各国・地域情報

タイ

作成年月日:2013年4月

海外情報プラス

タイ国情報2013年3月

特集

1997年の通貨危機以後、最大のバーツ高を経験して貿易立国であるタイの輸出に少なからず影響を与えている。同時に、2015年おアセアン経済共同体(AEC)に向けてインフラ整備などタイの国際競争力強化に向けて政策が着々と進められている。 今月は、そのようなハード面の整備とともに、実際の運営、マネジメントする人材育成が計画に追いついているのかどうか、様々な場面での課題を紹介する。

特に3つの課題を紹介するとともに、補足としてカンボジアの企業活動についても紹介したい。

1. これからのタイ進出は単独ではなく、提携も

2. タイ政府がインフラ整備に2兆バーツもの資金を投入する狙い

3. 強いタイバーツの影響

4. (参考)カンボジア進出の企業が低賃金だけを狙ったのでは

1.タイ政府工業省DIP主催の日系企業セミナー(4/2)から(合弁か単独か)

4/2開催の工業省DIP主催セミナーは大きなテーマを「ASEANNでタイの日系企業が競争力を強化できる鍵」と題してタイの国際競争力強化と日系企業の現地化をどう進めるか、議論がなされた。 特に、主催者のタイ工業省からこれからタイに進出する中小企業にとっては今までの大企業や中堅企業と異なりタイの地場企業と提携が望ましいのではないか、との提案もあった。そのため、単独進出の場合と合弁の場合の違いも議論される場面があった。以下簡単にセミナーの内容とおもな論点を紹介する。

1)タイ政府国家社会経済委員会NESDBに日本の経済産業省METIから政策顧問が派遣されている。顧問は、タイに赴任される前にはJETRO New Delhiでの勤務経験もあって、日系企業の気概での活動についても詳しい。著書「空洞化のウソ-日系企業の現地化戦略」にあるように、海外進出によって競争力を強化するには如何に現地化を進めるかがカギであると議論がされた。

2)タイ政府の工業省工業推進局裾野産業振興部のダイレクタ―からは、工業省単独ではなく、外局に当たる独立機関と各産業団体が共存共栄の関係でタイの産業振興を図っている、との説明であった。

3)その一例が、日本からの進出企業とタイの地場企業との提携を進めている。

4)合弁事例として発表されたタイの経営者からは、単なる見合いでは合弁や提携はできない。数年の準備期間を経て、お互いの気持ちが一致したことから合弁会社の設立になった、との報告があった。

5)後日、パートナーの日本側の経営幹部にも合弁になったメリットを取材する機会があった。それによると、管理部門の人員が相当節約されたことと、工業団地に入らずに地場の企業が立地する敷地を確保できて、日系単独で進出する投資コストは大幅に節約でき、それがひいては競争力の強化になっている、との説明であった。

6)別途、ある法律事務所の案件を伺うと、提携関係解消の案件など、合弁の難しさに関しての報告も受けた。

7)したがって、合弁か、単独かの議論ではなく、経営者同士がお互い腹を割って話し合いができるのかどうか、同じ方向に向けて進むことができるのか、によると思われる。

タイ工業省DIP主催セミナー

 

2. タイ政府がインフラ整備に2兆バーツもの資金を投入する狙い

1)まず、アセアン経済共同体AECが2015.12.31に完成することからタイの地政学上もアセアンのリーダーとして他の周辺国との競争力を維持するには交通網の要であるという位置をどう維持するかにかかっている。道路網がある程度整備されたが、物流面では鉄道の利用が欠かせない。

2)しかし、タイの鉄道は、マレーシアに比べて劣る。KL―シンガポールに高速鉄道網が敷設されると、かなりその格差が目立つのである。中国からラオスに高速鉄道網が出てきて、シンガポールとの一体化を図るには、国内の鉄道整備が欠かせない。また、日本のJRなどと比較するとタイ国鉄の収支面でも、鉄道本体以外の収益が劣るため、まだまだ収益でも改善の余地がある。

3)2013.1.17に安倍首相が初めての外訪で、ベトナム、タイを訪問。その中で、タイ及びミャンマーのインフラ整備に関心があるとの記者会見での報告があった。

4)4.26の泰日協会でのタイ政府チャチャイ運輸大臣の講演では中国、ラオスとマレーシア、カンボジアなどと接続する構想があり、日本企業の参画を呼び掛けた。タイ政府は新幹線にも関心を示しているが、タイにとっては過剰性能で価格が高すぎるという見方がある。

泰日協会のwebsiteから資料入手可能:http://www.thai-japanasso.or.th/news_activities/AllNews.php?nid=303&type=Hot%20News

5)当面は単線の複線化など最低限の設備増強が計画されているのが現状である。また、線路などのハード面の設備投資を行っても実際の運航する機関士などの育成といったソフト面の充実が必要ではないか、との意見もあった。

泰日協会のwebsiteから資料

3.強いタイバーツの影響、貿易輸出に陰りか

1)タイの経済活動が良い、また各種経済指標が良い場合にタイバーツが周辺国の通貨と比べて高い評価を得ていることをタイバーツ高といえる。 2)小額のタイバーツでものが買えるため、海外から輸入する企業にとっては業績にプラスとなる。 3)反対に、タイから海外に物を輸出する企業にとっては、同じ価格でも先方の支払う支払額が高いため、総じて購入する数量が減少するなどマイナスの影響がでる。 4)タイの自動車業界を例にとると、日系企業の多くは、エンジンなど基幹部品を日本から輸入してタイ国内で販売したり、同時に周辺国に輸出するためプラス面とマイナス面の両面がある。特に、日本から輸入する比率が高い企業はバーツ高でプラスの効果がでる。 5)逆に、国内調達比率が高い企業ほど、輸出の際にマイナスの影響を受ける。 6)2013年の自動車業界の生産部門の予測と販売部門の予測で、前者は2012年並みの生産を予測、販売部門は輸出の減少を見て、やや弱めの予測をしたのはこのような事情である。 7)それだけに、国内の景気を維持するためにもタイ政府がインフラ整備に力を入れたい、という事由がここにある。 8)2013年3月から財務大臣が、バーツ安に誘導するように金利の引き下げを要求しているが、タイ中央銀行は物価への影響など、慎重な姿勢を崩さないのも為替のレートが単に、経済指標だけでは決まらず、海外からの投資家の思惑で左右されいることを承知で政権とも中立を守っているのである。 9)多くの日系企業は、国内の景気が回復すると業績の改善効果が大きいため、タイバーツ高にも政府へ何らかの対策を要求する動きはない。輸出中心の地場企業ではバーツ高が続く限り輸出の減少が避けられない、という見方が多い。ただし、まだ雇用面への影響が出る、というのは少し先になる見込みである

 

4.(参考)カンボジア進出の日系企業の課題、労働賃金の安さだけを狙ったのでは

1)4/12にカンボジアの工業省の生産性向上委員会の責任者に面談する機会があった。同席したのは、現地で日系企業と合弁で縫製業を営む地場の経営者である。 2)2010年を境に、周辺国、特にタイやベトナムから台湾系、韓国系、タイの縫製産業の進出が相次いでいる。 3)その理由は、先進国向けの一般関税が後発の途上国であるがゆえに特恵関税GPSが適用されることと、カンボジア人の雇用コストが安いことからである。 4)しかし、カンボジアも周辺国のベトナム、タイの最低賃金が引き上げられると、国内の最低賃金も引き上げざるを得ない。 5)工業省の生産性向上の責任者は、単に低賃金だからカンボジアに進出してきたのでは、これからの国際競社会では問題が出る、との意見であった。 6)同席した現地の経営者も日系企業の工場を身近に見ているため、生産性向上のための様々な仕組みづくりに関心が高かった。 7)すでに日本からの援助でできた縫製産業の人材育成施設があるが、これからは技能だけではなく仕組み作りも援助する時代になってきたのではないか。

カンボジアの工業省の生産性向上委員会の責任者に面談1 カンボジアの工業省の生産性向上委員会の責任者に面談2

以 上