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タイ

作成年月日:2014年10月

海外情報プラス

タイ国情報2014年9月

当地の日系企業を中心に9月の動きを5点にわたり紹介する。

1. 日本の大学生とタイの大学生の就学事情

2. 日系金型業界の海外展開と地場企業との連携

3. タイの外国人のVISAおよび労働許可の更新

4. 5.22クーデター後の労働市場と労働争議

5. (参考) 日本人駐在員の住居選定

1. 日本の大学生とタイの大学生の就学事情

今月は、海外でインターンシップの受け入れを求める日本のアイセックの学生との意見交換をする機会があった。同時に、日本で観光学を学ぶ学生の、活動発表を伺う機会があったので、大学生の就職事情について考えてみた。

日本の文部科学省では、「官民協働海外留学支援制度」という海外の留学を奨励する仕組みを持っている。 (参考) https://tobitate.jasso.go.jp/#about

しかし、現実に、海外留学をする学生は減少をしているのである。 その理由については、いくつかの背景もあるが、「外の世界に対する憧れの低下、他国に比べて弱体化する経済に起因すると考えられる」関西で、観光学を学ぶ学生たちの発想でも、海外の観光客の受け入れについては、大学で研究活動をしているが、海外での観光産業の在り方を研究する発表が少なかったのが気がかりである。それは、日本の観光業界が、いまだに国内の学生を採用しているのが現状で、外国人を採用して、海外からの観光客をより積極的に受け入れる姿勢がどの程度あるのか、気になるところである。「日本では海外で教育を受けることは実用的でない」という意見が少数派にならないと難しい。

その背景には「日本社会は博士号に対する評価が非常に低い。理学系や社会科学系の博士など取ってこようものなら、まともな就職すらままならない。新卒一括採用主義(しかも原則25歳まで)という日本の特殊な雇用慣行が原因だ」という意見もある。

一方、企業の海外在留邦人(下図では「expats」と記載)の数は増えている。では、海外に進出する企業としては、どのようにして海外要員を確保すればよいのだろうか?

その一つをタイの学生の就職事情を参考に紹介したい。

1. タイ政府はタイ人の若者を海外に送り出す制度がある。優秀な中学生を選抜して、高校時代から海外で教育を受けさせて、優秀な官僚を育てるという仕組みである。 そのため、留学期間の2倍、公務員とて勤務する条件があるが、タイの官僚の中で優秀な官僚は海外に留学した経験を持つ方も多い。現在の、閣僚でも海外の留学組が多いのである。

2. アセアンの留学生を一手に引き受けようとするアジア工科大学が、タイにおかれている。ここの学生は、アセアン各国から来ており、帰国しても留学生のネットワークが良い。タイ人も留学生を受け入れるオープンな姿勢がある。

3. このような、タイの実態を考えると、日本でも類似の仕組みができてきたが、短期間では成果上がらないため、10年単位、20年単位でこのような仕組みを支援できる仕組みが必要である。

4. 企業でも、在日の留学生を大いに受け入れるとともに、海外留学生を確保しながら海外進出を考える時代になっている。

5. 既に、いくつかの製造業では、10年前から、アセアンの大学生であれば日本の大学生と同じ条件で、採用している大手企業もある。中小企業でも、単に、技能者として海外のワーカークラスを受けているだけではなく、幹部候補生としても採用している企業も増えてきたのである。 。

BOIセミナー

(図は、日本の留学生の推移。資料出所 http://jp.globalvoicesonline.org/2014/09/28/31138/)

 

2.日系金型業界の海外展開と地場企業との連携

9月は、超硬金型業界の日系、地場系の会社を回ってきた。
先月から継続した課題であるが、タイに進出した自動車部品メーカーでは、日系の金型企業だけに金型を発注すると、全体のコストが下がらないため、地場の金型メーカーを探しているのである。

地場の金型メーカーを回ると日系企業からすでに発注を受けている会社もあり、すでに日本企業と提携して金型開発をするものもあった。今まで、日本企業との取引が少ない企業でも、日本企業との連携を強化したい、という企業もあった。

アセアン経済共同体AEC2015を目指して、企業はアセアンでの競争力を高めたい。そのためには、日系企業は、アセアン域内で拠点を持ちたい。しかし、すでに進出した大手企業ならまだしも、中小企業では、海外でマネジメントをできる人材が居ないのである。そこで、日系企業と現地企業の面談をアレンジする企業も生まれてきた。もちろん、展示会なども有効な手段である。

その場合の、ポイントは何か?目的を一致させること。方向性が定まれば、タイと日本企業との役割の分担である。技術や営業は日本が、総務、経理は地場企業という役割分担をする事例がおおい。

逆に、注意すべき点もある。100%独資ではないため、考え方の違う地場企業と組む場合は、パートナーの考え方によく耳を傾けることである。

同じ、日系企業同士でも合併や提携は難しいので、ましてや海外では自分たちの考えが100%通るとは考えられない。この点を理解して、上手に経営をされている会社もあるのである。

ラヨン県のA工業団地

写真は、BITEC会場での展示会の模様)

3.タイの外国人のVISAおよび労働許可の更新

タイで働く外国人が通過しなければならない規制として、VISAと労働許可がある。

例えば、VISAを更新するための書類として次のような書類が、申請時に移民局に提示
しなければならない。とにかく、書類が多い。また、税金関係はいったん支払った書類を
本当だという認めを役所のサインが要るのである。

(VISA更新の資料)

1.申請書(TM7)*移民局の窓口で入手

2.申請者のパスポートのコピー

3.移民局の用意した雇用者の証明書(Sor.Tor.Mor.1)

4.労働許可所のコピー

5.会社の登録証明書(6か月以内のもの)(商業省事業開発局DBDで入手するナンスーラプロン)

6.同じく会社の株主構成(DBDで同時に入手すること)

7.会社の決算書、法人税支払い証明書(Por.NgorDor.50)
過去3か月のSor.Bor.Chor.3(財務諸表提出の際のカバーレターに相当するフォーム)
過去3か月の申請者の名前が分かる源泉税(Por.Ngor.Dor.1)給与支払いにかかる所得税の源泉証明)

8.個人の所得税申告証明書(Por.Ngor.Dor.91)

9.社会保険料の支払証明(Sor.Por.Sor.1-10)

10.過去3か月の付加価値税(VAT)の申告の控えまたは還付の証明

11.外国人がこの事業に必要な証明書
(たとえば、同じポジションにタイ人を募集したが、応募しない証明)

12.勤務場所の地図(今年はGoogle Mapを添付)

13.管轄する役所などのサポートレター(もしあれば)

14.写真

1)住所と会社名が明示されたもの

2)従業員が勤務する会社内部の写真

15.家族同伴でそのvisaが必要な場合、結婚証明書または出生証明書
(これが外国の政府が発行したものであれば、大使館の証明も添付)

これを揃えて、係官の了承を得て、1か月の暫定許可がでる。1か月後に、移民局に出向いて 1年間のVISAがもらえるのである。

労働許可もほぼ同じ書類をそろえることになるが、オリジナルではなくコピーでも良い。

 

ネパール

(写真は、移民局の窓口。1名の申請書類で厚さは1cmにもなる)

 

4.5/22クーデター後の労働市場と労働争議

9/18に開催された表題のセミナーの講師であるMr. Supachai Manusphaiboonの説明を紹介したい。

まず、5/22に戒厳令が施行されたが、労働争議についてはほとんど影響がなかった。

経営者にとり、人材が重要な資源であるために人件費を上手に管理しながら生産性を上げることが重要である。特に、タイが世界的に見て競争力を保つ必要がある。タイの経済は、世界の経済と密接な関係があり、貿易相手の不況にも労働生産性を上手に対応させながら管理する必要がある。

生産性向上を図りながら人件費の管理をすると、例えば、労働者の頭数を調整する場合、労働組合の要求にこたえ無い場合、低賃金や、福利厚生の交渉時に、労働争議が起きることもある。

1)労働者の数を削減するには、いつくかの方法がある。

  1. 外部の派遣労働者の契約を継続しない
  2. 新規雇用を凍結する
  3. 早期退職を進める
  4. 労働者保護法により、一時休業をする
  5. 余分な労働を節約する、など。

2)組織のスリム化

  1. 労働組織を統合する
  2. 他の会社と提携、合併する
  3. 水平組織にして、指揮命令系統を簡素化する

3)労働争議を引き起こす変化

  1. 労働契約の変更
  2. 労働条件の変更
  3. 法律の変化
  4. 労働交渉の変化、など。

4)労働者の中の不満分子

  1. これらは経営陣と労働問題を起こす
  2. これら不満分子は労働者保護局に救済や調停をの助けを求める場合がある
  3. 経営陣は、面談する前に事実関係を正確に伝える必要がある。

5)労働関係委員会

  1. もし、不当労働行為に関する苦情処置があった場合は、労働裁判所に行くことになる
  2. 労働裁判所は、まず、労働者と経営者団体による仲裁になる場合もある
  3. 面談日に先立ち、書面審査がある

6)労働裁判所の決定

  1. 労働者は、解雇、または不当な扱いから救済されるように求める
  2. 使用者側は、労働者委員会の不当な判定に前に労働裁判所に正当な行為である旨の承諾を得たい。

7)現状の労働市場

1,400の労働組合のうち、約1,000組合が実際に活動をしている。
活動の主なものは、労働条件の改善、補償や福利厚生の改善である。大半の組合は1年間の協定を結んでいる。経営陣としては、3年程度の協定を結びたい。

交渉は通常通り進んでいるが、マスコミに報道されることはほとんどない。

戒厳令下でも、ストやロックアウトは禁止されていない。労働組合としてはストやロックアウトを避けている、なぜなら、ストの場合は、給与の保証が必要である。

しかしながら、経営陣は今は強気である。現状では、コストのかかる福利厚生を無くしたい、下げたいという意向が強い。特に、労働組合の指導者を退職させたいとして、労働裁判所に経営陣が訴えている事例もある。労働組合の指導者には金銭が支払われるが、職場には戻れない、という判断が出されることも多い。

それ以外にも検討する課題として、解雇金の使い、労働組合幹部の退職をさせる条件など多くの課題がある。

 

  1. ??????? 解雇金の支払う必要があるのかどうか
  2. ??????? 解雇金の支払対象の賃金は何か
  3. ??????? 解雇をする場合の予告時期
  4. ??????? 臨時雇用
  5. ??????? 競争力にない雇用契約の幅
  6. ??????? 一時休業の保証は賃金の75%
  7. ??????? 不当解雇かどうかは労働裁判所が判断
  8. ????? ??不当労働行為かどうかは、労働関係委員会が判断
  9. ??????? 労働者に対する経営陣の刑事上の責任
  10. 労働委員会のメンバーを解雇する場合の労働裁判所への訴え
  11. 労働条件の変更の仕方
  12. 労働組合の争議に対する労働裁判所の判断
  13. 不当労働行為への裁判所の差し止め請求
  14. ロックアウト
  15. 労働組合の幹部は、100%労働をしなくても給与を支払われるべきか
  16. 労働組合の幹部は、承認が無い場合でも給与が支払われるべきか
  17. 労働争議の場合の外部の役割り
  18. 労働仲裁人の役割り
  19. 労働裁判所に訴えをする準備
  20. 労働裁判所に訴えられた場合の反訴の意見書の準備
  21. 法廷外の協議
  22. 解雇文書の書き方
  23. 法廷訴訟の場合の弁護士の役割り

以上のように、40年近く労働市場、労使関係に関与されてきたのである。

最後に、この講師を招いて、各地でセミナーなど開催されていることが多い。OVTAでもこの方をお招きしてはどうかと考えている。

 

陸軍

(写真、9/18Mr.Supachai講師のセミナー)

 

5.(参考)日本人駐在員の住居選定

海外駐在員が、過ごすにはタイのバンコクは世界でも有数の快適な場所と言われている。

そこで、日本人駐在員のバンコクでの住居の選定について、現状と課題を説明します。立地と、住居形態、広さと家賃な考慮する点が多いが、今回は立地に絞って説明をする。

まず、単身赴任か、家族帯同かに分かれる。

  1. 単身赴任の場合は、勤務先、団体、会社に近い場所を選ぶか、バンコク市内であれば、日本人の比較的多く住む地区になることが多い。
  2. 家族帯同の場合、子供が学齢期にある場合、日本人学校に通える地区かどうか、大きな関心事でもある。日本人が多く住む、スクムビット地区に学校の通学用のバスが通ってくれるので、多くの駐在員はこの地区に住まいを選ぶことが多い。日本食材の揃うスーパーがあったり、日本食レストランもそろっているのである。
  3. 日本人が多いということで課題も多い。

まず、子弟の教育も日本並みの教師陣を揃え、しかも生徒数がバンコク日本人学校で4,000名近くなると、収容できない、という悩みもある。東部臨海地区に近い,Srirachaにシラチャ日本人学校が開校されて少しは緩和されたかと見えたが、それ以上にタイに進出する企業が増え、同伴する家族も増えると、日本人学校だけでは受け入れきれない。

  1. 次に、シンガポールと異なるのは、高校の数である。バンコクにも如水館高校が都内ミンブリ地区にできたが、何分、便利な交通手段がバスか車だけということから、高校生以上の子女がある場合は、家族が日本に帰国して現地の高校に通わせる事例が多い。
  2. 最近では、インターナショナルスクール(国際学校)も選択肢の一つになる。
  3. 主に米国式、英国式の国際学校も含めて30前後の国際学校があると言われる。
  4. そのため、日本人学校に通わせない場合は、国際学校に近いところで、住居を探す事例も増えてきた。
  5. 国際学校の多くは、郊外に移っているため、従前の日本人が多いと言われるスクムビット地区以外でも住居を探す方も増えてきた。
  6. 製造業の場合は、会社も郊外が多く、その通勤との兼ね合で選ばれている。  商社、サービス業はバンコク市内にも多いため、通勤と通学の双方の兼ね合いで選ばれる事例もある。

もちろん、買い物や日常の生活に困らないタイ語の会話能力次第では、バンコクのどこでも暮らせるが、赴任直後であれば、従来からのスクムビット地区周辺が比較的、安心して暮らせるようである。

従って、海外進出には、労働者の確保とともに、駐在員の住居選定も重要な課題だといえる。

 

以 上