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タイ

作成年月日:2017年5月

海外情報プラス

タイ国情報 2017年4月

1.タイの自動車産業振興策と人材育成について

2.社員の健康管理、日系企業と地場企業

3.タイ進出の日系企業の潮流、製造業から非製造業へ

4.(事例) 本社とタイ子会社が連携して試作品作り、市場調査

5.グローバル人事について(子会社の責任者の交代時期と後任者の選定)



1.タイの自動車産業振興策と人材育成について

4月初旬にタイ政府投資委員会の会合を傍聴する機会があった。

そこで、タイ政府の自動車産業振興策についての説明の一部を紹介する。

現在のタイ政府はタイランド4.0を目指して各分野で産業の高度化を図っている。

 

タイの自動車産業も世界の動向に左右される。自動車の将来を考える際に大きな課題は、@ パワートレインの変化、A安全、B省エネと環境、C知能化と渋滞対応である。

自動車業界にも先進技術を求めるとして電気自動車を始め新技術の導入を図ろうとしている。

同時に、電気自動車の進化と発展、自動運転と安全性向上などは部品メーカーにも技術革新が求められる。タイ政府は次世代の自動車技術開発に大きな恩典を与える。

問題は、人材の育成である。タイ労働省は国家戦略に合致した、マンパワー国家開発戦略20年 計画(2017-2036年)を策定している。それは次のように4つの時期に分けて実施される。

1).生産性あるマンパワー[Productive Manpower](2017-2021年)。

2).革新的労働力[Innovative Workforce](2022-2026年)。

3).創造的労働力[Creative Workforce](2027-2031年)。

4).ブレインパワー[Brain Power](2032-2036年)。  

海外の政府からもタイの投資政策が成功してきた経緯を学ぶため、各国からの訪問がある。

その場でも、タイ政府が説明するのは、設備や資金、高度なエンジニアは海外からの導入で賄え るが、自前の人材育には、教育制度を始め、各本面の協力が必要で時間がかかると、説明をされて いる。  

個別企業での人材育成が基本であるが、大学や高専、職業訓練学校との連携も課題である。  

この点については、今後の機会があれば、具体的な事例を紹介する予定である。

(写真は4/5タイ政府投資委員会にフィリピンの投資委員会が訪問した風景)

2.社員の健康管理、日系企業と地場企業

今回の事例は健康管理に関して日系と地場企業の違いの問題である。

4月下旬に、タイの地場企業L社に勤務されていた日本人のMシニアアドバイザーが日本に帰国して、治療を受けることになった。L社のS社長は、元日系企業に勤務していたころ、日本人のM部長に様々な支援をうけていた。たまたま、日本人のM部長が、日系企業を定年退社して、日本に帰国するところ、独立して事業を立ち上げたばかりのS社長は、元気な間、同社の立ち上げと、成長まで支援をしてほしいとしてアドバイザーに採用した。ところが、Mアドバイザーは、勤務をして6か月ごろから体調を崩して、入退院を繰り返すことになった。タイの社会保険制度では、高度な治療が受けられない。そのため、自前で民間病院に入院して治療をすると、給与だけでは賄えない。残念ながら、今まで勤務した日系企業では海外旅行者保険がカバーされていたが、タイの地場企業ではそこまで配慮する余裕がない。S社長は、タイの入院費用は自腹で補てんするとしたが、Mアドバイザーもそこまではと考えたことと、日本の健康保険制度で治療ができることから、いったん帰国すると決めた。

今回の事例では、事前に会社が社員のための保険制度に加入することが検討できなかったのか?

また、事後対策としても、将来の社員が拡大する場合、政府の社会保険制度では賄えないケースが多いことから、民間の保険制度が必要な場合がある。日系企業では社員の健康管理を考えて、福利厚生制度、給食制度、スポーツの奨励など、会社として取り組んでいる企業も多い。しかし、地場企業では大手を除くと、そこまで手が届かない企業が追野が実情である。

最近は、日本人が地場企業に勤務される事例も散見されるが、給与以外の福利厚生は就職前には見えない部分が多い。

(写真はP民間病院の様子)

 

3.タイ進出の日系企業の潮流、製造業から非製造業へ

4/28バンコク日本人商工会議所JCCの総会があった。

現状の会員数1,800社に至るまでの加入企業の説明では、従来の製造業が過半数を占める時代から、いまでは非製造業の加入が増えて、半数は製造業、半数は非製造業になっていると説明があった。ただし、内容はリクルート、設備業など、製造業を補完するサービス業が増えている。

進出企業の支援をするA社を訪問すると、最近は飲食、サービス業が増えているとの説明があった。タイ政府が歓迎する産業とは何か?  

タイ政府は国家目標として「タイランド4.0」という目標を掲げ、経済と産業の高度化を進める方針を掲げている。  

具体的には、国家20カ年戦略計画と並行し、@スマートデバイス、ロボット、メカトロニクス、A健康・ウエルネス、バイオメディカル、医薬、B食糧、農業、バイオテクノロジー、Cデジタル、IoT(モノのインターネット化)、組み込みソフト技術、D創造性、文化、高付加価値サービス―、の5分野に重点が置かれているが、単なる製造業ではなく、高度な技術をもつ企業を求めるため、製造業の保管するサービス業も求められているのである。

これらは、タイの産業高度化に資するものだとしても、日系企業自身がタイの将来を一端を担うように期待をされているのである。

(写真は4/28JCC総会での会員企業の推移)

4.(事例) 本社とタイ子会社が連携して試作品作り、市場調査

市場調査の方法は様々な手法がある。C社は、1996年創業で日本では全自動車メーカーに自動車用電子機器の検査装置などを供給する会社である。2002年に中国、2003年タイに子会社を設立した。

現在は、量産ラインに乗らない少量品、主にOBD(自動車に搭載されるコンピュータが行う自己故障診断)システムの関連製品等を受注、現在では、EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリット自動車)関連にも事業領域を広げているが、最終の消費者向けの製品を探していた。タイのコールドチェーンビジネスが、これから伸びると見込んで、若手社員が中心となり保冷車の製造販売を企画した。部材は、タイで調達できるものばかり、として日本の本社とタイの子会社が共同で電動三輪車(トウクトウク)の荷台に保冷装置をつけて、配送車に改造した。そこで、4/27-4/29に開催のコールドチェーン展を活用して、自社開発をした保冷車の市場調査を行った。

C社は、1台の試作車を展示会に出展することで、多くの需要見込み客からの意見、助言を聞くことができた。これらの試作品の設計、企画、組み立て、展示会の紹介を通して、日本本社に勤務する社員のタイでの調達の苦労や、販売の可能性を学ぶことができた。タイの子会社も、従来の納入先への営業だけではなく、新しい市場向け商品を持つことで、新しい営業戦略を構築する機会になったのである。また、これらのプロジェクトを通じて、若手社員の人材育成にもつながったのである。

多くの中小企業は、市場調査を軽く考えて市場に売り出し苦労をしている事例が多いが、C社の進め方も参考になる。

(写真は、コールドチェーン展に出展された保冷車)

5.グローバル人事について(子会社の責任者の交代時期と後任者の選定)

毎年4月になると、大手企業の関連で、タイの子会社の代表が交代されることが多い。 異動は企業の戦力を整え、活性化させるためのカードであることは確か。ただ、人事異動のカードを切る前に、考慮すべきことが3つある。

1)中期のチーム構想を作られれているのか?

2)どんな部下でも活用できる上司に育てているのか?

3)部下のキャリア形成を考えているのか?、である。

責任者が変わったら、いまよりよい環境になる可能性もあるが、悪くなる可能性もある。

 

次の3つの事例は、グルーバル人事の事例である。

1)大手のS社は、昨年、オーナーが日系企業から外資企業に変わった。すぐにタイ子会社の幹部の人事異動があるかと懸念されたが、半年遅れて、4月に日本人駐在員が、全員帰国命令がでた。今後は、必要に応じて出張ベースで現地の経営を支援する、と言われるが急な人事の仕組みを変えると、タイ法人とグループ各社の相乗効果が生まれるまでは時間がかかると懸念される。

2)中堅商社のJ社でも、数年前にタイ法人を買収して日系の傘下になったが、収益改善には厳しい状況が続き、幹部が交代することになった。後任の幹部は本社から営業のベテランであるが海外勤務経験がない幹部が現地に着任された。新しい幹部も、予告なしの赴任で、定着するまでは時間がかかることが懸念される。

3)建築関連のN社も、タイ法人設立以来の現地社長を帰任させて、本社から若手の営業マネジャーを子会社の責任者に交代された。

 

J 社も、N社も、現地責任者に予告なしに海外駐在が告げられた。それぞれの企業の中長期の戦略の中で、上記の3つのポイントも参考にされると、後任者が現地着任早々に、スムースな稼働ができたと思われる。

(写真は、S社のタイ法人)

 

以 上