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タイ

作成年月日:2015年4月

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タイ国情報 2015年3月

今月はタイに半分、インドネシアに3回の出張をしました。現地に合計すると月の半分、居た関係でタイの報告とともにインドネシアとも比較した報告を送ります。 以下の課題についてご報告します。

1. タイの地場企業を買収した日系企業の今後の展開について

2. タイの地場企業は経営革新ができるのか

3. 最近進出した日系企業が先発組の企業に追いつくには

4. タイの医療事情とインドネシアの医療事情

5. (参考) タイとインドネシアの自動車業界事情について

1.タイの地場企業を買収した日系企業の今後の展開について

タイの地場銀行を買収したT銀行によると、従来のBangkok支店のIT容量は地場銀行(K銀行)のIT容量と同じであった、と聞いた。その背景には7,000社あると言われる日系進出銀行の60-70%と取引口座を持つ元T銀行の決済件数が、地場銀行5位と言われるK銀行の決済機能の総量と同じであった、とみられる。それだけにITシステムを統合するには日本式を基本とするか、地場銀行のシステムを基本にするか、なかなか決めにくい対応である。ITだけではなく、銀行員の業務知識、業務の対応も地場銀行では、1つの窓口業務を依頼しても複数名が衆智を集めて対応をしている姿を見るのである。

さて、少数のスタッフで複数の業務を果たせる日本流の経営管理手法をタイの地場企業に定着するには相当な時間がかかると見える。2015.12.31にASEAN経済共同体の発足をにらんでタイに進出している日系企業は、市場を単にタイだけではなく、アセアン展開をにらんだ対応をとり始めた。例えば、自動車業界であるが、タイの国内市場が伸び悩むと、周辺国にも市場展開を準備している。生産拠点については、1か国100万台を超えると現地生産の比率を高めるため、1次下請け、2次下請けの進出を促進する動きがある。

そのため、タイに進出する企業を支える金融機関としても、単にタイ市場だけを狙うのではなく、アセアン全体をにらんで対策を講ずる必要がある。先に紹介したように日系企業の経営管理、能率水準まで地場企業の効率を上げるため、スタッフの研修や意欲付けをしているのである。

(写真は、タイに投資をする場合にお世話になるタイ政府投資委員会BOI本部)

2.タイの地場企業は経営革新ができるのか

日本の複数の大学教授と一緒にタイの地場企業の取材をする機会があった。当方は、先生方から企業の紹介の依頼があったので、日系企業とも提携関係があるMグループの自動車部品工場を案内した。経営陣の中には、日本留学組が複数おられて、日系企業との意思疎通が日本語で対応できたことも先進技術の導入が可能となった背景である。工場はバンコクの東北部にあり、隣のチャチャンサオ県にも近い場所で、グループ企業として工業団地を形成するほどの規模であった。

M社は戦後、日本の自動車工場が生産を始めた際に要請されて部品生産を開始した会社である。その後、日系部品業界の進出が続いた際にも、日系から設備を導入して高度な機械加工ができる資本と人材を投入するほどであった。タイの自動車業界の発展を見ると、タイ政府は当初はCKDだけでも歓迎をしてきたが、徐々に現地化を推し進めてきた。その際にも、メーカーの要請にこたえる部品加工ができる設備を導入し、また日系企業から技術指導も受けながら対応ができた会社である。従い、タイ企業に経営革新が出できるか、どうかは企業の体力次第という面もあるが、同時に経営者自身の考えによる。

(写真は、タイの自動車部品工場を視察する日本の大学教授)

3.最近進出した日系企業が先発組の企業に追いつくには

T社は、ある日系自動車メーカーが現地化を進めるために要請され数年前にタイに進出した。ところが、2012年をピークとして国内市場が停滞したことから、T社は同じような業界で数十年前から進出し、ある程度の市場を確保している一角にはなかなか参入できないのである。そのため、営業スタッフを増強。日本からの応援と、タイで新しく採用した人員で対応をしているのである。

また、当初、要請したメーカーとしても市場が拡大しない状況では、新しい機種に切り替わるまで、後発組の参入は難しいのである。そのためには、技術水準を高め、生産性を向上させて自動車メーカーに品質の向上や生産性向上に役立つというコストダウン提案ができるのかどうか、が課題である。同業他社からは、工場の設備が遊んでいる状態では、同情をされるほどである。経営陣としては、タイを拠点にASEANでの展開を考えており、簡単には撤退しないという強い意志があり、日本の本社からも大きな支援をいただいている状況である。同社だけではなく、2010年以降の進出企業は先行する同業他社に比べてよほどの得意性、製造力、技術力および資金的な体力が無いと続かない、という次第である。

(写真は、自動車業界、部品業界が多く集まる工業団地)

4.タイの医療事情とインドネシアの医療事情

通常はタイでの暮らしが多いのだが、たまたま出張で3月に3回インドネシアに行くことになった。3月の後半のジャカルタ出張で、ある朝起きると耳が痛い。食事を済ませ郊外に移動する車の中で、運転手に耳が痛いため、外国人向けの病院に案内するようにお願いをした。幸いにも、ホテルから程遠くないところに外国人向け病院があった。日曜日ということから専門の耳鼻科の医者はいなかったが、易しい英語で痛い部分の症状を説明された。その上で、薬の薬用も伺って、安心して薬が飲めたのである。

1週間を経過して、タイに戻っても耳の痛い日もあり、地元の外人向けの病院に行った。幸いにも耳鼻科の専門医がおられて、その医者はインターンを東大と慶応大学病院で学んだということであった。そのため、症状を日本語で説明し、医師からも原因となる症状についても日本語で説明を受けることができた。

このように日本語の話せる医師がいるタイの病院は少なくないが、インドネシアと比べるとその差は歴然である。ましてや、インドネシアで日本語通訳サービスがある病院を郊外の工業団地で探すとなれば、なかなか難しい。そのため、持病がある人や、多数の駐在員を海外に送り出す企業は予め進出予定の工業団地周辺の危機対応の一環として、病院、クリニックなどの所在も確認をしておくべきだろう。

(写真、インドネシアの病院)

5.(参考)タイとインドネシアの自動車業界事情について

3月に3回、インドネシアに出張をした。主に自動車部品業界の動きを学ぶためである。 2014年、タイの自動車の国内販売が90万台を割り(生産台数は200万台近い水準を維持)、インドネシアが100万台を超えたことから、インドネシアの市場規模の拡大が期待されている。そのせいか、2011-2013年の日本からの投資が大きく伸びてインドネシアの海外投資国をみると日本からの投資がシンガポールについで上位1-2位になったほどである。2014年は多少、日本からの投資の速度が落ち込んだが、まだまだインドネシアの魅力は大きい。

特に2.5億近い人口の約半分は、ジャワ島に集まり、ジャカルタ市内の渋滞は世界でも有数のひどさである。同時に、消費意欲も旺盛で、ショッピングモールに行くと若者が多い。ジャカルタ市内では地下鉄工事の進んでいる関係で、予定した会社に行くには、予想以上前に出発しないと、先方の約束時間に間に合わないほどである。 1980-1990年代のバンコクのようだ、という人もあるが、ジャカルタ市内では既に高層ビルが立ち並び、さらに大きな商業集積もできている。

街中を走る自動車を見ると、7-8人乗りのボックスタイプが多い。大家族主義と言っても良いのか、街中で行き来する車の大半がこのタイプで、意外と乗用車タイプは少ない。タイでは、乗用車とピックアップが席巻しているのだが、インドネシアはボックスタイプとトラックが多い。タイとの大きな違いは、裾野産業の広がりである、素材型の産業は少なく、多くの部材はまだ輸入に頼っている。

インドネシアは豊かなゆえに、経済発展が遅れた、という面もある。ジャコウ大統領は大海洋国家を目指して、自立できる国家の形成を狙っているようだが、はたして海外と孤立して経済発展ができるのかどうか?例えば、鉄鋼分野では、韓国のポスコ社との合弁で大きな赤字を出したように、国営企業が経済をリードする時代から民間に任せる時代になったのではないか。インドネシアは巨大な民主主義国家である。5年ごとに大統領が変わる。今の大統領はソロ市長、ジャカルタ都知事を経て、大統領になった関係で歴代の大統領とは異なり庶民性を打ち出しているのである。それだけに庶民よりの政治をするのだが、官僚機構、既存政党とうまく行けるのかどうか?である。かつての大統領と大手財閥との関係はより透明性が必要になった。ジャコウ大統領は3月になって初めての外遊先に日本と中国を選んだが、日本や中国からインフラ投資、民間投資を呼び込むためでもある。

 

以 上