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タイ

作成年月日:2015年11月

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タイ国情報 2015年10月

2015年10月27日にOVTAと304工業団地と労働セミナーを開催しましたので、その内容の紹介も兼ねて報告します。

そこで、今月ご紹介する内容は次の通りです。

1) BOI恩典企業がビジネスビザ、労働許可をとる場合について

2) 政府の査察、内部監査および解雇に関する法務について

3) OVTA-304工業団地の経営セミナー報告について

1.BOI恩典企業がビジネスビザ、労働許可をとる場合について

前回は、一般企業のビザ、労働許可の取得条件など説明をしたが、今月はタイ政府投資委員会BOIの恩典取得された企業に従事する外国人がビザ、労働許可を取得する場合の流れを紹介する。

1) ビザ:日本にあるタイ大使館、領事館にビザを申請する場合、既にBOIから与えられたID、パスワードを元にオンライン上で、ビザ申請の申告をすると3日以内に内定の通知がある。それもともに、必要書類を揃えて、大使館、領事館に申請すると90日間のビジネスビザが与えられる。

2) 労働許可:そのビザを取得後、入国し、なるべき早くタイ政府投資委員会があるワンストップサービスにてその会社がその職種が必要な説明をして職種の許可申請をすることになる。

3) その上で、BOIに対しては、オンライン上で、必要な職種の説明と、その職種には外国人しか対応できないという、説明書を提示する必要がある。

4) このオンライン上での説明と許可は、本人が入国する前に申請して事前に許可を受けることができる。この場合は、健康診断などの書類はBOIに提出する必要がない。

 

(写真は、BOIのワンストップサービスが入るビル)

2.政府の査察、内部監査および解雇に関する法務について

10/15に開催されたRajah & Tann法律事務所が開催した標記セミナーの概要を紹介する。

1) 政府の査察

タイ政府は、関税、消費者保護局、税務調査、独禁法、検察部門など合法的に査察をする権利がある。政府の急襲に備えてやっておくことは、まずは内部監査と重要な書類の管理である。その場合、社内で誰が対応するのか、予め決定しておく必要がある。また、急襲された場合、どのように経営幹部に伝えるか、電話網が重要である。

査察を受けた場合は、まず政府官憲の正式な書面と係官の身分証明書の提示を要求するべきである。次に、査察の目的とどのような書類が必要か、伺うことになる。

査察の後は、次の行動に移るために、誰が責任者かを聞きだしておくこと。

社外秘となっている書類は、外部の弁護士事務所で保管してもらうこと。

従業員は、自分の保身(犯罪に巻き込まれない)のため、質問に回答しない権利を保有することを予め指導しておくこと。

2) 内部監査

内部監査は何時から始めるべきか?

@ 雇用解約を結ぶとき

A 就業規則で明示

B 情報保護やプライバシー保護のため、従業員を教育しておくこと

C 内部監査、内部コンサルタント、または外部の弁護士など普遍的な知識を持つ必要がある。

次に何を見るべきか?

D 社内情報の保護

E 情報保護の方針を明確にしておくこと

F 海外の情報を見ることは可能か? 一般的には、可能。

質問を受ける場合

G 会社は、内部監査員会を設置できる

H 会社は、最善の対策をとるため、社員の質問することはできる

I 会社は、疑わしい従業員の関連する情報を集めることはできる。

J 会社は疑わしい従業員に質疑をした場合、記録に本人のサインを求めること。

K 就業規則には、このような本人聴取をする権利が会社にあることを明示する。

L 会社は、特に違法とみられるような行為は書類で質問をすることができる

M 会社は、疑わしい従業員に対して、休職させる前に忠告を与えること。

3) 解雇とその影響

労働者保護法の119条には、次のような場合は解雇ができる。

@ 従業員の行った行為が不正であり、また故意に使用者の意図に反することを行った場合

A 故意に使用者に損害を与えた場合

B 従業員の行為が会社に対して甚大な損害を与えた場合

C 妥当な就業規則や法律に反する行為、注意を受けた後でもさらに命令に反するような場合

D 何らの連絡も無いまま、連続する3就労日に無断欠席をした場合

E 判決により、収監された場合

119条違反で解雇する場合の、会社が支払うべきもの

@  解雇に至るまでの給与

A  解雇に至るまでの直接的な支払いがあれば、それはそのまま支払うこと

B  年次休暇を使っていない場合は余った年休の相当の金額を支払うこと

解雇理由の説明が無いまま、解雇する場合

法律上の解雇手当を支払う必要がある。

@ 4か月以上、1年以内勤務している場合、30日分賃金の手当て

A 1年以上、3年未満勤務の場合、90日相当の手当て

B 3年以上6年未満の場合、180日分の手当て

C 6年以上10年未満の場合、240日相当分の手当て

D 10年以上勤務の場合、300日分の手当て

ただし、従業員は、不当解雇だとして、裁判所に訴える権利がある。

裁判所は、次のような場合、不当解雇として、原状復帰を求める場合がある。

@  従業員の年齢

A  勤務期間

B  解雇された従業員の労働状況

C 解雇の原因

D 解雇手当が支払われた、かどうか。

 

(写真は、セミナー当日の様子)

 

3.OVTA−304工業団地の経営セミナー報告について

1)BOIの新しい投資政策と日系企業の動向(講師 BOIアドバイザー 原田朝善氏) BOIの2015年1月から実施された新しい投資政策については、この報告でもしていますので、2015年1-8月の投資動向と2015年9月に発表されたBOIの追加優遇策について紹介します。

詳細は、BOIのwebsiteに紹介があります。www.boi.go.th

2)「タイの賃金、労働市場の状況と日系企業の賃金実態調査」(講師 在タイ日本大使館、坪井宏徳一等書記官)

@ タイの就業者3,938万人(全人口6,823万人の57.7%)の産業別構成は次の通り。

農林漁業33%、製造業17%、建設業6%、卸小売り16%、ホテルレストラン7%、その他21%。(資料)タイ政府労働力統計2014年。以後も主にタイ政府の資料からの数字である。

これを正規就労とインフォーマルワーカーに分けると、前者が35.7%で後者は64.3%となる。

インフォーマルワーカーとは、農業従事者、屋台、タクシー運転手を含む。日本と異なるのは、派遣労働者は正規労働者に含まれる。現政権は、インフォーマルワーカーにも保険制度を適用するように取り組みを始めている。

タイでは、失業率が低いと言われるが、実態は次の通り。 2010年1.0%、2011年0.7%、2012年0.7%、2013年0.7%、2014年0.8%である。

考えられる理由としては、少子高齢化で、労働力の供給が需要よりも下回っている。農業部門も高齢化により、新たな労働力供給源になりにくい。また、働く場所が多く存在する。ただし、賃金が比較的低く推移している。屋台、タクシーの運転手などインフォーマルワーカーとして働くことができる。

次に、タイの労働生産性を見ると、平均賃金の伸びが労働生産性の伸びを上回っている。 例えば、2011年の平均賃金は7.2%だが、労働生産性は3.1%、2012年平均賃金11.8%、労働生産性6.6%、2013年平均賃金8.3%、労働生産性4.3%である。

労働分配率については、2010年タイ42.5%(日本は68.9%)、2011年タイ42.5%(日本70.5%)、2012年タイ43.9%(日本69.7%)となっている。(資料)国際労働比較

最後に、タイの最低賃金については、賃金委員会(委員長、労働省事務次官)が決めることになっている。2003年からの推移を見ると、物価上昇率程度の引き上げが、2012年に一挙に引き上げがなされて2002年を100として場合、2015年でインフラ率が140に比べて賃金は181という水準になっている。(実額は2012年から1日300THB)

これをアセアン諸国と比べた場合、2010年を100とした場合、タイは145で、インドネシア218、ベトナム205、カンボジア163となって比較的高いが、フィリピン115、日本106と比べると伸び率は中位水準となる。

A日系企業の賃金実態

ここでは、バンコク日本人商工会議所(JCC)では日系企業に勤務する各職位毎に実在 者を調査してきた数値があるので数値のみ紹介すると、上記の通り。

その他も、主な数値の分析、紹介があったが、調査主体のバンコク日本人商工会議所のwebsiteから代表的な数値がダウンロードできることを紹介する。 www.jcc.or.th

3)講演「生産性向上と日タイ文化の壁を越えて」

―労働者の削減と同時に売り上げを向上させた労務管理−(講師、RIKI GARMENT名誉会長 水本道晴氏)

最後は、タイでの事業経験30年近い経営者の体験談を伺った。

タイの法人が設立当初は、日本式会社経営で、従業員組合を結成されて、労働争議を何回も経験。首謀者の組合幹部を解雇したこともあるが、その都度、労働裁判所に持ち込まれて、いずれも敗訴している。そのため、基本的に、労使紛争を無くすにはどうすればよいか、考え実行されてきた。

1つは、経営の公開。毎期の数値、社員の能力は一目でわかるように表示。

同時に、生産性向上を図るためトヨタ・ソーイングシステム(TSS)を導入し、生産性向上に努めた。

2つには、日本人幹部、タイ人幹部にに「人間学」講座として、社長が学んだ哲学や大乗仏教の基本を小乗仏教しか知らないタイ人にも教えて、お互いの文化、思想の違いを如何に理解し合うか教育指導をしてきた。 その結果、労働争議も無くなり、いつの間にか、労働組合も意味が無くなったのか、有名無実の形になっている。

(写真は、10/27のセミナー当日の様子)