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タイ

作成年月日:2013年10月

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タイ国情報2013年9月

−ビザ・労働許可、リサイクル業と労務管理、タイの労働市場の動向−

今月は標記の3つの課題とともに、補足として日本から東南アジアに進出した日系企業が周辺国に技術移転を行う場合の課題の一例を紹介する。

1.ビジネスビザ、労働許可の延長について

2.リサイクル業と労務管理について

3.タイの労働市場の動向について

4.(参考)タイ人を周辺国に派遣する条件(日系企業の間接型、技術移転)

1.タイのビジネスビザ、労働許可の取得について

1)タイで外国人がビジネスをするには、3つの関門がある。

@ビザ   A労働許可  B外国人職業規制法

2)一般的な日系企業に勤務する日本人のビサ、労働許可の取得について説明する。

*タイ政府投資委員会BOIの投資奨励を受けない通常のビジネスでタイに入国する前に、日本にあるタイ大使館、領事館などで、ビジネスビザ(O-visa)を取得。

*タイに到着後、勤務する会社の証明書類を添えて、労働省雇用局(地方の場合は労働局)に申請。 *タイ人しかできない理容師、美容師などは職業の規制がある。

(例)企業でも経理のマネジャーなどは、経理・会計分野の勉強を積んで、タイ人として経理の責任者である資格が必要。日本人は経理マネジャーになれない。

3)日本とタイの違いは何か、というと日本ではビザ取得は即、労働許可と同じ。しかし、タイでは、ビジネスビザで入国しても、労働許可を取る必要がある。

4)外国人職業規制法の関係や、企業として外国企業が制限を受ける場合は、タイ資本を51%にしたり、有資格のタイ人を採用しても実務が日本人という会社もある。

5)タイに長く住んで、夫人がタイ人の場合で、永住すると決めてタイ国籍を取得した方もある。その場合は、生まれは日本であっても、タイ人になったので、まったく制約を受けない。

6)タイの日本人会が2013年9月に100周年を迎えた。その記念誌の記事を読むと、明治時代からタイに来た日本人が従事した職業が、農民や鉱山夫であった当時から時代の変遷を経て、貿易や製造業、また、その製造業を取り巻く各種サービス業など、様々な産業・職業に日本人が従事してきたことが分かる。

7)200年前に大陸から渡ってきた中国人の多くがタイに帰化したなかで、今、タイに在住する多くの日本人が現地に帰化する人は多くないのである。

8)ビザ、労働許可は駐在員としての制約であって、タイ国に永住するとその必要がない。移住してきた多くの中国人のようにしタイに帰化した場合は、土地取得をはじめ、多くの投資形態がとれるのである。そこまで考えてタイに来訪する方は少ない。タイはそのような移住者も受け入れる歴史のある国である。

 

写真は移民局も入居するタイ政府合同庁舎

(写真は移民局も入居するタイ政府合同庁舎)【パトムタニ県】

 

2. 産業廃棄物処理/リサイクル業と労務管理について(日系企業のオーナーを取材して)

タイでモノ作りが盛んになると、様々なロス、不良品が出てくる。これを回収してリサイクルするビジネスが注目をされてきた。3Kの代表である。

タイ政府投資委員会BOIが認定する産業廃棄物処理はリサイクル業である。BOI認定を受けず、中華系タイ人が多く行っている事業でもある。

日本からこの業界に進出したいというM社のオーナーに同行して、数か所、同業者を訪問した。同業者が多数進出すると、自分たちの業務に支障をきたすと言って遠慮されたD社、O社もあるが、I社とM社は、快く面談を受け入れていただいた。

10年前、商社出身でタイでのビジネス経験が無いS社長は、タイで市場調査をする中で、だれも進出していなかったリサイクル業に進出を決断。 (同氏の説明)

*10年前当時は、日系企業を訪問しても、廃材の提供はなかった。しかし、機械を2台設置して何とか始めると、関連業界から仕事を回してもらえるようになった。受注が増えるのはありがたいが、ワーカーの確保と、ワーカーの不正をどう防止するか、10年間はその戦いであった。」

*小学校卒業程度の従業員もいて、理屈では納得しない。目の前にニンジンをぶら下げて仕事を与えるが、なかには会社の仕事と同じ仕事を奥様の名前で始めて、受注先の一部を横取りしたりする社員もいる。

*客先から預かった100kgの素材を100%回収しても、リサイクルして50kgになった場合もある。途中で、どこか他社に横流しをした社員もいる。」

*これら不正を行った社員は解雇、または諭旨解雇をするが、警備とグルになって素材を持ち出した輩もいる。

*ワーカーだけではない。役所との戦いもある。売り上げ圧縮、利益圧縮の代表とみられて、税務当局は決算書を見もせずに税金はいくらかと、数字を示してくる場合もある。

*こられのワーカーの働きぶりを見ると、タイ社会は階層社会で、下層のタイ人はいくら努力しても上層部の社会に入れない。上層部は、高等教育や外国留学など、様々な手段で富を集めることができる。この上下2つの階層の対立が数年前の、赤シャツ、黄シャツの対立や2006年9月タクシン首相の追い出しを図ったクーデターまで引き起こしたのではないか。

リサイクル業の工場

(写真は、リサイクル業の工場)(サムットプラカン県)

 

 

3. タイの労働市場の動向について

まず、タイの人口構成を考えねばならない。日本の10-20年遅れだと考えればよい。今後10-20年は、労働人口が増え、若年者が減少。一方、高齢者が増加する。

タイ政府が考える政策は、労働市場に出てくる数を増やそうとしている。

@定年延長で高齢者勤務体制を整える。

A女性の社会進出を高める。

Bハンデイキャップの方の社会復帰。

正式には、タイ政府は、失業率が1%未満と発表しているが、労働人口は不足するとは見ていない。労働省は、ラオス、カンボジア、ミャンマーの労働者を正式ルートで輸入する覚書に従って、勤務する外国人には正式な労働許可を与えているのである。

では、何が、労働力不足なのか?

たとえば、製造業が求める大卒の労働者というと工学系が中心であるが、現在のタイの大学では社会科学系が多く、工学系のエンジニアはそもそも不足をしている。その不足を補うため、職業訓練校など増やしているが、企業の需要と、学校からの供給が一致しないのである。

また、地域的問題もある。全国一律最低賃金が決まったことから、地方から出稼ぎできた若年労働者などは、地方に職場があれば、都会には出てこない。工場に働くワーカーも田舎でそれなりの仕事が見つかれば、田舎から遠くにあるアパートを借りて、工場で勤務するなら、生活費の安い田舎で多少、給与が少なくても働くのである。

従って、労働者過剰だとか、労働者不足であるといっても、地域特性、また時期も考えねばならない。農繁期には、田舎でも、1日300バーツでは人があつまらないため、500バーツ以上支給する農園もある。 たまたま、先月、チョンブリ県のSグループで人員整理を行って5000名もの労働者が解雇された。これらの一部は田舎に帰るが、他のワーカーは同じ地区にある工場に職を求めることになる。 一部は、このような失業者の奪い合いにもなり、一部には余ってしまうこともある。 タイの職業紹介制度では、公的機関だけではなく、労働者派遣業など様々な職業紹介のルートがある。大手で大量にワーカーを探す場合は、このような人材派遣業者を使うことも多い。 この派遣する労働者にはタイ人だけではなく、カンボジア人、ミャンマー人が混じることもあるのである。労働市場の細分化することで、実態が見えてくるのである。

タイの人口構成の変化

(写真は、労働省労働市場調査局の資料、タイの人口構成の変化を知る1980-2000-2020-2040) 期だと思われる。

 

 

4.(参考)タイ人を周辺国に派遣する条件(日系企業の間接型、技術移転)

1)ラオスの日系企業

タイに進出して歴史の長い縫製産業のY社は、人件費の高騰と、従業員確保の難しさから、10年前にラオスに子会社を設立。タイ人の主任やスーパーバイザーSVなど縫製の経験者は言葉が通じるとしてラオスのワーカーを指導してきた。 当初は、日本人から見て、タイ人がラオス人を上手に指導をしてきたと思っていたが、両国の関係、また両国民の相手国に対する見方に問題があることが分かってきた。タイ人がラオス人を見下したことや、ラオス人の自負心を傷つけたりした事から工場運営がスムースに行かなくなった。そこで、ラオス人も育ってきたことから、タイ人の主任、SVの赴任の期間が満了してから、ラオス人だけで工場を運営するようになった。もちろん経営者の日本人が常駐するが、日常の業務がラオス人だけになった。

2)カンボジアの日系企業

タイの日系でも大手のM社は、2012年からカンボジアの工業団地に進出。現在、9000名近くの従業員を抱えるほどになった。 立ち上げ当初から、タイの工場がマザー工場として、タイ人が中心になって人事総務から工場運営を指導している。もちろん、日系企業であるため、日本人の経営幹部が常駐するが、タイ人のベテランが各部門を指導している。 細かな点は、出張ベースでタイからカンボジアにタイ人が出かけて、現場を指導している。 設備主体の工場でない限り、現場の技術移転は毎日が勝負である。何か問題が起こればどう対処するか、考える力をつけなければならない。カンボジア人の優秀な頭脳を採用しても、現場の作業員には現地語も読み書きができない従業員もいた。 そこで、時間内に現地語の読み書きから指導をして、現場で作業指示書が理解できる程度まで引き上げているのが現状である。

3)タイ、プラス1というアセアンへの企業進出

前述のようにそれぞれの置かれた歴史背景から識字率の水準の引き上げを政府に頼ってはできない。民間企業としてできるところをやっている。しかし、M会社だからできたともいえるので、中小企業が進出して、現場の従業員まで国語の教育をする必要がある国だと理解をするには時間がかかるのである。 言い換えると、日本から、カンボジアやラオスに直接投資をして、現地の方を指導し技術移転を考えるには、大手ならまだしも中小企業では大変である。そのためにも、タイを経由して次に周辺国に展開するのが好ましい海外投資ではないだろうか。この点の人材教育の課題を、東京から見えるのだろうか?

 

カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々

(写真は、カンボジアの休みで首都らバスで田舎に帰省する人々)

 

以 上