各国・地域情報

タイ

作成年月日:2013年7月

海外情報プラス

タイ国情報2013年6月

我が国のTPP交渉参加と、労働市場の開放

安倍政権では,TPP交渉に入ることを決定、交渉に参加したが、交渉の過程が公表されないため、我々が将来の経営判断にどのような影響があるか不明です。
特に、労働、資本、市場開放の内、労働市場の開放はまだまだ課題が大きいと思われます。その意味で、すでにアセアンの市場開放をにらんで動いているタイの労働市場、タイに進出している日系企業の考え方をご紹介することは意味があると思います。今月は、次の3つの課題と、参考として、外国人労働について考えてみました。

1.中進国のわなから抜け出すには(タイと日本の工学系大学の連携について)

2.日系自動車部品会社のミャンマー進出について

3. 外資規制が緩和された1997年の経済危機後の日系企業

4. (参考)外国人労働、タイと日本との違いについて

JICAセミナー
H25.7.30

1.タイが中進国のわなから抜け出すには(アセアンと日本の工学系大学の連携について)

7/30にタイ政府投資委員会BOIとJICAが主催して産業政策構想と産業クラスターアプローチ」についてのセミナーが開催された。ここの大きな課題は、タイが中進国のわなに陥らないか、陥った場合、抜け出すには何が必要か、を考えるものであった。JICA調査によって、今まで正確に把握していなかったサプライチェーンの構造が明らかになりました。タイに製造工程のない、いわゆるミッシングリンクを知ることが可能です。事業再編を目指す企業にとって貴重な情報になることは間違いありません。

一方、タイへの進出を考える中小製造業にとっては、市場を知る強力なツールになるでしょうBOIでは、新しい投資誘致政策の一つとして「産業クラスター」を育成する考えもあります。それらの背景には、従来の低賃金を前提にして投資してきたタイ国は中進国として、次はどのような発展過程が望まれるのか、課題が見えてきました。

7/3に開催されたAUN/SEEDNETとの名称で、アセアン10か国と日本の工学系大学の連携についてJICAが支援してきたプロジェクトが紹介されました。事務局に取材すると、アセアン10か国の大学の研究、教育支援を日本の大学との連携で進めようとするプロジェクトです。企業側のニーズとしては、工学系の高度人材を採用できるのか、という課題です。

10年続いたプロジェクトがあと5年延長されたとのことですが、海外のプロジェクト自身が日本政府だけの財政援助では限りがあって、民間の支援を求めるために、何をしなければならないか、何ができるか、問われている、とのことです。

日系企業としては、今までアセアンの40大学に日本のODAが出されてきた成果として、優秀な学生が育成されたことを歓迎するとともに、その卒業生をどのように受け入れるか考える時期ではないか、と思われます。

 

2. 日系自動車部品会社、工業団地運営会社のミャンマー進出について

軍事政権下でもミャンマーに企業が進出してきたのは、おもに中国と韓国です。また、社会主義国との関係も深く、アセアンではベトナムが投資をしてきました。ベトナムから来たJICA専門家からも、ミャンマーに日系企業だけではなく、ベトナム企業が進出している、と報告をうけました。

7/9と7/31に面談したタイにある日系の自動車部品会社、7/19に面談したタイの工業団地開発会社に、ミャンマー進出準備状況を伺うと、今後の日系企業がアセアン市場をどのようにとらえるか、大きなビジョンが必要です。各国の市場規模、経済発展の過程から、後発発展途上国である、ミャンマーや、ラオス、カンボジアの可能性は大きいと言えます。

同時に、日本人、日系企業が活躍する場合の親和性の問題も大きな問題です。

思考方法も、論理的に判断できる国民性か、示威恫喝的な思考をするか、曖昧模糊として結論を出すのが遅い国か、経営判断で、何を重視するのか、日本人に親しみをもっているのか、など、アジア各国の行動形態を考えると、タイおよびタイ人の思考方法は日本にはなじみやすいを思われます。
ミャンマーもその意味で、日本との親和性の高い国ですが、サプライチェーンは全く成り立たず、1社またはグループで素材から製品まで準備できないと産業が成り立たない状況である。

工業団地会社としても、日系企業が今後ミャンマーに進出するための誘致活動をする、というよりも、その前の段階です。部品会社、工業団地運営会社の一致した意見では、タイにいる300万人のミャンマー人が、本国に帰国する可能性があって、それを抜きに労働市場を考えるべきではない、との意見でした。

 

3. 外資規制が緩和された1997年の経済危機後の日系企業

7/28にH自動車会社の会長、社長を経験された方のお話を取材することができました。

トヨタ、ホンダなど自動車メーカー、松下電器などの家電メーカーは1997年の経済危機以前は、タイでは地場企業との合弁しか事業運営が認められず、自由な運営ができない、という課題がありました。ところが、1997年の経済危機によって、多くの会社がタイの国内資本市場で資金を調達するよりは、ドルをはじめとして外貨で資金を調達してタイ国内に持ち込むほうが低金利だとして、大半の企業に外貨の利用がありました。ところが、1997.7.2のタイバーツとドルとの固定相場制が変動相場制になって、今までの1ドル28バーツが、一時期は1ドル50バーツ近くまでタイバーツが低落、言い換えると、1ドルの借入金をかえすのに、28バーツ稼げばよかったのが、50バーツも必要になったということです。バランス上も、資産としては同じですが、借入金はバーツで表示すると倍近くなり、多くの企業では債務超過のため、資本の拡大をしないと、企業が存続しない、という状況にまでなりました。

H社の場合も同様で、日本側が増資により債務超過をまぬかれたい、としたが、タイのパートナーはそれに応ずる資金がない。このため、パートナーの株を買い取って、日本の株式比率を高めたとのことです。これによって、多くの日系メーカーは外資100%になりましたが、外資規制が残った建設、サービス業関係では、今でもタイのパートナーがいないと会社が設立できない、という課題がのこっています。 一方、中小企業の海外展開では、逆の意味で、日本側の資本力が少ないため、タイ側のパートナーが必要だという側面もあります。

H自動車元会長・社長と面会
H25.7.28

そのような状況から、タイで事業運営をする場合、日本人だけのマネジメントでうまくゆく場合と、日本人だけでは目が届かず、そのカバーをどうするかの場合とを考えておく必要があります。
弊社にも多くの相談がありますが、タイ政府の法律規制に日本流の対応をすることから、多くの摩擦が起こっているようです。ある中小企業はタイとのパートナーを構築していることにより、直間比率は、日本独自よりも低くなった、つまり、管理コストが低いという。

このあたりの、制度として外資規制の良しあしを検討するとともに、実務上でも、海外では地場企業とどのようなパートナーシップを取るのか、大きな課題です。ちなみに、最初に取材したH社の会長、社長経験者は、日本だけ利益を得る仕組みはだめで、進出した国に如何に貢献するかを考えるべきだ、との意見でした。

 

4.(参考)外国人労働、タイと日本との違いについて

 

日本の外国人労働を規制するのは、外国人入国管理法がある。

http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/index.html

タイでも外国人職業規制法、移民法などビザの規制はあるが、運用の方法が違う。
そもそも6700万人いるタイ人の中で、労働人口が約半分、3892万人。(タイ労働省 2011年)
これ以外にミャンマー人300万人、ラオス人20万人がいるといわれる。

すでに外国人労働者には、労働許可を取得するように過去数年にわたって指導がされ、期限付きだったが、パスポートの取得、労働許可の取得のため、タイ政府、ミャンマー政府、ラオス政府が協力をしてきた。タイ政府は追い出すのではなく正規の登録をするように指導するのである。日本の入管法の運用は不明だが、タイにいると製造業だけではなく、建設業、サービス業では外国人労働がないと事業が成り立たない状況である。

 

 
バンコク周辺に延伸する鉄道の建設現場 H25.7.31

かつてのドイツで、トルコ人労働者が長期に滞在して、社会問題になったように、日本でも外国人労働者が家族帯同して在留することをなるべく避けようとしているが、当地ではそうではない。取材していると、サムットプラカン県では、カンボジア人だけの集合する地区もあり、水産加工で有名なサムットサコン県ではミャンマー人が40万人もいてATMではミャンマー語まで表示をされている。もっともタイのATMでは、最近はタイ語だけではなく、英語、中国語もあって、なかには日本語の表示付もある。
それだけ、外国人の労働者に寛容といえる。

なぜ、タイはミャンマーの軍事政権を長年支えてきたか、といわれたが、もし軍事政権が弱く、少数民族との戦いで、避難民がタイ国内に逃げ込むと、数十万人もの避難場所がいる。1973年のラオスの内戦でも逃げた少数民族を庇護する施設が2012年まであったように、タイは周辺国が紛争を起こした場合の避難場所になることは理解をしている。陸続きの国でのやむを得ない措置だったという意見もある。同時に、日本と同じく、3Kといわれる仕事はタイ人には嫌がられて、そのためやむなく外国人を雇い入れている事例も多い。

 

ミャンマーに戻るカレン族
H25.7.23

7/23に国境付近まで行ったバスで隣に座った女性が少数民族のカレン族であったが、すでにタイで4年も企業に勤務しているという状況である。タイ国内にもいる少数民族に対して、国王がRoyal Projectなどで自立するための支援をされているように、多くの国民が、それを寄付などによって支えていることも事実である。この辺りは、日本でもあまり報道されていないが、少数民族の自立と、周辺国の国民を受け入れる姿勢には共通するものもある。

<7/23ミャンマーに戻るカレン族>

以 上