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タイ

作成年月日:2012年3月

海外情報プラス

タイ国情報2012年2月−洪水の克服の姿を通して学ぶ−

 特集

 今月は、昨年の洪水を経てタイの日系企業の復興状況、2012年に向けての動きを紹介します。また、2月に取材した日系企業の紹介を通して、事業継続計画を海外で実行する上での課題などもご紹介します。

1.今、タイの日系企業は何を考えているのか?-JCC景気討論会を通して

1)収益の動向:2011年は、大半の日系企業は前半の収益拡大から、年度後半の洪水の影響をうけても年間を通しての収益は確保された(JCC2011年下期景気動向調査。会員1345社のうち366社回答。内、69社は洪水の被災企業)。 2)洪水の影響:洪水時の代替生産は、親会社のある日本での生産が多かったが、すでに海外展開をされている企業では、中国や東南アジアでの代替生産もあった。 また、洪水で被災された調査対象の製造業85社のうち41社88%が現在地での復興、タイ国内の別の場所での再開12社23%、タイ国外での復旧は4社8%であった(複数回答) 3)2012年4月から実施される最低賃金、約40%引き上げに対しては、日系企業としては、止むを得ない、として、大半は将来的には設備の増強により生産性向上を図るしか、次は、従業員の総数管理をする、と考えている。 4)ASEAN域内の経済、政治・安全保障、社会・文化の3つの共同体を目指すAECの影響に関しては事業が拡大する、と見る企業が38%、一方で不明だという回答は33%あった。 5)タイ政府に対する要望では、洪水対策の計画から実施に向けての要望が多かった。 (3月上旬に,Yingluck首相の日本訪問に同行してJCCの棚田会頭(タイトヨタ社長)などが同行し、日本でのタイ国投資セミナーに講師として出講された) (参考)http://www.jcc.or.th/ 以下は、JCCが実施した景気動向調査2011年下期の資料をもとに、タイの自動車業界の関係者に説明するための要約の一部(英文 Takagi Management Office (TMO) )。

 

 

 

 

 

 

By JCCB
? 16 Dec 2011 ? 15 Jan 2012
? 366 from 1,345 members responded (27.2%)
? At which 69 firms (51 manufacturing , 18 non-manufacturing) were directly damaged by floodwaters
? Turned to ‘deteriorating’ in 2nd half due to the flood, but expecting improving’ in 1st half 2012

Takagi Management Office (TMO) Co.,Ltd

Impacts of Thailand Floods 2011

 

 

 

 

 

 

 

 

Takagi Management Office (TMO) Co.,Ltd

・Total 69 firms (19%) were direct damage to their buildings or facilities.
: 51 firms in Manufacture (electric/electronics machinery reported the highest damage)
: 18 firms in non-Manufacture
? Moreover, 275 firms (78%) were indirect damaged due to the customers/suppliers affected

2. 2月に面談した日系企業 (最低賃金引き上げ対策、事業継続への決断と実行)

1)光学機器メーカーのS社では、最低賃金引き上げへの対策として、適正人員の配置を重視して、無駄な人件費を省いてきた。2011年末の50名が今では38名になったが、生産出荷量が落ちていない。今まで、どれだけ無駄があったかが、わかってきた。

2)自動車部品製造業N社では、洪水で冠水した直後に、緊急対策を決定、実施してきた。 まず、代替地を探し、設備も早期に納入できる台湾製に代えて、早期に復旧を行ってきた。以下が、洪水の直後の対策である。
@水没翌日には2人乗りの船を購入し、1時間かけて工場内に入る。 → 日本人の姿は1名だけ。
A1週間後には2.8Mの水深の中から金型を引き上げる事を決行。 → 金型(800キロ〜1トン)を数面運べる船を製作。
B2週間で850面を引き上げ → 引き上げ業者(地元)と同社ワーカー20名程でチェーンブロックにて引き上げ。
C11月に入り、金型棚、洗浄機など2〜3トンの必要な物を揚げる。  → 3台目の船を製作。
D11月末には工場内に10Mのやぐらを組み、8トンの機械を揚げる事を計画  → 4台目の船、4M×8Mの船を製作。
E15台を引き上げ、メーカーにて修理、12月中旬には貸工場にて成型。同時に台湾製の機械20台を搬入。
F12月初旬には水が引いたため、引き上げ済みのポンプ(修理済)を即座に取り付け、発電機2台にてトイレ使用可能、工場内電気を使用可能とする。
G工業団地(復旧チーム)と貸工場成型チームに分け、現在に至る。

3. 海外で考えたい、事業継続計画BCPの実施上の課題

1)2011年は東北大震災とタイの洪水など自然災害と、それによってわれわれが日ごろどれだけ災害に対する備えをしていたのかなど人災面を試された。そのような状況で、ひごろの経営姿勢が明確に分かれた。事業継続計画が備えられていた企業と備えが無い企業で、復旧の速度が異なった。

2)電気部品を製造するK社は、洪水の影響を受けた同業者から代替生産を依頼されたが、断った。むしろ、工場設備の一部をライバルに提供して、ライバルの管理で、彼らの製品を製造し続けるように支援をされたのである。

3)電子部品を製造するS社も、主要な顧客であるN社が洪水に会われたことから、工場の一角を提供してS社の工場とは食堂だけ一緒で、別経営をされた。 両社とも工場の一角を貸与する背景を伺うと、一度、仮発注された仕事は、元に返さなければならない。また、代替生産といっても品質は顧客の要望水準に合わさねばならないので、設備の貸与だけなら経営に与える影響が少ないことと、将来の取引先としての関係を良くすることが、かえって大きな収益として帰ってくる、と判断したとのことである。

4)BPCといっても、海外では少数の幹部で、日常の管理を行ったうえで、将来の計画をたてるのだが、タイの場合は、ここ数年の政治状況の不安定、50年ぶりの洪水災害など、今まで長くいた方でも想定外の出来事があった。 そのような事情で、事業継続計画を立てるのと、新規の事業進出として考えるのと似たような状況がある。

以 上