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タイ

作成年月日:2012年12月

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タイ国情報2012年11月

−日本の地方からみた中小企業の海外進出

特集

11月は日本能率協会の来訪や、国際金属機械展に出展する中小企業とともに来訪された各地の地方自治体、中国地域ニュービジネス開発協議会との面談があった。また、ある工業団地内で発生した薬物検査の結果とその後の対応を踏まえて、日本の中小企業が抱える問題とタイの労働市場が抱える課題について紹介をする。 その内容から特定の企業名を出せないこと、ご理解をいただきたい。

1.AEC2015を踏まえた労働者市場について、2015年問題について

1)11/5にバンコクでJETRO主催で開催されたAFTAセミナーがあった。その後、11/29に訪問したベトナムのホーチミン日本商工会議所事務局長と面談をした。これらを通じて、2015年にアセアンは統一市場を形成し、資金、労働、技術の移動が自由に行われるというAEC2015年に、日系企業がどのような準備をしているのかを考える機会があった。特に、熟練労働者、未熟練労働者の移動が自由になるのかについては、毎回、タイで開催される労働セミナー、投資セミナーで話題になる課題である。

2)結論は、医師や看護婦など各国が認める専門職、熟練労働については、まだまだ議論が煮詰まっていない。

3)10/26に開催したOVTAセミナーでも議論をした「労働力不足の背景」には、未熟練労働の移動に関しては、まったく議論の対象外である。その意味で、アセアンを取り巻く、各種の条約や協定の内部を吟味して経営判断をしないと、単純に「労働の移動が自由化される」という表題だけで、日本からの投資先との判断をしていないだろうか。

4)アセアンの労働市場は均一ではない。その意味で、労働力供給の現状を見据えて、労働者の移動がどのような仕組みでなされているのか、判断する時代になった。

5)タイの労働力不足の背景 : 先日のOVTA青木理事長の説明もあったように、経済発展が進む国家では避けられない問題であるが、労働者が多いからといってミャンマーへの投資が急増するわけではない。このあたりの経済発展と必要な労働力育成、供給を必要な職種ごとに見てゆくことが必要になったと思われる。

6)アジアは、2015年までに人口ボーナス期が終了して、少子高齢化が経済停滞の時期と重なるといわれる。これが2015年問題である。また、経済の減速を予想する方の論拠でもある。しかし、アジアのすべての国で経済が停滞をするのだろうか?アジアでもインドネシア、フィリピン、マレーシア、インドは人口が増加して、まだまだ人口ボーナスが続く。日本に続き中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイでは、人口ボーナスが2015年ごろに終了するとみられる。

7)人口ボーナスとは、総人口の中に占める生産年齢人口(15―60歳)の割合が伸びると、一人当たりの国民所得が増えると、総計的、経験的に言われるのである。しかし、現実的にタイの3892万人の生産労働人口の1割近い移民、内訳では、ミャンマー、カンボジア、ラオスの移民を合計すると200万人- 300万人(推計)もいる状態で、単純にタイ人だけの生産年齢人口をみて人口ボーナスが終わるというのは単純な議論ではないのか?

8)上記のアセアンを取り巻く環境を踏まえての労働市場を考える時期になった、と言える。

2.地方から海外に進出する中小企業の情報収集とその課題について

1)今月、特に議論ができたのは福岡県、長野県の行政機関であった。特に、国際金属機械展に出展された中小企業とそれを支えている地方の行政機関,JETROとの関係を考えた。

2)海外の市場情報を収集するのはJETROなど長年、海外に拠点を持つ政府系機関に頼る分野が多い。しかし、JETROでも拠点により、情報の格差があって、福岡県がインドの情報を収集するため現地の民間のコンサルタント事務所を活用しようとしているように、地方自治体、地方銀行自らが顧客である中小企業のため情報を集めることが重要である。

3)長野県では、自動車部品業界の多数が海外に進出をしている。そのため、従来は中国の主要都市に拠点を持つようになったが、2011年の日中の対立を機会に、地方の中小企業が東南アジアを進出の対象地域と考える比率が高くなった。

4)地方銀行としては、八十二銀行はすでに4年前からバンコクに拠点を設けている。また、その他、百十四銀行、りそな銀行、大垣共立銀行、八十二銀行、滋賀銀行なども取引先のアジア進出に合わせて、中国一辺倒から、東南アジアに向けて情報の収集、発信が求められている。

5)特に、労働市場、労働法制に関する情報の集中と発信についてはOVTAが果たす役割が必要であると考えられる。

6)労働政策研究・研修機構もあるが、地方の中小企業が情報を収集する第1ではない。海外展開を考える中小企業としては、JETROが訪問先となるが、各県の海外事務所もしくは地方銀行の海外事務所があれば、最初の訪問先になる。ところが、金融情報、経済情報が主な提供情報であって、労働市場、労働法制に関しての情報は、これらの機関には足りない部分である。

3. タイ人ワーカーにはびこる薬害について

1)タイの深夜労働をするワーカーやトラック運転手にはドラッグが使用されている事態が時には報じられる。

2)2005年当時にタクシン前首相が国境地帯を中心に薬物取引を取り締まって以来、タイ警察は薬物の摘発を行っている事件があった。

3)11/29にタイのある工業団地にある自動車部品産業のN社から連絡があって、警察と同時に従業員の薬物検査をしたところ、250名の正社員、派遣社員のうちから6名(正社員は3名、派遣社員は3名)発見された。

4)そのため、警察と相談して、薬物からの立ち上がる厚生施設に入れるべきか、すぐに解雇すべきかどうか、相談があった。

5)タイでは、従業員を解雇する場合、犯罪の事実があれば、解雇金なしで解雇できるため、直ちに解雇される事例があるが、後日、その事実は触れずに、労働者が労働裁判に訴え出る事例がある。

6)また、薬物の販売網を摘発したわけであるので、販売業者からすれば、その販売先をつぶされたことになる。そこで、警察に訴えた告訴人が犯罪に巻き込まれる事例もあり、この点は慎重に対処すべきである。

7)2005年当時にこの問題と向き合ったK社の社長からお聞きした事例では、直ちに解雇せず、厚生施設に収容して、給与も支給しながら、自主退職をするよう慎重に取り組まれた。この場合、警察、労働事務所などと連携を取りながら、従業員が労働裁判所に訴える場合でも、客観的な状況を関係者が共有する必要がある。

8)また、工業団地の1社から発見されたことは、その他の会社でも可能性があり、薬物の販売グループがしずかに周辺の工場に浸透をしている。

9)薬物事件以外にも、事件にならない問題は、金銭の貸し借りの問題である。

10)特にバイクの購入など安易にローンが利用できることもあって、企業の景気の上下によって、残業が減少し、ローンの返済ができない場合は、民間の貸金グループ、頼母子講、個人の貸金業の利用もある。

11)最悪は、上記の犯罪に入る場合もあり、ローンで利用したバイクなどを売却したり、ローン先に差し押さえをされる事例もある。

12)したがって、これらの問題はあまり表に出ない問題ではあるが、事前にその対応を考えた人事、労務の対応、対策が求められる。

以 上