いたい。(T社))

(回答)

H氏もタイの労働法の規定に沿って解雇し、解雇手当を支払わねばなりません。

 

通常の解雇では、給料日前の予告と、1か月後の解雇が必要となりますが、企業秘密を洩らしたかどうか、となると証明が必要です。窃盗や事故など明らかに企業および従業員に危害を加えた場合など明確な証拠があれば、解雇手当なしの解雇もあります。

 

しかし、企業秘密を洩らした、という点については、一方的な証人だけの判断では、H氏も労働裁判所などに訴えて、不当解雇を主張する可能性もあります。その場合は、企業として、労働裁判の最終の結論が出るまで、長期化すればするほど大変です。経営者、人事担当者および弁護士の費用を考えると、相当な時間が拘束され、弁護士費用もかさみます。

 

そこで、2015年11月のOVTAセミナーで報告されたM経営者の言葉を紹介します。

 

「従業員の解雇では、感情的になってはいけない。即解雇をしたことも1,2件ではないが、いずれの裁判も、会社側が負けている。従業員側は、経済的にも苦しいと言われて、裁判官から和解を勧告されてきた。敗訴ではないが、実質、従業員に金銭を支払って退職してもらったようなものである」

 

今回の事件を伺うと、従業員に非があるようですが、それを裁判で証明するには従業員の反論で、長期化する恐れもあり、通常の解雇手続きをされることをお勧めする。

1)6か月勤務であるから、解雇手当は給料の1か月分。

2)今回のように、予告なしに解雇した場合は、予告に代えて1か月分の給与相当を支払う必要があります。

3)その他、未払いの給与などあれば、合わせて支払っておくことです。

 

なお、外国人従業員ですから、会社としては本人に付与されたビザおよび労働許可を関係官庁に報告して、無効にすることが必要です。ただし、本人が不法滞在を引き起こすことのないように、あらかじめ数日から1週間程度の余裕を見て本人にも通告しておくべきでしょう。

(写真は、2015年11月に実施したOVTAセミナーの様子)

 

以 上


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