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タイ

作成年月日:2013年1月

海外情報プラス

タイ国情報2012年12月

−タイに進出する日系企業の課題など

特集

1)日系企業の進出が続く中での課題、

2)タイ国での国王や仏教徒をはじめとする宗教のプレゼンスの高さ、

3)駐在員の健康問題

なお、参考のため2012年12月に妥結した日系企業のボーナス支給月数を紹介します。

1. タイに進出する中小企業の課題について(その2)

1)前月に続いて、12月も日系企業と懇談する機会が多かった。タイ進出を支援する日系の地方銀行および大手都市銀行から見たタイの日系企業の課題について意見を交換する機会が多かった。また、日系の機械メーカーとのパートナー探しを弊社が依頼されていたため地場の機械メーカーも訪問する機会があり、地場企業から見た日系企業、および欧米企業との付き合い方についても紹介する。企業進出が続くなかで、工場の建設、設備の確保ができても労働者の供給が不足する事態が続いている。

2)タイ政府投資委員会が2012年の海外からの直接投資を集計したところ、第1位は日本からの進出、特に日系の中小企業の進出が続いている。地方銀行のバンコク事務所開設も続く(11月には商工中金、12月には百五銀行など)背景は、日本経済に逼塞感があって、海外進出をしている大手得意先と取引を継続する場合、たとえ中小企業でも現地に拠点がないと日本での取引拡大の可能性が減少し、やむなく現地進出をしている事例も多い。国内からの製品輸出だけでは追いつかない実情を反映していると言える。

3)地方銀行の海外事務所の多くは、今まで中国や東南アジアではシンガポールが多かったが、次の拠点としては、日系企業の進出が多いタイ、バンコクおよびすでにタイに拠点を持っている銀行はインドネシアやインドも視野に入れている。

4)地方銀行から見ると、海外進出をする中小企業は海外の工場を運営する人材が少なく、地方銀行からの情報が顧客から非常にあてにされている。地方銀行としても海外での失敗が国内の本体の経営にも大きな影響を及ぼす恐れがあることから、単に日本国内で資金面の支援をするだけではなく、海外の現地法人とも情報交換をすることが信用管理面からも重要である。

5)このような地方銀行と提携して、海外進出の駐在員要請や進出前の情報提供としてJETROだけではなくOVTAなども果たす役割が大きいと思われる。

2.タイ国での国王や仏教徒をはじめとする宗教のプレゼンスの高さ

1)12/5の国王誕生日に王宮前で数十万人の国民の参賀の状況や、12/31のカウントダウンに際して王宮前で数万人もの規模で仏教徒の集会が開催されるなどをみると、タイの政治、宗教に関して、日系企業として考えておくべき課題があります。

2)まず、日本の暦では皇室の関連の休日は12/23の天皇誕生日が代表で、前の天皇誕生日も名前を変えての祝日になるなど直接皇室関連の祝日は少ない。
ところが、タイのカレンダーを見ると、13日の祝日の大半が王室関連の祝日と宗教関連の祝日である。この祝日カレンダーを元に、各工場での年間のカレンダーができているのである。祝日の勤務手当が高いため、多くの工場ではこれらの祝日は、年の初めから休みとして稼働日から計算に入れていない事例が多い。

3)機械メーカーを尋ねると、逆に、そのような祝日、タイのお正月(ソンクラン)などの休日に、メンテナンスや機械の入れ替えをするため、営業面では、それらを前提に商談を進めているところである。

4)従業員の管理という点では、従業員のモラール・意識の点で、年間行事にタンブン(布施、功徳を積む)を取り入れている企業も多い。日本の企業では、宗教活動と企業活動は別だという現在の憲法の建前から、家族経営では別として、社員がそろって供養をすることは少ないが、長年タイに在住する企業、タイ企業との合弁企業の中には、それらの行事を取り入れることによって日系企業ではあるがタイに解けこむ努力をとしている姿勢を見せている事例がある。

5)たまたま、12/5にタイのレストランに入り、ビールを注文すると、今日は国王の誕生日でアルコールは出せません、と断られた。タイの法律上は、アルコールの購入できる時間帯が11.00-12.00および17.00-24.00に限られている。また、上記の仏教の祝日と選挙投票日はアルコールの販売が禁止されているのである。
日本の総選挙があった12/16の場合、タイでは、前日から選挙の開票が終わる時間までアルコール販売が禁止されている。

6)タイ保健省の考えでは、健康増進の一環から、たばこの喫煙場所の制限、たばこの販売方法の細かな規制とともに、アルコールを企業の敷地内で飲むことまでも規制をする動きがある。
たまたま、タイは観光産業が国内の重要な産業であり、地方で銃砲の所持のより観光客が殺傷された事件が発生したため、観光相大臣は、観光客の安全を守ることが第1の課題だとの声明を出す一方、その県知事は、新たな銃砲所持は許可しない、という方針を出している。このような保健省の考えが出てきた背景にも、厳格な仏教徒の宗派の動きがある。
したがって、海外各国の憲法や法律を守るだけではなく、各国の置かれている政治体制、宗教意識を抜きに日系企業の労務管理、人事管理はないのである。

3. 駐在員の健康問題

1)先月は、タイ人の薬害について紹介をしたが、今月は駐在員の健康管理問題について紹介する。

2)たまたま、12/31に日系大手企業の現地社長が自宅に帰る途中に意識不明になり、そのまま亡くなられた。3年前に、顧問先の役員が、日曜日のゴルフが終わってから気分が悪くなり、近くの町医者で診断・施薬もされたが回復せず、深夜、バンコクの大手病院に運ばれたものの、治療が遅く亡くなった事例もある。また、弊社のコンサルタントが2012年2月に心臓にカルーテルを入れる手術を受けて、手術そのものは成功したが、術後の管理が悪く亡くなられた。親しい友人とともに、日本から家族の来訪を待つまでの病院、寺院との対応から、葬儀に至る手伝いをした。このような身近に出会った事件があった関係で、いずれ紹介せねばならない課題だと考えていたので、今月号で触れておきたい。

3)まず、健康管理は本人自身が自覚して定期的に健康診断を受けるなど、日常的な健康管理は対応すべき課題である。しかし、不慮の事故もある。

4)今までのご紹介したタイ進出の日系企業は、駐在員といっても大手は別にして、数名、中には1名しか日本人がいなくて、すべてを任されているという場合もある。その場合、どうしても無理をしたり、病院での健康診断も社員には受診をさせても、本人がやらなかった、ということもある。中には、駐在員自身が健康保険で対応してください、という中小企業もある。

5)海外旅行保険があれば大丈夫か、というとそうではない。バンコク市内の日本人医師、または日本語の通訳がいるような大手病院では、日本の海外旅行傷害保険があれば、たいていの病気、けがはカバーされるが、歯科治療は基本対象外で、病院の入院期間が6か月を超える場合、特定の治療方法など、保険でカバーされない場合もある。そもそも、タイといっても地方に駐在する場合もあり、地元の病院しかない場合は、いったん支払って後に、領収書と引き替えに保険請求をすることになる。歯科治療に限っていうと、日本の国民健康保険加入者は、日本の保険請求金額程度は後日、請求すればカバーされる場合もある。

6)別の顧問先の代表者が事故をした時期は、お正月であった。それも交通事故で加害者がバイクで逃げて、事故を見た周のタイ人に病院へ運ばれた事例がある。タイでは、お金があるか、保険があるかで、治療されるかどうか、となるが病院から工場に務める社員と連絡が取れて、ようやく日本の本社に確認をして、全額本社が責任を取るから最善の治療をしてください、となった事例である。日本人が事故に会うのは工場や通勤だけではなく、休日の事故もあり、意識を失った場合では、誰かがその場で対応してくれないと、治療が遅れる場合もある。ちなみに、被害者、本人は事後の治療も含めて1年程度通院されたが、今では元気に活躍をされている。

7)したがって、企業の継続問題を災害などリスク管理面で見直すBUSINESS CONTINUETY MANAGEMENTの一環として取り組む際も、企業活動を支える社員の健康管理、事故対策も忘れられない。

8)駐在する国によっては治安対策が重要であるが、平穏な国であっても健康の問題は重要な問題である。海外に駐在する前から、本人と海外に駐在させる本社が事前にその対応を考えた健康管理の対応、対策が求められる。

(参考)タイ国の日系大手企業のボーナス支給月数

12月現在妥結している企業

企業(業種) 基本月数 追加現金支給額
IHI Turbo(自動車部品) 7か月 30,000バーツ
Toacs(ゴム製自動車部品) 6.5か月 8,000バーツ
Toyoda Gosei(自動車部品) 5.9か月 13,000バーツ
TTK Logistics(物流) 5.3か月 10,000バーツ
Thai Kowa(照明器具) 3.5か月 28,000バーツ

この数字を見ると、従業員の賃金コストは高い、と見えますが、多くは派遣労働者を使っています。このため、正規従業員は上記の支給がありますが、実質的には派遣労働者には波及されないため、全体の人件費負担は抑えることができます。


以 上