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タイ

作成年月日:2017年12月

海外情報プラス

タイ国情報 2017年11月

1. 中堅企業の幹部海外研修について

2. 国際企業の現地調達の条件について

3. タイと日本の高齢者、活躍の場の違い

4. タイ進出日系企業の従業員教育と生産性向上

5. OVTA公開講座「少子高齢化時代と現地化に向けたローカススタッフの戦略強化」

6. (質疑応答) 治安の悪い地域に進出する企業の安全対策―メキシコ進出の場合―



1.中堅企業の幹部海外研修について

東京に本部を置く段ボール工業組合が主催して、毎年、中堅幹部クラスの海外研修を行っている。2016年のベトナムに次いで、2017年はタイが視察先になった。

組合の希望では、タイの段ボールの原料である原紙メーカー、段ボールの加工メーカーとの交流から、長年親しんできた自分たちの仕事のやり方、考え方に拘らず、新たな視点で、自分たちの仕事のあり方を考える機会を与えてほしい、とのことであった。

そこで、現地の業界事情を調査して、候補企業を上げて、主催者と協議して決まった2社を訪問することになった。また、別の1社には訪問する時間が取れなかったが、幹部クラスと日本からの参加者が交流する機会をつくることができた。

 

参加された幹部からは、タイと日本では、原料調達や、製造過程での省エネ、排水を含む環境問題など共通する課題が多いこと、同時に経済成長の過程によるが、需要の内容が日本とタイとは相当、違いがある理解できた、との感想があった。世界の市場の動向を掴み、その流れを生かしているのがタイの企業かもしれない。

 

例えば、大消費地である中国から古紙が海外に出ず、古紙を含む資源の海外流出が制限されたことから、中国国内の紙価格が上がっている。それに供給できるのはタイの大手パルプメーカーである。従来は、タイの国内市場が高値で流通していたのが、さらに高い価格で購入する大きな市場が生まれると、そこにタイから流れるのである。このような大きな紙流通の動きをタイに来て、生の情報に接することも参加された中堅幹部の大きな刺激になった、と思われる。業界によれば、国内市場を中心に成り立つ業界もあるが、時には海外の生の動きを知ることから、従来の仕事のやり方を考え直すヒントになるのである。

 

(写真は、11/15に視察した現地企業)

 

2.国際企業の現地調達の条件について

日系企業S社の要請で、海外企業の調達部門を訪問。特許をもつ優秀な商品を紹介したいという日系の要望に対して、国際企業V社では商談を進める前に、お互いの守秘義務を約束してからでないと、自社で製造する製品の図面や必要なSPECを明かすことができないとして、まず、協約の締結からスタートをする。そのためには企業としてISOを取得することはもちろんであるが、客観的に、企業が優れた技術を持つという証明を求められた。

ともすれば、日系企業では紹介者があれば、守秘義務協定を結んでからというのは特許製品や図面の公開などの段階からであって、最初から守秘義務協定を結ばないと商談に入らないというのは少ない。逆に言うと、日系企業において、ノウハウ、製品の特色の公開などは宣伝の一環と軽くとらえることが多いが、海外では、自分たちの権利や特色を保持する意識が高いことを学ぶのである。

ちなみにS社は、国内特許だけではなく、商品を展開する各国でも特許を申請して、製品の独自性を維持し、他社の追随を許さない、という姿勢がある。

海外企業では当たり前のことが、日本では少ない事例であろう。

海外ビジネスの商習慣の違いを予め理解しておくことが必要な事例である。

 

(写真はVOLVO Thailand)

 

3.タイと日本の高齢者、活躍の場の違い

今回はタイで活躍するMさんとO地場企業に勤務するUさんの事例を紹介する。

Mさんは、大学を卒業後、商社に入り長年米国で勤務した経験がある。米国で定年を迎えて、第2の人生をタイに来てタイで独立して、商社時代に経験した機械をタイの日系企業や地場企業に紹介する事業を始めた。既に在タイ20年近くなって年齢も70歳を超えているが、タイにある機械メーカーの商品を周辺国にも販売するため、時には1泊2日でタイからインドに出張することもある。

気にかけているのは、海外では、銀行借り入れが難しいということである。2009年のリーマンショックでは、資金繰りが苦しくて事業をやめたいと感じたこともあったが、取引先の応援もあって苦難を乗り越えた。また、数年前から事業のやり方を、米国流からようやくタイのやり方になじんできたので、無理をせず、着実な取引を実践している。もし、米国から戻って日本で開業した場合は、これまで活躍できたのか、とタイでの事業運営が軌道に乗って、感謝をする毎日である。

Uさんは現在70歳を超えて悠々自適の生活もできる年齢である。日本でも同業の大手に技術者として勤務して、海外企業との交流を率先してきた一人でもある。海外での研究発表会で知り合った、タイ企業のオーナーと親しくなり、日本の大手企業を定年になって辞めることを知ったオーナーが、たっての要請で、O地場企業に招かれたのである。給与水準は高くはないが、若いオーナーからはおやじのように慕われており、社員も同様にUさんを大事に扱ってくれる。もしUさんが日本の大手企業に継続して勤務していたとすれば、どのような待遇であったのか、聞くと、タイ企業ほど大事にしてもらえなかった、だろうとのこと。

そのため、Uさんとしては、若いタイ人社員に自分が経験したこと、知見をすべて譲りたいと考えている。

タイは日本の高齢社会を後追いする形であるが、幸いにも年配者を大事にする気風が残っている。タイの日系企業でも、シニアの人材が活躍していることが多い。もちろん、タイの企業でも優秀な社員、特殊な技能を持つ社員は定年に拘らず、元気なうちはご本人の知恵を生かし、後輩の育成に役立てている企業もある。

Uさんの話を聞くと、長寿社会と言われる日本でも、このような年配者を優遇して、年配者自身が自分の持つノウハウを後輩に分かちたいという、意識にさせる企業がどれほどあるか、考えさせられたのである。

(写真中央が、日本の定年後タイ企業に招かれてタイ人の後進を育成するUさん)

 

4.タイ進出日系企業の従業員教育と生産性向上

タイに進出して現地で上場する日系企業はあまり多くはないが、S社はその一つでもある。 タイのパートナーの理解もあって、人材育成と企業成長が同時に伸びてきたことから、タイの証券市場にも上場をすることになった。おかげで、優秀なタイ人を募集することが一つの強みになっている。

同社の社長に聞くと、人材育成が企業成長の根幹あるとの説明であった。

伺った当日は、従業員の駐車場にもバイクと自家用車が多く駐車しており、従業員の給与も自家用車を購入できる程度まで上がっていると理解できた。また、各工場の製品ごとに研究所があり、それぞれの部門に応じて教育がなされている。

全社員に教育する課題は、入社してすぐに、安全教育が始まっている。機械や道具の使い方から、機械の不調時の停止のさせ方など、初めて機会を扱う初心者にもわかりやすく説明する設備とテキストがある。講師となる社員の説明では、機械操作に慣れないと製品ができない。製品の良し悪しは機械の使い方で変わる、との説明で合った。かつて、同社のインド工場を訪問したこともあるが、タイ人のマネジャーが現場のインド人社員を指導していた記憶がある。

企業が成長すると、日本人が始動せずとも、現地のスタッフが日本人のノウハウを吸収して、後輩や、タイから展開する孫会社の社員の指導もできている事例である。

 

(11/14に訪問したSタイ進出日系企業)

 

5.OVTA公開講座「少子高齢化時代と現地化に向けたローカススタッフの戦略強化」

11/22に開催した標記をテーマに開催した公開講座について、2つの講演の骨子を紹介する。

1.タイ労働省 労働専門家 Dr.Sangchaiから以下のような内容で講演がなされた。

「タイの少子高齢化と 労働者不足に向けたタイ政府の対応」

1) タイは高齢化社会および労働力不足にあり、日本の高齢社会の後を追っている状況。 現在のタイの労働人口は3,830万人と推察されている。未熟練労働者が1,690万人で、労働人口の45%に当たる。特に1,120万人の大半が農業分野で他は労働集約産業に勤務する。

2) 特に、都市部より農村部の高齢化が進む。産業別の高齢者の需要は農業分野が177万人、工業分野32万人、サービス分野が85万人不足となっている。現在は、全人口の10%が60歳以上の高齢者社会だが、2024年には全人口の20%が60歳以上になる。10年後は、年配者の引退に置き換える、若年層の人口が減少する。経済成長に応じて、ますます労働者不足になる恐れが高い。

政府は、高齢者の大半が農村部に住んでいることから、いくつかの政策を掲げている。

@ 高齢者の雇用促進と支援のための措置

A 技能訓練と知識を増やすための措置

B 適切な作業環境を促進と支援する措置

C 退職のための改革措置(退職年齢の延長)

D  高齢者の雇用に見合う生活手当の支給

 

2.テクノ経営の小久保講師から以下のような内容で講演があった。

「タイ人従業員は幹部に育成できる」―ローカルスタッフ戦力強化法―

1)解決すべき課題と成果ができまでの道筋として、次の流れが必要である。

@ 危機感、理念の開示をすること。

A 決意を示すこと。

B 動機づけをして、行動に移すこと。

C 様々な手法があるが、企業発展、人材育成の成果を上げること、である。

 

2) タイ企業が改善できない理由を考えると、様々な課題が残っている。

@ 改善運動で終わっている。部署任せ、人任せで、トップ主導ではないことが多い。

A 推進の組織がなっていない。役割と責任が不明確である。組織運営が機能しない。様々な活動が乱立して、セクショナリズム、成果の督促ばかりで、指示待ちが多い。

B 改善指導ができていない。成果の督促をする。結果から批判や論評をするが、現場で直接、指導できているのか?

C 言いかえると、アクションが取れない。アクションが遅くて、ないものねだりをしていないのか?

 

3) 同時に、日本のモノづくりの優れている点は何か?

@ スキルの高さ、多能工が進んでいる。

A 品質、納期に順守

B 離職率の低さ

C 組織力の強さ

D 仕組み、システム構築の優れている点、など。

 

これを定着させるには、日本のモノづくりの強さを再認識すること。言いかえると、仕組みの更新と、人材育成である。そのための日本人ミドル、タイ人ミドルの役割を再構築すべき。

 

4) 講師からは、このような前提から、幹部育成の姿勢として「見守る姿勢が必要」だと強調された。例えば、日本人幹部が、タイ人に指示を出す場合、理解させる努力を怠らないこと。単に指示をするのではなく、理解させながら指示をしているのかどうか、など、具体的な指導方法についても説明をいただいた。いくつかの事例をもとに、タイ人の潜在パワーが引き出せると、力説されたのである。

(写真は、当日の主催者、講師の集合写真)

 

6.(質疑応答) 治安の悪い地域に進出する企業の安全対策―メキシコ進出の場合―

11/24にタイ進出の日系企業対象にメキシコセミナーが開催された。その背景には、メキシコとアセアンFTAで、過去数年間、タイから自動車部品が急増していること、また、日本企業でも海外展開で。アセアン進出とともに、中南米、特にメキシコに関する関心が高まっていることからである。当日、特に治安の悪い地域に進出する企業の安全対策として、どのような対策があるのか、質問があったので紹介する。

 

(質問)英字紙の記事(Bangkok Post 11/26)では、過去、数万人が行方不明になっています。 誘拐、ギャングなど、地域によれば、軍隊しか治安が守れない地区もあると報道されています。それだけに進出する企業としては、社員の安全が第一です。 進出された企業はその対策をどのように取られているのか?もし分かればで結構ですので、お教えください。

 

(回答1)(メキシコ大使館、経済公使)「過去数年間だけでも、メキシコを訪問する観光客は2,000万人を超えており、トランプ大統領が2017年1月に誕生して、メキシコとの壁をつくるというマイナスイメージの発言もあったが、現実には観光客が増えている。このことから、メキシコの治安は良いと見るべきである。」

 

(回答2)(G建設会社)「我々は、進出日系企業のため、日系大手ゼネコンと提携して工場建設を行ってきた。工場の治安対策は各国とも同じであると考えるが、ソフトとハードがある。ソフト面では、従業員の安全に関する教育を徹底すること。ハード面では、各社のノウハウがあるので公開できないが、一例を紹介すると、企業の周囲に赤外線を巡らせて、不審者が侵入すると、サイレンが鳴り渡り、不審者が逃亡するようにされている。」

 

(回答3)(A会計事務所)「確かに、上記の記事のような情報が伝わると、懸念をされますね。しかし、メキシコのすべての州、すべて地域の治安が悪いのではありません。中央高原部の工業団地を造成し、外国企業を誘致しようと考えている州政府では、治安維持に力を入れています。タイにも工場を持つI企業も、メキシコの中央高原に進出し、これから操業開始する前に、メキシコ人の社員をタイで研修させています。現地のスタッフから実情を説明してもらいましょう。」

 

(回答4)(現地スタッフ)「メキシコ人は、おおらかで皆様の進出を歓迎しています。お祭りが好きで、私たちの工場がある州政府は毎月のように大きなイベント、お祭りを開催しています。そのような場面を見ていただけると、私たちは外国からの投資、特に日本からの投資を歓迎しています。中央部の私たちの州では、日本人学校もあり、治安面では問題がほとんどありません。」

 

(写真は、メキシコ人社員がメキシコ国内で治安状態が良いと説明したAguascarientes州)

 

以 上