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タイ

作成年月日:2016年10月

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タイ国情報 2016年9月

2016年9月のタイの労働省や日系企業の取材を中心にタイの高齢化社会に向かう実情、タイ日系企業の労働事情、雇用関係を紹介します。

1. タイ政府の自動車政策「電気自動車振興策」と日系企業の現状

2. 町工場から世界に部品供給するTグループ飛躍の陰に日系との合弁

3. 高齢化社会とこれからの労働政策、福祉政策

4. タイの介護サービスについて

5. 労働者不足と省力化、自動化への機器開発について



1.タイ政府の自動車政策「電気自動車振興策」と日系企業の現状

タイ政府は、成長に導くニューエンジンとして10の重点産業を取り上げ、投資奨励を進めている。内容は、5つの既存産業分野と5つの新規産業分野がある。

具体的には、短期、中期の目標で最初のSカーブとして、既存産業のレベルを上げて、さらに進展させるものとして、1)次世代自動車、2)スマート電子機器、3)世界レベルの観光、4)効率的な農業、5)バイオテクノロジーを上げている。長期の重要な産業として、さらに新規産業を創出し、タイ経済を飛躍的に発展させるとして、6)産業用ロボット、7)航空宇宙、8)バイオ燃料・バイオ化学、9)デジタル産業、10)医療・健康産業がある。

まず、次世代自動車として「電気自動車の振興策」を打ち出している、具体的には、エネルギー省が2016年3月にEVアクションプランを発表し、EVバス導入と、EVインフラの整備から着手する。タイのプラユット首相は、年頭から日系自動車メーカーのトップと面談し電気自動車の生産を要請したが、日系自動車メーカーは、タイではいまだ電気自動車の市場が形成されていないことから、タイでの生産はまだ先になるとみている。

ランシット大学のアヌソン・タンマチャイ経済学部長が10/3同大学で開いたセミナーで、「タイ政府が推奨したい電気自動車に使用するバッテリーに関しての研究はタイでは難しいことから、電気自動車の推進を遅らせるべきだ」との意見を表明。電気バスを組み立てる、チョータウィー社のスラデート・タウィセーンサクンタイ社長兼CEOは電気自動車を組み立てるには、バッテリーの国産化が重要との意見もある。

さて、2016年の国内市場としては74万台、輸出130万台、タイでは合計200万台の生産が見込まれるが、国内市場の拡大は2018年になるとみられる。その理由は、2012-2013年に自動車取得者に減税制度が加わったことから国内市場が100万台を超えた。その条件として、5年間は転売が禁止されていたが、この条件が無くなることから買い替え需要が増加するとみられる。

既存の日系自動車メーカーに加えて、新しく電気自動車生産の企業が加わる可能性がある。そのうちの1社、F社は、日本での生産を考えず、タイ政府の助成があるなら、タイでの生産を検討しているのである。タイ政府としては、エンジン開発なら数年以上要するが、電気自動車であれば、モーターとバッテリーは別として、車体や足回りは既存のサプライヤーの生産能力が生かせるとみている。市場性を判定するのは、政府の政策とは別に個別企業のマーケチングが重要である。

(写真は、F社の電気自動車)

2.町工場から世界に部品供給するTグループ飛躍の陰に日系との合弁

創業50年を迎えたTSグループは町工場からスタートして、今や世界の自動車メーカーに直接供給できるグループまでになった。

先日、取材したS取締役は、グループ全体で年商は710億バーツ(2,200億円程度)で1/3は日系企業との合弁会社。1/3は海外にあるグループ企業。1/3はTS単体の企業である。

発展の転機は、日系企業との取引が始まったこと。当初は日系の2輪メーカーH社向けの部品を供給していたが、4輪メーカー1社から供給しないかとの要請があったことに応じたことが転機。I社からは最初の数年間は技術指導をし、指定する機種の部品を5年間、買い上げ保証を得たこと。その後も、日系企業との提携により成長をしてきたが、2010年に不良債権で苦慮していた日系企業を買収するまでになった。その後も、インドとの合弁、中国企業との合弁も経験し、現状はインドネシアとメキシコの工場拡張に力を入れている。

 

(写真は、TSグループ会社の本社)

 

3.高齢化社会とこれからの労働政策、福祉政策

タイは、日本についで高齢化(60歳以上の人口)が進んでいる。2010年の840万人の高齢者人口は2020年には1,260万人、2030年には1,950万人となる。平均寿命は、男性71.6歳、女性は78.4歳で、元気な高齢者の割合は79.5%、寝たきり老人は15.%、在宅高齢者は19.0%である。これらシルバーエコノミーの需要とイノベーション主導で経済が変わるのかどうか。日本での経験をタイに生かしていただくという目的で、日本からの講師は政策や企業実務面での経験を発表。

高齢者の生き方でタイと日本では大きく異なる意見があった。それは定年延長についてである。日本では、定年延長により高齢者は再就職を希望する人数が多いが、タイでは定年延長には賛同するものが少なく、むしろ、収入が減少しても自由に過ごせる生活を希望するものが多い。その理由としては、都会では小さな住宅で勤労生活を過ごすが、定年後は地方に戻れば、広い耕地と広い自宅で悠々と過ごせる方が多い。この点は、日本の戦後世代が農業に従事する人口が10%以下になった一方、タイではまだ農業人口が30%を超えているからである。

また、福祉政策とも関係する年金制度の見直しについての説明もあった。

いずれ、高齢者が社会の20%を超える時代になると、高齢者の生活保障として年金の役割が大きい。現在のタイの年金制度では、高齢者は月に数百バーツの年金が支給されるのであるが、足らない部分は自分のアルバイト、子供からの仕送り、地方に戻って食料自給生活など対応策が多くある。一方、日本の高齢者が戻る地方には土地が無く、都会周辺では農業による自給自足生活ができる農家はむしろごく少数者である。 一方、高齢者社会の労働政策は高齢者を企業で迎え入れて勤労者として雇用するだけではない。タイでは、工業社会は拡大するものの、農業と工業とのバランスが取れた社会が残るならば、労働政策、農業政策により高齢者の生活を保障する方法がある。日本の知恵を生かせる分野と、逆に、日本が学ばねばならない分野があるということだろうか。

(写真は、9/16に開催されたタイ労働省の高齢化社会についてのセミナー)

4.タイの介護サービスについて

9/16にJCCの医療、医薬分科会にて「タイの介護サービス」について学ぶ機会があった。

一般的に、タイでは高齢者の介護は在宅が基本だと言われてきた。都市では別だが、地方では家族が高齢者を面倒を見ることが当たりまえで、地域の結束が固いため、高齢者も居心地が良い。しかし、時代は変わってきた。

国民医療保険制度では、高齢者介護は公的な高齢者施設である「社会福祉開発センター」を無料で利用可能である。

タイの公的介護施設は、バンコクをはじめ各県に置かれている。

まず、国立(社会開発・人間安全保障省管轄)の施設は以下の県に置かれている。

 

Yala 80,
Chainmai1 33
Bangkok 250
Chonburi 260
Buriram 100
Phuket 90
Ayutaya 200
Nakorn Panom 80
Lanpun 90
Nakorn Phatom 65
合計10か所1,348床

次に、各県が設置した高齢者介護施設(Elderly Home)は次の通り。

 

BANGKOK、Bangkae2 Eldery Home 140
Chantaburi 60
Nakorn Phatom 60
Kanchanaburi 120
Nakorn Phatom 80
Nakorn Rachashima 100
Nakorn Rachashima 130
Lopburi 120
Chumporn 80
Trang 100
Mahasarakam 100
合計 11か所1,140床

公的機関とは別に、民間でも早くから介護サービスに特色がある病院もある。

例えば、Kluay Namthai Hospitalは、1973年に病院を開設。1981年から介護サービスを手掛けて、2か所の病院と高齢者向け介護サービス付きのアパートを開設している。

これ以外にも、Natural Homeは、高齢者向けのスロープや手すりを付けた高齢者向けサービスアパートを経営。利用料金は1日2,000バーツ。1か月で42,500バーツかかる。医療費は別。

9/16現在のJCC会合での説明では、バンコク病院所属で日本の大学で医師免許を取得したタイ人の医師が、日本流のサービスを展開するために準備中であるとの説明で合った。

その後、10/3のニュースでは、我が国の天皇陛下もお泊りになったナイラートホテル(元ヒルトンホテル)が売却された。購入したのはバンコク病院など経営する上場会社のBDMグループ。施設をやり直して、高齢者向けの施設になると言われる。

ところで、外国人がタイで介護施設を開設するには、特別の規制があるのではない。サービス業であるため、外国人が49%しか出資できないが、タイ人との合弁ならサービス業にも進出できる。商務省の外国人事業委員会の了解を得れば開設できる。

 

(写真は、JCCの医療分科会の会合にて)

5.労働者不足と省力化、自動化への機器開発について

9/21-9/23にタイの運輸物流、マテハン機器を一望できるタイ国際物流フェア2016(TILOG-LOGISTIX 2016)」がBITECにて開催された。

物流の合理化、ロボット化の進展は我々が想像以上に早く展開する可能性がある。

例えば、同展に出展されていた2社の声を紹介する。

■O社

「28年前にシンガポールにアジアの拠点を置いたが、タイの産業発展とベトナム、ミャンマーへのアクセスの観点から現地企業と合弁会社を設立した。当面は日本から設備を輸入するが、コアの部分を除きタイ現地調達を計画。ロボットに関しては、ABB(スイス)やクーカ(ドイツ)など競合する企業もあるが、マテハン分野では他社に負けないロボットが提供できる」

■M社

「今年も出展したのは、物流の合理化に対する引き合いが非常に多いため。タイの置かれている現状は、物流倉庫のハード面では各社どこも同じように見える。しかし、ソフト面ではわが社が今まで蓄積したノウハウからパッケージ化して提供している。顧客はその中から選択でき、カスタマイズの時間と費用が省ける」

 

上で紹介したように、コンベアーによる単純作業でモノを掴んで移動させるだけの動作もO社のロボットでは疲れ知らずで24時間勤務が可能である。単純に時間当たりのコストを比較すると、ロボットは同じ時間で、同じ動作を繰り返すことができる。その意味では、ロボットの導入で単純な作業は代替されるが、それだけ人間が人間としての能力が発揮できる部署に配置転換ができる。

米国の自動車業界の組み立て工程の機械化、ロボット化を導入してきたT社のシニア技術者が指摘するのは、ロボットは、どこに使えばよいか、現場の作業員の動作を繰り返し研究することで、ヒントが生まれるのである。それに人間が持つ動作に近い作業をするロボットを導入するのであるが、人間と同じ作業ができるように導入前の検討が重要である、とのことである。

(写真は、タイ国際物流フェア2016展の様子)

 

(以上)