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タイ

作成年月日:2013年2月

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タイ国情報2013年1月

タイの労働市場をとりまく状況の変化

特集

今回は、特集 として、3点を紹介します。

1)労働市場に供給される大卒の状況、

2)ミャンマーから流入する労働者の状況、

3)2013年から改定される予定のタイ政府投資委員会の新しい投資政策について

2013年1月から全国一律に最低賃金が300バーツになった事から、中小零細企業の倒産が続くのではないか、労働者の失業など発生しないか、といった社会問題にも関心を寄せていたが、すでにそのような企業は地方または周辺国に移動をしている事例もあり、倒産事例の情報は入りにくかった。参考に、解雇、レイオフの事例を紹介しておきました。

 

1.労働市場に供給される大卒の状況

まず、タイ全国の就労人口をみると2012.8現在で3954万人が就労をしている。その内訳は、農業が855万人(21.6%)、工場関係1475万人(37.3%)、流通サービス関係が1541万人(39.0%)となる。

2012.8現在、労働者を学歴別にみると、小卒2048万人(51.8%)、中卒649万人(16.4%)、高卒574万人(14.5%)、大卒以上が664万人(16.8%)である。ちなみに2011年に大卒の新規就職者は283000人であったが、2012年には349,000人と23%も増加をしている。(以上は労働省資料)

2012.9現在の職種別の労働需給を2011.9と比較してみると、需要が伸びているのが工場労働者、サービスセールス、事務職であるが、他方、一般労働者、サービス業などは需要が減少をしている。

今回、泰日工業大学の学長、その後は副学長などにも、日本語ができる工学系の大学が5年目を迎えて、4000人の学生から毎年1000名近く卒業生を送り出している状況を取材した。それによると、日系企業の学卒者の採用ニーズが強く、ほぼ100%近い就職率だとの説明であった。2012年に続き、タイに進出する日系中小企業のニーズが強いことから、当面は同大学の卒業生の就職状況は良好だと見える。

同時に、日系の人材紹介会社に、大卒の就職状況を聞くと、卒業間際でもなかなか決まらない学生も多く、大学間の格差、学生間の格差が大きいとの説明であった・

たまたま、あるエンジニアリング会社に2013年の給与改定についての日系企業の考え方を聞くと、パートナーであるタイ人の考え方も伺わないと、日本人だけの判断では、採用をしても定着をしない。そのため、採用方法、給与の改定、その他、ボーナスの査定など、細かな意見交換をしながら運営をしているとの説明であった。

2.ミャンマーから流入する労働者の状況

労働省の資料によると、タイは高齢化社会に突入して、労働市場から引退する労働者の数と、新しく参入する労働者の差が、逆転して、労働者の絶対数が減少するとみている。

また、女性労働などの参入も進めているが、最低賃金の上昇が続く限り、タイ人はより待遇の良い職業を選ぶ傾向が強い。そのため、一般労働者、工場労働者の最低賃金レベルで働く労働者の確保が難しくなっている。失業率が1%を割るような、完全雇用が続く限り、このような低賃金で働く労働者を国内で探すのが難しい。

2013年1月から全国一律300バーツの最低賃金が適用されると、労働集約産業はなりゆかない、として、繊維、縫製、皮革、ヘアウイッグ(鬘)産業は、周辺国に移転する動きもある。

たまたま、2013.1.7-8とミャンマーのヤンゴンに出張する機会があり、現地のJETRO事務所、およびタイ政府の貿易経済センターを尋ねると、現地では、タイで働くミャンマー人は500万人に上るとの情報もあった。

たしかに街中でミャンマー人と話すのに英語ではなく、タイ語が通じる場面もある、というのは非常に興味深いものがあった。2011年11月にカンボジアに出張をした際も、観光地で写真撮影をするカメラマンから、タイ語で話しかけられたこともあり、よく聞くと、カンボジア人もタイで働いた経験者が多いとのことであった。

1/24の泰日技術振興協会主催の40周年記念式典とAECセミナーで、あるプラステイック成型企業のオーナーが、すでにタイ国内でも数百人レベルのミャンマー人、カンボジア人を雇用しているとの説明もあった。

それらの人材を、それぞれの国に進出する際の幹部要員になるのだ、との説明であった。
我々は、外国人労働を低賃金労働者だと決めつけないでタイを拠点に周辺国に展開する場合の要員である、との意識を持てば人材育成方法も変わるかもしれない。

(参考)

・2013年1月、アデランス社(ブリラム県)は、法定最低賃金レートの施行などの影響を受けてかなり苦難。1月9日付け下記記事では、同社従業員のうち50人が今月、自主退職。
→ http://www.manager.co.th/Local/ViewNews.aspx?NewsID=9560000003269 

3. タイ政府投資委員会の新しい投資政策について

タイの工業部門の持続可能な成長に向けての投資奨励政策が1/14のBOIセミナーで公表された。
  工業省,BOIは国の競争力強化、サプライチェーンの底上げ、税制優遇による財政負担の軽減を狙いとしている。

大きな変更点は、今までのゾーン制が廃止。付加価値が低い、ローテク産業、製造工程が複雑でなく他の産業との関連が少ない、労働集約的産業、投資奨励が無くても事業経営が可能な80の産業は、投資奨励を取りやめる。BOIが重視する産業は、@インフラ・ロジステイック、A基礎工学、B医科学、C代替エネルギー、環境サービス、D産業支援サービス、E高度技術、F食品・農産物加工、Gホスピタリテイ/ウエルネス、H自動車・輸送機、I電機・エネクトロニクス、の10グループで約130業種となる。

これから地方でも意見聴取のためのセミナーが開かれ、3月末のBOI本会議で、承認され2013年6月から実施の予定である。

日系企業への影響は、地方分散政策でもあったBOI政策からゾーン制が廃止されることから、都市集中が加速されないか、地方への工場分散が減速される可能性もある。

このことから、労働力の集中と分散が今まで以上起こる可能性もある。

添付 BOIの新しい政策についての長官のプレゼン(日本語訳)

 

4.(参考)最低賃金上昇によりレイオフ、または工場閉鎖をした事例

2013.1月現在

企業(業種)
所在地
レイオフまたは解雇人数
ナンロンアパレルおよび関連会社(繊維) ブリラム県 120(レイオフ)
イサボード(縫製) サケオ県 471(閉鎖)
グローバルハーネス(自動車部品) サケオ県 254(閉鎖)
スパタナコン(紙工場) アントン県 300(レイオフ)
製氷工場、鮮魚加工業 ラノン県 1000(ミャンマー人、解雇)
ベナガーメント(縫製) サラブリ県 300(レイオフ)
コラート電気、イノベーションゴルフ ナコンラチャシマ県 700(レイオフ)
パンエシア ナコンラチャシマ県 148(レイオフ)
シマテクノロジー ナコンラチャシマ県 200(レイオフ)
キャノン ナコンラチャシマ県 100(レイオフ)
PVD インターナショナル ナコンラチャシマ県 85(レイオフ)
電気部品 ランプーン県 1000(レイオフ)
宝石加工業 ランプーン県 400(工場一時閉鎖)
ケパウパコン工業 チェチェンサオ県 賃金未払い

以 上