各国・地域情報

タイ

作成年月日:2013年3月

海外情報プラス

タイ国情報2013年3月

特集

今月の特集は@タイの自動車業界の人材育成、Aタイの労働者不足と周辺国への展開、 Bタイ中央銀行から見たアセアン経済共同体AEC2015とTPPを紹介します。

1.タイの自動車業界の人材育成 3/13経済産業省+タイ工業省、説明会より

2007年タイと日本の経済連携協定JTEPAが発足した際に、自動車産業の国際競争力を高めるにはタイのすそ野産業の活性化が必要だとして、人材育成に日系企業が協力する体制ができた。

2012年に最初の5か年計画が終了し、2013年から第2次の計画がスタートすることになった。

3/13に2012年の1年間に各分野に成果が上がった報告発表会が行われ、同時に2013年の計画発表がなされた。

トヨタはTPM方式の定着を、ホンダは金型技術の強化、日産は技能評価制度の定着、デンソーは教育研修制度の普及促進を行っている。

いわゆるマイスター制度の頂点を育て、そのマイスターが後輩を育成することで産業全体の総合力を強化するという長期の仕組みづくりである。ちなみに,TPM方式については、1000名近い受講者があって、トヨタグループを中心とする技術者育成の底辺ができている。

このように自動車業界がタイの重要な産業とみられているが、その背景にはこのような地道な取り組によって業界全体としての人材育成の定着が図られている。
(TMO撮影)

2.タイの労働者不足と周辺国への進出

2013年1月から全国一斉に最低賃金が300THBに上がったが、自動車業界ではすでに賃金水準が是を超えているにもかかわらず、工業団地に入居する自動車部品業界の人材不足は続いている。

これは、失業率1%以下という、失業率の高い欧米では考えられない水準である。今までの本稿でも紹介したように、原因は3つ。

*第1 :出生率の低下である。女性の高学歴化などにより結婚年齢が上がったこと。

*第2 :、タイが中進国入りをして、都市に人口が集まることで、従来の農村社会であるように結婚を急ぐ理由がなくなってきた。

*第3 :若い女性が自活できる給与がもらえるようになり、結婚を急がなくなった。
これらに対する妙薬はないが、政府が考えている対策は3点。

*第1の量的な面では、タイ人労働人口を増やすため、シニアの退職年齢を遅らせる、女性労働力の活性化を取ること。

*第2には、周辺国からの労働力の輸入である。ミャンマーからの移民は200万人を超えるとまで言われている。半数は合法的、半数は非合法だと言われる。

*第3は機械化など労働生産性を高めることであるが、現状の自動車業界の活性化などにより労働力の量的な不足が否めない。

そこで、繊維業界、製靴業界など労働者を多数活用する業界は、タイから周辺国へ工場を展開するという動きがある。ラオスでは、縫製業、鬘製造業など労働集約産業の投資を促進する動きがある。カンボジアでは、すでに縫製業が重要な輸出産業だと見られている。ミャンマーへの日系企業、タイ企業の進出は軽工業が中心で、日本の新聞などで報道されるダウエイ地区の重化学産業立地にはまだ時間がかかる見込みである。

 

3. タイ中央銀行から見たアセアン経済共同体AEC2015とTPP

 

(TMO撮影)

2015.12.31にアセアン経済共同体が生まれる。6億もの人口を抱えるアセアンが世界第3位の大きな市場になる。3/25に、タイ中央銀行の総裁を迎えたJCCの講演会で、AEC2015年を迎えるにあたり中央銀行のようなものができないか、もしできない場合は、タイ中央銀行がアセアンの中央銀行のような役割を果たすのか、質問があった。総裁の回答はEUと違い、共通通貨ができるのではない。そのためアセアンの中央銀行は必要がない、との意見であった。しかも、共通通貨に代わり、ある特定の通貨がアセアンの大半が使用する通貨になっても良い、という考えも示された。

現在のEU域内での各国の経済のアンバランスで、強い国が弱い国を支える仕組みがないと、共通通貨が維持できない。AECが経済共同体としても統一通貨を作るまでの結束、拘束を求めるものではない。経済格差があれば、それは為替レートとして、各国の通貨当局が責任をもってバランスを保つべきだ、という考えである。

EUとAECの共通点は5点。

1)域内関税の撤廃、2)貿易の円滑化、3)投資の自由化、4)知的所有権の保護、
5)域内協力である。

逆に、違いは、AECは経済的なネットワークが中心で,EUのように政治的な主権が欧州委員会にあるのではない。また、域外との関税もAECは各国の裁量であるが、EUは地域外とは関税が共通である。各国の通貨は上に述べたように、AECは各国独自.EUは共通の通貨であり、キプロスのような弱い国が、強い国に支えられないと共通通貨を維持するのが難しい。

最後に、労働問題であるが、AECでは人の移動は自由にするとしているが、現在、まな板に乗っているのは熟練労働者であり、EUのように人、サービスの移動の自由には及ばないのである。そのため、地域経済圏を構築するとともに、APEC域内でのTPP構想が生まれるのは、より自由化を進めたいというシンガポールなどの意向が背景にあるとみられる。

労働問題は、各国の固有の問題でもあり、労働法制などはまさしく、歴史を無視できないが、グルーバル化が進むことにより、自国だけの問題にはならない。アセアンとの貿易自由化が、いずれ日本国内の各種、規制緩和につながると見ておくべきだろう。

以 上