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タイ

作成年月日:2015年9月

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タイ国情報 2015年8月

今月ご紹介する内容は次の通りです。

1. 合弁会社と独資会社の人事管理、経営管理、営業戦略

2. タイ企業を活用して営業拡大を図るこつ

3. バンコクの爆破事件にみるリスク管理について

4. 2014年秋に改正された「技能開発促進法」とAEC2015について

5. タイの日系企業からみるベトナム進出の課題

1.合弁会社と独資会社の人事管理、経営管理、営業戦略

今回紹介するT社は、BOIの許可を得て100%外資の会社にすることもできたが、あえてタイ資本との合弁を選択した企業である。日本資本100%で進出をした場合と比較してどのような違いがあるのか人事管理面、経営管理面、営業戦略面に関して紹介する。

1) 人事管理面では、日本人の代表者を送りこんで、現地企業から1名の出向者を迎えた。パートナーの地場企業の紹介により経験ある会計担当者、日系企業に勤務したこともある技術担当者を採用することができた。単独進出の場合は、リクルート会社にお願いしたであろう経費と、時間的な短縮ができた。また、何よりも紹介者が地場企業だけに信頼感が高まった。

2) 経営管理面では、事務所の選択が合弁相手の建物の一角を借りることになった。日系業が入るビルでは無いため、日本食レストランなど周辺には少ない。タイ人の採用などを考えると、大手企業の給与水準に左右されない、独自の給与体系を考えられる。就業規則も、合弁先に準じて設定して、きわめてスムースに労働事務所の了解を得ることができた。もちろん、合弁であることから、大きな支出などは日系企業単独では判断せず、合弁先の意向を伺うことになるが、逆に日系単独ではあまり知られない地場企業からの調達も可能になりメリットは大きい。

3) 営業戦略面では、主に日系企業が顧客であるため、同社から出かけて営業をするため、特に支障はない。合弁先のグループ会社も含めて、日系単独では入り込めないタイの地場企業にも入り込めるという特徴がある。

4) これらの点を総合すると、立ち上げ時には単独進出企業にはないメリットが享受できた。これに対して、将来の双方の意見の調整が難しいとして、あえて単独進出を考える企業が多いが、パートナー次第では、合弁企業のメリットが生かせることと、立ち上げは早くなると思われる。合弁にもメリットがあることを紹介する。

 

(タイ政府投資委員会(BOI)のワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)が入るビル)

2.タイ企業を活用して営業拡大を図るこつ

タイ進出が長い日系企業では、日系企業同士の競争からローカル企業との競合が課題になる事例が多い。そのため、経営のローカル化、ローカルスタッフへ権限移譲、教育など悩んでいる企業もある。その中で、当初から日本人のスタッフが限られるとしてタイの地場企業に業務の一部を委託するS社が、どのようにして営業拡大を図ろうとしているのか紹介する。

同社は、受注活動は自前で受注するが、サービス提供、メンテナンス業務ではタイ企業に委託をしている。その際、工程管理や作業管理などはタイ企業の意見を十分組み入れて、さらに日本での経験から安全面、サービス提供の細かさを付け加えているのである。

確かにコスト面はタイの地場企業が単独で行うよりは多少、高くなるが、メンテナンスなど事後の安心感を与えることがポイントになっている。

当初は、「地場企業に任せて安心か」という日本国内からの懸念もあったが、技術水準が高い企業を選択することができたことから、営業面での拡大が可能になってきたのである。 日系企業でも社内の業務をタイ人に任せるように、当初から外部の企業に業務委託をするというのも営業拡大を図る方法ではないか?

(タイ企業に業務の一部を任せて営業の拡大を)

 

3. バンコクの爆破事件にみるリスク管理について

8/17-8/18のバンコクの爆破事件でタイ政府は治安の引き締めを図っている。幸いにも9/5現在、容疑者の3名が逮捕され、海外に逃亡されたとみられる容疑者にも逮捕状が出されるなど、治安当局の動きは速かった。

この事件は、バンコク繁華街の一角にあるエラワン神社に観光客、参拝客に紛れ込んで、リュックに詰めた爆弾を置き去り、その後、爆破事件が起こり、香港、中国、フィリピン人を含む20名が死傷。100名近くが負傷をしたものである。直後から、監視カメラに映った犯人らしい人物が紹介され、瞬く間にソーシャルメディアなどでも紹介された。事件直後から、大使館では安全情報を出されて、日系企業もバンコクでの日常活動は顧客と自社との往復にも注意喚起をされ、繁華街などへの外出も自粛するなど社員の安全確保に努めた企業が多い。市内でも、地下鉄やBTSに乗車する際に持ち物検査が厳しくなった。また、大きな商業施設でも入場する際に、金属探知機が作動するようになった。

容疑者の逮捕の背景には、目撃者の情報収集とともに、現場周辺の携帯電話の解析から、海外とローミングしていたことを突き止めて容疑者の人物確認まで至ったようだ。ネット社会では、政府が情報を管理しようとしても管理できない実情もあるが、同時に犯人の特定ではバンコク市内の主要な交差点、観光拠点に張り巡らされている監視カメラが有効に活用されたようだ。

整理すると、次のようにリスク管理を考えてはどうか。

1) 政治社会動静に目配りをする(滞在する国の治安と、日本との外交関係)

2) 家族や、親しい友人との定期的な情報交換

3) 外出時の行き先報告と、帰宅時間の報告

4) 爆破事件だけではなく、タイでは交通事故にも遭遇する確率が高いため、緊急連絡方法を本人だけではなく、家族や社員にも周知する

5) ある程度の現金の保管が必要

6) 食料、医薬品も定期的に管理

7) 携帯電話が普及しているが、重要な連絡先は紙でも保有する

8) 事故発生でも慌てないこと(ニュースは過大に報道されるため、現地に複数確認ソースを持つこと)

9) 親しい地元の友人を持つこと、など。 日系企業としてもこれからのリスク管理には今までの防災面でのリスク管理の基本に加えて、情報管理など最新の技術を活用すべきだと示唆されて事例だといえる。

(写真は、バンコクの爆破事件が起こったエラワン神社、1週間後の様子)

4.2014年秋に改正された「技能開発促進法」とAEC2015について

ASEAN経済共同体(AEC)は、今後の更なる経済成長の促進と、開発格差の縮小などASEAN に住む人々の福祉向上を目指している。 具体的には、@モノの自由化(域内の関税撤廃、交通 インフラ整備等)、Aヒトの自由化(短期滞在ビザの撤廃、熟練労働者の移動自由化等)、Bサービスの自由化(出資規制緩和、金融機関の相互進出等)が検討されている。

今月は人の移動の自由化に関して、日本大使館のご担当者に伺った内容を簡単に紹介する。

2014年秋にタイの国会で成立した「技能開発促進法」の改正により、ジョブカードの導入とライセンス制度の導入となった。前者はAECを見越して技能の証明をできるようにすること。このカードは人の移動を円滑化させることが目的だが、同時に移動に対してサポ−ティブな効果があると思われる。後者は工場の電気工事士からスタートする動きがあり、ライセンスがないと仕事ができない職種を設けることにより、運用の仕方によっては移動の障壁になる可能性もある。

しかし、制度改正如何にかかわらず、現在、エンジニア、看護師、建築士、測量技師、会計士、医師、観光専門家など、専門8職種以外の人の移動の分野ではAEC統合後どのようにすべきか、あまり議論が進んでいない。2016年以降、徐々に自由になることはあり得るが、現時点ではそれほど急激な変化が急に生じるということではない。

労働省のナコーン事務次官は9月に定年を迎えることから新しい事務次官の候補がささやかれている。現職は2年前、技能開発局長から昇格したように、次期の事務次官もプントリック技能開発局長が有力候補に挙がっている。これはご本人の能力が優れているとともにAEC2015をにらんだ労働者の移動など、労働行政がタイ国内だけでは判断できないという社会情勢を反映していると考えられる。

 

(写真はアセアン諸国からの投資も歓迎するタイ国投資委員会)

5.タイの日系企業からみるベトナム進出の課題

タイにある日系企業(製造業の外部委託、EMS)からアセアン域内での業務拡大の方向について、相談があった。既に、フィリピン、インドネシア、シンガポールには拠点があるため、市場規模の大きい社会主義国のベトナムについて可能性があるのか、検討をするというもの。

1.業務内容は本業としての顧客開拓の可能性があるかどうか

2.ベトナム進出の是非の検討 これまでの調査から、多くのベトナム企業は香港、シンガポールから材料を一括で輸入して組立し、それを海外に輸出している構図である。現地調達率は低い。ベトナム製の部品をタイに持ってきて使うというのは難しいが、逆にタイ製の部品を在ベトナム企業に販売する可能性のほうが高い、というのが現時点での調査結果であった。

3.現地生産を望む顧客があり、外部委託を検討したい

4.開発案件をベトナムを使って委託できないか、など。

これらの点はまだまだスタートしたばかりである。 そこで、ベトナムの人口構成、教育水準など検討すると、国立大学を中心に教育水準が相当高いことが分かる。製造業でも裾野産業の密度が低く、上記のように香港、シンガポールから材料を一括輸入している事例が多い。そのため、現地生産の中身を分けて、製造工程を受託するという考えよりも、設計部門、開発部門の現地化を考えてはどうか、というもの。

では、これを担う人材をベトナム国内で探せるのか?

課題1.現地の国立大学、私立大学の教育制度はどうなっているのか?

課題2.CAD/CAM開発者を育成するにはどうすべきか?

課題3.EMSの開発者に求められる機能、素質は何か? ベトナムでがこれらの要件を満たす若者は容易に探せるか?

課題4.アセアン共同体が進めば、優秀な人材は海外に流出する恐れもあり、自前で、IT技術、製造技術の指導、高度化ができるのか?

同社では、従来の外部に人材を求めるのではなく、自前で人材を育成する仕組みに変えることを考えている。それには現地の責任者の改革の意欲が重要である。この点、日本の本社とともに社内教育を始め、現地化は長期の視点で戦略を考えるべきだと協議した。

(写真は、ベトナムの南部HCM市内)