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作成年月日:2012年6月

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タイ国情報2012年5月−洪水への対応と国際競争力の強化−

 特集

  今月は、タイの自動車業界が年間生産200万台を突破するエポックメーキングな年になる可能性が高い。特に、自動車の現地生産が高まる状況にあって、自動車部品業界各社が置かれている状況と今後の対応についてヒアリングをした。 同時に、5/17にBOIセミナーでは「洪水への対応と国際競争力の強化」の課題を取り上げ実施したが、その参加者の声を踏まえて今後の、日系企業のリスク対応、国際競争力の強化に向け具体的な課題は何か、紹介する。 最後に、日本からタイにインターン生として勤務する学生の声を紹介する。

1.自動車業界200万台生産体制に向けた動き、自動車部品業界T社、S社の見方

<T社>

1)概要 2011年にエンジン用の金型製造業として後発で進出。従業員10名。町工場的なスタイル。
2)日本では高い技術を持っているため、大手メーカーとは直接取引をできる。タイ進出後に、日本での取引先に挨拶に伺った際に、すぐに見積もり、試作の相談を受けて、供給を開始したが深夜まで残業が続いても受注に供給が追いつかない状況である。 また、人材教育に時間がかかることから取引先を増やせない、という状況にある。
3)2012年の自動車生産200万台が2016年には300万台と予想がされている。この鍵を握るのはエンジンの生産だと見ている。トヨタを始め各社は現地生産、現地調達率を高めたいため、高品質の金型、部品を生産できる会社の進出は大いに歓迎をしている。現在、三菱、鈴木、マツダが増産体制をとっているのも、その鍵を握るのはエンジン。
4)同社の高品質を示す一つを紹介すると、コネクター周りの精度が0.1mmではだめで、その100分の1の精度が求められているのが事実である。 5)人材面では、タイ人が主体になるが、求人の対象は日本で3年間研修、実習を受けて、タイ国内では関連会社がなく自分で就職先を探すタイ人を使うことにしている。  未熟練のタイ人よりは即戦力、日本的生産管理が分かる人材を探せたことが早いスタートを切れた理由となっている。それだけに、上記の品質の製品を作るまでには時間がかかり、取引先を増やしたいものの供給する製品の品質がエンジンの精度を決まるため、増産を急がない理由になる。自動車メーカーとしては、依然、海外からの調達が残る分野がある、というのが現状である。

<S社>

1)概要 従業員580名。男女比率男70%、女子30%。自動車部品製造。
2)1996年設立当初、タイ企業49%、日本51%であったが、1997年の経済危機を経て日本の出資を拡大して現在は、タイ企業3%、日本97%の出資比率となった。
3)同社は、世界5カ国、9工場をもつ。米国、中国、インド、フランス、タイ。いずれも現地企業との調和を重要と考えて合弁企業形式が多い。
4)特定の製品は、市場占拠率50%を超えるものがあり、それだけに品質確保に苦慮をしている。タイの自動車生産200万台体制から300万台を見据えて、新工場の着工も図っており、2013年にはオープンする予定もある。
5)そこで、課題となるのが韓国製品の追い上げで価格の低下、材料比率の上昇、労務費の上昇である。この課題にどのように対応するため、職場力、組織力が、生き残りの鍵となる。
6)本社では、既に東南アジアでは、インドネシアにも2013年進出を決定しており、タイ国内の市場をタイ工場が担うにしても、アジア市場はインドネシアとタイ、およびインド、中国からも供給できる体制がある。
7)海外の生産拠点を担う経営陣の若返りを図っている。たとえば、米国、フランス、タイはトップの年代を40歳代に任せる体制をとり、長期に海外の現場を任せることになった。
8)タイの課題は、上記の問題に加えて、労働組合対策がある。職場力、組織力を生かすにも、労働組合の協力が欠かせない。若い経営陣に託した本社の意向に、現場がどのように応えるか、これからの運営が試されているのである。

2. 5/17 BOIセミナー「洪水への対応と国際競争力の強化」での議論と参加者の声

☆セミナーでの議論

1)5/17に開催した表記のBOIセミナーでは、日系企業から150名の参加者を得て開催することができた。(70%近くが、洪水の被災企業であった。残り20%程度は間接被害。10%が影響なし)主な議論は次の通り。
@ 洪水から我々は何を学んだのか?
A 将来のタイの進むべき方向は何か、また戦略課題は何か?
B その際、周辺国も含めてアセアン経済共同体AEC2015をどう取り入れるのか?

2)洪水から学んだのは、世界のどの国も自然災害から免れることは出来ない、と言う点。そのため、生産から販売までのサプライチェーンの一連の流れで、どこがネックであり、代替手段が取れるかどうか、考えておくこと。事業継続プラン(BCP)の重要性が認識されたことである。

3)タイの戦略課題は、「世界に勝つ」モノづくりができるかどうか、である。国内市場が6500万人で小さいが、AECが出来ると6億人の市場になる。世界の60億人もの市場を対象にしたモノづくりをするには、いくつかの課題がある。金型業界を例に取り上げると今までは日本や欧米先進国の技術を導入して、高品質、低価格の製品、部品を提供してきたが、今後は、中国やインドなどと競争になる。最初から大規模な市場を持つ企業と競争すると、生産性、価格競争で劣る。一方、品質で先進国に追いつくには研究開発など必要になる。ところが、人材育成では、タイはまだまだである。 そうすると、高品質、低価格の市場ではインドや、中国との競争、低品質、低価格では東南アジアの他の諸国との競争がある。高品質市場での課題、低価格市場での競争など、先進国に追いつこうとするタイの置かれた位置から明確な方向を見出さねばならない。

4)日本工業大学の横田教授の提案された内容は、タイのブランド作り、言い換えるとタイ産の信頼性を如何に高めるかである。そのためには、基本のモノづくりがタイで定着できるかどうか、だろう。 5)同時に、課題とされたのは、人材育成である。従来の製造業の課題は、熟練労働力や管理者の不足を課題に挙げられたが、今後はマメネジメントできる人材がタイで育成できるかどうか、だと言われる。  その理由は、熟練労働者であれば、タイ人に限らず、AECでは域内での熟練労働者の移動が自由に出来るのである。人材の育成こそ、最大の投資であるが、教育した人材が自由に他社に移ると言う定着性(転職)の問題がある。そこでは、育成コストを国家が負担するのか、企業で負担するか、との問題が残る。

☆セミナー参加者から取り上げてほしいと希望される課題 労働者不足、コスト削減、人材育成、労働組合対策など人に関係する課題。 同時に、AECへの対応、サプライチェーン、税務・関税、資金調達など経営全般に対して情報が少ないことによる希望が多い。
(タイの日系企業にはそれなりの情報入手の方法があると思えるが、日本と比較をすると、1名の管理者が担当する分野が広いため、今までの経験だけではなく、経営全般の知識が必要である)

3. 日本からタイの企業にインターンシップとしてきた学生に取材

1)弊社では、毎年、日本からくるインターンシップの学生と出会う機会がある。日本の就職戦線では、男女が同じ条件であり、企業もそのように受け止めているのか、と聞くとそうではないらしい。そのため、海外では、女性の首相、大臣もあるように大きな可能性を求めて海外に来ている学生である。

2)今回、弊社の事務所に来てくれた4名の学生の出身は、秋田、小田原、東京、京都。国立大学と、私立であるが、どうも私立が多い。学部も、医学部から総合学部、観光学部など。インターン生として勤務先は、日系企業が多いのは気になるが、実際の現場は、タイ人が多いのである。

3)課題は、インターンシップで何をして、何を期待しているのか?大学や本人の意識の違い、また周囲に期待するものも明確にしておく必要がある。自分の人生の目的に中で、今の時点では何をする時期か、考えている学生はそれなりの成果を上げている。

4)学生が経験しているインターンシップの現場とその環境

* Aさん:(企業向けサービス業勤務)  インドでインターンシップを経験したことがあるが、インドと比較すると、タイは環境がすばらしい。毎日、カレーライスでベジタブル、鶏肉を交互に食べた。昼はファーストフードでしのいだが、バンコクでは日本食など普通に食べることがきる。その後、香港でも挑戦すると、世界各国からの学生がインターンシップに挑戦をして、自分は仕事にありつけなかった。そのため、日本人の自分が得意を生かせるのは英語と日本語の環境ではないか、とのことからタイにきた。まだ、将来は決めていないが、独立する気持ちもある。

* Bさん:(企業向けサービス業勤務) 中国、北京で数ヶ月のインターンシップを経験した。中国の経験からいうと、タイ人は頑張りが足りないのではないか。北京では、猛烈に働くインターン生が多い。

* Cさん:(企業向けサービス業勤務) 生活環境については、ホームステイよりも、シェアハウスをして、海外の学生との共同生活ができれば、お互いに話をする機会が増えるのではないか。ホームステイとしても長期ではなく、体験的には効果が上がるのだろう。

* Dさん:(自動車業界勤務) 日系といいながら、現場では上司で1名、日本人がいるだけで、他はタイ人。タイ人の先輩の仕事ぶりを見ながら、取引先との連絡係りをしているが、相手も日系といっても出てくるのはタイ人。最初はつたない英語でやり取りをして、相手にも理解してもらうのに何回も聞き取りをしたほどであった。勤務先が、商品を調達する立場であったため、相手は我慢をしてくれたが、反対なら、すぐ電話を切られたかもしれない。毎日、仕事が終わると、タイ人の先輩に連れられて帰宅をするが、途中で、先輩との夕食をとる時間に、毎日の起きたこと、困ったことを相談している、とのこと。

5)日系社会としてインターンシップをどう受け入れるのか 彼らは既に、インターン生を経験しているからだろうが、大学の単位に認定されるなら、応募する学生は増えるのかもしれない。たまたま、来訪してくれた学生は、いずれも大学を休学したままや、既に卒業してインターンとして経験を積んでいる。

 

以 上