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タイ

作成年月日:2014年7月

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タイ国情報2014年6月

2014.5.22の無血クーデターを実行したタイの軍事政権は国家平和秩序評議会(National Council for Peace and Order,略称NCPO, プラユット将軍Gen Prayuth Chan-ocha議長)を設置。

当初は、解散された下院は機能しないため、4月に実施した上院議員の選挙後に組織した上院だけは存続する予定であったが、解散。

政府の機能はすべてNCPO(議長:プラユット将軍)の下で動くことになった。

 

BOIセミナー (写真はプラユット将軍)

当地の日系企業を中心に6月の動きを4点にわたり紹介する。

  • 5/22タイのクーデターと日系企業への影響(前月の続き)
  • タイのIT人材を育成する仕組みとミャンマーのIT教育
  • カンボジア人労働者の緊急帰国とタイ労働省の幹部人事異動
  • タイの中堅日系企業の後継者問題とタイ人技術者の募集について

 

1.5/22タイのクーデターと日系企業への影響

(1)長期の課題、国家平和秩序評議会(NCPO)のプラユット将軍は政府と国会を束ねる権限を有する。そのため、今までとどこっていた各官庁に短期、長期の課題を問い直し、スピーディな政策の判断と指示を下している。前政権の政策で批判された庶民寄りの政策は「幸福を国民の手に」というキャッチフレーズでNCPOでも踏襲されている。総選挙は2015年以降になるとNCPOが発表をしていること、欧米を中心にタイへの信頼度の回復は遅れる恐れもある。

(2)海外からの直接投資 今までタイ政府投資委員会(BOI)は半年も自動車業界のエコカー第2プロジェクトの案件など大型投資案件が保留されていた。軍事政権になって、経済の回復を急ぐという方針から6/18にBOI本会議(委員長 プラユット将軍)が開催されて18件が承認をされた。最大の案件はトヨタの2工場での乗用車とピックアップトラックの生産で投資額は515億バーツである。18件で総額1,200億バーツが決定をされた。BOI長官も、タイの投資環境のポジテイブなシグナルが発信できると説明をされた。国内の消費低迷についてもNCPOは未払いが続いた農民への米価買い上げ代金支払いも完了(収入の保障)、一方で物価の安定施策を実施している。

(3)インフラ整備 前政権が決定した都市インフラ整備(バンコクの公共交通の整備、洪水対策など)の決定した案件については、引き続き実施すると確認をしている。未決定の案件については、精査をしたうえでの判断すると発表。一部の路線開発では日系企業も関係していることから、従来通りの工事を進めるとみられる。しかし、後ほど紹介するように建設業などの現場で違法に就労していたカンボジア人(推計で14万人)が6月に10万人近くも緊急避難的に帰国したことから、各種公共工事や民間の工場建設などでは、数か月近く遅延する恐れはある。

(4)短期の課題 クーデターで一番影響を受けたのはホテルとレストランなど観光業界である。5/20戒厳令とともに出された夜間外出禁止令は6月から撤廃された。市内の繁華街では、夜間外出禁止令が出ただけで、屋台店などは売り上げが半減したらしい。ホテルなどはクーデターの影響で一時的な来訪の減少はあるが、たまたまシーズンオフでもあり、10月からのシーズンに向けて業界挙げての販売促進キャンペーンを展開している。タイ政府も観光キャンペーンにも予算が追加された。

(5)地方の工業団地 前回も報告したように、地方の工業団地での操業に関しては大きな影響はない。労働者不足のように、日常の企業活動に影響がでるとみられる事象は、各社ごとに対応してゆかねばならない。6/13に訪問した地方の工業団地では「全く影響はない」とのことである。自動車業界では国内の販売市場の低迷が、NCPOプラユット将軍が政権を掌握したことで、回復することを期待している。輸出中心の業界では、日本や欧米など海外の市場がどうかが、大きく影響をする。

BOIセミナー

(写真は、クーデター後も通常の操業を続けるタイ郊外の工業団地内の工場)

 

2.タイのIT人材を育成する仕組みとミャンマーのIT教育

NCPOが前のYingluck政権から引き継いだ政策と、打ち切った政策がある。打ち切った政策の一つが、IT教育の小学校でのIT教育費の削減である。Yingluck政権の目玉政策であった小学校1年生全員にタブレットを無償で配布する政策は中止になった。すでに、所得の高い層では、小さなころから買い与えていることと、一部の教育者からタブレット配布で、授業中もタブレットで遊び熱中して勉強が身に入らない、という批判もあった。そもそも、AEC2015を控えて、タイ人の弱点であるIT教育と語学教育を強化するという政策が国を挙げての政策にならなかったのではないか、と推察される。IT教育に熱心なベトナムなどと比較して、タイのIT人材育成がどれだけ効果を上げるのか、懸念をされる。弊社のタイ人スタッフの子供で小学6年ですでにタブレットは所有しており、普通の教科では1週間に1時間程度しか授業が無い。

たまたま、6/24-6/25にIT業界の関係者と、ミャンマーのヤンゴンを訪問した。国立のヤンゴンコンピューター大学を訪問したが、2年前にヤンゴン大学から独立した大学で4年後には学生5,000人規模の大学にする予定である。同時に、ヤンゴン空港に近いところにあるICT団地も視察したが、ベトナムのホーチミンにあるIT団地の規模に近いほどであった。

現地の日系IT企業のトップに取材すると、「ヤンゴン大学の優秀な学生が数百人から千名近く応募してくれて数十名に絞って採用をしている。適切なカリキュラムで優秀な指導者が教育して、ミャンマー人を日本のIT現場に送ると日本の現場での有力な戦力になっている。」、と説明を受けた。

 

ラヨン県のA工業団地

(写真は、ヤンゴンのコンピュータ大学、授業中の風景)

 

3.カンボジア人労働者の緊急帰国とタイ労働省の幹部人事異動

5/22のクーデターにより、タイにいるカンボジア人社会では、不法就労者が逮捕、拘留されるといううわさが流れ、6月の上旬の1週間だけで10万人ものカンボジア人が一時帰国をした。それは、推計で14万人もいると言われる不法就労(パスポートも所持せず、労働許可もとっていない)のカンボジア人を採用している企業の幹部が、不法就労に関する取り調べが厳しくなることを恐れて、デマをもとに帰国させたらしい。また、不法就労のカンボジア人に労働許可を出した背景には、国境近くの労働事務所の責任者、労働省雇用局の局長の責任もあるとして、NCPOは労働省幹部の人事異動を行った。労働省の人事異動に詳しい方に6/17に取材すると。事務次官は9月に定年を迎えるため、そのままだが雇用局長は総理府の閑職に移動、国境近くの労働事務所の責任者も現職から本省付けに異動になっている。ただし、OVTAのカウンターパートである技能訓練局のMr.Nakorn Silpa-Archa局長は留任されている。

その他の官庁の事務次官、局長クラスの配置転換もあり、政府出資の石油公社PTT、タイ国際航空なども、Yingluck政権時代に政権に近しいという理由だけで就任したに会長や総裁などはいずれも退任をしている。中でも、タイ国際航空では、経営幹部に与えられた無料の航空券など手厚い便宜供与が退任後も支給されていることを中止し、現職に限ることと、1か月に1枚程度と制限がされることになった。(バンコクポスト報道)

NCPOとしては、前政権の汚職を追放すると言った建前から、政府の高官の綱紀粛正を求めている。ただし、新聞のコラムでは、NCPOの議長であるの陸軍司令官にすべての権限が集中しているため、1992年クーデター後にクーデター首謀者が首相に就任した事例のように、民主化の流れで反軍事政権の運動にならないか、という意見もある。

 

ネパール

(写真は、雨季の最中の労働省)

 

4.タイの中堅日系企業の後継者問題とタイ人技術者の募集について

1980年代から日系製造業のタイ進出が増えて、当時、現地で独立、創業した世代が、次の世代になってきた。企業の寿命30年説によれば、30年以上経過した企業は次の世代に上手に世代交代ができたかどうか、大きな課題である。日本の自動車部品製造の大手企業ですら、タイをはじめ世界に展開する子会社の責任者、幹部として任せる人材が少ない、ことからアッセンブルメーカーから人材を迎え入れたり、部品業界同士で合併をして、管理要員の確保をしているほどである。

1980年代、日本から進出をした電機業界のA社は、日本の本社が経営不振で他社に合併したため、子会社のタイ法人は、当時の経営幹部が共同で出資をして会社を買い取って、現地の日系企業として独立をしている。事業も順調に進展して、A社長の娘が、昨年から会社に入り、企画部門の責任者として働いている。元幹部も、それぞれの分野で任された仕事をしており、タイ人への技術の移転も子会社当時から今も継続して実施している。

ところが、B社は、電気部品のメーカーとして1980年代に進出。創業者である初代社長が亡くなって、そのご夫人が経営を引き継いだ。ところが、次の世代は、すでに他の業界で働いて、タイの部品会社の経営を引き継ぐ意思がない。従業員から引き揚げた幹部も企業を買い取り、経営をするという意欲がある社員が少なく、会社の存続そのものも含めて頭を悩ましている。

一方、日本の包装部品製造業、包装部材供給業であるS社は、今までの日本人が各部門の責任者であったが、これでは地場企業と競争した場合にコスト競争力が無い、ことから次々とタイ人幹部を育成し交代をしたいと考えている。しかし、今まで日本人幹部の指示を受けて仕事をしてきた現場の作業員がその現場の責任者を務めるには難しい。そのため、外部からタイ人の要員を見つけて採用をしたいのだが、タイ人技術者と日本人幹部との意思疎通で困っているのである。

 

陸軍

(写真上、後継者への交代が順調に進んでいるA社)

以 上