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タイ

作成年月日:2015年2月

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タイ国情報 2015年1月

今月は1月に課題をいただいたタイでの家事労働の調査に関係して、技能・実習制度を既に実施された、また実施中の機関を訪問した様子をご紹介します。また、1月中にお会いした日系企業、タイ企業の皆様が日常の労務管理、経営管理で何を重視されているのかを紹介します。

最後に、1/20開催の全日本金属産業労働組合協議会JCM主催の労使協調のためのワークショップの様子もご紹介します。

1. タイと日本を結ぶ技能実習制度の発足とその後の経過

2. 新工場の立ち上げと社員教育

3. 合併会社の運営の課題と挑戦

4. 日本式労務管理について

5. 労使協調路線をつくるには

1.タイと日本を結ぶ技能実習制度の発足とその後の経過

一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会では、タイの工業省と日本の経済産業省(当時は通産省)からの要請で、タイでの冷蔵、冷凍技術の工場のため実習生の受け入れ制度を20数年前から実施してきた。ところが、派遣先を斡旋するタイ工業省を訪問するとタイの冷凍技術も進化したため、日本での研修に参加したいという希望者が減少して、2015年でも数名にとどまっている。工業省で実施してきた事前研修を行うための予算も無くなり、今後の課題としては、CLMVなど周辺国の冷凍冷蔵技術向上のため、日本の技能者を派遣できないか、という問題が提起されている。

一方、国際人材育成機構(IM Japan)では、日本国内の技能者、ワーカークラスの労働人口が減少して、人手不足を補うという意味から、タイ、ベトナム、インドネシアからの実習生のニーズがある、との説明があった。また、職種に関しての制約があるが、時代とともに要請される業界がかわってきたとのことである。 タイに進出している日系企業のいくつかは、この技能実習生を活用して工場運営を行い、成果を上げている企業も多い。

言い換えると、進出する前から、進出予定国で働く人材を事前に育成するという長期の経営計画を持っている企業もあるのである。

(写真は、タイ工業省の裾野産業育成局の活動報告にも紹介)

2.新工場の立ち上げと社員教育

2011年の会社設立し、2012年から工場建設にかかり、2013年から操業を開始した自動車部品メーカーがある。既に、中国や北米でも工場を建設し、主な納入先の現地化への要請にこたえるためにタイに進出してきた事例である。

原材料などは、日本からの調達で問題はないが、自動車業界は2012年を大きなピークとして2013年-2014年は全体の生産台数が減少したため、予想を下回る操業率となった。生産工程の大半は機械化が進んでいるが、タイ人に技術の伝承をする課題がある。

では、現実としてタイ人の採用は、東部の工業団地でも難しいという状況ではない。ただし、営業面では購入先が日系企業のため営業面では日本人が前線に出る必要がある。

この点の技術面も含めた営業ができるタイ人を育成するには数年がかかると見ている。 特に、自動車部品の要請される品質は不良率が5ppm以下の水準が条件になるため、現場での品質管理の重要性が高い。また、このような技術面の対応ができる人材を見つけるのは至難の音だと認識されている。

(写真は、自動車産業の集積が多いタイ東部の工業団地に向かう道)

3.合併会社の運営の課題と挑戦

日本の主要な産業では、業界の再編成が行われている事例もある。タイにある系列会社でも、合併により、お互いの技術、顧客の重複の調整と、在庫管理のノウハウを共有することで成果を上げている企業もある。今回、訪問したS社は、従来のN社と,S社が国内で合併したことによりタイでも世界に先駆けて、合併前からも合併後の棲み分けを研究してきた。

幸いにも、タイの法人は距離的にも近いことから、お互いの人事交流も検討をして、一部の社員は、兼務、または入れ替えでお互いの企業文化の相互理解を高めている。 合併後は、総務、人事の間接部門の統合とともに営業面でも、共通する会社に納入する際の物流の一本化、日本から搬入する物流コストの削減などいわゆるサプライチェーン全般の見直しをしてきた。

ただし、従業員の労働条件が今までと異なることから、社員レベルの相互交流を図るにはまだ時間がかかる見込みである。

 

(写真は、関連会社の入る工場)

4.日本式労務管理について

タイの自動車産業は日系が90&を占めるといっても良い。しかし、第2次、3次の協力業者はタイ企業が多く、日本式の経営手法を導入する事例もある。 1月に訪問したタイ企業のB社およびS社では、トヨタ生産管理手法TPSを学んで、効果を上げてきた事例である。中でも現場での整理整頓など5S手法を導入して、工場の内部の整理整頓が進んだ。また、かんばん方式により製品の製造から在庫管理まで「見える化」をすすめたことにより、在庫管理にも成果を上げた。最後に、収益を向上させてことからタイ人にも成果の分配をすることで、ますますタイ人の貢献度が高まった。最初は、批判的であったB社のオーナも具体的な成果を上げてきたことから従来は改善提案に対してGMは個人として報酬を支払っていたが、改善提案の成果を見て報酬を支払うことになった。 同社では、これをタイ人だけではなく、同時に働くミャンマー人も同様の扱いをすることから、ミャンマー人も成果を上げている。

 

(写真、日本式労務管理を導入して成果を上げているB社)

4.日本式労務管理について

1月20日に全日本金属産業労働組合協議会JCM主催に回建設的な労使関係構築に関するタイ労使ワークショップが開催されて、参加した。参加者は、100名程度で労働団体からの参加が多かった。

大使館から、厚生労働省出身の坪井書記官も参加。 主な議題は次の通り。

議題(案):

○JCM:前回のW/Sの振り返りと、建設的労使関係構築に向けたタイの日系企業労使に対する期待

○タイ労働組合:労働組合の視点から見たタイの労使関係や経営側に対する認識と、建設的労使関係構築に向けた労働組合の取り組みおよび経営側への期待・要望

○タイ日系企業経営側:経営側の視点から見たタイの労使関係や労働組合側に対する認識と、建設的労使関係構築に向けた経営側の取り組みおよび労働組合側への期待・要望 労働団体、経営団体からの報告に続き、講師がパネリストになって議論をされた内容は以下の通り。

Q1)政府と労働団体が協議する内容はどのような内容か?

A1)浅沼事務局長(JCM);2014年12月に経済的循環に向けた政策協議が議論された。@好循環をつくるため、A賃金上昇による景気回復、B生産性向上、C働き方などが議論された。労働団体からは連合の古賀会長、JCMの相原議長が参加。政府は安倍首相以下。経営者団体も幹部が出席した。 マニット会長(ALCTタイ側労働団体);労働争議防止のための3者協議の場があるが、2者協議が良い場合もある。決定権の無いレベルの会議と決定権があるレベルの会議では異なる。労働法もあるが、労使関係が悪化しないための法律で、向上させるというものではない。 吉原氏・(富士通常務・唯一の経営者からの講師);政労使会議については、個別企業の問題を持ち込まないようにしてほしい。

Q2)同一労働同一賃金の原則はどのように確保されているのか?(略) Q3)収益の配分を労使で協議できるのか?

A3) 浅沼事務局長(JCM); 個別企業としてNECの事例であるが、年間の計画を立てて、売り上げ、利益配分など営業利益に労働側へのボーナスの配分を議論したことがある。

Q4)建設的な労使関係は構築できるのか?

A4) チャーリー会長(TEAMタイ側労働団体);組合が悪者という意識を排除することだ。日系企業の60%が労働組合から面談を申し入れて対応するという受け身である。2者間の労使関係を構築することが重要。 マニット会長(ALCTタイ側労働団体);ローマは1日にしてならず。相互の誠実さが重要。同一労働同一賃金についても同様だ。自動車組み立て産業は大手で、2次以下の納入業者が中小企業である。中小企業を育てることが重要だ。 吉原・富士通常務;お互いの立場を尊重することが重要である。経営者もあいまいな回答を避けるべきだ。検討する、考えるなど、期間を明確にしてYES、NOを明確にしないと誤解される。 浅沼事務局長(JCM);当事者の問題は当事者が解決することが重要である。

(写真は、1/20に開催されたタイ労使ワークショップの会場)

以 上