各国・地域情報

タイ

作成年月日:2016年3月

海外情報プラス

タイ国情報 2016年2月

2016年2月のタイ企業、日本企業の取材を踏まえてタイの労働事情をご紹介します。

1. 重要保安部品のタイでの現地生産について

2. タイの教育事情と職業能力開発について

3. 経営体制の再構築について

4. 現地化した企業の新製品の開発について

5. (業界情報)タイの宝石、貴金属業界の後継者育成について

1.重要保安部品のタイでの現地生産について

A社では、自動車の重要保安部品を日本、米国、中国で生産してきたが、2017年を目途にタイでも生産する準備をしている。2/5に現地製造会社のO社長に取材して、今後のアセアン向けの自動車部品の在り方について伺った。

業界の課題は、現地化と軽量化である。現地化については、日系だけでなく、欧米系も含めた自動車生産台数によって、供給する側としてどこから供給すればよいのか、考えている。特に、重要保安部品としては、当面は20万台を目標にするが、将来は100万台体制まで見据えてタイに投資をした、とのことである。

しかし、現地で主要な部品、原料を調達するにはまだ時間がかかると見ている。例えば、特殊鋼の調達を考えると、現状では日本からしか入らない。また、素材を加工して、熱処理し、強度の確認まで行う過程を考えると、日本で一通りの加工をしたものを持ち込む方が、同社としては生産効率が高い。

また、グループ内で強度や精度の保証できる会社があれば、地場企業にアウトソーシングをするのは難しい。2月に、日本では愛知製鋼の工場がストップして、トヨタの工場も休業せざるを得なかったように、素材などは複数調達できればという思いはあるが、品質の保証という点では、また、今から立ち上げということから従来の調達先を最優先せざるを得ない、という事情である。

タイ人の従業員については、既に3年前から日本に研修生として送り込み、来年の工場開業までに現場で学んでもらっている。

では、グループ内として情報交換、共同購入まで行うのかと聞くと、今の時点では、工具、機械などは共同購入の可能性はある。

また、現地化率の指標で、幹部から各部門のマネジャークラスは、人事と経理部門を除き、現状では、日本人が中心の組織にならざるを得ない、とのことである。

このような点からいうと、日系企業の現地化にはサプライチェーンに組み込まれている限り、日本流の品質保証が求められているため、操業開始後の課題といえる。

(写真:同社が入居を予定しているイ―スターンシーボード工業団地の様子)

2.タイの教育事情と職業能力開発について

タイの高等学校教育では2008年の予算が3,014億37百万bahtから2016年は5,201億32百万bahtまで72%の伸びがあったものの、国語であるタイ語をはじめ、社会科学、英語、数学、生物、化学、物理など2012年から2016年までの学力テストの結果は、上昇したのは社会、数学だけで、他の教科は軒並み低下しているという結果がでた。(2/10BANGKOK POST紙)

識者によると、教育環境の地域格差などいくつもの課題が見えてきた。 1つは、世界銀行の指摘であるが、地方の学生と都会の学生では3年程度の学力の差がある。 それを如何に埋めるかが、課題である。

2つ目は、地方には120名以下の小規模な学校が15,000校も有る。その学校では、教員の多くが、他の地域で教師として経験を積まずに初めての赴任の割合が高い。

3つ目は、今回採用した試験科目はクリテイカル(批判的な思考法)に関するため、特に地方の学生はそのような訓練を受けていない、というもの。

そこで、地方では中学や高校を卒業して、職業につく比率が高い。また、就職前に、労働省が設置した各県にある職業訓練学校に行く青年もある。

先月紹介したように、そこではいくつかのコースに分けて、技能の基礎を指導しているが、実際に使用する工具、機械が古い場合が多い。

今までも、職業訓練学校に民間から寄付をした機械も多いが、中には使用できないものもある。職業訓練学校とその周辺にある工業団地などの関係で、学校だけではなく、企業の機械設備を利用する企業実習制度をとるところもある。

2/9にタイ労働省の技能開発局に日本の技能検定制度を導入すべき提案をされているF氏にあった。目的は2つで、1つは、日本の製造業、建設業などの現場でワーカーが不足する対応として。そのためには、技能のレベルが日本の技能検定と同じレベルで試験、比較ができるのかどうか、である。2つ目は、タイ人のワーカーに目的を持って働いてもらう手段として、提案をされている。しかも、タイに子会社があれば、数年後に会いに戻っても良し、また、日本で長く働いても良いという考えである。

タイ労働省では、技能レベルに応じた給与を支払うように資格制度を順次導入してきたが、全体的に見ると、利用者が少ないのが現実である。

 

(写真は、2/10のBANGKOK POST紙)

 

3.経営体制の再構築について

タイの自動車生産が2012年をピークに2013―2014と低迷する中で、T社では、適切な対応策を講じることも無く、在庫過多になり、従業員の採用募集停止、言い換えると自然減による人員削減を行ってきた。2015年の歳末にあたり、労働組合からのボーナス、賃上げ要求もボーナス1.0か月で回答して、労働組合は断固、反対。残業拒否から、ストライキまで入るという強硬な姿勢を示してきた。現地の経営陣は業績の低迷を理由に、引き上げを認めず、ストに対応して、在庫の上積みで乗り切ろうとした。しかし、工業団地の中での抗議行動もあり、調停になった。結局、調停案として1.5か月のボーナス支給と2016年からの賃上げも容認して終結した。

日本側の親会社は、現地のMDが今まで経営悪化に対応せず、しかも、従業員のボーナス支給に準じて1.5か月のボーナス支給を要求したため、経営責任もあるとして0か月の回答。また、3年契約終了でもあり、更新せず、退任してもらうことになった。しかし、MDは自分だけの責任ではないとして、日本からの駐在員もボーナス0か月で終結。

親会社としては、MDの退任とともに、親会社から社長を送り込み、経営の立て直しを図ろうとしている。 たまたま、親会社から派遣の社長は、現地のMD経験者でもあり、親会社の会長の兄弟でもあり、全面的に立て直しを任されている。

経営危機の際しては、外部の経営者を招く事例もあるが、同族企業の場合は、親族に再建を任される事例が多い。

(写真は、経営体質の再構築中のT社)

4.現地化した企業の新製品の開発について

Y社では、現在、工場が1か所で、販売店は全国に88か所ある(バンコク60か所、郊外28か所)、従業員は本社120名、工場で150名である。日本人は3名で、運営としてはタイ人が日常の管理と、商品の生産から店頭までの配送も行っている。

既に、タイの商品はタイだけで原料調達、新製品開発を行っており、本社からは技術支援、工場拡張などの資金援助に限られ、現地化が相当進んでいる。

2/12は、同社の新製品開発について、伺った。

営業部門と、商品企画部、工場と一緒になって、毎月新製品を開発し販売している。

アイデアも現場から出てきて、試作品を持ち寄って、店頭販売するかどうか、検討をする。その場合は、日本人のMD 、工場長なども参加して決定をするが、今ではタイ人の意見を尊重している。その理由は、既に現地化が進み、消費者の大半がタイ人になったことから、日本人の考えを押し付けしない。また、タイ人が自ら商品企画して、決定することから、販売面でも自主性が生まれている。

多くの日系企業でも現地化が進むと、新製品開発からタイ人主導になる事例である。

(写真は、同社本社)

5.(業界情報)タイの宝石、貴金属業界の後継者育成について

世界の宝飾業界では、ダイヤモンド、金をはじめ各種宝飾の大きな展示会で世界の流れをつかむことができる。米国、欧州についでアジアでは、香港とバンコク、東京で大きな展示会がある。その意味で、バンコクの展示会は、世界の潮流を伺う意味で重要な位置にある。2016.2.26-2.27までのバンコク郊外、IMPACTで開催されたBangkok Gems & Jewry Fairの初日を訪ねてみた。世界経済の低迷から、宝飾業界でも展示会の出展者、来場者の減少がある。世界の宝飾市場規模が縮小する中で、バンコクも影響を受けている。

日本の宝飾業界では、1990年代は1兆円を超えると言われたが、今では1/4になった。

日本では宝飾店の転廃業が続いている。また、インドの宝飾業界でも関税の引き上げもあって1,000店の宝飾関係の会社が廃業するニュースもあり、業界は厳しい状況にある。世界経済を主導した、中国の勢いも弱くなっている。

タイの宝飾業界の影響を受けるのは、欧米経済が第1、第2は中国経済である。第3に、日本を含むアジア諸国の動きがある。先週、先進国G20の動きがあったが、大きな経済の基調を変えるほどではない。

そのような中でも、タイでは宝飾業界では教育機関と提携して宝石デザイナーなどの育成を行ってきた。具体的には何か? 一つの事例を紹介すると、バンコクの宝飾展では芸術大学のシルバコーン大学など複数の大学の出展があった。学生時代から、世界の宝飾業界と接することで大きな刺激を受ける。技術は幼いかもしれないが宝飾業界に関心がある学生がいる限り、この業界はまだまだ可能性があるといえる。

 

(写真は、タイの宝飾フェアの様子)