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タイ

作成年月日:2017年6月

海外情報プラス

タイ国情報 2017年5月

1. 大手自動車メーカーの海外進出と、提携メーカーの協力

2. 現地生産、進出20年未満企業と30年超企業との人材の育成による違い

3. 5/17自動車産業セミナー「技術開発と部品メーカーの課題」

4. タイ産ロボットの日本国内の介護施設での活用

5. 日系企業の進出、最近の動向(大学との提携など、従来とは異なる進出方法)

6. (質問への回答)タイの最低賃金とは



1.大手自動車メーカーの海外進出と、提携メーカーの協力

M自動車会社は、一時外資系のF社の資本を受け入れたことから、タイ進出もF社と合弁で工場を運営してきた。その後、F社が、M社への資本の出資を回収したが、合弁事業だけは継続してきた。タイ事業に関してはA社という合弁会社で乗用車、ピックアップトラックを生産してきたが、F社も自社工場で乗用車を生産することになった。

M自動車会社はエンジンとトランスミッションに関しては、日本、中国に加えて、新しく東南アジアのタイで3拠点目として2014年から現地生産することになった。タイから欧米にも輸出する予定で準備してきたが、タイと各国との貿易協定を見ると、タイでの現地生産比率が従来のA社だけのサプライヤーでは現地調達比率が上がらない。そのため、日本の主力サプライヤーであるH社なども現地進出を要請して、ようやく現地調達率が高まった次第である。このため、提携メーカーとしては、事前準備が十分ではなかったが、バイヤーであるM社の要請がある以上、断れずに、海外進出をした。

タイ進出の多くの自動車部品サプライヤーは、全量購買が保証されるわけでは無いが、ある程度のリスクを覚悟して進出をしている。

M社の、経営幹部は、タイに初めて駐在という幹部もいるが、中には3か国目で、出張を入れると18か国を回ったという幹部もいる。彼らが、現地生産の問題点、起こりうる課題を解消するのである。タイ特有の風習や言葉の意味など、進出して3年たっても、まだまだその理解度を高める努力が必要だと感じている。

相互理解の一助として社内報も発行しており、タイ語と日本語の2か国での編集である。

(写真は、M社の全景)

2.現地生産、進出20年未満企業と30年超企業との人材の育成による違い

タイ進出20年未満の企業と、30年を超える企業との人材育成による事例を紹介する。 K 社は、1939年創業の自動車部品および航空機部品製造業としてスタート。その後、ハンド・チャックおよびロボット周辺機器の製造業として展開。

1997年にタイ法人を設立、貸工場からスタートした。10年後の2007年にタイ工場を建設した。2015年ごろからタイでもようやく自動化、省力化が認識されることから、日本の技術をタイに移管する時代になった。現地社長は、自動化を推進するソフト開発の技術者からスタートして、タイ進出とともに日本から派遣された。一時、日本に帰国していたが、再度赴任の時期は現地の責任者として来訪した。現在の課題は、現地人にどこまで技術移管ができるかである。

一方、P社は、金属の表面処理を強みとする化学会社である。1979年に日本のP社の子会社として、バンコク近郊の工業団地で事業を開始。金属表面処理薬剤、防錆油の製造販売と熱処理及び化成処理の受託加工を行ってきた。2009年には、ラヨーン地区のHemaraj Eastern Seabord工業団地に5か所目の工場を稼働したが、当初から研究開発、人材育成に注力をしてきた。経営幹部は日本人だけではなく、タイ人の執行役員もいる。

特に、研究開発面では、日本とそん色のない検査機器もそろえ、現地の顧客からの質問や要望には現地で回答できるまでになった。

(写真はP社の様子)

 

3.5/17自動車産業セミナー「技術開発と部品メーカーの課題」

当日のセミナーの内容を紹介する。

1) タイ政府投資委員会から最近の投資動向、東部経済回廊(EEC)のビデオも含めて簡略にまとめていただいた。

2) 安全と自動運転に関しては、現在の自動車を取り巻く技術動向をマークラインズの林講師に説明いただいた。

3) FOMMの鶴巻社長が日系ベンチャーとして、小型電気自動車をタイで生産する事業計画をご紹介いただいた。

4) 質疑応答は、事前にいただいた質問内容に、追加して、BOIのDr.Bonggot上級顧問、      マークラインズの酒井社長、林講師に、司会者が質問をさせていただいたが、見事な回答をいただいた。

5) その一部を紹介すると、「トランスミッションやブレーキ部品は今後どのように変化するのか」との質問があった。回答は「部品と考えずに、機能性を考えるべきだ」との指摘があった。「電気自動車を体験された方は、モーターによって加速や減速がされると、その静かさ、スムースなことに驚かれる。そこをどこまで追求できるのか」である。ただし、現在の自動車の形式基準は内燃機エンジンを基本としてつくられるため、電気自動車の制御とは多少異なる部分がある。ブレーキもその一つで、減速のため、独立したブレーキが必要になっている。

 

この点は、今後、電気自動車の普及とともに、形式認定の基準が変わる時期も出てくる、と推察される。

まとめると、部品メーカーの今後の課題は、何だろうか? 1つは、絶えず、情報収集を行ってゆくこと。2つは、部品に拘らず、自社の技術がどのような分野で生かされるのか、研究開発が必要。3つは、どの講師も説明されるように、研究開発および社員の育成が重要である。

(写真は5/17の自動車産業のセミナー)

4.タイ産ロボットの日本国内の介護施設での活用

C社は2009年タイの新興企業である。2013年からMレストランや介護施設で利用されるロボットを開発してきた。特に、高齢者の介護サービスの補助機能を持つことから日本の介護施設でも入居者に薬の飲む時間の確認や、各種見回り機能によって、特に深夜の見回りをする介護士の負担を軽減できる。

日本では、ソフトバンクやソニーが製造販売するコミュニケーションロボットと比べて、比較的コストが安く、介護士の負担経験という面からも注目されるロボットである。 創業者は、学生時代にロボットコンテストに参加して以来、自前でロボットが開発できないか、研究をしてきた研究者でもある。

タイ式ボクシング「ムエタイ」の動きや仏像のイメージを参考に、動作機能はソフト開発をしてタイスキのMレストランチェーンで導入されることになった。一方、欧米市場にも進出を試み、日本の人で不足に悩む介護施設で介護士の補佐機能をできるロボットの導入に結び付いたのである。

同社の社長は2015年、チュラロンコン大学における学生対象の講演で、タイ人が利用する商品、携帯から自動車まですべて海外生産のものばかりで、タイの自前の技術がない、ことから発奮。自前の開発を行ってきた経過を講演。2017年5月の国際展示場BITECでの医療機器、介護機器の日本進出事例として紹介されたのである。

これまでは、日本や海外で開発された技術、機械の紹介がタイ国内で催されるセミナーの主体であったが、今後はタイと海外が協力して商品開発をする事例が多くなると推定される。

言いかえると、タイ人の労働者としての才能を今までの手足として活用してきたが、今後は研究開発など頭脳部門、発想力が生かせる企業が国際競争力の中で生き残れるのである。

参考:http://www.ctasiarobotics.com/#home

(写真は、5/19の医療機器産業セミナーで、タイのロボット企業の日本進出事例)

5.日系企業の進出、最近の動向(大学との提携など、従来とは異なる進出方法)

2015年10月にO社はタイに工場を建設した。同社は材料や粒子の異なるものを金属表面に噴射して精密ショットピーニングや独特の表面加工技術を持つ。強度向上や摩耗低減の効果がある。部材の耐久性アップを求める企業から受注が増えてきた。進出を検討したのは2010年だが、国内の政変や洪水で進出の決断が遅れたが、これ以上遅れてはタイミングを失するとして2014年末に進出を決断。タイ進出によって日本では付き合いのない分野からの引き合いがあった。これが国立キングモンクット工科大学や王立病院と提携してインプラントや人口骨の研究開発である。2016年10月に国際会議に参加。参加者は1,509名、タイの医療関係の先生も多く参加し、18案件RCOST&AOA 2016 の事例発表が行われた。その中で、整形外科医療分野において、同社はLerdsin General Hospitalとキングモンクット工科大学の3者で人工骨関係の開発研究を進めてきた事例発表が最高賞を獲得した。

これ以外にも、地場企業のM社では、日系大手企業のプラント生産の外注工場として発達してきたが、自前の技術力もつけ今では日系大手企業、T.I社などの受注も受けることになった。 自社工場の敷地が大きく、工場建屋も数棟あるため、最近では日系の中小企業が進出する場合、貸工場を提供するだけではなく、現地パートナーとしての役割も果たしている。

この傾向を、バンコク日本人商工会議所(JCC)やJETRO Bangkok の資料を見ると、10年前の製造業が過半数を超えていたが、最近はサービス業の進出が増えてきた。また、タイの外資規制法によりサービス産業に係る外資参入規制から、日系企業の出資が49%にとどまり地場企業の出資が51%以上必要となる業種も多い。外資規制を撤廃するには、BOIの恩典付与が必要であるが、事業規模と進出の速度から、地場企業に過半数を握ってもらい、日系企業が49%でスタートする企業もある。

(写真は、JCCの会員企業の構成が、サービス業が増えて製造業、サービス業が同比率に)

6.(質問への回答)タイの最低賃金とは

(質問)

OVTAのホームページで下記にタイの最低賃金の改定が有りましたが、2017年1月から県別でタイの最低賃金が改定を実施されているとのこと で、 それについての質問です。

最低賃金は基本給ペースのみか?=9,300バーツ??

それとも基本給+その他手当=(バンコク都内周辺域)(310バーツ/日 )

http://www.ovta.or.jp/info/asia/thailand/tha_170201_1.html

 

(回答)

1) タイでの最低賃金の規定についての問い合わせだと思います。

2) タイの1998年労働者保護法で説明する「賃金」の規定を説明します。 賃金とは、雇用契約に基づき、時間、日、週、月またはその他の期間を単位として、通常の労働時間における労働の対価として支払われる、雇用者および被雇用者が合意した金銭を意味する。 もしくは、被雇用者が通常の労働時間内に行った労働成果に基づく計算により支払われる賃金である。また、本法令に基づき、被雇用者が賃金を受領する権利を有する休日および被雇用者が勤務しない休暇日に、雇用者が被雇用者に支払う金銭も含む。

3) ご質問の、「その他手当」の内容が分かりません。個別企業に通常の労働時間内における労働の対価として、どのような名目で金銭が支払われているか、詳しくお聞きしたいところです。 もし、通常に勤務されている労働者に通勤手当、食事手当など支給されている場合、この手当は休日や休暇中は支払われないわけですから、最低賃金の対象に入りません。 法律上は、時間外労働手当、休日時間外労働手当を別建てにしておりますので、その他手当で「残業手当」があるからといっても、最低賃金の中には含みません。

4)「最低賃金」という概念は、日本人としては「基本給」が通常の対象と考えられますが、企業によっては基本給以外に「能力給」「成果給」などの名目で、通常の労働時間内における労働の対価として支払われているなら、それは 最低賃金の対象と考えられます。

5)具体例を挙げます。 A社では、基本給を150THBとして、能力給を最低100THB(最高は200THB)、成果給は最低160THB(最高は320HB)と仮定すると、最低の働きをする労働者には310THBは賃金として支払われます。最高は570THB。 同社の最低賃金は310THBですが、基本給ベースでは150THBにとどまります。

6)従って、個別企業の給与の決め方を詳しく伺わないと、最低賃金は基本給ベースであると、お答えできないのです。 読者の質問は、おおむねその通りだとお答えしたいところですが、単純に基本給ベースだとお答えした場合、誤解される恐れもあります。 なお、タイの最低賃金員会では、最低賃金は県別に日給で決まりますので、月給ではいくらとの規定はありません。

 

 

(写真は、中央最低賃金委員会の会長を務める労働省のML Puntric事務次官)

 

以 上