各国・地域情報

タイ

作成年月日:2016年5月

海外情報プラス

タイ国情報 2016年4月

2016年4月にタイ企業、日本企業の取材を踏まえてタイの労働事情、各産業の事例および地方の産業の一部をご紹介します。今月は、タイのお正月(ソンクラン)の機会に、ネパールまで行く機会があり、現地の事情も一部ご紹介します。

1. タイの自動車産業と研究開発(R&D)

2. タイの観光振興と日本への観光客誘致策

3. タイ南部、トラン県の水産業の実態と工場従業員の確保

4. 在タイ日本大使館の考える日タイ関係

5. (特別寄稿)ネパールの現状と外貨収入の1/3を占める外貨送金の背景

1.タイの自動車産業と研究開発(R&D)

4/1にある日系自動車メーカーの本社を訪ねた。3月16日開催のバンコク日本人商工会議所(JCC)自動車部会で報告された内容について、追加取材を行った。以下はその概要。 「3/7にプラユット首相は、日系の自動車メーカーの幹部と面談を行った。

(当方の質問)

バンコクポストなどによると、首相は各メーカーに電気自動車などの現地生産を要請した、と報じられているが、事実はどうか。

(同社回答)

タイでも電気自動車がしかるべき台数が売れる市場があるか、またはタイ政府が電気自動車導入に税金の免除などインセンテイブがあれば、普及する可能性はあるが、そのような市場の動向を見極めないで、電気自動車の生産だけを先行するわけにはゆかない。現在、同社が考えている研究開発は、タイ現地およびタイから輸出する先の市場性、耐候性などのテストをすることが先決で、10年後の車づくりに役立つ研究開発となれば、今の体制では不十分である。従い、軽々しく、首相の要請だからといっても、返事はできない」

また、タイ政府工業省がタイの自動車研究所の要請で、テストコースなど各社、自動車部品メーカーが共同利用できるテストコースなど設置する動きは注目している、とのこと。

(写真:世界の研究開発型企業があつまるバンコク郊外のサイエンスパーク)

2.タイの観光振興と日本への観光客誘致策

日本政府観光庁は、2015年の宿泊旅行統計調査の結果と、2015 年12 月、2016 年1月の速報値を公表した。2015 年の日本国内宿泊者は前年比6.7%増の延べ5億545万人で過去最高を記録、外国人延べ宿泊者数も前年比48.1%増の6,637万人で調査開始以来過去最高値となった。2015 年12 月にタイ人が宿泊した都道府県を構成比で見ると、山梨県が、中国に次いでシェアが2位となり、13%、愛知県でもタイ人が7%で、中国の48%に次いでシェアが2位だった。2015年の国籍別の外国人延べ宿泊者数では中国が1位で1,645万人。タイは243万人の6位となり前年から21.4%増加した。タイからの延べ宿泊者の構成比は東京都が29%とトップ、次いで北海道の14%、大阪13%、千葉県7%、福岡県が5%だった。県別の外国人延べ宿泊者数では上位4都道府県が前年と変わらず東京都、大阪府、北海道、京都府。一方で最も増加したのは静岡県の123%で、次いで佐賀県の119%だった。

4/5にJETROと日本政府観光庁は共催で、タイの観光振興と日本への観光客誘致策についてのセミナーを開催。主に、北海道への観光客誘致で成果を上げた事例と、Invest JAPANとして、日本政府が外国企業に観光市場も開放している旨の説明があった。各地とも、戦略を立て、地道な戦術の積み重ねが今になって成果が上がっていると説明をされた。

しかし、円高、円安の影響により外国人観光は増減されている、という事実も見逃せない。 特に、人材確保、人材教育面でいうと、今後の外国人観光客の誘致には、海外の方を予めスタッフとして採用するなど、受け入れ態勢など事前の準備を怠らないことも重要である。

 

(写真は、4/5の上記観光セミナーの様子)

 

3.タイ南部、トラン県の水産業の実態と工場従業員の確保

3年前の2012年は、タイ水産加工業にとっては受難の年であった。エビの稚魚が、原因不明の病気にかかり、成長せず夭折するため、エビを加工する工場が原料不足で休業に追い込まれる事態になった。その後、病名はEMS/AHPND(早期死亡症候群/急性肝すい臓壊死病)と呼ばれる感染症と判明し、日本政府などが対策に援助を行った。そのため、バンコクに近い業者が、インドネシア、ベトナムなどに出かけて現地のエビ養殖業者に日参をするほどであった。ようやく2015年ごろから病気の対策が打ち出されることになり、エビの病気対策は落ち着いてきたのが2014-2015年の現状である。同時に、欧州向けの水産加工物に関して業界では、過酷な労働条件を課していること、許可なく領海内の狩猟をするなど行政指導面でも課題があって、これはタイの水産業界の課題でもある。そのため、遠洋漁業ではなく、自前で養殖するという水産業の本来のあり方に注目されている。

さて、4/7-4/8にタイ南部の水産加工業の実態を視察する機会があった。

現地の方の説明では、バンコク周辺のエビの供給が減少したのは事実だが、タイ南部は影響を受けていなかった。そのため、海外に調達に走った業者とタイ南部の養殖業者とは関係が悪くなったほど。タイの水産加工業の最大手はマグロ缶で有名なタイユニオンであるが、今回はタイの上場会社であるT社を訪問した。同社の工場では10年前の従業員3,000名は、今では従業員確保に苦戦をしており1,000名規模に縮小。第3工場まで建設したが、第3工場は休ませている。

では、現状の従業員確保をどうしているのか、と尋ねると、隣のミャンマー人を採用して対処している。これは、バンコクの隣、サムットサコン県も同様で、県都マハチャイではミャンマー人が40万人も在住し、銀行のATM機もミャンマー語が表示されるほどである。ミャンマーとタイとの国境県では数十万人ものミャンマー人が居住し、タイ語の話せるミャンマー人(モン族、シャン族)がタイの工場や商店などで働いているのが現実である。

(写真は、トラン県にあるT社にエビや養殖魚を供給するクラビ県の水産物の養殖場)

4.在タイ日本大使館の考える日タイ関係

4/30開催のバンコク日本人商工会議所(JCC)総会で、在タイ日本全権大使、佐渡島大使の講演があった。

テーマは「日タイ経済協力の方向性」である。

内容としては、次の5点について、言及された。

1) 産業の高付加価値化への協力

2) 研究開発・人材育成への協力

3) 質の高いインフラ整備への協力

4) ビジネス環境改善への課題

5) 東部臨海工業地帯における領事業務体制の強化。である。

 

タイ経済への見方に付いて、数点解説があったので、報告をする。

@ タイの出生率は1%程度で、高齢化は急速に進む。人口のボーナスといわれる世代も、数十年とは続かない。

A 労働人口でみると、タイは地続きの利点を生かして、周辺国の労働者を生産の現場に迎え入れている。

B 一方、産業構造上、農村人口は30%もあり、生産性の向上を図ることにより、サービスセクターなどへの移動も可能である。

C 産業構造の変化を10年単位で、輸出品目の変化を見ると、次の通り

D 1990年代、上位は、アパレル、自動車および部品、宝石であったが、2000年には、PC関連、集積回路、ゴム製品に変わり、2010年には上位からHDD(記憶装置)、自動車および自動車部品、エレクトロニクス関連部品になった。  

 

高等人材に関連して、レベルは高いが人材は少ない。その理由は、高等人材への投資が少ないことが原因だとみる。先日、タイ湾にあるシュブロン石油精製基地を訪れたが、1980年代は欧米人が中心だったが、2016年では1,300名の90%がタイ人に代わった事例もある。 たまたま、4/30に岸田外務大臣が東南アジア歴訪で、最初にタイを訪問されるが、現地からの提案を早速、タイ政府にも提言される、ことになった。

(写真は、4/29にJCCで講演中の佐渡島大使)

5.(特別寄稿)ネパールの現状と外貨収入の1/3を占める外貨送金の背景

世界最高峰エベレスト(8,848m)で有名なネパールを訪れた。

人口は2,649万人、GDP(国内総生産)は約198億USD(2014年、世界銀行調査)で、4月13日がタイと同じ正月(元旦)。

ここでは、ネパールの現状と課題を紹介する。

現地に入るには、首都カトマンズにあるトリブバン国際空港を利用する空路が9割。陸路の場合、中国からはチベット自治区コダリの1カ所だが、2015年4月25日に発生した地震の影響で閉鎖中だ。インドからは北部に6カ所のゲートがある。海外からの観光客、登山家は2007年以降、年間50万人を超え増加傾向にあった。日本人来訪者は約2万人。2015年の地震で山岳に入る道路が崩れ、2016年4月現在復旧できていない地区もあるが、一時中断していた登山の再開で現地を訪れる人も増えている。  

ネパールの魅力は、エベレストをはじめ8,000m級の高山8峰があることだ。100を超える民族、多様な文化やインド、中華、チベットの各料理が楽しめる。インド系住民のヒンズー教徒、チベット系住民の仏教徒に加え、イスラム教徒も居住する。  

ネパールの主要産業は農業と観光。インフラが整備されない状態では、産業開発には困難をきたしている。日本のJICAや欧米の援助機関、NGOも自立のための援助をしてきた。個人として農村開発で貢献されてきた日本人もおられる。  

国内物流の大半は陸路。鉄路や水運はない。主な物資はインドから入る。幹線道路のカトマンズ第2の都市、ポカラ間は一部、4車線化を進める工事中だったが、山岳を通るため大半は2車線道路。石油製品、建設資材、生活物資など運ぶ四輪駆動の大型トラック、観光バス、乗り合いタクシーなど営業用の車が行き来する。  

一方、山岳にある地方の村には公共バスも一部は行けるが、山のふもとから海抜の高い村までは徒歩だ。バイク、四輪駆動車がないと現地では移動が難しい。カトマンズ市内でも、人力車や大きな荷物を背に乗せる運び屋さんもいる。登山家が運ぶ大量の荷物もシェルパ族の人手による輸送がないと成り立たない。  

インドによる経済制裁で石油製品の輸入が途絶えた2015年9月には交渉制のタクシー料金が高騰し、人力車が活躍した。

カトマンズに滞在し、ネパールの課題を垣間見た。それは停電、水不足、燃料不足、マスクが必要なほど埃の多い空気、政治の混乱の5つ。中国は道路や空港の整備に関心を持ち、影響力を強めたい。インドはネパールも一体だという意識がある。

外貨収入の3割が海外で働く50万人のネパール人の仕送りといわれる。タイにも観光客相手の商業集積で、英語で観光客に接する店員の多くがネパール人だと言われる。彼らが帰国し、国づくりにまい進する時代はいつになるのだろうか。

(以上)

 

(写真は、2015.4のネパール地震の震源地に近い村の小学校)