各国・地域情報

タイ

作成年月日:2013年7月

海外情報プラス

タイ国情報2013年6月

−エンジニアリング会社の女性活用と日本の労働力不足業界の対応策について−

日本の厚生労働省では村木事務次官が就任され、事務次官が記者に述べた内容から、今後、日本の中央官庁ではもっと女性の登用を図りたい、との意向が伺えます。

たまたま、6月はタイの日系企業に勤務するタイ人社員の意識調査の実施についての相談があり、タイと日本のエンジニアリング会社が生産委託を準備する中で、双方の女性社員の活用について取材する機会がありました。また、日本のサービス業界から、スタッフの高齢化や求人難の現状から、タイを含むアセアンからの人材派遣の可能性についての問い合わせを受けています。

そのようなことから、日本とタイ、アセアンの人材交流が今後深まる可能性を考える機会がありました。

そこで、特に今月は次の3つの課題を紹介します。なお、カンボジアンにおいて5月に労働争議が発生したニュースをつかみ、6月になって現地の関係者から事情を伺う機会があったので、タイの情報ではありませんが参考のため報告をします。

1. 日系企業のタイ人従業員の意識調査、実施中

2. タイと日本のエンジニアリング会社の人材育成(女性の活用)について

3. 日本のサービス業界の労働力(人手)不足と海外からの人材派遣

4. (参考) カンボジアで発生した労働争議について

 

1.日系企業のタイ人従業員の意識調査、実施中

横浜国立大学のある研究室では、文部科学省の支援を得て、海外で働く日本人と海外にある日系企業ではたらくタイ人の意識調査を2009年から実施されている。

調査の内容を伺うと、仕事上の指示や手順など100項目近い質問があります。 たとえば、日本人同士での業務上の食い違いがあった場合やタイ人が日本人と業務上で食い違いがあった場合等、タイ人と日本人の考え方の相違点を浮かび上がらせて今後の人材育成の参考にするもの。リーダーシップの違いを、例えば、タイ人について、カリスマ的なリーダーの下で働く場合の意識や、集団行動の効果を強調するリーダーの下で働く場合の意識を調査している。また、男女とも同等のキャリア向上の機会を与えられているか、などなど、人材育成の在り方を考えるヒントも紹介されている。

在タイの日系企業にとっては、日常の業務が数少ない日本人マネジャーでこなされている場合が多く、現地への権限移譲が進んでいない場合もある。

今回、バンコク日本人商工会議所を通じて、このような調査を実施されていることを承知したが、在タイ日系企業の人材育成に関する調査が早くまとめられて、報告を伺う機会があればと考えている。

 

2. タイと日本のエンジニアリング会社の人材育成(女性の活用)について

安倍政権の、半年の成果が問われる参議院選挙が行われているが、第3の矢として提唱された「成長戦略」には2つの側面がある。 1つは産業の競争力強化であり、2つ目は人材育成の課題である。この点は企業経営でも同様で、人材育成の課題を挙げてゆくと、その企業の課題も見えてくるのである。

一方、タイのインラック首相が、6月30日の内閣改造で国防相を兼務されることになった。新聞情報によると軍部でも女性首相の能力評価は高い。

さて、日本のエンジニアリング会社がタイに生産委託を準備する中で、双方の女性社員の活用について取材する機会があった。ご承知の通り日本でもエンジニアリング会社では、女性のエンジニアが少ない、という背景がある。今回紹介するタイの上場会社PATKOL PLCでは、1100名社員のうち、エンジニアが300名もいる。そのうち、女性が10-15%との説明であった。一方、日系のS社は230名の社員の80%がエンジニアであるが、女性はタイの半分程度との説明があった。PATKOL社でも、経理や人事ではすでにDIRECTORに女性がいるが、エンジニア部門では副部長がいる程度。

日本側のS社からP社にタイの女性エンジニアの比率が高い理由の質問があった、その答えは、タイ人の女性は細やかな面まで行き届くため、チームを組むには男性だけよりも女性が多いほうが良い、との説明であった。S社でも、今後は女性の活用を増やしたい、との幹部の意向が強い。 タイ進出の日系企業を取材すると、オーナーの親族以外でも女性の経営幹部がいる会社があるように、女性の社会進出はタイに見習うべきかもしれない。

 

人材養成1人材養成2

 

 

3. 日本のサービス業界の労働力(人手)不足と海外からの人材派遣

入国管理法では、外国人が日本に在留して労働を提供するには、一定の在留資格を取得する必要がある。その在留資格のない外国人は就労することはできないが、現場では労働者不足に対して外国人の派遣を希望する事例がある。特に、日本の医療業界、介護業界では看護婦、介護士の不足が叫ばれ、日本のアセアンの経済連携協定でも外国人の活用も進められている。しかし、現実としては日本の看護士の資格試験に合格する外国人の数は少ない。

今回、日本のゴルフ場業界から、タイ、カンボジア、ミャンマー人をCADDYとして派遣できないか、との問い合わせをうけた。そこで、タイ人の人材派遣会社、ミャンマー人の人材を海外に派遣する会社に照会をした。海外に人材を送り出す経験がある派遣会社からすれば、需要があれば送りだしたい。

まず、日本の入管法の規制が受け入れ側がクリアできるのか、である。次に、現地の課題もある。パスポートやVISA取得費用は誰が負担するのか?それとともに基礎的な語学教育、実務研修の期間中の滞在費、渡航費の費用を採用側が負担できるのか?

また、後日、本人から事前の研修費を給与から返済を受けるとしても、受け入れ人数が多い場合、日本側が一時立替額が相当な金額になる。現地ではとても負担できないのである。

職種により、タイではカンボジア人、ミャンマー人もCADDYとして働けるのであれば、 周辺国のワーカーはタイ以外の海外で働くのかどうか、である。日本まで出稼ぎをするタイ人やミャンマー人がいるのかどうか、受け入れ側の労働条件などの説明をして、本人の意思確認が必要になる。

このような課題をこなしながら外国人を受け入れたい企業・団体としての関門は、日本の法務省の入国管理である。平成22年に入管法が一部改正されたが、外国人が自由に日本で働ける規制緩和にはなっていない。この点は、日本側に法務省とも連絡をいただきながら、課題を解決する必要がある、と回答をした次第である。

日本の少子高齢化に伴う、現場の人材不足を解決するにはまだ時間がかかると思われる。

(参考) http://www.jil.go.jp/rodoqa/11_jakunen/11-Q04.html

 

タイのゴルフ場

(タイのゴルフ場)

 

4.(参考)カンボジアで発生した労働争議について

(新聞情報)

5月の中旬、Bangkok Post紙でも現地の衣料品工場での労働運動の発生が紹介されていた。

5/28付け S銀行から提供されたのカンボジア情報(日本語)

・カンボジア 首都プノンペンの西側に位置するコンポンスプー州にある衣料品工場で5月27日、賃金をめぐりストライキを起こした従業員約3000人が警官隊と衝突し、少なくとも23人が負傷。従業員らが明らかにした。同工場の自由労働組合(FTU)の組合長、サン・バニー氏によると、従業員らは5月21日以降、ストライキを繰り返していた

(現地の縫製業のオーナーC氏)

C氏は元USAID(米国の支援団体、日本のJICAと類似)に勤務して、現地の縫製業界の生産性向上の活躍した青年である。USAIDを退職後、自営で縫製工場を始めた一人。もともとが中華系の家柄で、英語、中国語も堪能なことからカンボジアの縫製業界団体の中でも若手として注目されている一人である。今回、労働争議のあった衣料品工場のオーナーは中国から進出した一人で、問題発生の前もC氏に相談をされていた。

C氏の指摘によると、最大の問題は、カンボジア人のワーカーとの意思疎が欠けていたことである。ストライキに入る前に現地の労働者から、給与以外に食事など福利厚生面での要望があったが、一切対応せず、また幹部は中国の工場から連れてきた中国人しか登用をしていなかった。

C氏は、そのような課題を指摘して、改善するように助言もしたが、オーナーがその助言を無視して独自の経営を進めてきたため、おのずからおこった問題である、との指摘があった。

(教訓)

OVTAがまとめた「タイ進出日系企業の事例集」にもあるように、労務管理の基本は、現地事情を理解して、従業員とのコミュニケーションを図ることが重要である。今回、生じた問題はタイだけではなく東南アジア各国で起こりうる問題だと見られる。

 

カンボジア労働者通勤1 カンボジア労働者通勤

カンボジアの労働者の通勤風景

 

以 上