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タイ

作成年月日:2017年7月

海外情報プラス

タイ国情報 2017年6月

1. 労働力集約産業、タイから周辺国への動き

2. 次世代電気自動車、既に国際規格の囲い込み競争

3. 自動車部品1次サプライヤー、2次サプライヤーの課題

4. タイ国の高齢化社会への対応

5. (相談案件)自動車部品メーカー、受注拡大への体制づくり

6. (トピック)外国人就労管理に関する新しい規制が



1.労働力集約産業、タイから周辺国への動き

縫製産業や自動車などの配線作業は手間のかかる作業が多く、1960年、1970年代から日本から労働集約産業は海外進出が始まった。タイへ日系企業進出初期の企業と言えば、味の素、トヨタなどの名前が上がる。現在の天皇陛下がご成婚後の最初の海外視察はタイであったが、すでに日系企業が進出されており、最初に訪問した企業はY社である。Y社はバンコク周辺県に工場を展開し、その後も機械化は進めてきたが、一部の作業は労働集約型のため、タイの東北部、北部に分工場を展開をしてきた。欧米向け製品はタイで生産するが、日本市場向けはベトナムにも関連会社をつくり、直接日本に輸出を行っている。ベトナムの工場立ち上げの際は、現地の幹部にタイ工場の経験者を配置して、海外の工場運営の経験を積んだ日本人を配置した。

自動車のハーネス業界も同様に労働集約産業である。業界のS社は、自動車メーカーの海外展開とともに世界数十か国に展開している。タイ国内はタイ東部のラヨン県の工業団地に最初の工場を設置したが、従業員確保のため、西部のミャンマー国境に接するラチャブリ県に工場を設置。その理由を伺うと、従業員の大半はミャンマー人で、根気のいる仕事はタイ人から嫌われるため、西部に分工場を設置。

アセアン域内では、タイ、ベトナム、カンボジア、インドネシアにも工場を設置したが、中間のリーダーはタイから派遣するようにしている。

今後は、現地の従業員の育成を図るが、日系企業だと言ってもタイから幹部を派遣する時代になっている。

(写真は、S社の出来上がった製品サンプル)

2.次世代電気自動車、既に国際規格の囲い込み競争

6/8-6/9にバンコク国際展示場BITECにて電気自動車に関する技術コンファレンス「iEVTECH2017」があった。

そこでは、タイ政府科学技術省の副大臣が「タイで電気自動車産業を振興させるため革新的な政策」やタイ政府投資委員会(BOI)の「電気自動車産業振興のための新しい投資奨励策」の説明とともに英国、フランス、ベルギーの自動車産業政策も紹介されていた。メーカーとしては、BMWの電気自動車への取り組みが紹介されていた。

最後のプレゼンでは、バッテリーの新しい直流の充電システムとしてCHA deMO Technical Roadmapが紹介された。講師は、N自動車のY氏である。

そこでは、世界の充電システムは大きく3つの流れがあり、また、日本としても欧米や中国とは別に東南アジアで規格の共通を図ることがこれからの電気自動車生産の上での課題であると、説明をされていた。

タイが電気自動車の輸出国になるには、世界の各国の規格に合わせた電気自動車、なかでも充電器の仕組みでモーター制御など生産する部品の工程が大きく変わるのである。

日系の自動車部品業界、また電気自動車に進出する構想を持つ企業であれば、世界の電気自動車の規格の流れも掴んで、時代に乗り遅れない研究、情報収集が必要だと考えられる。

大きな産業が生まれるかどうか、技術の動向への気配りを無くして、新規の参入は至難の業である。

(写真はiEVTECH2017」開会式)

 

(CHdeMOの仕組み)

3.自動車部品1次サプライヤー、2次サプライヤーの課題

タイの自動車産業は、アッセンブリメーカーが日系9社、米系2社、欧州4社、中国1社、インド1社の17社がすでに進出済。これに二輪メーカーを加えると20社余りが集積をしている。

これに1次サプライヤーがメーカーと直接取引をしているが、そのためには設計企画段階から入り込まないと、1次サプライヤーになることが難しい。

例えば、自動車アクセサリーのS社は、20年前に日系のM社がタイ進出に際して、海外投資の誘いがあって、思い切って海外進出をしたため、今ではM社以外にも1次サプライヤーとして直接取引先を拡大できたのである。

2次サプライヤーのA社は、自動車車の電気電子部品のスイッチの一部を生産するが、直接、自動車メーカーとは取引せず、メーターなど電気部品を供給する1次サプライヤーを経由して供給を行っている。

ところが、2次サプライヤーであるA社は、メーカーの設計段階に図面に入らないと、1次サプライヤーの取引が増えないのである。そのため、1次サプライヤーを飛び越えて、メーカーと商談することが必要であり、受注となるまで、数年も要することがある。

従い、自動車の部品産業に進出する2次供給企業としては、デンソー、アイシン、JTEKTなど企業規模の大きなサプライヤーの意向も無視できず、必要な人材には自動車の機能を十分に教育したうえで、プレゼンをするように指導をされている。

(写真はタイの自動車産業の構造)

4.タイ国の高齢化社会への対応

6月23日にバンコク日本人商工会議所で化学品部会「医薬・医療分科会」が開催された。

当日は、タイの高齢化社会に向けて、日本とタイの知見を交流する内容であった。

そこで、紹介されたタイの高齢化社会への取り組みの一部を紹介する。

講師は、タイ国家社会開発委員会(NSEDB)のMr.Suriya部長から全般的なタイ社会の高齢化に対する対策と、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員で、任期満了で帰国される前のK氏から地方の実情を伺った。

要点は、NESDBのSuriya部長が、従来はタイの村落社会、家族たちが高齢者を介護する仕組みがあったが、都市型になるにつれて、介護施設などの必要が高まってきた。

同時に、高額所得者であれば、自宅訪問型、通所型、居住型のいずれも利用は可能である。ビジネスとして参入できる可能性があるとすれば、高所得者向け、および中間所得者、低所得者層向けでも要介護度の低い、通所型が少ないことから、研究する余地はある。

中間所得者、低所得者のデイケアセンターが少なく、高齢者のクラブ、公共機関が年新支給日に催す会合か、寺院での集会しかない。

なお、当日の会議では、タイ政府財務省が砂糖を含む飲料に課税をして、砂糖消費量を抑える仕組みを検討されていること、同時に日本では高齢化社会向け社会制度、民間と協力して塩の使用量を抑えたおいしい料理、調理品を推奨して健康増進の仕組みが具体化されている事例について意見交換がなされた。

(写真は、6/23の医薬・医療分科会で、タイの介護市場の既存プレイヤー)

5.(相談案件)自動車部品メーカー、受注拡大への体制づくり

Q1;D社は、トラックのバックミラーを生産する日系企業で、タイ進出5年を経過して、順調に受注を増やしてきた。工場の立地はチョンブリ県で、市街地からはピックアップトラックによる通勤車両の確保および、バイク通勤である。片道30-60分程度。男女比4:6で女子が多い。平均年齢は30歳未満。

今回、欧米系のV社からの受注を受けて、従業員62名の勤務体制をどのように組めばよいか、助言してほしい。製品在庫のため倉庫を外部に借り上げることと、中2階をつくり、作業場を増やす考えはあり。現状は8:00-17:00の勤務体制を、2直にして、早出、遅出組をつくり、遅出は12:00-24:00(残業込)を考えている。この体制を準備しているが、修正点、改善点があれば助言願いたい。

A1;現状は1直体制で、ほとんど残業がないことが前提。受注が増えたことは歓迎すべきことである。工場の機械設備の稼働状態を考えると、2交代は収益性があがるように見えるので、検討中の早出、遅出の体制は当然考えられる仕組みである。

ただし、工場の現場をみると、作業場と、製品の在庫が入り乱れているので、まずは、仕事の流れに沿って、工場内部の整理、整頓をすることが重要。

タイの労働法では、1日当たりの労働時間、1週間当たりの休日など規定はあるが、時間帯は各社が自主的に決まることができる。

気になるのは、夜間作業が増えることから、電気代のコストは下がるが、同時に労働者の効率が、昼間と比較すると一般的には下がる恐れがある。しかも、従業員が24:00まで勤務して帰宅すると深夜の01:00-02:00になる恐れもある。女子従業員が多いことから、深夜勤務が男性中心になるとしても、深夜勤務を前倒しにできないか。作業場の拡張も検討されていることから、朝勤務を7:00開始16:00終了、遅出勤務は11:00開始21:00終了(2時間残業込み)にされてはどうか。また、一部の企業では、週末勤務の比重を挙げて、電気代の節約を含めたコスト管理をされている事例もある。なお、D社の工場の所在地が、タイの工業団地公社内にあるため、公社の事務所には労働事務所の役人も常駐されているので、就業規則の改定には、よく相談をされたい。

(写真は、D社)

6.(トピック)外国人就労管理に関する新しい規制が

タイ労働省は、6月22日付けの官報で、外国人の就労管理に関する新しい勅令を公布した。

従来から、タイの労働市場では失業率1%が示すように、需給関係はタイトで、特に建築、農業などタイ人が就労を嫌がる分野ではミャンマー人を始め外国人の雇用が不足を補ってきた。

2015年のタイ統計局の調査によるとタイの労働可能な人口は3,830万人。

これで失業率が1%前後で、3Kと言われる分野では外国人の就労がないと経済が回らないのが実情である。そこで、不法就労を含めるとタイ国内に470万人もの外国人労働者がいると推計されている。正規の労働許可を持つものは140万人、仮登録して働く移民労働者が130万人、正規登録もなく仮登録もなく違法就労をするものが約200万人いると推計されている。これに関してタイ労働省は、これまでも何回も外国人労働者の労働許可を発行するから、労働省に就労の許可申請を進めてきた。ただし、季節労働も多く、建築ではプロジェクト単位で外国人を雇用する事例も多く、正規の就労許可をとるものが多くはなかった。

しかし、今回の勅令では、仮登録者と違法就労の合計340万人が影響を受ける。労働省はこの外国人就労管理を厳しく取り締まり、雇用者にも違反すると違法就労者を活用していると外国人1名につき10万バーツの罰金を含む厳しい規制に乗り出した。

これに対して、さっそく民間経済団体から異論が出ている。タイ商工会議所は、地方の中小企業に影響が大きいこと。タイ工業連盟も大企業はいろいろな手段でこの規制を対応できるが、業界によれば、事業運営に大きな影響が出ると指摘してる。例えば、水産物加工業のツナ缶製造現場では、ミャンマー人のワーカーが魚のえらや骨の処理などを担当ししおり、これらのワーカーが足りないと工場の稼働にも影響が出る。

同時に建設業の現場では影響が大きい。

それらのことから、経済団体は政府に対して、適当な緩和策を支持してほしいという要望書が出された。

日系企業はタイ政府投資委員会の投資優遇策を得ている関係で、タイ人雇用を優先させて外国人雇用は比較的少ないが、上記のように労働集約産業意を中心に許可を得て外国人の雇用も行っているのが現状である。今後の、動きにも注目したい。

 

 

(写真は、タイ労働省が発行した外国人雇用に関する規制の概要、バンコクポスト2017.6.28より)

 

以 上