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タイ

作成年月日:2015年12月

海外情報プラス

タイ国情報 2015年11月

今月の内容は次のとおりです。

1) タイの日系中小企業が取り組む省エネの事例について

2) 海外で大規模な展示会に出展する日本の中小企業と地方政府の支援策について

3) タイ政府投資委員会BOIの新しい投資政策(クラスター政策の導入)について

4) 海外工場の閉鎖と人員整理について

1.タイの日系中小企業が取り組む省エネの事例について

タイの日系中小企業から、省エネ(LEDの導入、ソーラー発電、社内の省エネ運動)について相談を受けた。

質問1)取り組む方法;省エネについては、一時的な効果を求めるのか、継続的な効果を求めるのか?

回答1)目標設定期間により、取り組む手順が変わる。TOP DOWNでやれば、早く対応できるがBOTTOM UPも考える場合には、タイ人も取り込んで長期的に実行する方法になる。

質問2)LEDの導入はTOP DOWNで決めてよいのか? ソーラー発電の効果を上げるにはどうするか?

回答2)LEDの導入はTOP DOWNが必要と考えるが、ソーラーで発電した電力の消費は社内だけか、売電も考慮に入れてやるかによる。売電の場合は、タイ政府の関係省庁との折衝が必要になる。この分野は日本人が担当する分野というよりもタイ人が実行する分野と考えられる。

質問3)全社上げての省エネ運動(PROJECT)にするにはどうするか?

回答3)同社は非常に優秀な企業だと聞いている。これは創業者の精神が浸透していることと、タイ人を有効に活躍する場がある、からだと思われる。その意味で、今回の省エネ運動として取り組む件は、責任者に与えられた課題であるが、具体化には、タイ人が初期段階から参画するPROJECTにする運動であれば効果は高いと思われる。

まとめ)そこで、当方から提案した本課題の進め方として; 内部だけで実行するのか、外部の知恵を活用するのか、責任者が考えるべきである。 業者や製品の選定と委託して工事をするだけでは、社内にノウハウが残らない。そのため、会社全体をあげての取り組みが重要である。

 

(写真は、省エネに取り組むタイの中小企業)

2.海外で大規模な展示会に出展する日本の中小企業と地方政府の支援策について

11/18-11/21にバンコクのBITECで開催された国際金属機械展METALEXはタイで開催される3大展示会の一つだと言われる。小生は2004年から10年近く付き合ってきたが規模は大きくなるに従い、会場も常設展示場では足らなくなり、地下の会場や臨時にテントハウスをつくったスーパードーム展示場もある。例年の出展企業は常設会場に出展できるが、ドームに入った出展者が口にされるのは、会場が一番奥にあるため、「来場者がたどり着いたころには疲れ果てて、商談する気力が無い。見てくれない。」などの悩みである。

展示会の出展には、主催者が行う来場者確保とともに自社独自でも集客しないと、他社の来場者を当てにしていると、自社のブースまで来てくれる方が見込めないのである。

特に、日本の地方自治体の補助事業で出展された企業は、今までの経験が少なく、主催者の発表する来場者数を見込んで、準備をしている事例が多かった。また、地下の会場で出展した企業は何回も出展されている企業ならともかく、「行政主催で初出展で有った企業から来場者の少ない。」、と嘆かれた。

大きい展示会は、ターゲットが広くなるため、自社の見込み客とのミスマッチが多い。小さな限定された展示会であれば、ターゲットが限定されるだけに、特定の見込み客に会える可能性もある。

従い、一概に大きいからよい、小さいからダメではなく、自社の販売戦略、経営戦略にふさわしい展示会は何か、基本から考えるべきであろう。地方政府の補助があるから、と安易に展示会の出展を決めるのではなく、費用対効果を考えて、出展すべきである。地方政府としても相当の予算を使用することから、事前の展示会は類似の展示会、また、出展する企業に何がふさわしいか、助言できることが求められているのである。

 

(写真は、METALEX2015の様子)

 

3.タイ政府投資委員会BOIの新しい投資政策(クラスター政策の導入)について

タイ政府は2015年秋以降、民間投資を刺激するために様々な投資優遇策を打ち出してきた。1月実施の投資優遇策とは別のもので、早期着工が可能なものを目指している。具体的には工作機械や輸送機械などの購入費の法人所得税優遇控除を手厚くするもの。これは、10月26日のタイ工業連盟の理事会でアピサック大臣が表明したもの。大臣は、タイの民間投資はここ数年、極めて低い水準で推移してきた。これが原因で、生産技術が時代遅れになり、生産効率も上がらず、競争力が低下した。民間投資はGDPの27%にとどまっている。

ソムキット副首相は、経済再生を狙って、消費支出の刺激と雇用の創出を狙っている。

中長期の投資促進策としては、国境に接する県で特別経済区(SEZ)開発、法人所得税(20%)の恒久化、法人所得控除期間は最大8年から13年への延長、大規模インフラの整備が中心。中小企業向けの低利融資、保証協会の保証条件の緩和、法人所得税の10%への引き下げ(2年間)など、従来、日本政府が景気回復策として打ち出した措置と類似している。さらに、従来徴税対象から漏れる可能性が高い中小企業に対しては、罰則規定の免除するなど納税制度に組み入れる措置を考えている。

また、11月23日開催のBOI主催のセミナーで、プラユット首相はスーパークラスターなどへのイノベーション投資を全面的に支援するといわれた。研究開発、高度技術を使用する技術集約型産業の集積を目指すと言われる。期待されているように日系の自動車、電気産業向けの研究開発機関が投資するのかどうか。税制優遇とともに、特許登録手続きの簡素、迅速化などの民間からの要望にもこたえたいとの発言もある。日系企業としては、2015年1月から実施された新しい投資政策で、対象外になった業種(たとえば、繊維業界など)もクラスターに選定されたことから新しい投資インセンテイブが与えられるが、投資意欲をそそる内容になっているのか、どうか検討が必要である。

(写真は、11/23タイの首相とBOIセミナー参加者が意見交換をしている様子)

3.海外工場の閉鎖と人員整理について

11/25にタイ進出10数年を経過した日系とタイとの合弁会社Aを訪問した。

A社は、ようやく初期投資を回収、これから収穫期に入る段階だったが、タイのパートナー自身の事業拡大により、工場敷地内からの撤退を迫られた。当初の土地賃借契約が10年で、契約満了によりオーナーは契約を解除する権利があり、解除したものである。 その後、1年、継続を求めて交渉をしたが、更新には至らなかった。幸い、2002年に別の場所で工場を稼働させていたため、別の工場で生産の拡大を図ることから系企業としては大きな打撃にはならなかったが、A社の従業員には解雇の理由を説明する必要があった。

2015年4月のある日、前日まで予告が無いまま夜間にテントをたて、朝になったときに従業員を工場にいれず、テントで説明会を開催した。これは、従業員が何らかの示威行動に出て、工場内が混乱をきたさないためであった。タイでは、従業員の瑕疵が無い状態で解雇する場合、法律上の解雇手当を支払う必要がある。

@ 4か月以上、1年以内勤務している場合、30日分賃金の手当

A 1年以上、3年未満勤務の場合、90日相当の手当

B 3年以上6年未満の場合、180日分の手当

C 6年以上10年未満の場合、240日相当分の手当

D 10年以上勤務の場合、300日分の手当

同社では、この解雇手当に上乗せをした手当を準備したことと、希望すれば、グループ会社の他の工場に勤務することも可能であると説明をした。

しかし、従業員の大半は、自宅からの勤務者が大半で、通勤時間が長い工場に移動するものはいなかった。 むしろ、給与水準が下がっても自宅から通勤できる工場に希望をした。2015年4月に50名、7月に20名、9月に10名と、順を追って従業員を縮小して、2016年3月の閉鎖時には10名まで下げる予定である。

解雇の通知前は、経営陣としては、不測の事態も想定をしたが、解雇手当の上乗せを提示したこと、他の工場への配転の世話をすると提案したことと、周辺の工場では従業員の募集が継続してあったことなど、条件がそろっていたため、おおむね円満に従業員の縮小が可能となったのである。9月までに解雇した従業員の再就職事情は、悪くなく、大半が既に新しい工場に勤務しているなど、経営陣としては胸をなでおろしている状態である。

 

(写真は、従業員の整理、縮小を円満に行っている工場)