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タイ

作成年月日:2012年7月

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タイ国情報2012年6月−タイとその周辺国に進出する日系企業の動向−

 特集

  今月は、3点ご報告をします。
  
第1は、日系企業が市場の大半を占めるタイの自動車業界から、米国系の自動車会社に納入する豪州系の自動車部品業界を視察する機会があった。その中での人材育成の考え方を紹介して、日系企業の経営で気がつかなかったポイントを紹介する。
  第2は、先月と今月に大きな機械展示会があったが、洪水を経験した製造業が如何に立ち直ろうとしているのか、また、将来の人件費コスト上昇に対して機械化を進める実態をこれらの工場に納入する機械販売の最前線を取材した。
  第3は、6月末にラオス、カンボジアを訪問して、現地に進出する日系企業の実情を紹介する。タイやベトナムの最低賃金上昇に備えて、の進出事例がある。

1.集団運営とトップダウン

A社
1)概要 : 2011年に自動車部品製造業として豪州からタイに進出。従業員150名。東洋のデトロイトといわれる工業団地に進出して、GM、FORDなど欧米系の自動車会社と取引を行っている。洪水後の部品需要が急速に拡大したことと近くに日系の自動車メーカーが進出したことから取引を開始している。
2)経営管理の基本 : 同社は経営管理の基本としてISO9001などを導入して、工場の管理を行っている。この点では、日系の自動車部品メーカーと同じである。また、工場内の掲示物を見ても、納入業者の評価をはじめ従業員の評価を公表して、公平な人事評価、かつ能力向上を推奨していることが見える。
3)日系との違い : 同社の教育人事をされているマネジャーにヒアリングをすると、タイと豪州では特に人事の仕組みが異なることはない。また、現場の責任者にも豪州からの駐在員は少なく、現場の主任クラスはタイ人が担当している。
4)何が日系企業と異なるか(と聞いた): 工場進出にあたり責任者が1名、本社からくれば、後は現地の幹部の採用など、責任者が自分の判断で進めていることである。

 今まで進出してきた日系の現地工場を取材すると、立ち上げ時は本社から営業、製造だけではなく各部門の応援があって、本社と一体となって立ち上げをされている事例が多い。ところが、このため現地で行う人材募集、調達先の選定など、関係者が協議の上決定するため、時間がかかる。他方、同社は豪州から責任者しか駐在をしないため、ある意味で即断即決によりことを決めてきた。このこともあって、立ち上げ時からタイ人の活用をせざるを得なかった、とも言える。その分、現地化が進んだとも言える。この点が、日系企業の事業運営のスピード感や現地化が遅れる理由のひとつかもしれない。

2. 洪水後の復興需要の拡大と、省力化への取り組み状況

 S社
1) 概要 : 本社は日本で、タイはその販売会社。取り扱う機械は日本製が大半。従業員45名。同社の社是が「誠実一路」
2) 業容の拡大 : 同社の販売戦略は、展示会の活用と、その後の営業マンのフォローアップが特徴。海外では、日本製だけではなく、欧米製、中国や台湾製との競合が激しく、価格が高い日本製は品質だけでは売れない。同社は、機械の販売後も定期的なフォローアップを行い、利用者である自動車部品メーカーなどから高い評価を得ている。
3) ショールーム開設に向けて : 従来の販売会社は、バンコク市内の住宅街に近く、来客の駐車面積が少ない。また機械の展示がほとんどできなかった。また、賃貸価格が引き上げる動きから、空港に近い場所を見つけて、広い場所を確保することができた。そこで、ショールームを開設して、従来の営業形態を拡大することになった。
4) 洪水後の受注の動き : 復興需要は、工作機械メーカー各社とも同様に拡大したが、内容としては省力化機械の導入が増えている。その理由は、2012年4月の最低賃金の引き上げをきっかけとして、今後も労働コストが上がることが必須と見ているからだろう。
5) 同社としても、営業社員を巡回営業する体制から、機械を展示して、顧客を迎える販売体制に切り替えることで、販売効率を上げたいと考えている。それが、ショールーム設置の理由のひとつでもある。

3. ラオス、カンボジアに進出する日本の企業

L社(ラオス、中小企業)
1) 進出のいきさつ : 同社は、日本では金属の再生工業を行っていたが、海外では原料調達に近い分野の進出を考えていた。たまたま、ラオスの会社と,JVを組んでいた1社が撤退したい、とのことから同業者の紹介も得て、資本の出資を行っている。
2) 現状 : 原料のTは、ラオスから入手できることから、現地では、1次精錬を行って、日本などに輸出を行っている。
3) 進出の経緯から、技術的な面は大半をラオス人が習得しており、日本人のGMが日常の管理をしているものの、経理、人事はパートナーのラオス側が担当をしている。
4) 日系企業としての課題 : 営業面では、タイを始めとした日系企業の営業面の開拓が日本人しか出来ないこと。もし、この事業をタイに移転したとすれば、原料の搬入などコスト面ではラオスの優位性がある。心配をしたラオス人も付き合うと、優秀で、経理人事は任せるほどになっている。

I社(カンボジア、中小企業)
1) 進出のいきさつ : 既に、中国には2工場を、持っているほどであるが、人件費のアップから、東南アジアへの進出を検討して、たまたま、港湾施設に近い工業団地に進出を決めた。
2) 事業内容 : TVに使うプラステイック成型をカンボジアで行い、米国、中国に輸出している。従業員、150名
3) カンボジア人の課題 : 賃金が安いのが魅力。人事管理の面では、日本人は一人。中間管理職は、すでに工場を持つ中国人が現場のカンボジア人を指導している。カンボジア人の課題としては、識字率が低いため、工場内でカンボジアの国語の教育を行っているほどである。
4) 賃金以外の周辺の福利厚生 : 最低賃金に加えて、食事手当て、出勤奨励金、通勤手当を支給。従業員たちが、共同して通勤用のトラックを借り上げて出勤をしている。そのため、タイなどの工場の出勤事情とは事情が異なっている。このシアヌークビル以外でも、プノンペンの周辺の工場でも同様のトラックを借り上げて出勤をしている。

M社(カンボジア、大企業)
1) 本社は日本だが、すでにシンガポール、中国、タイにも子会社を持つ。
2) カンボジア進出を決めた背景には、タイを始め、中国などの労働コストが引きあがっているため、首都に近いP工業団地に進出を決めた。
3) 現地の従業員は1500名程度だが、すでに拡張計画を持っている。
4) 今までのシンガポール、タイでの進出の経験もあり、足りない部品、技術があれば、企業として外から持ち込むことができる。
5) タイ(3工場、従業員数2万人)との比較では、労働コストが下がる反面、電気代、物流コストなどインフラ面のコストが高い。
6) しかし、中国やタイでの労働者不足がすでに発生している現状では、まだ本格的な工業化が進んでいないカンボジアは魅力がある。
7) なお、昨年10月のタイの洪水から、リスク分散を行うという企業方針とも合致している。

以 上