各国・地域情報

タイ

作成年月日:2015年10月

海外情報プラス

タイ国情報 2015年9月

毎月、タイ経済・労働市場を中心に報告していますが、今月はソムキアット副首相(経済政策担当)の講演を伺う機会もありました。 そこで、今月ご紹介する内容は次の通りです。

1. タイのこれからの経済運営について

2. タイでビジネスビサ、労働許可をとる条件について

3. 軍事政権下での法律改正について

4. タイの技術者教育について

5. ミャンマーとタイのコールドチェーンについて

1.タイのこれからの経済運営について(9/22ソムキアット副首相の講演から)

タイでもプラユット政権が1年を経過して、景気が思わしくないことからソムキアット副首相を始め経済閣僚が入れ替わった。

9/23に工業省の主催で、ソムキアット副首相の講演を聞く機会があったので、紹介する。 最初に、プラユット首相が点滴を打ちながら仕事をしていることと、明日から国連総会を控えて準備するため、予定通りの講演ができないことをお詫びされたが、内容はソムキアット首相の持論を堂々と展開された。久し振りに政治家らしい講演を聞いた。概要は以下の3点。

1)は日タイ交流、2)はクラスター開発、3)が中小企業対策。 1)日タイ交流:2002年当時、タイ副首相、財務相の立場であったので、日本とタイとの経済連携交渉に携わったことがある。それ以前から、経済団体の幹部として日本との交流は深い。それだけに、日本からの投資をさらに呼び込む考えがある。従来は労働集約産業の誘致が主役であったが、今後は高付加価値産業、高い技術を持つ企業を呼び込みたい。

2)クラスター開発:タイの既存の産業が活性化しないとタイ経済は良くならない。そのため、各種施策を講じている。たとえば、BOIと一緒に産業クラスター形成を図っている。従来の8年までの免税に加えて、タイ経済を活性化する産業にはさらに延長して12年程度の法人税無税も考えている。

3)中小企業対策:日本の中小企業は技術を持つが、国内の市場が狭まってきたのでタイをはじめアセアンの市場を求めて毎月のように日本からの企業進出がある。その場合、単独で進出するとタイの市場攻略は容易ではなく、タイの中小企業との交流が重要である。そのため、タイ工業省が望ましい候補者のリストをつくり、JETROなどに紹介することも可能である。(以上)

 

(中心がソムキアット副首相)

2.タイでビジネスビザ、労働許可をとる条件について

毎年のことであるが、BOI企業ではない日系企業で外国人が就労する場合、ビジネスビザ、労働許可を更新する作業はある。整理すると、次のような資料が要請される。

Documents required to support an application by a foreigner for extension of a NON-Immigrant Visa Category ''B'' (First year/next year)

ビジネスビザVisa

労働許可Work Permit

申請書 (TM7)

申請書(WP.5)

パスポートのコピー

労働許可のコピー

移民局から承認された就労者の許可証明(Sor Tor Mor1)

就労しているという企業の証明

労働許可書のコピー

パスポートのコピーか永住権を保持するという証明.

企業が存続しているという証明(日本でいうと登記簿謄本、6か月以内の発行のもの)

就労できるという医者の証明(健康診断書)

事業開発局発行の株主などの構成の証明書(6か月以内の発行のもの)

労働許可書の中で説明されている業務の説明(タイ人しかできないという職種に就労していないという証明)

会社の決算書、税金の支払った証明書 (Pr Ngor Dor.50)または税金を還付してもらったという証明書( Sor Bor Chor3)

代理人を使う場合、10バーツの収入印紙を貼った委任状と代理となるタイ人の身分証明書( l.D. card)

3か月分の従業員の源泉所得税の支払った証明書、申請者の源泉所得税の支払証明書、領収書の控え.

雇用主の本人のIDカード、または外国人雇用主の場合は労働許可書コピー

3か月分の社会保険の支払証明書 (From Sor Por Sor 1-10) 領収書

発行6か月以内の会社謄本、株主名簿付の謄本または外国企業の場合は業務許可書

過去3か月分の付加価値税の支払、または還付の証明書(Por.Por30 or Por.Por36) いずれも領収書の控えも必要

2 セットの貸借対照表、3か月分の付加価値税の支払証明書Phor Por 30 (3 months)、労働許可書保持者の所得税支払い証明書Phor Ngor Dor 91 or 90

タイ人がこの職種につけないという証明、例えば、タイ人に採用募集をしたが応募者がいなかったという証明.

勤務場所の地図

他の役所からビザ取得に対する証明書 (Sor.Tor.Mor2)

地図、外から見て会社名が明示された写真、内部では従業員が勤務している写真

 

応募者が家族同伴の場合、結婚証明書または子供の出生証明書。もしこれが外国の役所の証明の場合、当該の大使館による真実であるという証明書も必要

 

 

これで、初めてタイでも正式な労働ができる。 日本との違いは、法務局の入国許可が、ビザと労働許可が一本化されているが、タイではビザは移民局(警察庁管轄)、労働許可は、労働省管轄で、上で見るようにほぼ類似した書類をそれぞれの官庁に提出することになる。また、税金などの支払は、申請書類の正しいという役所での認証とともに、支払った領収書にも正しい領収書である証明が求められる。加えて、すべてのコピーには会社の責任者のサインと社印が必要になる。

(写真は、バンコクの雇用局)

 

3. 軍事政権下での法律改正について(バンコクロー研究会の資料から)

2014.5.21の最近の軍事政権発足後、次のような法律の内容が改定されました。

標記研究会の事務局から資料をいただきましたので一部紹介をします。

1) 民事訴訟法(クラスアクション)

2) 反汚職法(外国公務員への贈賄)

3) 民商法(保証・抵当権)

4) 債権回収法

5) 事業担保法

6) 著作権法

7) 外国人就労法

8) 設立・登録資本金変更登記の証拠書類

9) 電子媒体を用いた会議に関する布告

10) BOI新投資奨励戦略

今回は、企業運営、労働関係で必要な2)と7)の改正点をご紹介します。

2)反汚職法;@外国公務員に対する贈賄行為を処罰対象とする規定の新設と、A法人の責任を問う規制が新設された。特に、法人を代表とするものが関与すると、罰則は以下の通り。当該個人が供与又は供与の申し出を行った財物その他の利益の額の2倍を超えない額の罰金刑となる。

7)外国人就労法

タイ労働局は、以下の行為は就労には当たらないという定義2015.3.6公表した。

@ 会議及びセミナーへの出席

A 展示会及び見本市への出席

B 企業視察及び商談への出席

C 特別・学術講演への出席

D 技術研修・セミナーへの出席

E 展示会における商品の購入

F 取締役会への出席

しかし、会議及びセミナーの主催者の従業員が就労した場合は、もちろん労働許可が必要。また顧客との商談の関係であれば就労と見なされる可能性もあり、注意が必要である。

詳しくは、バンコクロー研究会の事務局をされている森・濱田松本法律事務所バンコクオフィスまたはもよりの法律事務所にお尋ねください。

(写真は、労働許可が不要と言われる展示会の模様)

4.タイの技術者教育について

ASEAN経済共同体(AEC)は、2015.12.31から@モノの自由化(関税撤廃、交通 インフラ整備等)、Aヒトの自由化(短期滞在ビザ撤廃、熟練労働者の移動の自由化)Bサービスの自由化(出資規制緩和、金融機関の相互進出等)が検討されている。

これに対して、各業界では技術者の教育に力を入れて、各種研修施設を充実する動きがある。その前に、タイでの大学教育は主に次のような内容で、技術やスキルはほとんど教えないのが実情である。

@ 公共の関心にこたえる

A 理論と実験

B 講義主体の学習

C 就職は大学の責任ではない

D 知識重視

E 試験による評価。

今月は電機業界、機械業界を尋ねて技術者の育成をどのようにされているのか、伺う機会があったので紹介する。

M電機:全国に展開する販売店の修理技術者には、現物を使った現場での指導が重要である。場合によれば、地方からくる交通費、食事代も同社が負担して研修を実施している。新しく設置した研修所は社員または系列の販売店の修理技術者を対象に利用している。そのため、機材の必要でない場合、講師が北部、東北部、南部まで出張して教育を実施している。

S機械メーカー:同社の機械はメンテナンスが重要で、毎月、メンテナンス要員を本社に招いて教育をしている。そもそも日本とタイでの機械組み立てを効率面で見ると相当な開きがあった。それを日本基準まで引き上げるための指導には相当な時間がかかった。ようやく、日本基準並みになったが、サービス要員の教育には時間がかかる。タイでは、研修を受けた技術者が、現在の給与から50%の高い水準を提示されるような他からの引き抜きがあれば容易に転職をする。そのため地方の販売店のサービス要員の技術の定着は難しい。

 

(写真はM社研修センター、外観)

5.ミャンマーとタイのコールドチェーンについて

タイ国内で日系と称されるレストランはJETROの調査では2,000社を超えたと言われる。中でも、食に関する関心度は高く、産地から食品の加工、輸送などコールドチェーンは普及をしてきた。そのため、冷凍倉庫の需要も拡大し、日系でも大手の冷凍倉庫は設備の拡大を進めている。

今回、ミャンマーの大手スーパーの要請で、現地の冷凍倉庫に関するニーズを伺う機会があったので、タイとの比較をしながら、紹介する。

1. 食材を収穫、捕獲した時点での保存方法; タイ;冷凍船、ミャンマー;氷で冷やすか、乾燥して干物にする

2. 輸送方法;タイ 大型の冷凍冷蔵トラック、ミャンマー、ピックアップタイプの冷凍冷蔵トラック。冷凍倉庫での積み下ろしにも温度管理は無頓着

3. 冷凍倉庫の管理方法;タイ;食材による温度域別の管理、ミャンマー;温度帯別の管理まで至らない、など。

そもそもミャンマーでは電力の供給が不足がちで、雨季は別にしても、乾季になると水力発電の発電が低下することで、電力供給が少ない。そのため、冷凍倉庫自身が停電に対応できる発電機能が無いと、長期の保管が難しい。

ただし、国民の所得水準がタイの平均6,000ドルがミャンマーでもいずれ同じ水準まで追いつくことから、コールドチェーンシステムの発展を通じて、食文化の向上が進むと期待をされている。それに伴い、周辺の産業も追いつくと思われる。

(写真は、タイの冷凍食品工場)