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タイ

作成年月日:2014年3月

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タイ国情報2014年2月

−反政府運動と日系企業の影響とタイの労働市場を取り巻く課題について−

1. タイ政治の混迷と日系企業の景気の先行きについての見方

2. タイとカンボジアの繊維業界の人材確保について

3. 太陽光発電と省エネに見る技術者の確保と育成について

4. 水産業界の外国人労働の必要性

5. タイの大学生の就職事情

1. タイ政治の混迷と日系企業の景気の先行きについての見方

2013年の11月から活発になった反政府運動は、2014年になってバンコク封鎖など強硬手段を講ずるようになった。これに対抗して、政府は国会を解散して2/2に総選挙を実施したが、いまだ28選挙区の立候補受付と投票日の確定ができないままである。選挙管理内閣そのものも新政権でないとして新しい政策の実施ができていない。バンコク周辺に非常事態宣言をしたが、民事裁判に訴えられた。「宣言そのものは違憲ではないが、反政府運動は暴力行為をしているのではなく平和的な手法である。言論の自由を守るためには、治安当局は強硬手段をとってはならない」という判決であった。

バンコクだけではなく、タイの中央部からは、Yingluck政権の公約の目玉であった「コメの買い上げ制度」の支払が数か月遅れて、農民の反発も買っている。

2/4に開催されたバンコク日本人商工会議所(JCC)主催の景気討論会では、各業界の報告とともに政局が及ぼす景気への影響についても議論がされた。

*金融機関:世界とタイの動きを説明して、2014年のタイ経済の成長率については3%前後と想定。

*経済調査会長:日系企業の景気動向は、先行指標ともみられるが、今年については、下向く、という意見が多い。

*自動車業界:2014年の生産台数は2013年並。国内市場が縮小して、その分は輸出に向ける。

*電機業界:白物家電に見るように韓国製の台頭で、日系企業は家電では高級機種のみ生き残る。

*農水産食料:2013年は原料の調達が比較的安定していたため、ほぼ順調な動き。

*小売り流通:政局により高級品市場は低迷。生活必需品のみ前年並み。

2/4の討論会でも、参加企業からは、政局混迷が半年で終結すればまだ良いが1年も継続されると、新規投資は漸減するとの意見もあった。

後日、3/6の英字紙NATION主催のセミナーで、JCCの古賀副会頭(丸紅)は、今までアセアンの中でのタイへの投資が非常に重要であったが、今後はアセアン投資はタイ+1として、タイを敬遠して周辺国に投資の興味が移るかもしれない、と報告された。

リサイクル業の工場

(2/4の景気討論会の様)

2.タイとカンボジアの繊維業界の人材確保について

2/16の午前にタイ日系の繊維業界関係者と、同日の午後にカンボジアの繊維業界の方と面談する機会があったので、人材確保についての実情を伺った。

タイでは、最低賃金が300THB/日になる前から、バンコク周辺でもそれ以上の給与を支給しないと良い技術者が定着をしないため、F社では、熟練の技術者には手当てなどで、待遇の改善をしている。

新規採用者はなかなか定着をせず、繊維業界以外の流通やサービス業界に労働者が移っている。中でも、一部の業界ではミャンマーの労働者を採用している。根気のいる仕事はタイ人では長続きしない。

一方、カンボジアの首都、プノンペンに工場を持つA社の場合では、確かにプノンペンでも縫製産業の集積が増えて、最低賃金はタイの1/3程度であった。しかし、最近、カンボジア政府は最低賃金を数年で引き上げると公約をしたが、それでも首都圏での労働者確保が難しくなってきた。

100名程度の工場なら何とか集まるが、1000名を超すと、郊外に工場を移転させる必要があるのではないか、とのことであった。

タイでの繊維産業の多くが周辺国に移転したように、当面はカンボジアの繊維産業はプノンペン周辺に立地しても、いずれ郊外に移転する動きになると思われる。

リサイクル業の工場

(写真はカンボジアの繊維産業の様子)

3. 太陽光発電と省エネにみる技術者の確保と育成について

2/19、ある工場の太陽光発電と省エネの相談でフランス系のSエンジニアリング会社の技術者と同行していくつかの工場を回ってきた。

S社は創業以来170年の歴史があり、タイでも40年近い進出の過程から、技術者の育成、確保に力を入れている。中でも、太陽光発電に関してはタイでも有数の受注があり、また技術者の確保は100名を超えるほどである。一般のエンジニアリング会社では、固定費が高いことから外部の企業を活用する場合も多いが、S社では内部の人材確保と育成が重要だとしてきた。

一方、今回同行しなかった日系のM社の場合は、エンジニアの給与が高いことから、現場の仕事は外部の業者を使っている。メンテナンス部門では、外部の人材や業者を使うと対応が遅くなるため、自社の要員が重要だと理解をしているが、日本人技術者の給与が高いため、必然的に外部の業者や技術者を使わざるを得ない。

この違いは、海外におけるエンジニアリング業界の欧米系と日系との考えの差によるものと思わる。 エンジニアリング産業が根付いている場合は、人材の採用から育成まで、基本的な姿勢が問われるのではないか、と思われる。

タイの人口構成の変化

(写真は、あるエンジニアリング会社の工場)

 

4.水産業界の外国人労働の必要性とタイの大学生の就職事情

タイの水産加工業界の集積地は、サムットサコン県マハチャイ地区が最大である。ここに進出する日系の水産加工業者には、大企業から中小企業まで多数ある。

2/21に同業界の定例の集まりがあったので参加した。

すでに、タイの水産加工業界では原料は海外からの輸入の比率が高い。近隣国では、ミャンマー、インドネシアからの輸入、サケはノルウエーなど北欧からの輸入で、給与水準にしては加工技術が比較的高いことから、タイで加工をしたのち、日本、北米、欧州に輸出されている。

たまたま、昨年は、原料のエビが不漁で、工場の稼働率が下がったため、多くの工場では新規採用を控え、退職者の補充もしないでしのいだ、というところが多かった。

現場では、比較的技術力の高い人材を定着させるため苦労をしている。そもそもタイ人のワーカーが集まらないことから、30万人から40万人もあると言われる様々な人材を募集している。

 

カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々

(写真は水産加工工場)

 

4.タイの大学の就職事情水産業界の外国人労働の必要性とタイの大学生の就職事情

タイの大学生に就職希望を聞く機会があった。

タイの有名大学であるチュラロンコン大学、タマサート大学の学生は、タイの大手企業が学生時代にインターンシップなどの職場経験をさせて、人物を見極めたうえで、採用をされている。卒業前に、すでに2年間の研修期間の予定まで説明したP上場企業もあるのである。途中の退職が少ない。

しかし、地方の大学ではこの機会が少ない。自ら求職活動をしながら、学生生活を送るものもある。現実に、採用されても、本人の適性に合わないと1-2年で、転職するものもある。たまたま、2月の時点では、バンコク市内で反政府運動のデモで経済活動が低迷していることから、一時的な失業率が上がっている。それでも、統計上は1%を割る状況である。

求職者は、労働省就職あっせん部門や、民間のリクルート会社に登録をして良い条件の会社を探している。新規卒業生も現場で数年もすると、転職の機会が増える。タイでは、自らの技術水準を高めるには転職しかない、と思っているふしがある。

定着率を高めるには、新規採用者、中途採用者の必要なポストの提示と、人材の人材育成計画を確立させる必要がある。このあたりに、タイの大手企業と、中堅以下の企業の定着率に差が出るものと思われる。

なお、民間志望か、公務員志望か、については、大学に入学する時点で決まっている。 最初に紹介したチュラロンコン大学やタマサート大学は国立大学で、卒業生の多くが役所や大手企業に入っている関係で、大学の指定性で採用する大手企業もあるほどである。

カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々

(バンコク郊外にある私立大学)

以 上