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タイ

作成年月日:2016年1月

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タイ国情報 2015年12月

今月は2015年11月〜12月の日本出張とラオスの出張もあったため、タイの事情を周辺国との比較をしながらご紹介します。

1. 日本の自動運転に関する技術とタイへの技術移管の可能性について

2. 福利厚生の優れた工場の生産性向上と従業員の定着

3. 自動車業界の雇用拡大に果たすモーターショーの役割り

4. タイで新しく商社機能を持つ会社を設立するには

5. 第9回日ラオスの官民合同会議(12/17)について

1.日本の自動運転に関する技術とタイへの技術移管の可能性について

2015年11月から12月初めに日本出張をした際に、自動車業界の調査を実施するF社を訪問した。目的は、2016年5月に開催される日系企業向けのセミナーの講師に同社の幹部をお招きすることである。

まず、日本の自動車業界では安全運転、省エネ、低コスト、小型化などの課題とともに自動運転が大きなテーマの一つである。各メーカーは、数年前から自動運転に関する研究を行い、一部では一般道路でも走行実験をするまでになっている。

自動運転を支える要素・技術は、車載センサ等の認知技術、走行経路生成等の判断技術、制動制御や 操舵制御等の操作技術、自動車と運転手間の調停等の HMI 技術、システム設計に 分けられる。

(参考) https://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/gidou-houkoku/25_automatic_driving.pdf

日経BP社の 『自動運転の未来2016-2020』では、「自動運転が進めば、その結果として自動車産業は、次世代のモビリティ・インフラ産業へと変貌していく。その影響は完成車メーカーや部品メーカーだけにとどまりません。材料や電子部品、エネルギーなど関連産業はもちろん、ICT、インフラ、金融・保険、物流・運輸、流通・小売、広告・マーケティング、住宅・不動産など、ありとあらゆる分野に及び、かつそのインパクトは強烈です。」とまで影響の大きさを謳っている。

現実はどうか? 自動運転では先行する米国のGoogle社の幹部をトヨタのIT関連会社が引き抜くなど、米国が先行したが、今日は日本企業にも影響を与えている。では、これらの技術がタイに移管されるかどうか、である。たとえば、ドローン(drone)についても日本国内で規制の動きが出るように、実用化の動きがある。タイでもチュラロンコーン大学の工学部では既に実験をするような動きもある。自動運転の要素技術については、民間企業は当分は日本国内で開発するであろう。しかし、既に日産自動車などは設計部面の作成を、自動車の運転免許を持たないベトナム人の力を借りて行っているように、タイでも先進技術の導入に熱心な大学では、導入の動きを出す可能性はある。

タイは、自動車生産がアセアン第1という点から、いずれ部品レベルでは現地生産が行われると予想される。 タイ政府が推進する技術立国への動きには、現地の教育制度、産業の発展度合い、研究開発の環境がどのような状況かなど、調査、確認の必要がある。F社をお招きする背景にはこのような世界の動きを紹介する意味もあるとみている。

 

(写真は、F社)

2.福利厚生の優れた工場の生産性向上と従業員の定着

カーテン、壁材を主体としたタイテキスタイルメーカーであるP社の工場を最近訪問した。

同社の創業は、トンブリ近くのパパデン地区にある織物工場から出発して、現在の社長が2代目。本人は米国留学をして、大学では建築学を学んだが、帰国して創業者の事業を継承。1980年代から従来のOEM主体のままでは将来の発展が無い、としてデザイン部門の拡充と、自社ブランドによる市場開拓を行ってきた。年商は7-8億バーツ。従業員は工場が600名、本社および販売部門で250名の規模。合計850名前後。

1980年代にバンコク市内はショールームと営業拠点にしてRatchaburi県に800×800Mの敷地を確保して、モダンな工場を建設(設計は社長自身)。中でも従業員の食堂はレストランかと思われる素晴らしい環境である。当時設置したイタリア製の機械は10年を経過して償却が済んだとして、稼働率が3割に落ちても十分採算が取れている。繊維産業の収益源は、川上よりも川下の販売部門にあるとして、以後は工場への投資を節約しながら、企画部門、販売部門に力を入れてきた。

バンコクでは有名なデパートにはP社コーナーを設置。海外では、NY、Paris、中国上海、などにも代理店を設置。日本では神戸に日本資本と合弁の販売会社もある。今回の工場訪問は同社のショールームやWebsiteを拝見して、タイでもユニークな工場であると注目していたため、たまたま日本からの工場見学者があるとのことから合弁の社長からのお誘いを受けたため。

この事例から、日系企業として何を学ぶべきか?

@ 工場の操業率を上げて利益を確保するというのはOEM生産では基本的な課題である。しかし、いつまでもOEM生産だけで利益を確保するのは難しい場合は、川下の小売販売も考えねばならない。その場合、デザイン面、販売ルートをどのように確保するのが良いのか、考えるべきである。P社の場合も、一挙にそのような手を打つのではなく、バンコクに本社を構えショールーム設置、デザイナーの採用を徐々に実施してきた。

A 展示会の活用も、変化がある。以前はタイ政府の応援があったことから欧米の展示会に出展をしてきた。しかし、展示会だけでは、販売が伸びないことから、現地の代理店を見つけて、P社の海外拠点にしている。NYやPARISに拠点を持つことはファッション、テキスタイル業界では重要であったが、販売量からすると、中国市場が大きいため、上海などにも拠点を構えてきた。

B 日系企業としてアセアン市場をどう攻めるのか? 消費財メーカーであれば域内市場を重視する姿勢を出すべきである。一定の方針を持って流通経路を確保していくべきだろう。次に、タイだけではなくアセアン諸国の所得が上がれば、良いものなら妥当な価格を出して買う層も増えている。P社では、自社工場の一角にアウトレット販売コーナーを設けて大幅な割引セールをやっている。その時に、従業員用に建てた食堂がレストランとしての機能をしている。

C 同社の生産性は、業界構造を見て、一番収益性の高い分野であるデザインとマーケティングに力点を入れて、生産性を上げてきた。新素材の導入にも積極的で、異業種であるが炭素繊維を使った肌着の販売を行っている。規模としては小さな売り上げであっても、他社にまねをされない企業に体質を変えることは、重要である。

D 最後に、同社の悩みを伺うと、レストランのような設備を持った会社なら従業員の定着性も高いのか、と聞くと、残念ながら、より給与の高い、都心に近い会社に従業員が転職するという、悩みもあるのである。

E しかし、このようなデザイン、マーケティング面で世界に通用ができる人材を見つける、または育てるのが実は重要だと認識されている。

 

(写真は、レストランのようなP社の工場にある従業員食堂)

 

3.自動車業界の雇用拡大に果たすモーターショーの役割り

2015年11月末から12月初旬に開催された第32回バンコク国際モーターショーの主催者は、この程、同ショー開催中に3万9,125台の受注があったと発表。これは、昨年と比較して7.4%の減少。昨年は4万2,254台の受注だった。一方、今年のオートバイ受注は、5,749台。これは、昨年の同ショーの受注台数から115.7%の拡大。昨年は、2,718台。今年の同ショーで500億バーツ相当の取引が行われた。

自動車の売約済みとなったトップ5の自動車メーカーは以下の通りとなった。

@トヨタ(5,975台) Aホンダ(4,864台) Bマツダ(4,542台) Cいすゞ(4,348台) D三菱(3,617台)

人気の高かったモデルは、ホンダ・シティ、マツダ2・3、三菱パジェロ・スポーツ、フォード・レンジャー、いすゞDマックスだった。

当方は、自動車メーカーの動きとともに、周辺のアクセサリーの動きに注目をしている。自動車自体は世界的にSUV主体の多目的カーの人気が高い。同時に安全性、省エネなどの機能をどのように高めているのか、注目すると世の中の動きが見えてくるのである。タイは、自動車産業のすそ野が発展して雇用の維持、拡大をしてきたが、一層の雇用の拡大にはアクセサリー業界の果たす役割も大きいのである。

 

(写真は、2015年12月のモーターショーの会場風景)

4.タイで新しく商社機能を持つ会社を設立するには

日本の中小の貿易会社からタイで商社機能を持つ会社を設立する相談を受けた。

同社はタイ向けの新商材として現地の賃金コストが上昇する中で工場の自動化推進の機械の営業に力を入れている。2015年の5月にタイへ日本から輸出した。 しかし、今後はタイにある工場から調達した自動化機械と日本から輸出するパーツをタイにある受託加工会社に持ち込んで組み立てをしてから国内へ販売することになった。そこで、子会社または合弁で同社のバンコク拠点を設立したいと考えたいというもの。

タイで起業するにはいくつか規制があるが、最大は外国事業規制法(FBL)である。

この法律については、たびたび紹介をしてきたが、3つの段階の規制がある。

1. 特別な理由により外国人には許可しない事業(新聞、ラジオ、テレビ、果樹農業、土地販売など)

2. 国家の安全保障や治安、または伝統文化、工芸および天然資源、環境に関する事業

3. タイ国人がいまだ外国企業と競争する準備ができていない事業

2と3については外国人事業委員会の承認を得て、外資主導の会社を設立して事業を行うことは可能であるが、タイ政府投資委員会BOIは、これらの規制を緩和して外資100%の会社も設立できる。これ以外に、タイの地場企業と合弁で、タイ側51、日本側49にして合弁会社設立も考えられるが、合弁相手の選定が難しい。取引銀行、タイの工業省、投資委員会BOIなど見合い相手を紹介してくれるが、最後は、自社の判断である。そのため、経営者だけではなく、同時に働く労働者、スタッフも見ておく必要がある。

何よりもパートナー候補の会社を直接訪問して、見極めることが重要だと助言をしている。

 

(写真、日本の地方自治体としては、福岡県と東京都がバンコクに事務所を置いて、進出の日系企業を応援している。写真は東京都中小企業振興公社バンコク事務所)

5.第9回日ラオス官民合同会議(12/17)について

12月17日にラオス政府計画投資省と在ラオス大使館、ビエンチャン日本人商工会議所との定例の官民合同会議が開催された。筆者は、第1回目の会議から参加して、ラオス進出の日系企業の抱える課題などを傍聴してきたが、今年度の会議を見る限る、大きな問題は解消されてきた。どの国でも起こりうる、法律の改正ニュースを早期に入手する方法、VATなど税金の還付の遅れ、インフラ整備の不備など発展途上国における問題について意見交換をされた。

議長である、計画投資省のSomdy大臣の基調挨拶は次の通り。

1. 今年はラオスと日本との外交樹立60周年にあたる。

2. 今年も官民合同会議の準備のため8月から双方が協議して3つの作業部会をつくった。

@入許可問題 A税務問題、主にVAT還付。B国道8号線のマスタープラン

3. アセアンは日々変化をしている。その中で、ラオスにとっては日本は海外からの投資国35か国では第6位の投資国である。  

4. 第8期社会開発5か年計画でもラオスは2020年に低開発国を脱して、2030年委は中所得国になる目標を掲げている。

5. また、民間の投資が海外投資の50%を超えて、国の投資は50%を割る時代になった。それには、中小企業の進出の影響が大きい。

6. 政府として、ビジネス改善の3つの分野は、次の省庁が担当をした。

@税務関係:外務省、A許認可関係:商工省、B法律、規制:計画投資省である。

7. 日本とラオスの合同会議では、毎回、1つずつ問題を改善して来た。

8. 今後の国境貿易、経済特区SEZ開発など、アセアンからの投資の呼び込み、東西回廊の改善などAEC2015により周辺国とのコネクテイビテイの改善が重要で、同時に文化、地域改善に役立つと確信をしている。

9. 世界銀行の一つであるIFCの投資環境の順位を見ると、世界189か国中、昨年は139位であったが、2015年は134位まで順位を上げた。目標としては100位以内まで改善したいと考えている。特に、昨年から今年にかけて改善したのは次の3点。

@ビジネススタートまでの許認可を早める A建設許可を速やかに発行する B国境貿易を改善する。

10. これまでの8年間で日本の投資が増加したのは、貿易、投資、サービス面での環境改善を図れた結果だと考えている。 共同議長である、日本の引原毅大使からも、以下のあいさつがあった。

1. 官民合同会議の準備にあたられたラオス計画投資省、ビエンチャン日本人商工会議所、JBIC、JETRO、JICA関係者にお礼を申し上げる。

2. 日本とラオスは戦略的パートナーとしてトンシン首相の発言もあった。PAKUSEでは、中小企業専門の工業団地も設けられ、日本の中小企業の開発力に期待を寄せられている。集積による力が発揮されることを期待している。

3. ラオスの魅力は、資源関係の発展が主体であったが、同時に勤勉な労働力による部分が大きい。日本の製造業の進出により、産業の役割りは、雇用の創出、ノウハウの移転など第8次社会開発計画でも貢献する役割は大きい。

4. 日本とラオスの関係はお互いにwin-win関係を構築するように協力したい。

5. 投資環境の改善では、大臣からIFCの評価で100位以内を目標としたいと言われたが、50位以内から将来はシングルになるように努力をしていただきたい。

細かな、議論の内容などは、後日、在ラオス大使館のホームページなどで紹介されるため、省略する。

 

(写真は、12/17に開催された日ラオス官民合同会議の様子)