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タイ

作成年月日:2014年1月

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タイ国情報2013年12月

タイの総選挙は2/2実施なるか、政治が混迷すると経済も低迷

政治の混乱を除けば、タイの経済は2015年のアセアン経済共同体AECへ向かっての改革、革新の年であります。しかし、反政府運動の動きを受けて現政権は不信任案を否決して、国会を解散しました。しかし、反政府軍は、あくまでも現政権の退陣と国民評議会をつくり政治改革を総選挙までに実施すべきだとの主張をし、12月の中でも大きな集会が毎週のように続きました。今月は標記の課題とともに、周辺国で政治が安定するラオスで政府と日本大使館による官民合同会議も開催されたため、周辺国の日系企業の動きも紹介します。これは、タイ経済の鏡のような動きでもあります。AEC2015に向けてのタイ国とその周辺国についても今後、紹介をしてゆきます。

1.タイの反政府運動により国内消費は低迷に

2. 反政府に運動参加する中間層は工場労働者なのか

3. 労働集約産業における最低賃金引き上げの影響と経営効率化

4. (参考)タイのリスクを避けてラオスに進出する日系企業

1.タイの反政府運動は国内消費低迷に、

12月は11月から続いた反政府運動が激化した。12月初旬からインラック首相の退陣を迫り、12/5の国王誕生日にはいったん小休止をした。しかし、12/6にインラック首相は、国会での不信任案を否決した後で国会を解散、2014.2.2の総選挙を国王に進言して裁可を得た。従来は、国王の裁可を得た案件には国民は従うのが通常であるが、反政府運動はあくまでも現政権の退陣と、政治改革をせずに総選挙をするのは意味が無い、として立候補受付を阻止する動きまで行っている。

国内の政局が混乱する中で、自動車販売、二輪販売の状況を見ると11月以降は大幅に低迷している。歳末商戦の主役となる大規模な商業集積の周辺で大きなデモを開催するため、歳末商戦も盛り上がらなかった。

反政府デモで死者が出た事件もあって各国大使館はタイへの旅行、出張の自粛までとならないが、都心に入るには要注意をと呼びかけたこともあり、ホテル業界では、キャンセルがでてきた。

反政府の主導者は、元民主党の幹事長を務めたステープ氏で、2/2総選挙のボイコットも民主党が賛同をしている。民主党の支持者が多い、南部の選挙区の一部では1月明けにあった小選挙区の立候補の受付ができていない。選挙委員会では、一部の受付を警察や軍部の基地で行う考えもある。

では、反政府運動の主張を整理すると次の3点。1は、インラック首相の退陣、2は国民評議会の設置、3は政治改革である。

 

写真は移民局も入居するタイ政府合同庁舎

(写真は、12/22の反政府集会の様子)

 

2.反政府に運動参加する理由、その背景は世界共通の課題か

反政府運動の参加者は、タイの英字紙Bangkok Post紙によると、今までの赤シャツタイのように地方からの農民ではなく、バンコク都内に住む学生、サラリーマン、労働組合員、公務員が多いと言われる。また、民主党の支持基盤である南部出身者が多い。したがって、工場労働者が東北部、北部出身者が多い工場では影響が少ない。

隣国、カンボジアでは縫製産業の労働組合が背景になって昨年の総選挙から年末まで反政府、反フンセンの運動になったように、タイでは工場労働者が反政府運動の中核ではない。

タイの反政府運動に参加しているタイ人に12/26に会って、話を伺う機会があった。

ご本人はバンコク在住で、自らも事業を経営しており同じ業界仲間も多い、ようだ。 どうして反政府運動に参加するのか伺った。(敬称略)

@ タクシンは法律を変え、タイ国自身を売る悪いやつである。(携帯電話会社の売却)

A タクシンは、国王を軽視して自らが大統領になろうとした。恩赦法では、政治犯だけではなく、汚職犯や国王など不敬罪までも恩赦の対象にしている。

B 現政権は、自分の権力をかさに着て、国家財政を危うくする(米買い上げによる財政赤字)

C 選挙は汚職、買収のせいで現在の政権が勝ったので、本当の民意を反映していない。

D 反政府主導のステープ氏も信頼できないが、反政府、反タクシンという面では一致する。

E もし、インラック首相が退任しても、かってのアナン首相のように、無名だが清廉潔白な方がでてくる(これは希望的観測)

F (正確ではないが)軍事クーデターも容認できる、という意識がある

G 次回の総選挙があったとしてもステープ氏には投票をしない、という支持者である。

新聞報道を見ても、反政府の主張の一部、またはほとんどが上記のとおりであるが、これをデモという手法で、しかも総選挙の阻止で反政府側がいう主張が通るのかどうか、1月初旬の時点では先が見えない。

(参考意見) これは、米国や欧州でも広がる民主主義が終わった、という運動にも類似をしている。代議制民主主義の形骸化への反対とも共通するものがある。たとえば、小選挙区といっても、第1党になればその代表になるのであって、英国でも労働党や保守党が過半数を取らないでも政権が取れる。そのような場合、少数党の意見は国政には反映ができていない。

さらに、2008年以降の不景気が広がって若年層を含めて雇用状況が著しく悪化した米国のオキュパイ運動(政治軸でいう左側)のように、資本主義と代議制民主主義の破たんを告発する一大運動に類似しているとも見えるのである。左側だけではなく、世界金融危機と政府への対応を批判したテイーパーテイ運動が右派の代表である連邦共和党の中にも広がり、「小さな政府」ポピュリズムが2013年末の政府閉鎖危機にまで至ったのである。

タイの反政府運動がクーデター(王政を倒すのではなく、現政権の交代を迫るもの)を容認するように、代議制民主主義で多数をとればすべて良い、という民主主義に対する抵抗が、反民主主義に近いものを求めるというのも皮肉でもあり、また先進国に類似した動きかもしれない。

リサイクル業の工場

(写真は、12/22の別の場所に反政府運動のデモ隊が集まっている様子)

 

3. 労働集約産業の最低賃金の引き上げの影響と経営効率化

2013.1.1から地方でも最低賃金が300バーツに引き上げられたことによって様々な影響ができてきた。2012年末からこの最低賃金引き上げの影響を受けた工場閉鎖の事例は、OVTAのタイ情報でも紹介をしてきたが、間接的に影響を受けた業界の幹部に取材したので、それをここで紹介する。

お客様は,OEMで家電製品をタイでされていたW社である。同社では、米国、東欧、東南アジアで工場生産を行い、ある製品では年間100万台を販売されていた。同社では中国での生産を行ってなかったので、2011年におこったタイ中部の洪水や中国国内での反日系企業の影響は受けなかったが、最低賃金の引き上げはまともに受けて、製品の生産を東欧など海外に移転。工場は12/31に閉鎖して、従業員1000名余りは解雇した。

間接的な影響というのは、その家電製品に付属するものであるが、年間100万セットの注文が12/31とともに無くなったのである。

一方、経営効率化についてはまだまだ改善の余地がある。たとえば、労働集約産業の一部である、港湾労働であるが、バンコク港を視察された日系企業の幹部に取材すると、10数年前の港湾労働の現場に近い、とのことである。

1台のコンテナを移動させるのに複数台を動かさないとできないという作業工程を見て、日本ではそれだけの手間が欠けることが配置できない、という実情を説明された、つまり、労働集約産業でもますます経営効率化が可能であるが、世界の中でコスト競争をする家電業界では、立地によって、地方の工場閉鎖もあるのである。

 

タイの人口構成の変化

(写真は専門家から見れば、コンテナの置き方でも省力化は可能である、と指摘された内陸港)

 

4.(参考)タイのリスクを避けてラオスに進出する日系企業

12/20にラオス計画投資省を訪問した。日系企業進出が2010年以降増加している背景を伺った。

専門家によると、直接的な理由は、タイの最低賃金の引き上げ、2011年の洪水や政治の混乱が続いて、タイでの工場拡大をするよりは、周辺国で補完ができる地区としてラオスに注目した企業が多い。たとえば、アユタヤで洪水に被災したニコンは同地でも再興したが、一部の製造工程をラオスに移管した。それ以外にも、ラオス南部に進出する企業の多くは、一度はタイでの進出を検討されたがラオスの南部を考えると、タイ東北部との差があまりない、としてラオスに進出を決めた京都の呉服業もある。同社は、すでに中国にも拠点を持っているが、中国プラス1として、東南アジアを考えた時に、考えてもいなかったラオスが出てきた、との説明であった。

ミャンマーとラオスに進出を前提で予備調査を行ってきたD社の顧問に伺うと、大企業ではミャンマーに出てもビジネスチャンスがあり、体力も続くが、中小企業にはミャンマーの進出はかなり先になるだろう。タイは良いのは分かるが、コスト面、リスク面で、政治的に安定しているラオスなどが投資先として見直した、との報告も受けた。

前回紹介したように、労働法など2015年のアセアン経済共同体がスタートする前に整備されているが、これが整備されるとラオスにも進出する企業が増える。 現地では、ビエンチャン周辺に4-5か所の工業団地、北部はタイやミャンマー国境に近いところに2か所、南部ではサバナケットから南、パクセー周辺にも工業団地の整備をする地場のグループがあり、タイから脱出する企業の受け皿になる可能性も高い。

 

カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々

(写真は、ビエンチャン郊外の整備が進む台湾系の工業団地VITA PARK、)

 

以 上