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作成年月日:2017年3月

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タイ国情報 2017年2月

今月はタイ政府が海外投資を呼び込むための大きなイベントがありました。 また、これに前後して、バンコク日本人商工会議所による景気討論会や信金中央会主催の中小企業の法務、労務セミナー、タイの厚生省(FDA)と日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)と共催の相互認証制度についてのセミナーなど、相当内容度の高い研修会が相次ぎありました。

今月はその一部を紹介します。

1. 医薬品、医療器具の相互認証制度への歩み

2. 2017年日系企業の景気討論会

3. タイ政府投資委員会主催のOpportunity Thailandについて

4. 中小企業の法務、労働問題について

5. 日系企業が優秀な学生を採用するには

6. (参考)ラオス進出の日系企業の課題と対策



1.医薬品、医療器具の相互認証ヘの歩み

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医薬品などの健康被害救済、承認審査、安全対策の3つの役割を一体として行う公的機関である。2月2日にタイと日本の規制当局であるThai FDAとPMDAが共催でシンポジウムが開催された。目的は、日本とタイの関係者の相互理解を深め、両国の規制や開発のための協力体制の基盤形成である。

今回のシンポジウムでは、新薬審査及び医療機器審査に関するセッションを設け、アジア医薬品・医療機器トレーニングセンターのセミナーの開催状況等に関する情報を含め、両国の審査に関する最新の情報の共有がなされた。タイのFDAは制度の改定作業を進めており、参加者には、FDAの情報公開の一部に触れたことになる。

タイ産業を牽引する医薬業界も日本と相互理解には人材育成、人材交流が重要である。

(写真は2/2 FDA局長)

2.2017年日系企業の景気討論会(バンコク日本人商工会議所主催)

2月7日にバンコク日本人商工会議所(JCC)主催の景気討論会が開催された。 前半は「2016年の回顧と2017年の展望」をテーマに、頃末広義・金融保険部会長(三井住友 銀行バンコック支店)と三又裕生・経済調査会長(ジェトロ・バンコク事務所)による基調講 演があった。

引き続き、自動車部会と電気部会の報告があった。

2017年のキーワードとして頃末氏は@政府のインフラ投資、A観光業の成長、B農産品価格の上昇、C政府支援による国内景気の回復、D周辺国との貿易拡大を指摘。

不確定要素として、@タイの政治情勢、A世界的な政治情勢、B金融市場へのインパクトを上げられた。

JCC景気討論会の特色は、参加者にも意見を求め、択一方式であるがある程度の参加者の考 え方が伺える点である。

 

主な質問と回答を紹介すると、以下の通り。

 

1) 景気見通し? よくなる49%、変わらず48%、悪くなる3%

2) 景気の浮上には、何が重要か? タイの購買力向上37%、政府の支援23%

3) 5年後の会社規模? 拡大70%、現状維持23%、悪化7%

4) 今後のタイ経済を支える産業は? 医療・保健 43%、自動車27%、IT関連15%、農水産13%であった。

(写真は2/7JCC景気討論会)

 

3.タイ政府投資委員会主催のOpportunity Thailandについて

タイ政府は2/15に新しい投資優遇策を説明する大規模なセミナーをバンコク郊外のIMPACT国際会議場で開催。スピーカーは、Prayut首相、Somkit副首相ほか、工業大臣、ICT省大臣、首相府省大臣とBOI長官。

民間からは、タイの食品業界の大手CPグループのMr.Dhanin Chearavanontタニン会長、サイアムセメントグループの元社長で取締役会の会長でもあるMr.Kan Trakulhoon。

日系ではAjinomoto Thailandの倉島 薫常務兼アセアン代表。

電子部品からはHuawei TechnologyのMs.Joy Tanなどであった。

午後の分科会では、航空機産業、オートメーションとロボット化、医療機器の3分科会に分かれて、代表企業からの発表もあった。参加者は、主要国の大使を始め、主催者関係者を始め大手企業から、中小企業まで2,500名を超す大セミナーであった。

まず、Prayut首相の基調講演は、タイが中進国の罠を抜け出して国家目標「Thailand 4.0」(第4次産業革命)を目指すには技術と人材育成がカギだとされている。そのため、2017−2036年の20か年の国家戦略計画を策定し、それを指針に、これからの産業をけん引する10の主要な産業として、次の産業を目指すとされている。

@新世代の自動車技術、Aスマート・エレクトロニクス、B健康・ウエルネス関連の旅行、C食糧、農業、バイオテクノロジー、D食料革新、Eスマートデバイス、ロボット、メカトロニクス、Fメデイカル、医薬産業のハブ、G航空機産業、Hバイオケミカル、バイオプラステイック、Iデジタルエコノミー

昨年11月に開催したOVTAセミナーに寄せて、タイ労働省から寄稿いただいた内容にも国家戦略20か年計画が紹介されており、軍事政権から2018年に総選挙による民選内閣でも同様の計画が遂行されると思われる。

(写真は 2/15 Prayut首相)

4.中小企業の法務、労務問題について

2/17に開催された信金中央会主催の法務セミナーでも、中心は労働法であった。

講師は、昨年11/23にOVTAセミナーでお招きしたRajah & Tann法律事務所から丸山弁護士と、Mr.Ittichai弁護士、Ms.Thamolwan弁護士が担当。

雇用の開始から、雇用の終了までの労働法の基本を講演されたあとで、やはり問題は解雇にまつわる課題である。 講演後の質疑応答でも、解雇の在り方についての質問があった。

 

質問1)就業規則違反で、イエローカードを何回発行すれば、解雇になるのか?

回答1)同じ違反で、1年以内に2回発行すればよい。2回目の発行と同時に解雇が可能。 ただし、解雇に伴う補償金は支払う必要がある。

 

質問2)社員が麻薬に手を染めていた場合は、どのように対処すればよいのか?

回答2)麻薬などに手と染めているのであれば、労働法というよりも刑法問題である。就業規則にも麻薬など禁止と、きちんと明示されてあれば、実証があれば解雇は可能である。

 

質問3)工場などの移転で、従業員がついてこれない場合は、解雇となるのか?

回答3)労働法上は、工場の移転に関しては、家族などの関係で移転できない社員があれば、特別解雇手当が必要な場合がある。ただし、既存の他の事業所への移転の場合は、その限りではない。

 

5.日系企業が優秀な学生を採用するには

タイに進出する日系メーカーでは、大卒の優秀な社員の採用が難しくなってきた。

2/24に一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)バンコク事務所とアジア工科大学(AIT)・タマサート大学・シリキット国際工科大学(SIIT)の教授を務めたF名誉教授との懇談の場に同席をした。HIDAでは、タイの大学に日系企業の紹介を兼ねて講座を開設する場合の、助成金制度がある。その中で、最近の学生が、日系製造業に就職したいとの希望が薄れてきた、との報告があった。確かに、日系企業では横並び意識が強く、優秀な社員には他の社員の2倍もの給与を支払うという企業は少ない。

地道に日系企業の良さを学生たちに知ってもらう方法が必要であろう。

同日の午後、日系とタイとの合弁でNエンジニアリングの会社を訪問した。

これから工場の新設、拡張需要がそれほど伸びないと見込んで、設備の保守メンテナンスを行う企業である。20-30年もタイで工場を経営されていると設備面でも随所に故障が出る。そのため、5-10年計画で、設備の保守点検を行い、メンテナンス計画の立案をお手伝いをすることで、ビジネスチャンスを見つけるという。しかも、客先は日系企業だとしても、メンテナンスはタイ企業が主体となってサービスを行うというもの。保守管理の技術面もタイ企業でほとんどの対応ができ、補修部品も調達が可能だという。

同社の考えは、新規進出で社員を育成する時間がないため、優秀な社員はそれなりの給与水準を提示すれば集まるという。おかげで、進出早々は、営業面で苦労をしたが、半年を経過すれば、予想以上の問い合わせ、見積もりがあって、受注を選別する段階になったとのこと。これも優秀な社員が確保できたからである。同社は、数年前からバングラデシュ、ミャンマー、ベトナムなどアセアンのネットワークを構築中で、各国で展開するには横並び意識では優秀な社員が採用できない、と経験ずみである。

 

5.(参考)ラオス進出の日系企業の課題と対策

2/28に日本国際アセアンセンター主催のラオス投資セミナーがあり、そこで進出日系企業の課題とその対策について伺う機会があった。

☆ラオスの強み;廉価な労働力(最低賃金111ドル/月)、若い国民(平均年齢24.4歳)豊富な資源。

★ラオスの弱み:人口が希薄、スピード効率の低さ、輸送コストなど。

そこで、進出する日系企業の悩みは、労働者が採用できるのか、という悩みである。

この点は、2000年から現地の調査をされてきたラオス計画投資省の顧問の説明では解決されてきた。

取材された日系企業20社では、ラオス人ワーカーが農耕作業の繁忙期およびラオスの正月明けに減少する傾向が強いことを示された。しかし、L社では、企業目標を掲げて、求人広告も積極的に進めることで、目標には達しないまま、進出当初から従業員数が拡大してきた。

また、採用3か月以内と3か月を超える従業員では、退職率が異なる。自分の適性が理解されたワーカーの定着は高い。L社では進出5年後から、従業員数の採用計画を変更した。熟練ワーカーが増えるに従い、能力給的な要素がワーカーに理解されて、作業効率が伸びてきたのである。

残る問題は、物流である。

これもサバナケット州にあるサバンSEZでは、インランドポート構想で、コンテナの積み替えをし、混載も可能なトラックヤードを整備してきた。そのため、従来は、タイのイースタンシーボード(港)から片荷でも往復の借り上げ料金が必要であったが、今では、少ない場合は混載でも貨物の搬送ができる。政府も、この結果を見て、ビエンチャン首都圏でもインランドポート計画がある。いずれ、この機能が整備されるとランドロックの国と言われたラオスは、ラオスを通らないとアセアンの物流が機能しない、という国になる可能性もある。

残る課題は、ラオス人の資本主義経済への理解度がどこまで高まるか、である。

識字率よりも、企業社会、経済の効率などの教育が重要になると思われる。

現在、ラオスからタイへは30万人もの出稼ぎ者があると言われるが、これが減少するにはまだ時間がかかると思われる。


 

(写真は2/28日本アセアンセンターのセミナー)

 

以 上