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タイ

作成年月日:2014年2月

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タイ国情報2014年1月

−反政府運動の影響と地方の日系企業のタイ進出について−

2/2の総選挙はいったん、終了した。しかし、国会を召集する議席定数にも満たないため、今回実施できない選挙区の立候補の受付から延期した投票日の設定など、選挙管理委員会の思惑道理に進むかどうか、不明である。

一方、反政府運動も全国の90%近い投票所で選挙が実施された以上、数では及ばないため、法的手段で選挙の無効を訴え、現政権の汚職問題を追及してインラック首相を引き摺り下ろしたい、ところである。

このような政治の低迷が続くと、新興国の株が売られるように、海外からの投資家が遠のくと思われるが、日本国内の事情もあって、地方の中小企業の海外進出先としてタイの任期はまだ高いものがある。

今月は、たまたま日本出張もあり、タイの内外から現状を見直す機会をえたため、一部は日本の中小企業、およびそれを支援する行政の動きなども紹介したい。

1. 反政府運動が引き起こした総選挙妨害と日系企業団体の事業の中止について

2. タイの中小企業と日本の地方の地座産業との交流について

3. タイの物流倉庫の高度化と自動化への流れについて

4. タイ進出の中小企業の人材募集について

 

1. 反政府運動が引き起こした総選挙妨害と日系企業団体の事業の中止について

2013年の11月から活発になった反政府運動では、活動家が、選挙を一斉に実施できないことを策し、2/2に実施された総選挙の投票所設置の妨害行動、また500選挙区のうち5%以上の選挙区で、立候補の受け付けを妨害した。

2/2の投票日には全国で93,952か所に投票所が設置され、89%の投票があったと選挙管理委員会が発表した。しかし、14県では、立候補の受付が無く、地方区の候補者が無いため、投票所は設置されなかった。第2の候補日を2/23に予定すると発表したが、それまでに14県の立候補の受付や選挙の実施ができるかどうか、不確かである。

今回の総選挙をボイコットした民主党と反政府運動家が、今回の選挙は無効であると憲法裁判所に訴える可能性もある。民主党の党首であるアビシット氏は、自らのFaceBookで投票をしないと宣言。その理由は、総選挙が憲法違反だと説明した。タイの法律では、選挙に投票をしないと、次回の選挙では立候補する権利が無いとされている。つまり、アビシット氏は、今後、国会議員になるつもりが無いと宣言をしたとも受け取れる。

無事総選挙にこぎつけたインラック政権であるが、1/21から首都圏と周辺県に非常事態宣言を発令したため、外国の大使館は旅行社にバンコクに来る場合の注意を喚起している。 多くの日系企業に外務省や大使館からの注意喚起が出たことにより、多くの行事が中止に追い込まれている。

たとえば、2013年12月に日本人会主催のラムウオン盆踊りが開催中止に追い込まれた。これ以外にも、バンコク日本人商工会議所(JCC)も、以下のような予告を出して、新年賀詞交換会を中止した。

「皆様にご案内させて頂いている1月24日の新年賀詞交歓会でございますが、開催を予定している会場がデモの行われている場所に近いことや、道路封鎖による移動の問題、不測の事態を考慮し、今回は中止とさせて頂く事となりました。」(JCC事務局)

JICA主催で予定された「日本センター事業説明会」(1月31日(金)も中止になった。その理由としては「バンコクにおける現下の情勢、特に実施予定場所付近でのデモとそれに伴う交通マヒを勘案し、説明会を中止させていただくことと致しました」との説明である。(JICA タイ事務所)  

2/2の総選挙がおおむね実施されたことにより、現政権は、選挙管理委員会と歩調を合わせ、開催できなかった選挙区においても立候補の受付、選挙の実施を行う予定であるが、反政府運動家と民主党は、憲法裁判所に総選挙の無効や、現政権の汚職を追及し、2008年のタクシン側の首相の解職や政党の解散を追及する可能性もある。

なお、反政府運動の中核に労働組合が参画しているのかどうか、ILOの専門家にヒアリングをしたが、労働組合はあまり参加していないとの説明であった。11月の立ち上げ時期から、野党であった民主党の国会議員が、総選挙で勝てないと見て、選挙によらない政権樹立を試みたともいえるのである。

写真は移民局も入居するタイ政府合同庁舎

(写真は、反政府運動が市内中心部の道路を閉鎖して、2/2現在も継続している様子)

 

2.タイの中小企業と日本の地場産業との交流について

1/12から1/18まで、タイ政府投資委員会BOIの幹部と日本に出張して、日本の中小企業との交流を促進できないかと各地で意見交換を行ってきた。

大阪府、しまね産業振興、JETRO名古屋、中小企業基盤整備機構、JETRO東京を訪問するとともに地方の中小企業の現場などを訪問した。

今回は日本の地方の県を代表して島根の事例を紹介する。

背景には、日本国内の成長があまり期待できないことと、新興国への進出に消極的な中小企業を支援したいという地方自治体の意向がある。同時に、産業を支える若手が地方では集まらないため、技能の伝承、市場開拓といった面もある。

地方の中小企業では国際化を担う人材もいないため、むしろ海外の中小企業と提携することによって、労務管理、人事管理は現地に任せて、日本側は技術と営業開拓をしたい、という意向もある。

特に島根県では、現在、伝統的な鋳物技術が高度化して、一部には航空機産業や医療機器の部品にも参入するグループがある。行政としても、このような前向きな市場開拓を支援して、多くの中小企業のお手本にしたいのである。

また、地方にある大学の活用も考えられる。そのように産官学が一体となって初めて、中小企業の支援ができるのである。

タイ側も、日本の地方に育まれた技術をタイに導入できるのであれば好都合である。タイでは、今までの労働集約型産業から、技術、知識集約型産業を誘致したいということから、積極的な支援を行いたい意向がある。

そのため、BOIとしてはタイへの進出を希望する中小企業なども積極的に開拓をしているのである。

リサイクル業の工場

(写真は、タイ政府投資委員会の一行が、日本の中小企業の工場を視察する様子)

 

3. タイの物流倉庫の高度化と自動化への流れについて

タイの産業の高度化はどの程度進んでいるのだろうか?物流関連の2社を訪問した際の取材内容から、紹介する。

自動倉庫を推進するD社の事例である。取材した担当部長は在タイ18年になり、当時と現在との違いを説明いただいた。

かつては、タイの倉庫と言えば、人海戦術が主体で、自動倉庫にしませんかと提案してもどの会社からも見向きもされなかった。しかし、1997年の経済危機から少しづつ変わり、2013年1月から最低賃金が地方でも1日300THB(約960円程度)まであがると、倉庫のような単純作業にはタイ人が集まらない。また、タイの労働法で、一人に担がせる荷物の重量が20kg程度しかできないことなど、自動倉庫への需要が伸びている。

冷蔵倉庫を運営するK社の事例である。 タイの冷蔵設備業者は、設置はしても後々のメンテナンスを受け持ってくれないため、自社でエンジニアリング要員を確保せざるを得ない。ところが、冷蔵設備の故障を自前で治せる人材を確保するのは容易でない。 そのため、冷凍倉庫業界に参入するには、この部門の人材をどのように確保するかに関する苦労がある。 設備自体の新設は、すでに日系企業の進出があっても、各社ともメンテナンスまで面倒を見る、という体制にはないようだ。この部門が強い企業なら、タイの市場に参入できる可能性はある。

 

タイの人口構成の変化

(写真は、バンコク郊外 物流倉庫群が並ぶ中にある冷蔵倉庫)

 

4.タイ進出の中小企業の人材募集について

タイに進出する日系中小企業では人材確保が企業存続の条件であることから、苦労をしながら様々な人材を募集している。スタッフ系とワーカー系では募集方法が異なるが、今回は、新しく進出する企業の募集方法の一例を紹介したい。

大企業では、専門のリクルート人材もおいているため、その部門の経験者により大学や専門学校におけるJOB FAIRへの参加や専門分野の先生の紹介など、日本と似た方法が取られている。

中小企業の場合は、知人の紹介によるもの、30社あまりあると言われる日系のリクルート会社を利用するものなどあるが、大手の募集条件と比較され、求職者が中小企業には集まらない。

そこで、タイの地場企業が行っているように、知人や友人に照会を依頼、また、自社のwebsiteがある場合はそれを使うなどしている。最近は、求職者がNET上での人材募集に応募する事例も増えている。

一方、ワーカー系は、地方まで求人に出かける余裕がないため、会社の前に掲示板を出して求人の募集を毎日行うなどしているが、最近はタイ人も3K(きつい、厳しい、汚い)仕事にはつかないため、タイに300万人もいるといわれるミャンマー人、これよりも少ないがカンボジア人などが建設現場などで働くケースが多い。

では、最後に新しく進出する日系の中小企業はどうするべきか。規模、業種、工場の立地にもよるが、基本はHRのマネジャーを早く確保すること。

そのマネジャーを中心に、タイの実情に合った方法を考えるべきである。 もし、日本本社のホームページがあれば、早々にタイの子会社のホームページを作成して、自ら求人をしていることを説明するとともに、リクルート広告会社とも連携した求人広告を打ち出すべきだろう。もちろん、新聞広告なども利用できるが、大手企業の求人と比較される以上、独自の方法を生みだすことが重要である。

カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々

(写真は,バンコクの郊外にあるタマサート大学のシリントーン工科大学)

 

以 上