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タイ

作成年月日:2014年9月

海外情報プラス

タイ国情報2014年8月

当地の日系企業を中心に8月の動きを5点にわたり紹介する。

1. 日系中小企業のタイ進出と進出後の交流の場

2. タイの日系企業における賃金事情

3. タイの日系企業がカンボジアでワーカーを活用する方法

4. 化粧品業界の中小企業がアジア展開をする方法

5. (補足)タイの軍事クーデターの主役が首相に、9月から新内閣発足

1. 日系中小企業のタイ進出と進出後の交流の場

タイだけではないのだろうが、日系の中小企業の資金面で支援をする地方の信用金庫がタイに駐在事務所を設置して得意先の中小企業の進出の支援を行っている。また、8/1に進出後の交流の場を提供している機会に参加することができた。進出のための支援とは、タイ政府との面談の機会を提供したり、先発組との交流である。

今回の交流会では、2つのセミナーがあった。1つは、タイ経済振興協会の理事長による「アセアン共同体AEC2015と日系企業の生き方」について。2つ目は、「現地化力についてー海外でのビジネスを成功させる秘訣」について、OVTAのアドバイザーに登録されている荒幡講師の講演であった。セミナー後の交流会でも、進出して年数の浅い企業、歴史のある企業との交流がなされた。

続いて、8/5には埼玉県主催で、県出身の企業と、埼玉県の行政関係者の交流会があった。このように地方の行政が、海外との何らかの経済交流を支援する仕組みを作っているのである。

進出に伴う、現地の方と日本人との考え方、意識の違いなどどのように解消するか、格差を少なくするか、など進出企業は腐心をしているのである。 これ以外にも、趣味の会、大学卒業生のつながりなど、タイ在住登録者が5万人を超え、登録されていない方、出張ベースの方を含めると10万人がタイに滞在するといわれる。 そのような環境で、まだまだ日本の地方から進出したい企業があるのである。

BOIセミナー

(写真は、写真は、8/1の信用金庫中央金庫セミナー)

 

2.タイの日系企業における賃金事情

バンコク日本人商工会議所では、20数年前から、日系企業に勤務するタイ人の賃金実態を調べて、会員企業へ還元する作業を行ってきた。組織的には、労務委員会が実施するのであるが、とりまとめや分析は日本大使館の書記官として駐在されている厚生労働者ご出身の方にお願いをされている。

今回の報告内容から読み取るタイの日系製造業の賃金水準などは以下の通り。
(非製造業は省略)

@ 労働者

正規従業員は88.1%で期間従業員(32.8%)や派遣従業員(39.5%)の利用がある。 また、外国人の従業員の採用も製造業259社中36社(13.9%)ある。

A 初任給

高卒ワーカーで9,000-9,999バーツ。

短大10,000-10,999バーツ

大卒は12,000バーツ台と15,000バーツ台という会社がある。

B 職位別の給与

事業部長級(Director)143,055バーツ。

部長クラス(GM)88,000バーツ(前年比2,600up)。

課長クラス(Chief) 52,513バーツ(前年比2,513up)

係長(Chief Clerrk) 36,698バーツ(前年比898up)

スーパーバイザー(SV)28,950バーツ(前年比145up)

C 2013年の賃上げ率は5%(非製造業も同じ)

D 賞与 2013年は3か月が多く、輸送機の4.5か月、一般機械の3.6か月があった。

E 労働組合は製造業で34%の組織率。

F 紛争は、主に残業拒否であるが252社中37社が経験をしている。

なお、資料は次のwebsiteから入手可能である。 http://www.jcc.or.th/download/index

 

ラヨン県のA工業団地

(写真は、金属加工のJV)

3.タイの日系企業がカンボジアでワーカーを活用する方法

日本からタイに進出して26年目を迎える企業がある。事業を始めた当時は、タイの産業振興策として雇用の創出を求められ、労働集約産業が歓迎されてきた。ところが、タイの産業集積も増え、GDPも上がってきた昨今、タイ政府投資委員会の2015年投資優遇策から、労働集約産業が対象を外れるという状況になってきた。また、2012年に最低賃金が地方でも1日300バーツになる時代背景から、労働集約産業の中には、周辺国に展開する企業もでてきた。今回、取材したのは、タイの縫製工場の工場長を長く務め、新しくカンボジア工場の責任者になったO氏である。O氏は、同社の草創期に実務経験者として採用されて入社し、今ではタイの会社の役員でもあり、子会社の執行役員も兼ねている。カンボジア工場進出の立役者の一人でもある。工場建設は2013年。機械を設置したのは2014年に入ってからである。ワーカーを募集した際に注意したことがある。縫製産業は客先の細かな要望を受けるため、カンボジア人との意思疎通が重要である。そのため、採用時に、縫製の経験の有無とともにカンボジア語のテストも行っている。カンボジアに進出した企業の中には、学力が乏しいワーカーにカンボジア語を教えている場合もあるが、中小企業ではそこまで手が回らず、採用時に選択をすることが重要だと言われた。

3月から従業員の採用を開始。教育をしながら、受注をこなしてきて、8月末には従業員が250名を超えるまでになった。タイと異なり、カンボジアでは従業員の募集をすると、多くの応募があって、このような選別ができるのである。

たまたま、2014年にプノンペンに日本の流通大手のイオンがショッピングモールを開いた。そこに出店している居酒屋チェーンWの店長に、採用状況を伺った。カンボジアでは今まで日本式のサービスに慣れていないため、一から教育をしている。また、努力をする従業員にはサービスによって報われる、という仕組みを理解させるため、サービス料として預かった資金は、すべて従業員に還元をしている、とのことである。これによって、自分たちの成果がすぐに、分かる仕組みでもある。

 

ネパール

(写真は、カンボジアに進出したイオンショッピングモール)

 

4.化粧品業界の中小企業がアジア展開をする方法

今月、来訪された化粧品業界のオーナーは脱サラをされて事業を始めた方であった。

元々は金融機関出身である。取引先の老舗化粧品会社の再建を手伝って、ある程度、立ち直りに目途がついた段階で、出向元の金融機関に戻らず、可能性があると思った化粧品業界に飛び込んだ。誰もやらない、独自性のある商品を展開してきたが、海外でもそのやり方を踏襲。と言っても、訪問販売ではない。むしろ、有名ブランドでないため、性能と価格で勝負。しかし、いったん決めた価格は下げない。海外の取引先も、同社から売り込んだのではなく、先方がwebsiteなどで同社独自の商品がほしいと言って、買いに来たものである。買いたいと言ってきたお客にも売らないこともある。それは、販売力のない相手に商品を卸すと、売れない場合は、相手は値引きをして売ることになる。そうすると、同じ商品を仕入れて販売する別の販売先にも迷惑がかかる。業界では、大手化粧品もあり、同社のように中小企業もある。取引を開始した相手が損をしてまでもやるなら、その手前で止めるということは、なかなかできえないものである。

今後は、自然派志向の消費者も増えることから、自然派化粧品も手掛けるという。

タイでも消費水準が上がったことから、女性の化粧品の広告が多くなった。日本や欧米の大手化粧品ブランドとともに韓国製もでてきた。その意味で、アジアの若い世代が増え、所得も上がれば嗜好品や化粧品、高額商品も増える。この業界の中小企業としては、そのような欧米のブランド競争の中で、生き延びる知恵が必要となる。そのためには、経営の基本を理解し、各国の顧客の情報を適格に組み上げるという仕組み作りが必要となる。その実行には各国の人材を採用するとともに、日本に留学している各国留学生を活用することも必要ではないか。たまたま、日本の大学生のグループで世界各国にも同様の組織を持つアイセックの学生が当社を訪ねてくれた。日本からもアジア進出の日系企業でインターンシップを経験したいという。それは、アジアから来る留学生も同様である。

最後に、後継者問題はどうされているかというと、この新しく作った自然派化粧品会社はお嬢様に経営を任せているという。海外だけではなく、国内も同じであるが、現場を任さないと人は育たない。経営の基本をしっかりと守り、国内市場に満足せず、海外展開をする会社もあるのである。

 

陸軍

(写真、京都の商店街を歩く若者)

 

5.(補足)タイの軍事クーデターの主役が首相に、9月から新内閣発足

タイの現国王は、今まで13回のクーデターを経験されている。

クーデターの主導者がその後、首相になって、国民の反対を受けて、流血騒ぎまであった事例もあるが、今回のプラユット将軍の首相就任には国民から大きな反発が出なかった。戒厳令下のクーデターで、国家平和秩序維持評議団(NCPO団長は陸軍総司令官であるプラユット将軍)が、NCPOの指名した国家立法会議NPLの議員の一致した推挙により国王の承認を得て正式な首相に就任。続いて、首相から内閣の名簿を提出して国王の認証を得て、9月から新しい内閣が発足した。

32名の大臣の内、11名が軍人が占める内閣となった。

首相はプラユット将軍。副首相は 5名。プラワットGen Prawat将軍、タナサックGen Tanasak将軍、プデイアヤトーンMR Pridiyathorn閣下、ヨンユットYongyut閣下、ヴィサヌWissanu閣下。

経済閣僚については、プデイアヤトーン副首相が総括して、財務省はソンマイMr.Sommai財務相、商業省はチャッチャイGen Chachai商業相、工業省はチャクラモンMr.Chakramon工業相、エネルギー省はMr.Narongchaiエネルギー相、ICT省はポンチャイMr.Pornchai ICT相、観光スポーツ省はコプカーン女史Mrs.Kobkarn(東芝タイ会長)、観光スポーツ相が就任。現内閣で、2名の女性閣僚の一人であり、実業家でもある。労働大臣は、スラサックGen Surasak陸軍大将が就任している。

タイの法律では、首相の所信表明がないと、内閣の正式な活動開始ではない、されているが、これも9/12に所信説明がされて、新しい内閣の活動開始になった。

暫定憲法では、次の11分野の改革が求められている。 @ 政治 A 国家統治 B 法律・司法制度 C 地方行政 D 教育 E 経済 F エネルギー G 保健・環境 H マスコミ I 社会 J その他

例えば、@の政治面では今までの政治対立をどのように解消するかが求められている。

この実施のために、国家改革会議のメンバーが国内で募集されて、今その選定作業に移っている。国家立法会議は軍事政権が任命して、軍人と警官で過半数を占め、その他も官僚のOBが選任されたことから、内閣の政策運営 はやりやすいが、このような改革には時間がかかると思われる。

タイ政府の会計年度は毎年10月開始であるが、これで新年度の開始には内閣が間にあったことになる。

陸軍

(写真は、プラユット新首相)

 

以 上