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タイ

作成年月日:2013年9月

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タイ国情報2013年8月

−タイ日系企業の賃金決定、タイ進出の要因、雇用管理と企業運営−

タイ進出の要因、進出後の賃金決定および雇用確保と企業収益の3つの観点から報告をします。特に、日系企業の賃金決定の上で、大きな要因となる同業他社の賃金決定で参考になる資料の一つがバンコク日本人商工会議所JCCの賃金調査報告です。

今回は、その概要を紹介するとともに、電子部品業界のS社がタイ進出を決定した要因を伺いましたので紹介します。

一方、タイ進出の歴史が長い会社で、ベトナムにもグループ会社を持つニット業界の経営者の考え方を紹介します。海外進出が長い会社の取るべき戦略と、新規進出を考える企業との違いを理解いただけると思います。

以下の3つの課題とともに、8月上旬に日本に出張をして面談をした自動車業界の海外進出の状況も参考に紹介をします。

1.2013年賃金調査発表会(8/1)

2. 電子部品業界のタイ進出を決める要因について

3. ニット産業の雇用と受注について

4. (参考)自動車部品業界の海外展開

1.タイの日系企業の賃金決定について(8/1JCC賃金調査説明会)

今回も、日本大使館の金子書記官の説明で、会員企業1400社余りの40%弱の回答から取りまとめた賃金、賞与および福利厚生の調査結果を伺え知ることができた。

たとえば、賃上げに関する実施時期について2012年は4月実施が多かった。次に多いのは2012年1月である。賃上げ率については、細かな精査が必要だが、傾向だけを見ると次の通り。

2013年の賃上げについては、製造業の47.7%が前年よりも引き下げ、26.1%が前年よりも引き上げるとし、その引き上げ率は5.5%である。具体的な業界では、電気電子業界および鉄鋼非鉄業界では前年よりも引き上げるという会社が多かった。 非製造業では、42.1%が前年よりも引き上げ、32.2%が前年よりも引き上げ率が低い。

 

2013

2012

2011

2010

製造業

5.5

7.8

5.3

5.0

非製造業

6.0

5.9

5.0

4.5

(注)バンコク日本人商工会議所の調査を継続して使用している会社では、業種、規模および実在者の設定が細かに紹介されているため、比較するには参考になる。しかし、職務内容、スタッフの人数など精査しないで、使用すると実際とは異なった事例を見ることになる。この点の取り扱い方に、注意が必要である。JCCのwebsiteから、一部の資料が無料でダウンロードできるので、興味がある方は利用されると良いでしょう。www.jcc.or.th

H25.8.1 JCC労働セミナー金子書記官

8/1 JCC労働セミナー 講師:金子書記官

2. ある電子部品業界のタイ進出を決める要因について

海外進出の要因には、市場開拓、輸出代替、原料調達、労働者の確保などいくつかの要因がある。特に、自動車部品業界の2次、3次の協力業者が多く進出しているのは、日本国内の市場拡大が難しい反面、東南アジアでの市場拡大が見込めるからである。

今回、紹介するS社では、従来はタイ人を日本国内では研修生という名目で受け入れ、国内の労働者確保の補完機能としてきた。2009年から研修生制度を実施して、卒業生が累積で20名を超えるまでになった際に、東南アジアに進出を考えるには、その卒業生を生かせるのではないか、との意見があった。日本で研修生として受け入れた際に、日本語の研修、自社の製造工程など電子部品業界の最低限の知識をすでに習得しているため、新規立ち上げ時には新しく受け入れるタイ人のリーダーとなる役目も期待された。

現実に、工場を立ちあげ、卒業生に募集をかけたところ80%以上を超える元研修生が入社してくれた。今では、中核の社員となって働いている。

かつて、研修生を受け入れることに現場で生じた抵抗が、今ではタイの現場ではなくてはならない存在になっていることから、今後とも研修生を受け入れるべきだ、との意見も上がっている。管理部門の日本人責任者を取材すると、タイ進出を決めた要因の中で、卒業生が20名もいることが大きかった、とのことである。

中小工場が入居するパトムタニ県の貸工場群

中小工場が入居するパトムタニ県の貸工場群

3. 日系のニット業界の雇用と受注について

ニット業界のある中小企業のオーナーと話をしていると、タイとベトナムにある数か所の工場では、無理に労働者を増やさない、という。その理由は、労働者や機械設備が多くて稼働率を下げると赤字になるという先入観が働いて、無理をして儲からない注文も受ける。ところが、ある程度絞り込んだ従業員だと、注文の選別ができる、という。特にベトナムの工場ではファッション性の高い製品に絞り込んでいるという。

20年以上前のイタリアの話である。現在、10億の売り上げで、1億の利益があると、イタリア人は次の戦略をどう考えるか?日本人の多くは、売り上げを15億から20億に挙げて、利益も2億にと考える。イタリア人は、「売り上げが同じでも2億の利益にできないか」、または「売り上げを8億に下げても利益を1億確保するにはどうするか」を考えるのだそうだ。  従来の売り上げ至上主義から、利益重視に経営姿勢が変わっている状況をみると、他の業界でも売り上げ至上主義から、「自社の得意の分野にどう絞り込めるか」や「そのための必要な人材は何か」を考えるべき時期だと思われる。

 

 

4.(参考)自動車部品業界の海外展開

8/7-8/8に東京の日本自動車工業会や日本自動車部品工業会を訪問した。

自動車部品業界の会員といっても自動車メーカーから1次の協力業者が多く、主要各社の海外展開とともに部品会社も海外に展開をしている。工業会の主要メンバーも1980年台から急速に海外展開を進めているため、すでに半数が中国や東南アジアにも拠点を持っている。

タイの自動車メーカーもピックアップトラックという大きな拠点とともに、タイ政府はエコカーの生産拠点という構想を持っている。

そのため、最初に販売を決定した日産のマーチなどエコカー制度の導入が進んだ2006年以降、部品の現地調達の拡大とともに、従来の2次協力会社から3次、4次の中小企業が多くタイに進出をしているのが現状である。

タイ政府投資委員会BOIの投資件数を見ても、投資件数は多いが投資額が少ないのはそれだけ中小企業の進出が多いことを物語っている。

しかし、このクラスの中小企業となると、海外展開へのノウハウも人材も少ない場合が多く、先に述べたようにタイの研修生が数十名も帰国しており、タイの工場立ち上げを手助けするような事例は非常に珍しいと思われる。

そこで、タイ政府工業省と日本の中小機構などは相互の技術と管理能力が協力すれば中小企業でも海外で事業がスタートできる、という意味で7月に提携の協定を結んだほどである。具体的な、成果が出るのはまだ先になると思われるが、政府間の協定を内容があるものにするには、民間の知恵が必要だと思われる。関心がある方は、東京や大阪にある中小機構の事務所に照会されたい。

自動車部品業界の海外展開

 

(表)主要日系5社のエコカー生産計画

(表)主要日系5社のエコカー生産計画

資料出所 鹿児島短期大学 山本肇講師(2013.5.19BOIセミナー資料から)

 

以 上