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タイ

作成年月日:2016年2月

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タイ国情報 2016年1月

今月は2016年1月にタイ労働省や日本企業の取材を踏まえてタイの労働事情をご紹介します。

1. アセアン経済共同体AEC2015の発足による熟練労働者の移動

2. 観光振興策と個人所得税の控除

3. 工場建設当初のタイ人の活躍

4. 小集団活動による省エネ

5. 2015年末の労使紛争に見る日系企業の労務管理

6. (参考)日系企業のボーナス、昇給情報(MR&TS社より一部紹介)

1.アセアン経済共同体AEC2015の発足による熟練労働者の移動

1/5にタイ労働省の技能開発局長を尋ねAEC発足により熟練労働者の移動がどのようになったのか、各国との協定の状況など取材をしました。

質問1:技能開発局の役割りは何でしょうか?

回答1:タイ人の技能者の評価を統一すること、タイ人を訓練してスキルを向上させることです。知識と能力を開発して、タイ人が世界レベルにアップグレードさせることを狙っています。同時に、労働者開発法により、企業の教育訓練の促進を税制面でも応援しています。今年の目標は120万人を教育します。技能開発基金があって、従業員100名以上の企業は職業訓練をすることが義務付けられ、教育訓練を実施すればその費用の2倍が、企業の経費になります。

ちなみに、職業訓練の設備としては全国に12の大きな設備を持つ訓練校、78県に小さな訓練ができる施設があります。費用は、無料から、1時間当たり20バーツなど、30時間の訓練でも600バーツなど、安い経費で訓練が受けられます。FA(ファクトリーオートメーション)など工場などで活躍できるための基礎的な知識を教えています。 ちなみに、規模の大きな12か所の訓練校は次の通りです。

サムット・プラカン、スパンブリ、チョンブリ、ラチャブリ、ナコンラチャシマ、コンケン、ウボンラチャシマ、ナコンサワン、ピサヌローク、スラタニ、ランパン、ソンクランの12県です。対象業種としては、自動車部品50万人、ITソフト開発3万人、電気電子37万人、金型6万人を考えています。

質問2:AEC2015が発足して、人、モノ、金の移動が原則、自由になるが、タイの労働省としてどのような準備をされているのか、伺いたい。お聞きすると、労働者と言っても熟練労働者の移動であって、未熟練労働者の移動については従来の規定が当分、適応されるとお聞きしている。そこで、アセアン各国で、技能者の評価が統一され、移動が可能となる職種は何か?

回答2:現状は、医師、歯科医師、看護師、エンジニア、建築家、サーベイヤー、会計士、観光サービス業など32職種である。アセアン各国で共通するのは学歴と職務内容が明確であることである。(工業省の管轄では、エンジニアと建築家、保健省では医師、歯科医師、看護師など、財務省では、サーベイヤーと会計士など) これらの職種の拡大は、関係団体との協議が必要である。

質問3:2012年の最低賃金が全国統一300バーツになった。そのため、一部の件では、2倍近い賃上げが1年で実施され、タイ人労働者は努力せずとも賃金が上がる、と誤解されている方もある。日系企業としては、能力が向上すれば、それに応じて賃金の上昇はあると理解しているが、それにはタイ人の能力向上が必要であると考える。 そこで、タイの労働者の資質を上げることが重要だと考えているが、技能開発局としてはどのような施策、職業運連をされているのか?

回答3:AEC2015に向けてタイ人労働者向けの職業訓練として重視しているのは、英語力を高めること。職種的には、自動車産業、観光産業、レストランの調理師、物流業など必要に応じて教育する。技能開発局は、職務を誠実に努めること、労働者の勤務態度をただすように訓練をしている。日系企業との関係では、自動車部品業界の人材育成面で日系企業から技能面の指導を受ける仕組みもあります。 2015年夏に新しい、事務次官が交代してから、国民に対する情報提供に力を入れて、中央から情報提供をするため労働省にデータベースをつくる動きもあります。求人情報はすぐに見える仕組みを準備して、2016年3-4月に試運転を実施する予定です。

(写真は、タイ労働省技能開発局)

2.観光振興策と個人所得税の控除

タイの経済が低迷する中で、タイ政府は、貿易や海外投資だけに頼らず、個人消費の拡大、観光促進に力を入れている。特にタイでは国内旅行の促進と中国観光客の誘致に力をいれています。そのため、1/17にバンコク市内ルンビニ公園にて、観光博が開催されたり、村落基金を拡充して、地域開発と観光振興を目指しています。

現在想定されている内容は、@地方農村の農業インフラ整備、A農業法人の設立と金融支援、B小売店や給油所での農産物の販売、C地域の観光資源の開発、D電子商取引を通じた農産物や地元特産品の販路開拓など。

このため、ソムキット副首相は、村落基金として今年度前半にタイ国内7,255か所ごとに5百万バーツ、総額362億バーツを投入する予定。

同時に、国内旅行促進として対象を絞っているのは、企業のインセンテイブツアーに力を入れている。その理由は、企業の予算が確保されていることと、個人旅行の場合は、所得税から15,000バーツまでの控除をする予定である。

 

(写真は、1/17ルンビニ公園で開催中の観光博)

 

3.工場建設当初のタイ人の活躍

K氏は、日系企業が1990年代に集中して進出した時期に、子会社の工場の立ち上げを依頼されて、当地に赴任。工場建設地の選定で、バンコク周辺には日系企業が集中することから地方に注目。タイ北部のランパンにて新しい工業団地ができたことと、既存の進出企業から現地のタイ人が従順で、細かな作業にもふさわしいと聞いたことから、現地進出を決定した。親会社は、既に中国にも工場を持っていたが僻地であり、日系企業の進出の少ない場所でも躊躇はなかった。

また、本社が資金管理をすることで、工場は生産に専念することができた。しかも、1997年の通貨危機で、子会社の運転資金が回らないと分かった段階で、親会社は増資をして、子会社に資金繰りの苦労をさせなかった。このため、K氏は、工場管理、従業員の育成に力を集中することができた。その後、中国工場の閉鎖、タイからラオスに工場の分散があったが、タイ工場がラオス工場の親工場としての機能を果たすことで、日本の親会社が投下した資金は十分回収をすることができた。

K氏によると、工場の立地選定の重要さ、生産管理に集中できたことが、今日のタイ工場の生産性が高い背景であると説明をされている。

(写真は、地方の工業団地)

4.小集団活動による省エネ

T社では、生産性向上の一環として小集団活動を継続している。

毎年、経営課題ごとにチームを編成して、年間目標を立てて、毎月進行状況の報告と、幹部による評価、助言を受けている。1/22に省エネをテーマに組織されたチームの定例会を傍聴する機会があった。

具体的には、重点課題と取り組みを5項目上げて、指摘事項、具体的な活動、実施時期、当初目標、結果、反省点、活動結果、次月の活動予定など、毎月、更新をしている。 いつ、どこで、何をするか、タイ人スタッフが自ら決めて、実行することで、社内の自主性を生かすようにしている。また、定例の発表会では、社長、副社長が管理職を経由せず、各チームの個別の報告を直接聞いて、また直接、助言活動を行うことで、各チームの活性化を図っている。

省エネなど大きな課題には、外部の専門家の助言や、外部のセミナー、講習会にも参加することで、社内だけの独善化に陥らないような工夫も行っている。

経営幹部としても、各チームごとに年頭の課題を、年間の活動を通じてどのようにタイ人が成長してるのか確認をし、昇進や人事効果にも参考になっている。

タイでも、小集団活動が定着するには、幹部の理解が無いと継続が難しいが、同社のように幹部自身が、毎月の例会に参加することで、チーム員のやる気を引き出している。

(写真は、T社の事務所内部)

5.2015年末の労使紛争に見る日系企業の労務管理

1/26にタイの労務専門家Mr.Supachaiと、日系企業の幹部数名で2015年のボーナス交渉、賃上げ交渉、労使交渉に関して意見交換をする機会があった。

以下、意見交換の概要;

1) Mr.Supachai:昨年末に、日系企業のボーナス、昇給交渉で調停、争議までに至った事例は少ないが、今年度にいったん、終結したと見えても、来年度は自動車業界の業績が厳しい中で、年末ボーナスはさらに厳しい恐れがある。そのためには、今から労使関係の再構築に向けて対応をする必要がある。

2) I 氏:ところで、2015年の年末のボーナス状況はどうなったのでしょうか?

3) Mr.Supachai:当方が調査した資料があるので、提供します(以下、一部紹介)

4) F氏:ある自動車部品業界のおかれた環境と労使紛争の事例を紹介する。 S社は、従来の納入先から機種変更に伴い、ある部品の発注がゼロになった。 また、外注委託されていた工程が、内製化されたため、受注が5%まで激減。別途、大幅受注を予定していた部品の注文件数が、予想を大幅に下回る結果を招くなど、市場環境が激変した。そのため、社内の合理化を進めざるを得ない状況になった。たとえば、従来いた日本人60人を30名まで半減し、半数の幹部、エンジニアも日本など周辺国に配転することになった。2010-2012年はエコカーブームにのって、第3工場まで建設し、生産能力を拡大し従業員不足からタイ人だけではなくカンボジア人も採用して2直24時間稼働までおこなっていた。それが、一転して、国内市場にブレーキがかかり2直から3直にして従業員の雇用を確保、残業カットまでして合理化を進めた。ところが、労働組合の抵抗もあり、年末の交渉が厳しい状況まで追い込まれた。一部の労働者が暴走して、工場内の機械設備に損害を与え、操業が停止したことから本社から急きょ、設備部門の応援を頼むなど、労使の対立は先鋭化した。その後、調停など踏まえて解決したが、双方の隔たりは大きなものがある。

5) Mr.Supachai:タイ政府の最近の経済政策、投資誘致策を日系企業はどのように見ているのか? 労働集約産業は、カンボジアなど周辺国に移転するような動きの中で、タイの次なる発展には何が必要か? 6) F氏:2012年の最低賃金引き上げは、当時の政権の公約でもあったが、今後、能力向上に比例しない、最低賃金上昇は、タイ人の労働意欲を下げることにならないか? 正当な評価が必要ではないか? 例えば、日本も技能者、技術者が不足する中で、日本の厚生労働省が推進する技能検定制度は、日本とタイと連動するように考えられないのか?

 

(写真は、カンボジア国境にある工業団地の日系企業)

6.(参考)日系企業のボーナス、昇給情報(MR&TS社より一部紹介)

2015年年末の主な自動車業界でのボーナス、昇給情報として、Mr.Supachai(MR&TS)から提供された情報を以下に紹介します。

1)JTEKT 5か月+15,000(バーツ)およびソンクラン手当5,000(バーツ)

2)JTEKT Rayon 5.5か月+11,000およびソンクラン手当11,000

3)MTA 6か月+24,000

4)NHK 6.4か月+11,000 およびソンクラン手当7,500

51)T-Rad 5.5か月+15,000

6)Sun Star 4か月+8,000D

7)yna 5か月+15,000

8)Aisin(AMATA)6か月+20,000

9)Antorine2.8か月+37,000

10)Michellin 2.3か月

11)BMW(AMATA)6か月+75,000

12)Aisin ATC(Kabin)6.3か月+15,000

13)Yorozu 5.1か月+38,000

14)ISUZU(Samrong)8か月

15)Hino 7.2か月+16,000

16)Sony 2.8か月+14,000

17)JFE 3.5か月+30,000

18)Kyokuyo(AMATA)6.2か月+23,000およびソンクラン手当2か月+10,000

19)Tokai Rika 5.5か月+25,000

20)Toyota(Samrong)7.5か月+20,000およびソンクラン手当10,000

21)Takebe 5.9か月+15,000

22)Mitsubishi 7.3か月+12,000

23)TSPK 7か月+4,000

24)LLIT 1.8か月

25)Mitsui Lift 6.2か月+24,000(以下、略)

 

(写真は、TOYOTA BANGBO工場前)